ある書店員さんに聞いた話です。
私が働いているマチナカ書店に「ボクノ」さんと呼ばれるちょっと困ったお客さんがいました。売場で商品の入れ替え作業をしている店員が手にしている本を「僕のです」もしくは「僕の本です」と言って買っていくんです。「僕のです」ってどういう意味だろうと思うものの、買いたいという意思表示だと思って本を渡します。その人は本を棚からは取らず、必ず店員が手にしているものを買います。返品のために抜いていく本も買っていかれるので、変わったお客だけれども必ず週に何冊かは買って下さる常連ではあったのです。その「ボクノ」さんがある時、別の常連客が手にした本を「僕の本です」と言い出して、トラブルになりました。そのお客さんは「ボクノ」さんの行為を幾度か目撃していて、毎回不快に思っていたらしく、店長が間に立ったものの、かなり揉めました。「ボクノ」さんは終始「僕の本、僕の」と騒いでいて、店長がついに「もう来ないで下さい」と店から追い出しました。その後、来店はなくなったのですが、しばらくの間、営業時間中に「ボクノ」さんから電話が掛かってくることがありました。相変わらず「僕のです、僕、僕の」と繰り返すので、店員は皆すっかり精神的に参っていました。今はもう電話は掛かってきません。でも店長だけは電話のベルにずっと敏感なままで、気の毒です。
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【「営業夜話」はフィクションです。実在の店舗や会社、人物、事件に似ていることがあるかもしれませんが、それはあくまでも偶然でしょう。】
営業夜話(2022年全5話)・・・「おーい」「僕のです」「センサーライト」「キッズコーナー」「館内放送」
営業夜話(2019年全5話)・・・「閉店後」「ドミノ」「パートワーク」「ショタレ本」「コレクター」
私が働いているマチナカ書店に「ボクノ」さんと呼ばれるちょっと困ったお客さんがいました。売場で商品の入れ替え作業をしている店員が手にしている本を「僕のです」もしくは「僕の本です」と言って買っていくんです。「僕のです」ってどういう意味だろうと思うものの、買いたいという意思表示だと思って本を渡します。その人は本を棚からは取らず、必ず店員が手にしているものを買います。返品のために抜いていく本も買っていかれるので、変わったお客だけれども必ず週に何冊かは買って下さる常連ではあったのです。その「ボクノ」さんがある時、別の常連客が手にした本を「僕の本です」と言い出して、トラブルになりました。そのお客さんは「ボクノ」さんの行為を幾度か目撃していて、毎回不快に思っていたらしく、店長が間に立ったものの、かなり揉めました。「ボクノ」さんは終始「僕の本、僕の」と騒いでいて、店長がついに「もう来ないで下さい」と店から追い出しました。その後、来店はなくなったのですが、しばらくの間、営業時間中に「ボクノ」さんから電話が掛かってくることがありました。相変わらず「僕のです、僕、僕の」と繰り返すので、店員は皆すっかり精神的に参っていました。今はもう電話は掛かってきません。でも店長だけは電話のベルにずっと敏感なままで、気の毒です。
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【「営業夜話」はフィクションです。実在の店舗や会社、人物、事件に似ていることがあるかもしれませんが、それはあくまでも偶然でしょう。】
営業夜話(2022年全5話)・・・「おーい」「僕のです」「センサーライト」「キッズコーナー」「館内放送」
営業夜話(2019年全5話)・・・「閉店後」「ドミノ」「パートワーク」「ショタレ本」「コレクター」