出版業界関連のニュースは日々色々あるのですが、最近読んだ中で特に印象深かったのは「ねとらぼ」2016年10月14日付の池谷勇人さんによるインタヴュー記事「史上最大の崖っぷちに追い込まれております」――コミックビームが突然の「緊急事態宣言」 漫画雑誌はこの先生きのこれるのか」です。「今、漫画雑誌に何が起こっているのか、コミックビームの奥村勝彦“編集総長”に聞きました」というもの。「ねとらぼ」では参考写真や動画も含めて3頁に分割されていますが、一気に読みたい方はヤフーニュース版「コミックビームが「緊急事態」宣言 漫画雑誌はこの先生きのこれるのか」をどうぞ。コメント欄もついています。
あちらはコミック畑、こちらは人文芸術畑ですが、共感する箇所が多々あります。特に、次のやりとりは非常に示唆的です。
【引用開始】
奥村 オレ昔から思ってるんだけど、最高のエンタテイメントって何かって考えたら、多分戦争なんだよ。自分とか身内が殺されない限り、戦争って一種のエンタテインメントなんじゃないかって。あの「日本チャチャチャ!」なんて足元にも及ばないくらいの爆発力がある。もちろんこれは極端な考えだよ。でもさ、実際戦争なんてやったら悲惨この上ないからね。人間同士殺し合うわけだから。
―― エンタメが萎縮すると戦争に向かうということですか。
奥村 おれはそう思うよ。メディアってそういうのがモロに最初に出てくるものだから。で、ああもう嫌だ平和になりましょう、っていうところからグゥーっとエンタテイメントが盛り返していって、それが一定の飽和点を超えるとまた戦争の方にグゥーっと行って。恐らく人類の歴史ってそれを繰り返しているのね。
―― でも、だとしたら面白いモノを作り続けるのは、ある意味戦争へのカウンターになるということですよね。
奥村 そうそうそう。何人かとしゃべったけど意見モロに一致で、みんな戦争好きですよねーって。でも、それ認めるところから始めなきゃいけないという気も最近してきてる。戦争は娯楽の行き着くところだけど、でもそれって最悪ですよ、っていうところからいろんなことを考えなきゃダメなんだろうな。その言葉(戦争)を封印しようとすればするほど、全部裏目っていくみたいなことに多分なっちゃう。
【引用終了】
奥野さんが仰る「戦争は娯楽の行き着くところだけど、でもそれって最悪ですよ、っていうところからいろんなことを考えなきゃダメなんだろうな」という言葉は、人文芸術畑の出版人が聞いても首肯できることではないかと感じます。インタヴューでは雑誌の「雑味」が実は醍醐味であるとも仰っていて、こちらにも大いに共感します。それにしてもKADOKAWAの一角にいてもこの厳しさというのは、ある意味、同業者からは想像できることではあるのですが、出版業界を目指したい若い方々にとっては「ドラマで見てるのと違う」と思われたりするのでしょうか。
三校もとい参考動画「ビーム緊急事態宣言」
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なお、厳しい出版業界の実態を「もっと」知りたいという方には以下の催事をお薦めします。
◎出版協営業講座:小田光雄×中村文孝「混迷を深める出版界を見極める!」
日時:2016年11月4日(金) 18時30分~20時30分(予定)
場所:小石川運動場会議室(東京都文京区後楽1-8-23 電話:03-3811-4507)
料金:1,000円 *50名限定
講師:小田光雄(おだみつお)1951年生まれ。早稲田大学卒業。出版業に携わる。著書『書店の近代』『出版社と書店はいかにして消えていくのか』、インタビュー集「出版人に聞く」シリーズ。/中村文孝(なかむらふみたか)芳林堂、リブロ、ジュンク堂書店を経て、LLPブックエンドを立ち上げる。著書『リブロが本屋であったころ』
内容:栗田出版販売の民事再生、太洋社の倒産、文教堂チェーン店のトーハンから日販への帳合変更、書店の統廃合、アマゾンの動き、めまぐるしく変動を続ける、出版業界。日々の売り上げも気になります。10年前とは全く様相を変じ、ますます混迷と変動を繰り返す出版界はいま、どのようになっているのか、何処に向かおうとしているのか。私たちは、今一度、しっかりとこの状況を押さえておく事が重要と感じております。古くから出版界に関わってこられた小田光雄さん、元ジュンク堂池袋店仕入の中村文孝さんからお話しをお伺いいたします。研修後、講師を囲んだ懇親会があります(別途会費実費)。
★出版協会員以外の方も大歓迎です。定員50名となっております。お申込みはお早めにお願いいたします。参加申し込みは、氏名・社名・連絡先電話番号・メールアドレス・懇親会参加の有無を明記のうえ下記へメールかFAXでお願いします(今後メールでのご案内が不要の方は、その旨ご記載ください)。メール:shuppankyo@neo.nifty.jp FAX:03-6279-7104
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