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注目新刊:『アントニー・ブラント伝』中央公論新社、ほか

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★風邪をひいて頭がぼんやりしています。今回は簡略なご紹介にて失礼します。まずは発売済の注目新刊から。

『ゲンロン4 現代日本の批評Ⅲ』東浩紀編、ゲンロン、2016年12月、本体2,400円、A5版並製350頁+E19頁、ISBN978-4-907188-19-1
『弁論家の教育4』クインティリアヌス著、森谷宇一・戸高和弘・伊達立晶・吉田俊一郎訳、京都大学学術出版会:西洋古典叢書、2016年12月、本体3,400円、四六変判上製328頁、ISBN978-4-8140-0034-0
『トマス・アクィナス『ヨブ記註解』』保井亮人訳、知泉書館、2016年11月、本体6,400円、新書判上製706頁、ISBN978-4-86285-243-4
『コモン・フェイス――宗教的なるもの』ジョン・デューイ著、髙徳忍訳、柘植書房新社、2016年12月、本体2,500円、46判並製272頁、ISBN978-4-8068-0683-7

★『ゲンロン4』では特集「現代日本の批評」が完結。完結記念に収録された、浅田彰さんの長編インタヴュー「マルクスから(ゴルバチョフを経て)カントへ――戦後啓蒙の果てに」(聞き手=東浩紀)が目を惹きます。東さんの率直な問いかけの数々に浅田さんが率直に応答されており、浅田さんの半生が垣間見えるものともなっています。東さんの巻頭言「批評という病」によれば『ゲンロン0 観光客の哲学』の刊行がいよいよ近づいているようです。次号となる5号は3月刊行予定、特集名は「幽霊的身体(仮)」となっています。

★『弁論家の教育4』は本邦初完訳となる「Institutionis Oratoriae」全12巻を5巻の訳書に分割して収録する、その第4巻。原著第9巻および第10巻を収録しています。「よく書き、よく話すには、多く読み、多く聞くべし。弁論術を養うための読書指南」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★『トマス・アクィナス『ヨブ記註解』』は「Expositio Super Iob Ad Litteram」の翻訳。新書サイズに横組という珍しい造本で、ほぼ同時期に刊行された同館の『哲学中辞典』と同じ体裁です。半年前には対照的な大判本(B5判)の『ヘーゲルハンドブック――生涯・作品・学派』を刊行されており、内容に応じて様々な器を用意される柔軟性を感じます。

★『コモン・フェイス』は「A Common Faith」(Yale University Press, 1934)の訳書。既訳には、岸本英夫訳『誰れでもの信仰――デュウイー『宗教論』』(春秋社、1956年)、河村望訳『共同の信仰』(『デューイ=ミード著作集(11)自由と文化/共同の信仰』所収、人間の科学新社、2002年)、栗田修訳『人類共通の信仰』(晃洋書房、2011年)があります。「宗教対宗教的なるもの」「信仰とその対象」「宗教的効用の人間的居場所」の全3章。巻末に訳者による長編解説が付されています。

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★このほか最近では以下の書籍との出会いがありました。いずれも発売済です。

『アントニー・ブラント伝』ミランダ・カーター著、桑子利男訳、中央公論新社、2016年12月、本体5,000円、A5判上製598頁、ISBN978-4-12-004771-8
『シベリア抑留――スターリン独裁下、「収容所群島」の実像』富田武著、中央公論新社、2016年12月、本体860円、新書判並製288頁、ISBN978-4-12-102411-4
『死を想え――『九相詩』と『一休骸骨』』今西祐一郎著、平凡社:ブックレット〈書物をひらく〉、2016年12月、本体1,000円、A5判並製90頁、ISBN978-4-582-36441-5
『漢字・カタカナ・ひらがな――表記の思想』入口敦志著、平凡社:ブックレット〈書物をひらく〉、2016年12月、A5判並製90頁、ISBN978-4-582-36442-2
『漱石の読みかた――『明暗』と漢籍』野網摩利子著、平凡社:ブックレット〈書物をひらく〉、2016年12月、A5判並製84頁、ISBN978-4-582-36443-9

★カーター『アントニー・ブラント伝』は「Anthony Blunt: His Lives」(Macmillan, 2001)の訳書。ソ連のスパイ「ケンブリッジ・ファイヴ」の一人だったイギリスの美術史家に光を当て、複数の文学賞を受賞した評伝大作です。イギリスの歴史家であり作家のミランダ・カーター(Miranda Carter, 1965-)のデビュー作で、いくつもの顔を持っていたアントニー・ブラント(アンソニーとも。Anthony Blunt, 1907-1983)の素顔に迫っています。ブラントの美術評論には『イタリアの美術』(中森義宗訳、SD選書:鹿島出版会、1968年)や、『ピカソ〈ゲルニカ〉の誕生』(荒井信一訳、みすず書房、1981年)、『ウィリアム・ブレイクの芸術』(岡崎康一訳、晶文社、1982年)などがあります。『イタリアの美術』のみ、今なお新刊で購入可能です。

★富田武『シベリア抑留』はカバーソデ紹介文に曰く「第2次世界大戦の結果、ドイツや日本など400万人以上の将兵、数十万人の民間人が、ソ連領内や北朝鮮などのソ連管理地域に抑留され、「賠償」を名目に労働を強制された。いわゆるシベリア抑留である。これはスターリン独裁下、主に政治犯を扱った矯正労働収容所がモデルの非人道的システムであり、多くの悲劇を生む。本書はその起源から、ドイツ軍捕虜、そして日本人が被った10年に及ぶ抑留の実態を詳述、その全貌を描く」と。主要目次は以下の通りです。序章「矯正労働収容所という起源」、第1章「二〇〇万余のドイツ軍捕虜――新客の「人的賠償」、第2章「満州から移送された日本軍捕虜――ソ連・モンゴル抑留」、第3章「現地抑留」された日本人――忘却の南樺太・北朝鮮」、終章「歴史としての「シベリア抑留」の全体像へ」。著者は3年前に人文書院より『シベリア抑留者たちの戦後――冷戦下の世論と運動 1945-56』を刊行されています。

★『死を想え』『漢字・カタカナ・ひらがな』『漱石の読みかた』の3点は平凡社さんの新シリーズ「ブックレット〈書物をひらく〉」の初回配本。巻末の「発刊の辞」によれば、同シリーズは国文学研究資料館の「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」(歴史的典籍NW事業)の研究成果を発信するものだそうです。いずれも興味深いテーマばかりで、図版も多数の、楽しいシリーズとなりそうです。


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