新規開店の依頼書や挨拶状が届かないながらもこのところ弊社芸術書の注文短冊のみ散発的に送られてきているのは、柏市・柏の葉蔦屋書店(日販帳合)。2017年春に完成予定と聞く「KASHIWANOHA T-SITE」内にオープンするお店かと思われます。「KASHIWANOHA T-SITE」は公式ウェブサイトによれば「柏の葉スマートシティに新しい文化拠点が生まれます。この場所ならではの生活提案を、ここで。/代官山の蔦屋書店とT-SITEが、柏の葉キャンパスに新しい「文化拠点」を作ります。それは、世界の未来に向けて歩む街の憩いの場に相応しい文化拠点です。/ここで私たちが提案したいのは、この地にふさわしいライフスタイル。また、この街で過ごす皆さまと一緒に、毎日を素敵な日常に彩る場所。あなたと、あなたの大切な人の生活がより豊かになるように。そんな想いをこめた提案をご用意いたします」と。
ここしばらく蔦屋の常套句になっている「新しい文化拠点」「ライフスタイルの提案」は私のような人文書好きの変人からすればふわっとしすぎているというか、ありていに言えばぬるくて仕方ありません(湘南蔦屋で弊社『統治性』を激賞して下さったご担当者様にはきっとご想像いただけるはず)。文化やライフスタイルという言葉にどんな意味を込めているのか、まずそこから論理の組み立てを聞きたい、という話(面倒くさい客として切り捨てられるのがオチでしょうか)。おそらくCCCは変人をターゲットにしているのではないのでしょう。ではどの辺がターゲットで、その層はどんな消費行動をすると分析しているのか。その辺が気になるものの、先方としてはT-POINTカードで充分研究できているということなのかと思われます。
また、ここ最近、同じく日販帳合で、高梁市・蔦屋高梁という店名の発注短冊(人文書)があり、調べてみたところ、こちらは来年2月オープンの岡山・高梁市図書館であることが分かりました。「T-SITE Lifestyle」2016年11月9日付記事「「高梁市図書館」が2017年2月オープン。コーヒーを飲みながら読書できる空間に」によれば、「岡山県高梁市が、JR備中高梁駅隣接の複合施設内に建設中の「高梁市図書館」を、2017年2月4日(土)に開館する。カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下「CCC」)が指定管理者として運営する」とのことです。「コーヒーとともに読書を楽しむ“Library & Café”」を謳う同図書館では「「地域コミュニティ・憩いの空間・地域物産が知れる・高梁の良さを知れる」という市民価値を実現するため、図書館内への観光案内所を移設、CCCがスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社とのライセンス契約に基づき展開するBook & Caféスタイルの店舗を出店する。/市民も観光客もコーヒーを飲みながら図書館の本にふれ合える“Library & Café” のスタイルのもと、くつろぎの時間を利用者に提案する。開館時の蔵書数は、約12万冊」とのこと。開館時間は9:00~21:00だそうです。
ここまでくっきりと「コーヒーを飲みながら図書館の本にふれ合える」ということを打ち出されると、図書館利用者性善説に寄りかかるのもたいがいにしておけ(言い換えれば「日販さん、CCCがこんなこと言ってるけど大丈夫?」)、と心配になるばかりです。いくら図書館は新刊書店と違って本の返品はしないとはいえ、ビジネスに好都合なこの種の「お客様のマナーに期待する」態度は、いささか難があると感じます。既存書店の現況を見る限りでは、それは半ば破綻しています。某書店では座り読み用の椅子を減らし、椅子の脇にあったテーブルもすでに撤去済です。大げさな話ではなく、一部利用者の身勝手なふるまいに図書館員さんや書店員さんが日々うんざりしているのを耳にするのは、版元にとってけっして心地よいものではありません。マナーについて利用客各自の判断に丸投げするような施策には明らかに限界があります。図書館や本屋の「格」を上げるには、ここにしっかりとメスを入れるよりほかないはずです。
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新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる本屋さん
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