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注目新刊:ちくま学芸文庫1月新刊、ほか

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★まもなく発売となる、ちくま学芸文庫1月新刊6点です。


『モンテーニュからモンテーニュへ――レヴィ=ストロース未発表講演録』クロード・レヴィ=ストロース(著)、真島一郎(監訳) 昼間賢(訳)、ちくま学芸文庫、2023年1月、本体1,300円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-51102-7
『絵画空間の哲学――思想史の中の遠近法』佐藤康邦(著)、ちくま学芸文庫、2024年1月、本体1,400円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-51218-5
『増補 決闘裁判――ヨーロッパ法精神の原風景』山内進(著)、ちくま学芸文庫、2024年1月、本体1,400円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-51221-5
『江戸の戯作絵本(1)』小池正胤/宇田敏彦/中山右尚/棚橋正博(編)、ちくま学芸文庫、2024年1月、本体1,700円、文庫判576頁、ISBN978-4-480-51224-6
『日本の裸体芸術――刺青からヌードへ』宮下規久朗(著)、ちくま学芸文庫、2024年1月、本体1,300円、文庫判320頁、ISBN978-4-480-51228-4
『神経回路網の数理――脳の情報処理様式』甘利俊一(著)、ちくま学芸文庫、2024年1月、本体1,600円、文庫判528頁、ISBN978-4-480-51229-1


★クロード・レヴィ=ストロース『モンテーニュからモンテーニュへ』は文庫オリジナル。『De Montaigne à Montaigne』(Édité et préfacé par Emmanuel Désveaux, Éditions de l'EHESS, 2016)の訳書。「新たに発見されたレヴィ=ストロースの二つの講演を訳出」(カバー表4紹介文より)と。編者のデヴォーは序文でこう書いています。「フランス国立図書館の書庫で講演録が発見された〔…〕この講演は、人類学におけるレヴィ=ストロースの初期の歩みにかんする理解を大幅に見直すよう命じている」(8頁)。「プリミティヴィズムへの頌歌といい、文化多様性への讃辞といい、レヴィ=ストロースの理想のうちにモンテーニュが秘めやかに存在していることは、1937年の講演からも確認されるのである。/これに対し、1992年講演では、モンテーニュの姿がいっそう分かりやすく表れる」(28頁)。「〔1992年講演での〕レヴィ=ストロースの狙いは、モンテーニュが人類学的理性を数多の点で先取りしていたことを列挙するだけにとどまらなかった」(29頁)。以下に目次を列記します。


目次:
序文(エマニュエル・デヴォー)
革命的な学としての民族誌学(1937年1月29日)
モンテーニュへの回帰(1992年4月9日)
レヴィ=ストロース(1908-2009)――略歴のポイント
付論 南方の澱――レヴィ=ストロースとモンテーニュ(真島一郎)
監訳者あとがき


★佐藤康邦『絵画空間の哲学』は、三元社より1995年に刊行された単行本の文庫化。著者は2018年に逝去しており、改訂はなし。「絵画空間の哲学」「ルネッサンスの美術」「ドイツ観念論における芸術の位置」「近代日本における静養体験――岸田劉生の場合」の四部構成。文庫版解説として、美学者で東大教授の小田部胤久さんによる「西洋文化の精華を今ここで問い直す試み」が付されています。


★山内進『増補 決闘裁判』は、講談社現代新書の1冊として2000年に刊行された親本に論考「法と身体のパフォーマンス」を増補して文庫化したもの。増補された論考は「大航海」誌第53号(新書館、2005年)に発表したものを大幅に加筆修正しています。巻末には著者による「文庫版あとがき」と、一橋大学教授の松園潤一朗さんによる解説「法と力をめぐる比較法制史の面白さ」が加わっています。


★『江戸の戯作絵本(1)』は、社会思想社の現代教養文庫で刊行されていた『江戸の戯作絵本』の第1巻「初期黄表紙集」(1980年)と第2巻「全盛期黄表紙集」(1981年)を合本して再刊したもの。凡例によれば「文庫化に際しては、棚橋正博氏にご協力を仰ぎ、誤記・誤植を改め」「図版は状態のよいものに適宜改めた」。「一部底本とは別の図版を掲載したものもある」とのこと。カバー表4紹介文に曰く「江戸時代の大人の漫画「黄表紙」。〔…〕傑作として名高いアンソロジーを、図版を撮り直し、全3冊で刊行」。現代教養文庫版の第3巻「変革期黄表紙集」(1982年)、第4巻「末期黄表紙集」(1983年)、続巻一(1984年)、続巻二(1985年)も順次合本され再刊されていくものと思われます。


★宮下規久朗『日本の裸体芸術』は、『刺青とヌードの美術史――江戸から近代へ』(NHKブックス、2008年)を大幅加筆し文庫化したもの。「この文庫版では、近年のヌードと刺青にまつわる主な出来事や研究について巻末に加筆した。〔…〕本文については基本的にそのままにしたが、あちこちに手を入れ、補論〔「その後のヌードと刺青」〕を加え、図版を少し増やし、注でその後の主な研究を追加してアップデートをはかった」(文庫版あとがきより)と。巻末解説「裸体に描くから裸体を描くへ」は美術史家の木下直之さんがお書きになっています。


★甘利俊一『神経回路網の数理』は、Math&Scienceシリーズの最新刊。産業図書より1978年に刊行された単行本の文庫化。巻末特記によれば「文庫化にあたり、若干の修正を施した」とのことです。文庫版あとがきには本書について次のように書かれています。「脳の情報処理の仕組みを数理の力で解明してみたい。これが私の目指した数理脳科学であった」。「脳の仕組みをもとにもっと単純化したモデルを考え、そこで実現可能な情報の原理を少しずつ積み上げて、脳の情報原理に迫りたい」。「現実の脳に学ぶことはまだまだ多い。いずれ、我々の記憶、意識、心に迫るであろう」。本書の英語版を刊行していれば「数理脳科学と人工知能について、世界ではもう少しは違った展開があったかもしれない」とも述懐されています。


★続いて、最近出会いのあった新刊を列記します。


『吉本隆明全集33[1999-2001]』吉本隆明(著)、晶文社、2023年12月、本体6,500円、A5判変型上製484頁、ISBN978-4-7949-7133-3
『隆明だもの』ハルノ宵子(著)、晶文社、2023年12月、本体1,700円、四六判並製296頁、ISBN978-4-7949-7383-2

『イエスタデイ・ワンス・モア――カーペンターズ全業績』リチャード・カーペンター/マイク・シドーニ・レノックス/クリス・メイ(著)、森田義信(訳)、晶文社、2024年1月、本体5,400円、B5判変型上製376頁、ISBN978-4-7949-7396-2

『ジョルジュ・サンド セレクション(別巻)サンド・ハンドブック』持田明子/大野一道(編)、ミシェル・ペロー/持田明子/大野一道/宮川明子(著)、藤原書店、2023年12月、本体4,200円、四六変型判上製384頁、ISBN978-4-86578-409-1

『自治と連帯のエコノミー』ロベール・ボワイエ(著)、山田鋭夫(訳)、藤原書店、2023年12月、本体2,600円、四六判上製208頁、ISBN978-4-86578-410-7

『シモーヌ・ヴェイユ 「歓び」の思想』鈴木順子(著)、藤原書店、2023年12月、本体3,600円、四六判上製296頁、ISBN978-4-86578-408-4

『私が諸島である――カリブ海思想入門』中村達(著)、書肆侃侃房、2023年12月、本体2,300円、四六判上製344頁、ISBN978-4-86385-601-1

『現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン――大いなる探究の現在地』青土社、2023年12月、本体1,900円、A5判並製286頁、ISBN978-4-7917-1458-2



★まず晶文社さんの新刊近刊より3点。『吉本隆明全集33[1999-2001]』は、第34回配本で、講義や語り下ろし作4本をまとめたもの。「詩人・評論家・作家のための言語論」「僕なら言うぞ!」「老いの幸福論」「今に生きる親鸞」を収録。付属の月報34では、夏石番矢「吉本隆明からの示唆」と、友常勉「知の特権性を解体し、傷を修復する」を収めています。この月報での連載をもとにまとめられたのがご長女のハルノ宵子さんによる『隆明だもの』。連載のほか既出エッセイとインタヴューの計3篇を加え、さらに次女の吉本ばななさんとの語り下ろし「姉妹対談」を併録。全集の別巻とも言っていい、親しみやすい1冊です。


★『イエスタデイ・ワンス・モア』は、「リチャード・カーペンターによる、初の公式ヒストリーブック」(帯文より)。『Carpenters: The Musical Legacy』(Princeton Architectural Press, 2021)の訳書です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「カーペンターズの全曲、演奏活動、録音、証言など、あらゆるヒストリーを修正する未曽有の1冊」(カバーソデ紹介文より)。昨年はカレン・カーペンンターさんの没後40年でした。


★続いて藤原書店さんの12月新刊3点。『サンド・ハンドブック』は、『ジョルジュ・サンド セレクション』の最終配本(第10回)となる別巻。サンドのテクスト2篇「〈ルソーの精神的娘〉として」「一八四八年革命とパリ・コミューン」のほか、当セレクションの責任編集者の一人で歴史家のミシェル・ペローさんがラジオ番組で語ったものだという「自由への道――サンドとその時代」を収め、さらに主要作品紹介、サンド略年譜などで構成されています。


★ボワイエ『自治と連帯のエコノミー』は、『L'Économie sociale et solidaire : une utopie réaliste pour le XXIe siècle ?』(Les Petits matins, 2023)の全訳。原題を直訳すると「社会的連帯経済――21世紀のための現実主義的ユートピアか」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「社会連帯経済(ESS)は、経済における民主主義的原理の守護者としての、社会的紐帯を守るための主導的かつ革新的な場としての、そして政治的革新への希望としての〔…〕将来を担っているのである」(150頁)。


★鈴木順子『シモーヌ・ヴェイユ 「歓び」の思想』は、ヴェイユ歿80年記念と銘打たれた1冊。既出論考に書き下ろしを加えたもの。「対話すること」「教育すること」「愛すること、死ぬこと」「「拒食」の思想」の4章立て。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「本書を通じて、弱さや矛盾を抱え逡巡する人間らしいヴェイユに出会い、ヴェイユ像を新たにしていただけたらと思う。〔…〕笑顔のヴェイユ、歓びに満ちて生き、去ったヴェイユを描き出したい」(はじめに、11頁)。


★書肆侃侃房さんの新刊1点。『私が諸島である』は、千葉工業大学助教で、英語圏を中心としたカリブ海文学・思想がご専門の中村達(なかむら・とおる, 1987-)さんの初の単独著。「web侃づめ」での連載(全12回、2022年6月~2023年5月)に加筆修正し、書き下ろしを増補したもの。「日本には、まだカリブ海の思想を紹介する本は少ない。本書がその不足を補いながら、同時に「現代思想」の複数性を照らし出すものとなることを願う。私はこれから、カリブ海思想という知の総体をひとつのスタンダードとして紹介する。欧米の知の形とはまた違った知の形を巡る冒険の季節の訪れを、読者のみなさんに感じいただきたい」(序章、12頁)。


★『現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン』は、版元紹介文に曰く「現代を生きる私たちが思考する自由を取り戻し、世界を新たに再編する手がかりともなりうるものとして、ビッグ・クエスチョンを捉えなおす」と。「この現実が夢でないとはなぜいえないのか?」(永井均)から「戦争のない世界は可能か?」(三牧聖子)まで、28人が寄稿しています。今号からの新連載は、山口尚さんによる「現代日本哲学史試論」。今月末発売となる次号(2月号)の特集は「パレスチナから問う――100年の暴力を考える」と予告されています。

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