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注目新刊:『ラカン『精神分析の四基本概念』解説』、『ラカンの哲学』、ほか

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『ラカン『精神分析の四基本概念』解説』荒谷大輔/小長野航太/桑田光平/池松辰男著、せりか書房、2018年2月、本体4,300円、A5判上製250頁、ISBN978-4-7967-0370-3
『ラカンの哲学――哲学の実践としての精神分析』荒谷大輔著、講談社選書メチエ、2018年3月、本体1,750円、四六判並製272頁、ISBN978-4-06-258674-0
『額の星/無数の太陽』レーモン・ルーセル著、國分俊宏/新島進訳、平凡社ライブラリー、2018年3月、本体1,600円、B6変判並製430頁、ISBN978-4-582-76865-7



★今月は、松本卓也さんの『享楽社会論――現代ラカン派の展開』(人文書院、2018年3月)が刊行されましたが、ほかにも『ラカン『精神分析の四基本概念』解説』(2月28日取次搬入、書店店頭発売は実質3月)や『ラカンの哲学』が刊行され、賑わいを見せています。どちらにも荒谷大輔(あらや・だいすけ:1974-:江戸川大学教授)が関わっておられ、せりか書房さんのラカン読解本では2013年の『ラカン『アンコール』解説』にも共著者として参加されています。『ラカン『精神分析の四基本概念』解説』は言うまでもなくラカンのセミネール第11巻『精神分析の四基本概念』(小出浩之/新宮一成/鈴木国文/小川豊昭訳、岩波書店、2000年)の読解本。4つの基本概念「無意識」「反復」「転移」「欲動」が説明されたこの講義は「後期ラカンの重要概念「対象a」や「享楽」を理解するための鍵」(帯文より)であり、これを読解本では「真の意味でのラカンの入門書」(「はじめに」)として読むことが試みられています。目次詳細と執筆担当は以下の通り。


はじめに
Ⅰ講 破門|荒谷大輔
Ⅱ講 フロイトの無意識と我々の無意識|荒谷大輔
Ⅲ講 確信の主体について|荒谷大輔
Ⅳ講 シニフィアンの網目について|小長野航太
Ⅴ講 テュケーとオートマトン|小長野航太
Ⅵ講 目と眼差しの分裂|桑田光平
Ⅶ講 アナモルフォーズ|桑田光平
Ⅷ講 線と光|池松辰男
Ⅸ講 「絵とは何か」|池松辰男
Ⅹ講 分析家の現前|荒谷大輔
Ⅺ講 分析と真理、あるいは無意識の閉鎖|荒谷大輔
Ⅻ講 シニフィアンの列の中の性|荒谷大輔
XⅢ講 欲動の分解|小長野航太
XⅣ講 部分欲動とその回路|小長野航太
XV講 愛からリビードへ|小長野航太
XⅥ講 主体と大他者――疎外|荒谷大輔
XⅦ講 主体と大他者(Ⅱ)――アファニシス|荒谷大輔
XⅧ講 知っていると想定された主体、最初の双数体、そして善について|小長野航太
XⅨ講 解釈から転移へ|小長野航太
XX講 君の中に、君以上のものを|荒谷大輔

キーワード別:縦読みガイド


★「縦読みガイド」というのは「主題ごとの参照箇所の一覧」で、「断片化された議論の文脈を各自で綜合した後、もとの語りの場面に戻れば、そこでラカンが企図していたことが何だったのかわかるはずである」とのことです。「ラカンの語りの断片性を補うために、最重要となるキーワードに限定して、辿るべき本書の項目を一覧で示し」たもの、とも説明されています。


★『ラカンの哲学』は荒谷さんの単独著。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「難解晦渋で容易に人を寄せつけないその思想は、しかし「哲学」として読むことで明確に理解できる」(カヴァー裏紹介文)という謳い文句がそそります。巻頭の序「精神分析の哲学、哲学の精神分析」にはこう書かれています。「ジャック・ラカン(1901-81)ほど、読まれるべきで実際にはほとんど読まれていない「哲学者」はいないのではないか。この嘆きを読者と共有することを拒む壁は少なくとも二つある。ひとつは、難解なラカンのテクストに時間をかけて読む価値はあるのかという疑問。もうひとつは、そもそもラカンは哲学者ではないという認識である。/この二つの壁を取り払い、読者をラカンの実際のテクストに誘うのが本書の目的である。〔・・・〕初期から最晩年にかけてのラカンのテクストをたどりつつ、哲学としてのラカンの価値を示すのが本書の企図である」(9頁)。


★『額の星/無数の太陽』は人文書院で2001年に刊行された、ルーセルの戯曲2作を収めた単行本のライブラリー化。巻末に加えられた「平凡社ライブラリー版 訳者あとがき」によれば、「訳文に若干の修正を施し、また人文書院版に付されていた「「額の星/無数の太陽」小事典」、解題にあたる「星と太陽、双子の戯曲」も最小限の加筆をしたうえで再録した」とのことです。平凡社ライブラリーではこれまでにルーセルの散文作品を2点刊行しています。2004年に岡谷公二訳『ロクス・ソルス』、2007年に同じく岡谷訳で『アフリカの印象』。いずれも現在品切ですが、これをきっかけに重版に掛かるのではないかと期待できます。


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★また、最近では以下の新刊との出会いがありました。


『青猫以後』松本圭二著、航思社、2018年3月、本体3,400円、四六判上製仮フランス装天アンカット296頁、ISBN978-4-906738-28-1
『アストロノート』松本圭二著、航思社、2018年3月、本体3,000円、四六判上製仮フランス装天アンカット208頁、ISBN978-4-906738-29-8
『電波詩集』松本圭二著、航思社、2018年3月、本体2,800円、四六判上製仮フランス装天アンカット128頁、ISBN978-4-906738-30-4



★航思社さんの「松本圭二セレクション」の第4巻~6巻が同時発売。2006年度の萩原朔太郎章受賞作である第4詩集『アストロノート』(『重力』編集会議、2006年)を、著者の本来の意向だったという3巻本に分冊して刊行、と。3冊を揃えて初めて帯文の背が「朔太郎賞受賞作の」「本当の」「かたち」と一続きで読めるようになります。この作品が全国の一般書店へ配本されるのは今回が初めてとのことです。付属する栞のそれぞれに掲載されたテクストを下段に列記しておきます。なお初版『アストロノート』出版への陰影に富んだ戦いの記録は第5巻の栞に書き留められています(前橋文学館特別企画展図録『松本圭二 LET'S GET LOST』から転載したもの)。妥協を許さない著者とのかくも密接な伴走は、版元さんの強い執念を感じさせます。驚くべき3冊です。


第4巻栞:阿部嘉昭「書き捨てて、残光に「域」をつくる」、松本圭二「著者解題 『青猫以後』ノート」
第5巻栞:井土紀州「ONCE かつて…」、松本圭二「著者解題 宇宙の誕生」、松本圭二「著者解題 初版『アストロノート』ノート」
第6巻栞:中原昌也「正直に言おう、自慢ではないが」、松本圭二「著者解題 予言の書」


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