ある版元営業マンから聞いた話です。
某書店から版元に転職した女性が、古巣に子供を連れて久しぶりに挨拶にいった時のこと。彼女が店員さんとつかの間の談笑をしている際、お子さんはキッズコーナーで独り静かに絵本を品定めしていました。突然その子が悲鳴を上げたので二人して驚いて振り返ると、子供は立ちあがって、泣きながら母親に駆け寄ってきました。その様子を店長が見ていたらしく、彼は真顔で「もう今日はこの辺で」と二人に告げました。女性は子供を連れて辞去しました。店長は店員さんが休憩を取ったタイミングで声を掛けたそうです。「うちのキッズコーナー、もうなくした方がいいのかも。子どもにちょっかい出すのがいるみたい。君は見たことないか」。店員さんがそんな不審人物は知らないと動揺していると、店長はこう続けました。「さっき来た彼女はここで働いていた時に見たことがあるらしい。俺も実は見たことがある。子供の髪の毛を引っ張るんだよ。姿は見えないけど、髪の毛だけが上の方にぐいっと」。店員さんはこの時初めて、店長がキッズコーナーをよく心配そうに見ている理由が分かって、鳥肌が立ったそうです。
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【「営業夜話」はフィクションです。実在の店舗や会社、人物、事件に似ていることがあるかもしれませんが、それはあくまでも偶然でしょう。】
営業夜話(2022年全5話)・・・「おーい」「僕のです」「センサーライト」「キッズコーナー」「館内放送」
営業夜話(2019年全5話)・・・「閉店後」「ドミノ」「パートワーク」「ショタレ本」「コレクター」
某書店から版元に転職した女性が、古巣に子供を連れて久しぶりに挨拶にいった時のこと。彼女が店員さんとつかの間の談笑をしている際、お子さんはキッズコーナーで独り静かに絵本を品定めしていました。突然その子が悲鳴を上げたので二人して驚いて振り返ると、子供は立ちあがって、泣きながら母親に駆け寄ってきました。その様子を店長が見ていたらしく、彼は真顔で「もう今日はこの辺で」と二人に告げました。女性は子供を連れて辞去しました。店長は店員さんが休憩を取ったタイミングで声を掛けたそうです。「うちのキッズコーナー、もうなくした方がいいのかも。子どもにちょっかい出すのがいるみたい。君は見たことないか」。店員さんがそんな不審人物は知らないと動揺していると、店長はこう続けました。「さっき来た彼女はここで働いていた時に見たことがあるらしい。俺も実は見たことがある。子供の髪の毛を引っ張るんだよ。姿は見えないけど、髪の毛だけが上の方にぐいっと」。店員さんはこの時初めて、店長がキッズコーナーをよく心配そうに見ている理由が分かって、鳥肌が立ったそうです。
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【「営業夜話」はフィクションです。実在の店舗や会社、人物、事件に似ていることがあるかもしれませんが、それはあくまでも偶然でしょう。】
営業夜話(2022年全5話)・・・「おーい」「僕のです」「センサーライト」「キッズコーナー」「館内放送」
営業夜話(2019年全5話)・・・「閉店後」「ドミノ」「パートワーク」「ショタレ本」「コレクター」