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月曜社2019年3月末新刊:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』

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月曜社新刊案内【芸術/批評】2019年3月25日取次搬入予定


視覚的無意識
ロザリンド・E・クラウス著
谷川渥/小西信之訳
月曜社 2019年3月 本体4,500円
46判[天地195mm×左右135mm×束31mm]上製528頁
ISBN:978-4-86503-073-0 C0070 重量:640g


アマゾン・ジャパンにて予約受付中


モダニズムの眼が抑圧している欲望とはなにか? エルンスト、デュシャン、ジャコメッティ、ベルメール、ピカソ、ポロックらの作品のなかに近代の視を土台から蝕むものたち(「肉体的なもの」、「不定形」、「脈動」、「低さ」、「水平性」、「重力」、「痕跡」……)を、フロイト、ラカン、バタイユらの理論を援用しながら見出す試み。モダニズムの中核をなす「視覚性」概念を、主体の精神分析を採り入れつつ批判的に分析する、現代最重要の美術批評家の主著(1993年)、待望の日本語全訳。


目次:
謝辞
one
two
twoマイナスone
two再び
three
four
five
six
six再び
訳者あとがき(谷川渥)
訳者あとがき+(小西信之)
図版一覧
参考文献一覧
索引


ロザリンド・E・クラウス(Rosalind E. Krauss)1940年生。コロンビア大学教授。美術史・美術批評。著作に1985年『オリジナリティと反復』(リブロポート、1994年)、1993年『視覚的無意識』(本書)、1997年『アンフォルム――無形なるものの事典』(イヴ=アラン・ボワとの共著、月曜社、2011年)、1998年『ピカソ論』(青土社、2000年)、1999年『独身者たち』(平凡社、2018年)など。


谷川渥(たにがわ・あつし)1948年生。美学者。東京大学大学院博士課程修了。文学博士。著書に、『鏡と皮膚――芸術のミュトロギア』(ちくま学芸文庫、2001年)、『シュルレアリスムのアメリカ』(みすず書房、2009年)、『新編 芸術をめぐる言葉』(美術出版社、2012年)、『肉体の迷宮』(ちくま学芸文庫、2013年)、『芸術表層論』(論創社、2017年)など。


小西信之(こにし・のぶゆき)1960年生。美術評論。東京藝術大学大学院美術研究科修了。愛知県立芸術大学教授。共著に、藤枝晃雄/谷川渥編著『芸術論の現在』(東信堂、1999年)、多木浩二/藤枝晃雄監修『日本近現代美術史事典』(東京書籍、2007年)など。


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月曜社2月下旬発売済新刊:『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』

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月曜社2月下旬発売済新刊【現代アート】


毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする
十和田市現代美術館編
月曜社 2019年2月 本体2,200円
A5判(縦210mm×横148mm×束13mm)上製140頁(図版4色32頁、論考及資料108頁) ISBN:978-4-86503-071-6 C0070 340g


[寄稿]エマ・ラヴィーニュ(ポンピドゥ・センター)/畠中実(NTTインターコミュニケーションセンター)/小池一子(十和田市現代美術館)/金澤韻(十和田市現代美術館)
[造本]佐々木暁

レコードをスクラッチするレヴェルの小さな摩擦からも、革命は起こっている――。現代美術の旗手、作家本人へのロング・インタビューを含む初の作品集。十和田市現代美術館展覧会(18年10月27日~19年3月24日)公式図録。


「デュシャン的観者は、毛利悠子の作品を前にしてひとりの見物人となり、世界が示す「濁ってあることの豊かさ」に、立ち会いかつ参与する」(エマ・ラヴィーニュ、ポンピドゥ・センター現代美術担当キュレーター/本文より)


毛利悠子(もうり・ゆうこ)1980年生まれ。美術家。磁力や重力、光など、目に見えず触れられない力をセンシングするインスタレーションを制作。2015年、アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のグランティとして渡米。英国カムデン・アーツ・センターでの個展「Voluta」のほか、「アジア・パシフィック・トライアニュアル2018」(オーストラリア)、「リヨン・ビエンナーレ2017」(フランス)、「コーチ=ムジリス・ビエンナーレ2016」(インド)、「ヨコハマトリエンナーレ2014」など国内外の展覧会に多数参加。2015年に日産アートアワードグランプリ、2016年に神奈川文化賞未来賞、2017年に第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。


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★扱い書店(◎印は在庫が潤沢にあるお店です)


◆北海道札幌市中央区
MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店


◆青森県八戸市
八戸ブックセンター


◆宮城県仙台市青葉区
カネイリミュージアムショップ6


◆東京都千代田区
丸善丸の内本店
東京堂書店神田神保町店


◆東京都中央区
銀座蔦屋書店 ◎


◆東京都渋谷区
代官山蔦屋書店
青山ブックセンター本店


◆東京都新宿区
紀伊國屋書店新宿本店
ブックファースト新宿店


◆東京都豊島区
ジュンク堂書店池袋本店


◆東京都国分寺市
BOOKS隆文堂


◆京都府京都市左京区
京都岡崎蔦屋書店


◆大阪府大阪市北区
梅田蔦屋書店


◆主要通販
アマゾン・ジャパン
honto


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ブックツリー「哲学読書室」に早尾貴紀さんの選書リストが追加されました

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オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、エラ・ショハットさんとロバート・スタムさんの共著『支配と抵抗の映像文化――西洋中心主義と他者を考える』(法政大学出版局、2019年1月)の監訳者、早尾貴紀さんによるコメント付き選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる」
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!」
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想」
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている」
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために」
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える」
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?」
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す」
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について」
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置」
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも」
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む」
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在」
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流」
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ」
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書」
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する」
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ」
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!」
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき」
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える」
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために」
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流」
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える」
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る」

27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う」
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する」

29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体」

30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く」
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊」
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために」
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊」
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊」
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。」
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊」
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち」
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊」
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?」
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか」
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化」


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注目新刊:ヒロ・ヒライ監修『ルネサンス・バロックのブックガイド』、イエイツ『薔薇十字の覚醒』新装版

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弊社出版物の著者さんの最近のご活躍をご紹介します。


★ヒロ・ヒライさん(編著:『ミクロコスモス――初期近代精神史研究 第一集』)
工作舎さんより発売された充実のブックガイド『ルネサンス・バロックのブックガイド――印刷革命から魔術・錬金術までの知のコスモス』で、監修及び執筆を担当されています。目次詳細はこちらをご覧ください。同書の刊行はクラウドファンディングを活用され、目標金額30万円のところ、298名の支援者から総額224万9千円が集まったとのことで、出版プロジェクトとしても注目に値します。


ルネサンス・バロックのブックガイド――印刷革命から魔術・錬金術までの知のコスモス
ヒロ・ヒライ監修
工作舎 2019年2月 本体2800円 A5判並製280頁 ISBN978-4-87502-503-0
帯文より:占星術、錬金術、魔術、イコノロジー、記憶術、博物学、驚異の部屋、印刷術、キリシタン、澁澤龍彦……。ヘルメスの図書館につどう50名をこえる執筆者が150冊余を紹介。想像力の百花繚乱。


本書の刊行を記念し、2019年03月09日(土)19:30よりヒロ・ヒライさんと山本貴光さんのお二人によるトークイベント「印刷革命から魔術・錬金術までの知のコスモス」がジュンク堂書店池袋本店4F喫茶スペースにて行なわれる予定です。すでに予約満席御礼とのこと。



また、工作舎さんではブックガイドと同時期に、イエイツの名著『薔薇十字の覚醒――隠されたヨーロッパ精神史』の新装版を刊行されました。ヒロ・ヒライさんの推薦文が帯に印刷されています。主要目次はこちらをご参照ください。



薔薇十字の覚醒――隠されたヨーロッパ精神史 新装版
フランセス・イエイツ著 山下知夫訳
工作舎 2019年2月(初版1986年7月) 本体5000円 A5判上製444頁+図版32頁 ISBN978-4-87502-504-7
帯文より:「魔術〔マギア〕とカバラと錬金術〔アルキミア〕」は、「科学革命」を生んだのか? 知的興奮あふれる衝撃作、ここに復活!」(ヒロ・ヒライ)。
カバーソデ紹介文より:17世紀、新・旧教諸国間の抗争が絶えないヨーロッパに突如とどろきわたった「薔薇十字宣言」。それは「魔術〔マギア〕とカバラと錬金術〔アルキミア〕」を原動力に、独自のユートピアに基づく新時代の幕開けを告げていた。その背後に潜むのは知識の秘密結社、薔薇十字友愛団。彼らの「見えない革命」は、ルネサンスと科学革命の時代をつなぐ、隠されたヨーロッパ精神史を形づくる……。


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注目新刊:バエス『書物の破壊の世界史』紀伊國屋書店、ほか

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『ゆるく考える』東浩紀著、河出書房新社、2019年2月、本体1,800円、46判並製336頁、ISBN978-4-309-02744-9
『あたかも壊れた世界――批評的、リアリズム的』小泉義之著、青土社、2019年2月、本体2,000円、四六判並製232頁、ISBN978-4-7917-7146-2
『世界史の実験』柄谷行人著、岩波新書、2019年2月、本体780円、新書判並製224頁、ISBN978-4-00-431762-3
『吸血鬼百科 復刻版』佐藤有文著、復刊ドットコム、2019年2月、本体3,900円、B6判上製192頁、ISBN978-4-8354-5651-5



★『ゆるく考える』は2008年から2018年にかけて発表された文章のうち、「比較的時評性が低く、文学性が高いものを抜粋して編まれたエッセイ集」(あとがきより)。第i章は2018年1月から6月まで「日本経済新聞」夕刊「プロムナード」欄に掲載されたコラムをまとめたもの。続く第ii章は「文學界」2008年8月号から2010年4月号まで全20回掲載された連載評論「なんとなく、考える」をまとめたもの。「なんとなく、考える」は「じつは最初は「ゆるく考える」というシリーズタイトルを提案していた」(326頁)とのことです。「友と敵の境界をクリアに引かず、「ゆるく」考えることは、最近のぼくにとって大きな課題になっている」(同)。「ゼロ年代はじつに甘い時代だった。まだみながネットの力を信じることができ、若い世代が日本を変えると信じることができた時代だった。第二章には、そんな時代のぼくが見た夢が記録されている」(327頁)。


★第iii章は、2010年から2018年にかけて主に「新潮」誌で掲載されたものなどから9篇。一番新しいのは「新潮」2019年1月号(2018年12月発売)に掲載された「悪と記念碑の問題」です。「このエッセイ集は、いわば〔…〕、長い思考錯誤の末、ようやく批評家として「やるべきこと」を発見した、その過程の文章を集めたものだと言える」(329頁)。本書に続く東さんの新刊はまもなく一般発売開始となる、石田英敬さんとの対談本『新記号論――脳とメディアが出会うとき』。昨秋刊行された小松理虔さんの『新復興論』に続く「ゲンロン叢書」第2弾です。


★『あたかも壊れた世界』は「初の批評集」(帯文より)。コミック、映画、小説、ラノベなどを考察対象に、2004年から2018年にかけて各媒体で発表されてきた作品論14篇を収録し、「身体的」「精神的」「社会的」の3部に振り分けています。巻頭に書き下ろしの「はじめに」が置かれています。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「作品を読むこと、作品を見ることは、わたしからするなら、鑑賞・受容・消費であるというよりは、経験の一部である。〔…〕作品における愛の経験と現実における愛の経験は、本質的に異なってはいない。ともにリアルである。そして、そのような経験を可能にするものとして作品を読解することが、作品論の基本中の基本であると思う」(11頁)。「作品の経験は、愛なる概念の経験になる。〔…〕私は、批評は、少なくともその出発点においては概念実在論(概念リアリズム)に立たざるをえないと考える」(15頁)。


★「およそこの二十年ほど、種々のアプローチが後退して流行してきたあいだに、作品に内在する批評が軽侮されるだけでなく、かつてのリアリズム論争の諸論点がすっかり忘れ去られて、リアリズムに関連する諸概念が一方的に安直に否定されてきたことにあらためて気づかされた」(16頁)。「結局のところ、作品のリアリティ、作品の経験、現実の経験を見る目が失われてきたのである」(20頁)。コミック作品をしばしば取り上げている本書は、そっとコミック売場に紛れ込ませて人文書の読者とは別の読者との出会いを果たすべき運命にあると思われます。


★『世界史の実験』はあとがきから推察するに、岩波書店の月刊誌「図書」での連載エッセイ「思想の散策」(全20回、2015年9月「思うわ、ゆえに、あるわ」~2017年4月「柳田と国学」)と、ジュンク堂書店池袋本店での「柄谷行人書店」に連動して行われた連続講演「歴史と実験」(2018年8月25日、10月27日)をもとに、加筆修正されたもののようです。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。「私は『世界史の構造』〔岩波書店、2010年;岩波現代文庫、2015年〕で論じた諸問題が回帰してくるのを感じた。だから、私はこの本を『世界史の実験』と呼ぶことにしたのである」(あとがき、199頁)とあります。阪神淡路大震災のあと、そして東日本大震災のあと、柄谷さんは柳田国男の「先祖の話」(角川ソフィア文庫、2013年)を再読してきたといいます。「そこ〔『世界史の構造』〕で確立した観点から、柳田の考えたことを見直すようになった」(12頁)と。また、本書第二部「山人から見る世界史」は『遊動論――柳田国男と山人』(文春新書、2014年)の考察を引き継いでいます。『世界史の実験』の刊行を機に、「週刊読書人」では柄谷さんのロングインタヴュー「普遍的な世界史の構造を解明するために」が公開されています。



★『吸血鬼百科 復刻版』は、講談社「ドラゴンブックス」全11巻(1974~1975年)の第1巻(1974年刊)の復刻。復刊ドットコムではこれに先行して第4巻『悪魔全書 復刻版』が2018年11月に復刻されています。これまで復刊ドットコムでは立風書房「ジャガーバックス」(1972~1983年頃)や、学研「ジュニアチャンピオンコース」(1971~1980年頃)などから人気タイトルを復刻してきましたが、「ドラゴンブックス」の『悪魔全書』と『吸血鬼百科』はとりわけダークな内容。私は初版刊行当時この2点には出会っていませんでしたが、たとえ出会っていたとしても怖くて頁をめくれなかったことでしょう。そこそこキツいのです。これが児童書だったとは。復刊ドットコムさんには今後も3シリーズからの復刻を継続してほしいです。


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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。


『書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで』フェルナンド・バエス著、八重樫克彦/八重樫由貴子訳、紀伊國屋書店、2019年3月、本体3,500円、B6判上製739頁、ISBN978-4-314-01166-2
『宇宙の果てまで離れていても、つながっている――量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』ジョージ・マッサー著、吉田三知世訳、インターシフト発行、合同出版発売、2019年3月、本体2,300円、四六判並製352頁、ISBN978-4-7726-9563-3
『イスラーム神学古典選集』松山洋平編訳、作品社、2019年2月、本体4,800円、A5判上製336頁、ISBN978-4-86182-736-5
『ドゥルーズ『差異と反復』を読む』森田裕之著、作品社、2019年2月、本体2,200円、46判並製176頁、ISBN978-4-86182-735-8
『ロシア構成主義――生活と造形の組織学』河村彩著、共和国、2019年2月、本体3,200円、菊変型判並製304頁、ISBN978-4-907986-43-8
『ハバナ零年』カルラ・スアレス著、久野量一訳、共和国、2019年2月、本体2,700円、菊変型判並製280頁、ISBN978-4-907986-53-7
『現代思想 2019年3月号 特集=引退・卒業・定年』青土社、2019年2月、本体1,400円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1378-3



★『書物の破壊の世界史』はベネズエラの作家で過去にベネズエラ国立図書館館長も務めたことがあるバエス(Fernando Báez, 1970-)の高名な著書『Nueva historia universal de la destrucción de libros』(Océano, 2013)の訳書。2004年に刊行された原著初版に大幅加筆し、新たに図版を加えた増補改訂版が底本です。主要目次は例えば版元ドットコムでの単品頁をご覧ください。「本書のタイトルを“書物の破壊の〈歴史〉”ではなく“書物の破壊の〈世界史〉”としたのは、世界中で起こっている身近な問題として捉えてほしかったからだ」(18頁)と著者は書きます。「五〇世紀以上も前から書物は破壊され続けているが、その原因のほとんどは知られていない。本や図書館に関する専門書は数あれど、それらの破壊の歴史を綴った書物は存在しない。何とも不可解な欠如ではないか?」(25頁)。



★「書物の破壊は、公的機関によるものでも個人によるものでも、必ずといっていいほど、規制、排斥、検閲、略奪、破壊という暗澹たる段階を経る」(33頁)。「書物を焼いたり図書館を空爆したりするのは、それらが敵対する側のシンボルだからだ」(同)。「ビブリオコースト(書物の破壊を端的に表現する新語、“書物の大量虐殺”の意)とは、何らかの理由で優越性を持つ一方の記憶にとって、直接あるいは間接的な脅威となる記憶を抹殺することだ」(34頁)。著者は第5章「大災害の世紀」で、日中戦争における教育施設の破壊についても触れています。「日中戦争前の1936年に4041あった図書館のうち、少なくとも2500が破壊されている。さらに92の高等教育施設が全壊。戦争中に失われた本の総数は、約300万冊に上るといわれる」(507頁)。書物は戦争や検閲、さらには不注意による廃棄や営利目的による分解ばら売りなど様々な人為的破壊にさらされてきただけでなく、天災や材料の劣化や虫害等々によっても失われていきます。本書は特に人間の暗部を如実に描出しており、その闇が今なお息づいていることを教えてくれます。未来への警告の書でもあるわけです。


★『宇宙の果てまで離れていても、つながっている』は『Spooky Action at a Distance: The Phenomenon That Reimagines Space and Time - and What It Means for Black Holes, the Big Bang, and Theories of Everything』(Scientific Americans, 2015)の訳書です。目次詳細と巻頭の「はじめに: あらゆる謎の根源」が書名のリンク先でご覧いただけます。「量子力学をはじめとする物理学の各分野では、場所も距離も、より深いレベルでは存在しないかもしれないという説が提案されているのだ。物理学の実験では、2つの粒子の運命を結びつけて、一対の魔法ののコインのように振る舞わせることができる――投げれば当然、それぞれ表か裏かを上にして落ちるのだが、なんとびっくり、常に2枚が同じ面を上にして落ちる、そんな魔法のコインのように。それらの粒子は、あいだに横たわる空間を伝わる力など一切存在しないにもかかわらず、協調して振る舞う。これらの2個の粒子は、それぞれ宇宙の反対側に飛んで行って離れ離れになったとしても、やはり一致した振る舞いをする。つまり、これらの粒子は局所性をやぶっている。要するに、空間を超越しているのだ」(7頁)。


★「どうやら自然は、奇妙であると同時に微妙なバランスを保っているらしい。たいていの場面では、自然は局所性〔ローカリティ〕に従っている――なにしろ、自然には局所性に従ってもらわないと、私たちは存在できないのだから――が、その一方で、自然はその基盤においては非局所的なのだという、かすかな証拠があちこちで見え始めている。本書では、この緊張した状況を詳しく紹介していきたい。/非局所性〔ノンローカリティ〕は、それを研究する者にとっては、物理学のあらゆる謎の根源であり、今日物理学者が直面するさまざまな謎――量子論的粒子の奇妙さのみならず、ブラックホールの運命、宇宙の起源、そして自然の本質的統一までも――の核心に関わるものなのである」(7~8頁)。なお、本書の一部は、昨秋発売された「別冊日経サイエンス」の『量子宇宙――ホーキングから最新理論まで』にも掲載されています。著者のマッサー(George Musser, 1965-)は科学ジャーナリストで、『サイエンティフィック・アメリカン』誌の寄稿編集者。本書が初めての訳書となります。



★『イスラーム神学古典選集』は版元紹介文に曰く「現存するイスラームの三大宗派、スンナ派(アシュアリー学派、マートゥリーディー学派、ハンバリー学派)、シーア派(一二イマーム派、イスマーイール派、ザイド派)、イバード派の読みやすい古典テクストを選書、この一冊から読めるイスラーム概論を付し、各テクストを丁寧に解説」と。巻頭の「はじめに」によれば「本書では、特定のテーマに特化するのではなく、イスラーム教の信条全体、またはその基礎的な部分を論じたテクストを中心に翻訳の対象とした」(5頁)とのこと。目次は以下の通りです。


はじめに
序章
 コラム(1)信仰告白「シャハーダ」
 コラム(2)啓典クルアーン
 コラム(3)預言者と使徒
 コラム(4)イスラーム法学
 コラム(5)アリーと「教友」の間の確執・対立
第一章 イージー『信条』|スンナ派(アシュアリー学派)
第二章 サヌースィー『証明の母』|同上
第三章 アブー・ハニーファ『訓戒』|スンナ派(マートゥリーディー学派)
第四章 イブン・カマール・パシャ『一二の問題におけるアシュアリー学派とマートゥリーディー学派の相違』|同上
第五章 アブー・ヤアラー『信条』|スンナ派(ハンバリー学派)
第六章 イブン・クダーマ『比喩的解釈の咎』|思弁神学の是非を巡る対立:ハンバリー学派
第七章 アシュアリー『思弁神学に従事することの正当化』|思弁神学の是非を巡る対立:アシュアリー学派
第八章 ヒッリー『第一一の門』|シーア派(一二イマーム派)
第九章 アリー・イブン・アル=ワリード『諸信条の王冠』抄訳|シーア派(イスマーイール派〔タイイブ派〕)
第一〇章 ラッサース『提要』|シーア派(ザイド派)
第一一章 サーリミー『子供への教授』第一部|イバード派
付録 礼拝の作法
補記と謝辞
索引


★『ドゥルーズ『差異と反復』を読む』は大谷大学教授で教育哲学がご専門の森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さんによる、『ドゥルーズ=ガタリのシステム論と教育学――発達・生成・再生』(学術出版会、2012年)、『贈与-生成変化の人間変容論――ドゥルーズ=ガタリと教育学の超克』(青山社、2015年)に続く単独著第三弾。ドゥルーズの主著である「『差異と反復』の理論をできるかぎり図式的かつ体系的に描き出すことを目指した」(11頁)、ドゥルーズ思想入門です。目次は以下の通り。


はじめに
第一章 先験的経験論の方法と主題
 1 先験的経験論の方法
 2 先験的経験論の主題
第二章 強度による理念の個体化論
 1 強度による理念の個体化論に向けて
 2 強度による理念の個体化論
第三章 理念の差異化=微分化論と理念の異化=分化論
 1 理念の差異化=微分化論
 2 理念の異化=分化論
第四章 個体化-ドラマ化-差異化/異化=微分化/分化としての先験的経験論
 1 先験的経験論の理論的な位置づけ
 2 先験的経験論の理論的展開
補論
 1 思考という能力の超越論的な行使の捉え直し
 2 理念の差異化=微分化の捉え直し
ドゥルーズの著作
あとがき


★『ロシア構成主義』は『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』(水声社、2014年)に続く河村さんの単独著第二弾となる書き下ろし。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「問題の根本は、東西対立の終焉とともに二十世紀の夢そのものが失われたことにある。二十世紀の大衆社会は、西側も東側も結局すべての人に物質的に豊かな生活を等しく供給することができなかったばかりか、もはや今となってはそれを目指す努力すら放棄されてしまった」(13頁)。「本書は構成主義の残骸を拾い集め、初期ソヴィエトで構想された、近代の夢の一つのヴァリアントを復元する試みである。残骸が「星座の布置」を描いて輝きを放つならば、それは暗い夜道のような二十一世紀を照らす、ささやかな道しるべとなるだろう」(14頁)。なお本書の、カバーと帯が斜めにカットされているのは初版のみの仕様とのことです。奥付発行日にも驚くべき仕掛けが刻まれていますが、これもまた初版のみの〈不可能な日付〉かもしれません。


★『ハバナ零年』は共和国さんの叢書「世界浪漫派」の一冊。ハバナ出身の作家カルラ・スアレス(Karla Suárez, 1969-)さんの本邦初訳となる小説です。原書は『Habana año cero』(Ediciones Unión, 2016)。ポルトガル語版が2011年、フランス語版が2012年に刊行されており、同2012年にカルベ・ド・ラ・カリブ文学賞と フランス語圏島嶼文学賞を受賞しています。「数学とミステリーの要素を巧みに織り込んで挑んだ代表作」だと謳う帯文によれば、本書のあらすじは以下の通り。「1993年、深刻な経済危機下のキューバ。数学教師のジュリアは、ハバナで初めて電話が発明されたことを証明する、イタリア人発明家メウッチの重要な自筆文書の存在を知る。その文書をめぐって、作家、ジャーナリスト、そして元恋人までが虚々実々の駆け引きと恋を展開するが……」。なお、メウッチ(Antonio Meucci, 1808-1889)は実在の発明家です。



★『現代思想 2019年3月号 特集=引退・卒業・定年』は樫田祐一郎編集長体制になってから2つ目の通常号。巻頭の山田ルイ53世さんと武田砂鉄さんの対談「理にかなわない生存――芸人×ライターの続け方」は議論の緩やかな勾配が見事。同誌の新たな地平を見る思いがします。トップスピードでハイレベルな議論が交わされる硬派な対談や鼎談もいいですが、一見世間話のようで特集内容への入口となるようなこうした良い意味での「雑談」を意識的に組み込んでおくことが、どんな特集内容であれますます重要になってくるように思われました。


★竹熊健太郎さんへのインタヴュー「フリーランスに「引退」はあるのか――漫画家・編集家・ライターの未来」では、出版社所属の編集者から仲介エージェントに変わる「生き残り戦略」をめぐるヒントを得られる箇所があります。「僕自身は、作品をつくる上で、プロデューサーがいたほうがいいと思っています。自己プロデュースができる作家はまれにいて、そういった人に編集者は正直必要ないのですが、僕が出会った限りでは生活していけるレベルまで世間に売り込めるほどの自己プロデュースができる人はなかなかいないですよ。創作とプロデュースは本来両立しません。どんなに自分でKindle版で発売しても全然結果がついてこない」(70頁)。さらに考えるなら、プロデューサーやエージェントが資金を引っ張ってくるのが出版社からではなくなる時代がもう到来しているのかもしれない、とも感じました。


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取次搬入日決定:筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究』

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a0018105_18430888.jpg弊社3月新刊、筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究――その作品における形象と装飾性』の取次搬入日をお知らせします。日販と大阪屋栗田へ本日3月5日搬入いたしました。トーハンには明日3月6日搬入します。書店さんの店頭に並び始めるのは、今週末以降、順次の予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

ブックツリー「哲学読書室」に門林岳史さんの選書リストが追加されました

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オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ロージ・ブライドッティさんの『ポストヒューマン――新しい人文学に向けて』(フィルムアート社、2019年2月)の監訳者、門林岳史さんによるコメント付き選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる」
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!」
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想」
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている」
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために」
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える」
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?」
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す」
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について」
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置」
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも」
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む」
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在」
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流」
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ」
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書」
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する」
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ」
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!」
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき」
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える」
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために」
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流」
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える」
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る」

27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う」
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する」

29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体」

30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く」
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊」
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために」
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊」
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊」
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。」
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊」
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち」
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊」
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?」
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか」
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化」
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知」


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新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

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2019年3月10日(日)開店予定
本屋イトマイ:25坪(BOOK:10坪)
東京都板橋区常盤台1-2-5 町田ビル 2F
トーハン帳合。芸術書読み物をご発注いただきました。東武東上線「ときわ台」駅北口のロータリーを抜けてすぐ、松屋の入居しているビルの2Fにブックカフェとして新規開店。かつては焼肉屋のあった場所です。取次さんの情報によれば、下北沢のB&Bで働いたことがある方がおやりになるのだとか。板橋区は個人書店が減少し続けているので、どんなお店になるのか非常に楽しみです。


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2019年3月16日(土)開店予定
大垣書店京都本店:350坪(BOOK:320坪、文具雑貨30坪)
京都府京都市下京区四条室町東入函谷鉾町78番地 京都経済センター SUINA室町 1F


トーハン帳合。弊社へのご発注は芸術書主要商品。京都市営地下鉄烏丸線「四条」駅の駅前であり、阪急京都線「烏丸駅」26番出口直結の複合ビル「SUINA室町」の1階に新規開店。大垣書店代表取締役の大垣守弘さんのお名前がある挨拶状によれば「店舗コンセプトは「旬の京都」。「観光」「伝統」「作法」「建物」「祭り」「料理」など、京都への興味、憧れを深みのある選書やイベントで演出し、国内外の方々に京都の魅力を発信していきます。また、経営書、経済書を充実させ、京都の経済の中心地にそぐわしい書籍を揃えます」とのことです。同チェーンのウェブサイトに「開店のお知らせ」が出ています。駅周辺には烏丸通を挟んで四条烏丸FTスクエアーの地下1階に「くまざわ書店四条烏丸店」があり、四条通を挟んだ反対側の京都御幸ビルの2階には「大垣書店四条店」があります。


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注目新刊:人文系新雑誌『たぐい』が亜紀書房より創刊、ほか

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『中世思想原典集成 精選3 ラテン中世の興隆1』上智大学中世思想研究所編訳/監修、平凡社ライブラリー、2019年3月、本体2,400円、B6変判並製632頁、ISBN978-4-582-76879-4
『天皇陛下にささぐる言葉』坂口安吾著、景文館書店、2019年3月、本体200円、四六判変形並製中綴じ32頁、ISBN978-4-907105-08-2
『たぐい vol.1』奥野克巳/シンジルト/近藤祉秋編、亜紀書房、2019年3月、本体1,400円、A5判並製164頁、ISBN978-4-7505-1579-3
『ドゥルーズとマルクス――近傍のコミュニズム』松本潤一郎著、みすず書房、2019年2月、本体2,700円、四六判上製288頁、ISBN978-4-622-08787-8



★『中世思想原典集成 精選3』は親本の第6巻「カロリング・ルネサンス」、第7巻「前期スコラ学」、第10巻「修道院神学」から9篇を収録。巻頭の解説は佐藤直子さん、巻末エッセイ「「信」の領域に踏み込む」は柳澤田実さんによるもの。収録作は以下の通りです。


書簡集|カール大帝
ペリフュセオン(自然について)|ヨハネス・エリウゲナ
書簡117――聖なる純朴について|ペトルス・ダミアニ
プロスロギオン|カンタベリーのアンセルムス
シャルトルーズ修道院慣習律|グイゴ
愛の本性と尊厳について|サン=ティエリのギヨーム
恩恵と自由意志について|クレルヴォーのベルナルドゥス
書簡集|ペトルス・ウェネラビリス
魂のついての書簡|イサアク・デ・ステラ


★『天皇陛下にささぐる言葉』は坂口安吾のエッセイ4篇を収録。「天皇陛下にささぐる言葉」1948年、「堕落論[初出誌版]」1946年、「天皇小論」1946年、「もう軍備はいらない」1952年。文庫よりひとまわり大きなサイズにホチキス止めの32頁でたったの税別200円。巻末の「読了メモ」も楽しい工夫です。この小さな本は某書店さんの評判によればすでによく売れているそうです。それはなぜかなのか、この本を読んでみれば分かると思います。安吾の諷刺は天皇その人に向けられているというよりは天皇を利用する政治家や国民に向けられています。私たち自身の滑稽さと向き合うために本書ほど端的な効き目のある薬はないかもしれません。


★『たぐい』は表紙表1に曰く「人間の「外から」人間を考えるポストヒューマニティーズ誌」。表2には「人間を超えて、多-種の領野へ。人間は人間だけで生きているのではない。複数種の絡まりあいとして、人間は、ある。種を横断して人間を描き出そうとする「マルチスピーシーズ人類学」の挑戦的試みを伝えるシリーズ、創刊」と印刷されています。また続く1頁目の創刊の辞「〈たぐい〉の沃野へ」には「『たぐい』が目指すのは、「人間以上」の世界に生きる人間を、他の〈たぐい〉との出逢いの中で考える、あらゆる知が絡まりあう場となることである」と記されています。創刊号の特集1は「喰うこと、喰われること」、特集2は「フィールドから マルチスピーシーズ人類学の現在」。目次詳細は例えばhontoの単品頁で紹介されています。編集後記によれば、以後4号まで年1回の刊行予定となっています。要注目の新雑誌です。



★『ドゥルーズとマルクス』は松本潤一郎(まつもと・じゅんいちろう:1974-)さんが2003年から2017年にかけて各媒体に発表されてきた論考を加筆訂正し、1冊にまとめたもので、初の単独著です。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「資本主義の裏面に随伴する資本主義の分身としてのコミュニズムというユートピアを垣間見るべく、私はドゥルーズとマルクスを通して時空の隔たりに制約されないひとつの〈近傍〉ゾーンをつくろうとしました。〔…〕本書は資本主義の〈近傍〉にコミュニズムを探る試みであり、ドゥルーズとマルクスをうまく縒りあわせると浮かびあがる〈近傍〉のユートピアを、資本主義の近傍に幻視するための端緒」である、と松本さんは「あとがき」で説明されています。


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★続いて、ちくま学芸文庫の3月新刊6点です。


『反対尋問』フランシス・ウェルマン著、梅田昌志郎訳、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,900円、文庫判並製736頁、ISBN978-4-480-09912-9
『文語訳聖書を読む――名句と用例』鈴木範久著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,100円、文庫判並製288頁、ISBN978-4-480-09911-2
『バクトリア王国の興亡――ヘレニズムと仏教の交流の原点』前田耕作著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,200円、文庫判並製336頁、ISBN978-4-480-09902-0
『神話学入門』大林太良著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,000円、文庫判並製240頁、ISBN978-4-480-09918-1
『詳講 漢詩入門』佐藤保著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,400円、文庫判並製416頁、ISBN978-4-480-09917-4
『考える英文法』吉川美夫著、ちくま学芸文庫、2019年3月、本体1,500円、文庫判並製480頁、ISBN 978-4-480-09910-5


★『反対尋問』は旺文社文庫(1979年)からのスイッチ。ちくま学芸文庫版の解説は弁護士の高野隆さんがお書きになっています。原著は1903年刊行され、再版と増補を重ね1932年には第4版が出ています。本書はその第4版の訳書。高野さんは「本書は、100年たったいまでもペーパーバックとして販売され、専門家とともに一般読者にも読み継がれている」と解説されています。前半が第Ⅰ部「反対尋問の原理」、後半が第Ⅱ部「著名な反対尋問の実例」です。古書では高額だったので、今回の再版は歓迎されるのではないかと想像します。


★『文語訳聖書を読む』は文庫オリジナル。文語訳の新約聖書と旧約聖書は数年前に岩波文庫で再刊されており、文語訳聖書の言葉が日本文学やことわざなどに定着した歴史については著者が『聖書の日本語――翻訳の歴史』(岩波書店、2006年)で明らかにしていますが、今回の本では「いわば『聖書の日本語』の続篇のようなかたちで、特に日本で親しまれている文語訳聖書の聖句、名句について述べることにしたい」(はじめに)とのことです。主要目次は以下の通り。


はじめに
第一章 文語訳聖書の成り立ち
第二章 修正訳と改訳ほか
第三章 名著にみる文語訳聖書
第四章 文語訳聖書の名句と用例
結びに代えて
関連略年表


★『バクトリア王国の興亡』は、1992年に第三文明者から刊行された単行本を一部加筆し図版を追加して文庫化したもの。『神話学入門』は1966年に中央公論社より刊行された単行本の文庫化。新たに山田仁史さんによる解説「探究にいざなう神話語り」が付されています。『詳講 漢詩入門』は1997年に放送大学振興会より『中国古典詩学』として刊行されたテキストを改題したもの。著者自身による新しい「まえがき」が付されています。『考える英文法』は1966年に文建書房より刊行された単行本の文庫化。斎藤兆史さんによる解説が新たに付されています。「古典的名著というにとどまらず、むしろ今の時代にこそ広く読まれるべき英文法学習書である」と斎藤さんは評価されています。親本は2004年時点で14刷に達していましたが、版元の倒産(2014年)に伴い絶版になっていたとのことです。


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★最後に最近出会った新刊を列記します。


『作ること 使うこと――生活技術の歴史・民族学的研究』アンドレ-ジョルジュ・オードリクール著、山田慶兒訳、藤原書店、2019年2月、本体5,500円、A5判上製456頁、ISBN978-4-86578-212-7
『死とは何か――1300年から現代まで(下)』ミシェル・ヴォヴェル著、立川孝一訳、藤原書店、2019年2月、本体6,800円、A5判上製664頁、ISBN978-4-86578-211-0
『女とフィクション』山田登世子著、藤原書店、2019年3月、本体2,800円、四六変判上製320頁、ISBN978-4-86578-213-4
『複雑なタイトルをここに』ヴァージル・アブロー著、倉田佳子/ダニエル・ゴンザレス訳、アダチプレス、2019年3月、本体1,600円、A5変型判並製96頁、ISBN978-4-908251-10-8
『黒沢清、映画のアレゴリー』阿部嘉昭著、幻戯書房、2019年3月、本体3,600円、四六上製360頁、ISBN978-4-86488-165-4
『砺波の人びと』山田和著、平凡社、2019年3月、本体3,000円、A4変判上製260頁、ISBN978-4-582-27829-3
『ねむらない樹 vol.2』書肆侃侃房、2019年2月、本体1,400円、A5判並製192頁、ISBN978-4-86385-353-9
『実践アディクションアプローチ』信田さよ子編著、金剛出版、2019年3月、本体3,200円、A5判上製300頁、ISBN978-4-7724-1683-2
『あなたの飲酒をコントロールする――効果が実証された「100か0」ではないアプローチ』ウィリアム・R・ミラー/リカルド・F・ミューノス著、齋藤利和監訳、小松知己/大石雅之/大石裕代/長縄拓哉/長縄瑛子/斉藤里菜/根本健二訳、金剛出版、2019年3月、本体2,400円、B5判並製280頁、ISBN978-4-7724-1684-9



★藤原書店さんの2月新刊より3点。『作ること 使うこと』は農学者オードリクール(André-Georges Haudricourt, 1911-1996;オドリクールとも)の単独著の初めての訳書。『La Technologie, science humaine : Recherches d'histoire et d'ethnologie des techniques』 (Édition de la Maison des sciences de l'Homme, 1987)の「ほぼ全訳」で、原書のフランソワ・シゴーの序文と、第Ⅲ部「道具と農業技術」の第18~21章、第Ⅳ部第23章の、小論文計5篇が「きわめて限定された地域」ないし「特殊な事物」を扱っているために割愛されているほか、表題作である第1章「人文学としての技術学」と、ドラマルとの対話「研究と方法」(訳書では第25章)で一部省略した箇所があるとのことです。訳書は全6部に27編の論考と1篇の対話から成ります。本書が言う技術学というのはマルセル・モースが提唱したもので、オードリクールの説明によると「全住民の物質的活動の、つまり狩る、漁る、耕す、着る、住む、食べるそのやり方の研究」(388頁)のこと。なお、オードリクールの既訳書にはルイ・エダンとの共著『文明を支えた植物』(原著1943年;改訂版1987年:小林真紀子訳、八坂書房、1993年)があります。


★あと2点、ヴォヴェル『死とは何か(下)』は先月刊行された上巻に続く完結編。18世紀から現代を扱っています(第五部「啓蒙の世紀――問い直される死」、第六部「安心と不安――19世紀におけるブルジョワの死」、第七部「現代の死」を収録)。「将来への重い抵当としてのしかかってくるもうひとつの記憶がある。我々はすべてヒロシマの子供である」(1150頁)とヴォヴェルは指摘しています。山田登世子『女とフィクション』は『モードの誘惑』『都市のエクスタシー』に続く単行本未収録論考集の第3弾。「文学と女たち」「フランス美女伝説」「バルザックとその時代」「フィクションの力」の4部構成で40篇を収録しています。


★アダチプレスさんの3月新刊より『複雑なタイトルをここに』は、『Insert Complicated Title Here』(Harvard University Graduate School of Design and Sternberg Press, 2018)の訳書。著者のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh, 1980-)は米国のクリエイティブ・ディレクターでファッション・デザイナー。建築家やアーティストの肩書も持つ彼が2017年10月26日にハーヴァード大学デザイン大学院で行った特別講義の模様がまとめられています。心地よい軽やかさを感じる口調には、売れる予感しかしません。印象的だった発言のひとつを引用しておきます。質疑応答から。「もっとも重要なのは、自分の作品をエディットしてくれる存在を見つけること。いまの時代、もはやデザインに正解も間違いもないけれど、適切なエディットの方法はある。エディットを批判として受け取らないこと。アートの練習のためのコミュニケーションだと捉えてほしい。デザインに必要不可欠なのはそれ」(69頁)。


★幻戯書房さんの3月新刊より『黒沢清、映画のアレゴリー』は、映画評論家であり詩人で北海道大学准教授の阿部嘉昭(あべ・かしょう:1958-)さんが昨年度勤務先に提出された博士論文を書籍化したもの。「黒沢清=カフカ+ベンヤミン?」という帯が興味をそそります。主要目次を以下に列記しておきます。


序章 アレゴリーについて
第一章 代理と交換――『神田川淫乱戦争』『ドレミファ娘の血は騒ぐ』
第二章 復讐の寓意化――『蛇の道』
第三章 罹患と留保――『CURE』
第四章 選択と世界――『カリスマ』
第五章 転写と反復の機械――『LOFT』
第六章 人間の擬人化、隣接と類似――『クリーピー・偽りの隣人』
第七章 二重の身体、メランコリカー――『散歩する侵略者』
終章 映画のアレゴリーについて
あとがき


★平凡社さんの3月新刊より『砺波の人びと』は、富山県西部の砺波市の中高年の住民約200名を写真とプロフィール紹介で記録したもの。「超広角レンズを使って、1枚のスナップ写真にその人とその人を育んだ風景(風土)とを写し込み、また、自身の子ども時代の古い写真を手にしてもらって過去の記憶をも盛り込」(まえがきより)んでいます。飯沢耕太郎さんは解説で「砺波という限られた地域であるにもかかわらず、これだけ多様な生のかたちがあり、「エッケ・ホモ!(この人を見よ!)」と叫びたくなるような出会いがあるのは驚くべきことだ」と記されています。


★書肆侃侃房さんの2月新刊より短歌ムック「ねむらない樹」vol.2は、特集1が「第1回 笹井宏之賞発表!」で第2特集が「ニューウェーブ再考」。巻頭言は俵万智さんで、3首を取り上げ「葛藤があるからこそ、短歌が生まれる」と評しておられるのが印象的。目次詳細は書名のリンク先でご覧ください。なお笹井宏之賞の第2回は今年9月30日が応募締切。


★金剛出版さんの3月新刊より2点。主要目次は2点とも書名のリンク先でご確認いただけます。『実践アディクションアプローチ』は「アディクションの歴史から始まりその広がり、当事者と自助グループ、多様な立場からの取り組み、今後の潮流までを見据えた」(5頁)論文集。『あなたの飲酒をコントロールする』は『Controlling Your Drinking : Tools to Make Moderation Work for You』(Second Edition, Guilford Press, 2013)の訳書。帯文に曰く「お酒とのつきあい方・別れ方がわかる決定版」と。「物質的なごほうびと精神的なごほうびの両方が重要です」(91頁)というくだりには、依存の克服に留まらない普遍的な意味があるように感じます。


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ブックツリー「哲学読書室」に松山洋平さんの選書リストが追加されました

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オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、イスラーム神学古典選集』(作品社、2019年2月)の編訳者、松山洋平さんによるコメント付き選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる」
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!」
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想」
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている」
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために」
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える」
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?」
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す」
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について」
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置」
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも」
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む」
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在」
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流」
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ」
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書」
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する」
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ」
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!」
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき」
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える」
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために」
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流」
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える」
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る」

27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う」
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する」

29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体」

30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く」
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊」
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために」
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊」
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊」
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。」
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊」
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち」
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊」
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?」
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか」
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化」
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知」
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選」


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注目新刊:中村隆之編訳『ダヴィッド・ジョップ詩集』夜光社、ほか

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『新記号論――脳とメディアが出会うとき』石田英敬/東浩紀著、ゲンロン、2019年3月、本体2,800円、四六判並製450頁、ISBN978-4-907188-30-6
『いつもそばには本があった。』國分功一郎/互盛央著、講談社選書メチエ、2019年3月、本体900円、四六判並製128頁、ISBN978-4-06-515012-2
『日本を解き放つ』小林康夫/中島隆博著、東京大学出版会、2019年1月、本体3,200円、四六判並製424頁、ISBN978-4-13-013097-4
『創造と狂気の歴史――プラトンからドゥルーズまで』松本卓也著、講談社選書メチエ、2019年3月、本体2,150円、四六判並製384頁、ISBN978-4-06-515011-5
『大人から見た子ども』モーリス・メルロ=ポンティ著、滝浦静雄/木田元/鯨岡峻訳、みすず書房、2019年3月、本体3,800円、四六判上製304頁、ISBN978-4-622-08783-0
『アルゴナウティカ』アポロニオス・ロディオス著、堀川宏訳、西洋古典叢書:京都大学学術出版会、2019年3月、本体3,900円、四六変判上製432頁、ISBN978-4-8140-0174-3
『社会学用語図鑑――人物と用語でたどる社会学の全体像』田中正人編著、香月孝史著、プレジデント社、2019年3月、本体1,800円、A5判並製296頁、ISBN978-4-8334-2311-3


★年度末の忙しさで一冊ずつ掘り下げる時間に乏しいため、いくつかにまとめてごく簡単にコメントします。まず最初に、ここ約一月半の間に優れた対談本が連続している件です。小林康夫/中島隆博『日本を解き放つ』と、石田英敬/東浩紀『新記号論』、そして対談ではありませんが、二人のやりとりを収めた國分功一郎/互盛央『いつもそばには本があった。』も加えておきたいと思います。最前線の星々の交流と邂逅は美しく刺激的です。東大閥かあ、などという表面的な括りは脇に置いて楽しむ方がいいですが、東大生協書籍部でこの3冊がどんな動きをするのかについては一営業マンとしてとても興味が沸きます。


★次に『創造と狂気の歴史』と『大人から見た子ども』。前者は「「創造と狂気」という問題が西洋思想史のなかでどのように扱われてきたのかを〔…プラトンからドゥルーズまで〕様々な哲学者や思想家の議論をもとに追いかけていきます。そうすることによって、これまでの世界で「クリエイティヴ」であるとされていたのがどのような人々であるのかを理解できるようになるでしょう。さらには、現代において「クリエイティヴ」であるための条件がどのようなものであるのかを理解できるようになるかもしれません」(4~5頁)。後者はカヴァー裏紹介文に曰く「1949年から1951年にかけてメルロ=ポンティがソルボンヌ大学の児童心理学と教育学の講座で行なった一連の講義の要録、およびそれに関連するテクスト4編を収録」。この2冊とも、AIによる分析や判断が社会を覆っていくただなかにおいて「人間とは何か」を考える上で示唆的です。


★最後に『アルゴナウティカ』と『社会学用語図鑑』。前者は古代ギリシアの叙事詩の新訳であり、後者はベストセラー『哲学用語図鑑』『続・哲学用語図鑑』に続く図解本です。一見、まったく別の本ですが、かたや神話世界の、かたや学知の世界の、それぞれ英雄たちが活躍する様を堪能できるという意味ではどちらも素晴らしい本です。詩が喚起するものと、イラストが喚起するものは、想像力と視覚認識の差はあれともに映像的なのですね。この2冊が書店さんの店頭で隣り合わせになることはないと思いますけれども、群舞の壮麗さは特筆すべきではあります。


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★続いてここ最近の文庫新刊から注目書を列記します。


『詩学』アリストテレス著、三浦洋訳、光文社古典新訳文庫、2019年3月、本体1,140円、413頁、ISBN978-4-334-75397-9
『ソヴィエト旅行記』ジッド著、國分俊宏訳、光文社古典新訳文庫、2019年3月、本体1,100円、350頁、ISBN978-4-334-75396-2
『技術とは何だろうか 三つの講演』マルティン・ハイデガー著、森一郎編訳、講談社学術文庫、2019年3月、本体720円、176頁、ISBN978-4-06-515010-8
『孟子 全訳注』宇野精一訳、講談社学術文庫、2019年3月、本体1,690円、504頁、ISBN978-4-06-514311-7
『花のことば辞典 四季を愉しむ』倉嶋厚監修、宇田川眞人編著、講談社学術文庫、2019年3月、本体1,110円、288頁、ISBN978-4-06-514684-2
『悩ましい国語辞典』神永曉著、角川ソフィア文庫、2019年2月、本体1,080円、432頁、ISBN978-4-04-400348-7


★光文社古典新訳文庫の3月新刊は2点。アリストテレス『詩学』は「2000年間クリエーターたちの必読書である「ストーリー創作」の原点」という帯文が秀逸です。訳注だけでなく、本書の半分の分量を占める長編の訳者解説も充実。この解説には作者不明の写本ながら『詩学』と類似した内容をもつ「コワスラン論考」の全訳も含まれています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ジッド『ソヴィエト旅行記』は表題作とその続編『ソヴィエト旅行記修正』の久しぶりの新訳です。これもまた帯文が秀逸。「「楽園」は/看板倒れの/ディストピア。自らも熱烈に支持した理想国家への失望を、作家として誠実につづった紀行文」。今月の2点は何はともあれ即買いでした。


★講談社学術文庫の3月新刊から3点。ハイデガー『技術とは何だろうか』は文庫オリジナル新訳。1954年刊『講演と論文』より「物」「建てること、住むこと、考えること」「技術とは何だろうか」の3講演を収録。なお森さんはブレーメン講演版「物」もかつてお訳しになっておられます(創文社版『ハイデッガー全集』第79巻所収、2003年)。この版と『講演と論文』版との異同は今回の新訳文庫に訳注として掲載されています。『孟子 全訳注』は奥付前の特記によれば、1973年に集英社より刊行された『全釈漢文大系 第二巻 孟子』から抜粋し文庫化したもの。学術文庫での「孟子」の訳書はかの高額古書、穂積重遠『新訳孟子』(1980年)以来の久しぶりのものです(貝塚茂樹さんによる解説書は2004年に文庫化されています)。高額になっている学術文庫はぜひ復刊するかPODに加えていただければと念願しています。『花のことば辞典』は文庫オリジナルの書き下ろし。2014年刊『雨のことば辞典』、2016年刊『風と雲のことば辞典』に続く3部作の第3作。


★角川ソフィア文庫の2月新刊から1点。『悩ましい国語辞典』は2015年に時事通信出版局から刊行された単行本の文庫化。著者の神永曉(かみなが・さとる:1956-)さんは辞書編集のエキスパートでありベテラン。本書を読んでいると「まじか」やら「だよね」やらの連続で、改めて日本語と向き合う良い経験になります。知は細部にあり。一篇ずつは短いので短時間の移動中の読書に最適です。


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★また、最近では以下の新刊との出逢いがありました。


『ダヴィッド・ジョップ詩集』中村隆之編訳、夜光社、2019年3月、本体1,200円、四六判変形96頁、ISBN978-4-906944-17-0
『ジョルジョ・ヴァザーリと美術家の顕彰――16世紀後半フィレンツェにおける記憶のパトロネージ』古川萌著、中央公論新社、2019年3月、本体4,500円、A5判上製304頁、ISBN978-4-12-005181-4
『オーロラの日本史――古典籍・古文書にみる記録』岩橋清美/片岡龍峰著、平凡社、2019年3月、本体1,000円、A5判並製88頁、ISBN978-4-582-36458-3
『御簾の下からこぼれ出る装束――王朝物語絵と女性の空間』赤澤真理著、平凡社、2019年3月、本体1,000円、A5判並製120頁、ISBN978-4-582-36459-0
『日本思想史の可能性』大隅和雄/大山誠一/長谷川宏/増尾伸一郎/吉田一彦著、平凡社、2019年3月、本体4,200円、4-6判上製512頁、ISBN9784582703597
『音楽劇の歴史――オペラ・オペレッタ・ミュージカル』重木昭信著、平凡社、2019年3月、本体4,800円、4-6判上製408頁、ISBN978-4-582-21973-9



★『ダヴィッド・ジョップ詩集』は夜光社さんのシリーズ「民衆詩叢書」の第2弾でまもなく発売。フランス生まれの黒人詩人ジョップ(David Diop, 1927-1960;ディオップとも)の著作から詩作品22篇と散文4篇を選び一冊にまとめたものです。詩人でセネガル共和国初代大統領のサンゴールによるジョップの紹介文と、編訳者の中村さんによるジョップ小伝が付されています。ジョップ(ディオップ)の詩はこれまでに、登坂雅志さんの翻訳による『ブラックアフリカ詩集』(彌生書房、1987年)や『アフリカ詩集』(花神社、2010年)などに数編が訳出されたことがあります。今回の夜光社版詩集から、個人的に印象に残る、義兄のアリウンに宛てた美しく力強い詩篇「確信」を以下に引きます。


いくつもの殺人で肥えて太り
死体の数で自分たちの支配の段階を測っている連中に
私は言う 日々と人々が
太陽と星々が
諸地域の人民の同胞愛のリズムを描くと
私は言う 心と頭が
戦いのまっすぐな線のうちで合流すると
そして どこかで夏が生まれないような
日々などないと
私は言う 強い勢力の暴風雨が
忍耐を売る商人どもを粉砕するだろうと
そして 人々の体と調和する季節は
幸福の身振りが作り直されるのを見るだろうと。


★『ジョルジョ・ヴァザーリと美術家の顕彰』は京都大学大学院人間・環境学研究科へ2017年に提出された博士論文を加筆修正し再構成したもの。16世紀イタリアの画家であり建築家のヴァザーリ(Giorgio Vasari: 1511-1574)による『美術家列伝』(正式には『もっとも卓越せる画家・彫刻家・建築家列伝』)をひもときつつ、「美術史の父」としてのヴァザーリ像を捉え直す試みです。「本書では、ヴァザーリがコジモ一世・デ・メディチのもとおこなった諸活動をあらためて検討し、彼が打ち立てた「美術史」の根底にある儀礼的側面を浮かび上がらせる。特に着目するのは、「美術家を顕彰する」という行為である。〔…〕ヴァザーリ自身の関心と文化的背景の詳細な検討を通して、亡くなった美術家をしかるべきやり方で埋葬し、追悼するという行為が、一種のパトロネージと化していたことが理解されるだろう」(12~13頁)。


★「ヴァザーリはその活動を通して、メディチ家の面々が、美術家に作品を注文する一般的なパトロネージ以外にも、美術家自身の顕彰によって歴史にその記憶を刻み込む「記憶のパトロネージ」をおこなっていたことを強調した。実践しているのはヴァザーリ自身であっても、その出資者としてかならずメディチ家の名前を挙げ、彼らの営みに注意をうながしているのである。つまり、ヴァザーリの諸活動における「記憶のパトロネージ」実践は、16世紀フィレンツェの文化的・社会的・政治的事情が複雑に絡み合う、きわめて重要な結節点にほかならない」(13頁)。本書の主要目次を以下に転記しておきます。
序論
Ⅰ 『美術家列伝』と美術家の死
 第1章 テクストによる墓碑
 第2章 記憶のパトロネージ
Ⅱ アカデミア・デル・ディセーニョと美術家の顕彰
 第1章 ミケランジェロの死
 第2章 「画家の礼拝堂」とアカデミア
Ⅲ ヴァザーリと作品の保存・展示
 第1章 「カリオペの書斎」と歴史性
 第2章 「素描集」と聖なるものの巡礼
結論
あとがき
付録 アントン・フランチェスコ・ドーニ『大理石』抄訳
参考文献


★『オーロラの日本史』と『御簾の下からこぼれ出る装束』は平凡社さんのシリーズ「ブックレット〈書物をひらく〉」の第18巻と第19巻。前者は『日本書紀』や『明月記』をはじめとする数々の古典籍で言及されあるいは絵画史料に描かれててきた、飛鳥時代から江戸時代に至る低緯度オーロラの記録を追うもの。後者は王朝物語絵に描かれた「打出(うちいで)」を分析する内容。「打出」とは中世において、晴れやかな行事で女性の装束をすだれの下からはみださせて見せる、邸宅の空間演出方法のこと。低緯度オーロラにせよ打出にせよ、歴史とその記録への興味は尽きません。


★『日本思想史の可能性』は、大隅和雄、大山誠一、長谷川宏、増尾伸一郎、吉田一彦の5氏による「日本思想史の会」での長年の議論を出発点にして編まれた論文集。増尾さんは2014年7月にお亡くなりになっており、各章末の座談会には参加しておられません。また、増尾さんによる補論は他の論考と違って書き下ろしではなく、2007年に発表された論考の再録です。巻末のあとがきは増尾さん以外の4氏がそれぞれお書きになっています。目次は以下の通り。


はじめに|吉田一彦
序章 日本思想の外来と固有
 西洋の近代思想と日本思想史|長谷川宏
 日本をいつに求めるか――日本的思想の歴史的形成について|吉田一彦
 座談会
第Ⅰ章 天皇制の成立とその政治思想
 天皇制とは何か|大山誠一
 座談会
第Ⅱ章 思想における「日本的なるもの」
 思想における「日本的なるもの」をめぐって|長谷川宏
 座談会
第Ⅲ章 仏教徒日本思想史
 アジアの中の日本仏教の思想――仏教史は日本史より大きい|吉田一彦
 座談会
第Ⅳ章 中世の歴史書と天皇観
 『愚管抄』の天皇論|大隅和雄
 座談会
終章 天皇制は外来か固有か
 日本の思想をどう語るか|大隅和雄
 天皇制の本質|大山誠一
補論 説話の伝播と仏教経典
 説話の伝播と仏教経典――高木敏雄と南方熊楠の方法をめぐって|増尾伸一郎 
 付記|吉田一彦
あとがき|大隅和雄/大山誠一/長谷川宏/吉田一彦


★『音楽劇の歴史』はオペラ(17世紀以降)、オペレッタ(19世紀以降)、ミュージカル(20世紀以降)など、現代に至る音楽劇の変化を通史として記述したもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「ルネサンス、フランス革命、第一次世界大戦、ヴェトナム戦争などの出来事を通じて、社会だけでなく音楽劇も大きく変わった。本書の狙いは、その変化がなぜ起こったのかを考えることだ。そのため、芸術にとどまらず、政治、経済、社会制度、風俗、技術についても広範に言及」した(12頁)、とあります。
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注目新刊:ハーマン『非唯物論』河出書房新社、ほか

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弊社出版物でお世話になっている皆様の最近のご活躍をご紹介します。


◆上野俊哉さん(著書:『増補新版 アーバン・トライバル・スタディーズ』、共訳:ギルロイ『ブラック・アトランティック』)
一昨年に刊行された『四方対象――オブジェクト指向存在論入門』(岡嶋隆佑/山下智弘/鈴木優花/石井雅巳訳、人文書院、2017年9月)に続くグレアム・ハーマン(Graham Harman, 1968-)の訳書第2弾『非物質論』の翻訳を手掛けられました。同書は『Immaterialism: Objects and Social Theory』(Polity Press, 2016)の訳書です。書誌情報と目次を以下に掲げます。

非唯物論――オブジェクトと社会理論
グレアム・ハーマン著 上野俊哉訳
河出書房新社 2019年3月 本体2,600円 46判上製216頁 ISBN978-4-309-24901-8
帯文より:対象(オブジェクト)は非関係によって知られ、共生は非相互的、非対称的である――。アクター-ネットワーク論や新たな唯物論との対決を通して、オブジェクト指向存在論の核心を「非唯物論」としてあきらかにし、オブジェクトとしての東インド会社の考察によってその社会・歴史への応用をしめしたハーマン自身によるハーマン入門。
訳者解説より:むしろ、こう言ってもいい。ハーマンは、これまで人間について語られてきた哲学的概念を徹底して対象やモノ、非人間一般についても言えるようにするための概念に作りかえることを絶えず試みている、と。


目次:
第一部 非唯物論
 1 オブジェクトとアクター
 2 掘り重ねという危険
 3 唯物論と非唯物論
 4 ANTを発展される試み
 5 モノ自体
第二部 オランダ東インド会社
 6 VOC(東インド会社)の紹介
 7 共生について
 8 総督クーン
 9 バタヴィア、スパイス諸島、マラッカ
 10 アジア内部のVOC
 11 ANT再論
 12 創生、成熟、衰微、終焉
 13 OOOの方法をめぐる15の暫定的なルール
解説 モノたちとのおちつかない共生に向けて|上野俊哉
参考文献


★「この本の第一部は1900年における現象学以降に登場した最も重要な哲学的方法となっているアクター-ネットワーク・セオリー(ANT)、ならびにわたし自身の立場であるオブジェクト指向存在論(OOO)と、これとしばしば混同される現代思想の一派である「新しい唯物論」に焦点をあてている」(9頁)。「オブジェクト指向社会理論の探究の動機は、まずオブジェクト指向哲学への関心に求められる。この哲学の最初の公準はこうなる。一切がひとしなみに実在=現実的であるとは言えないにしても、あらゆる対象はひとしく対象(オブジェクト)である。つまり、実在的対象の自律性と感覚的対象の従属性――対象(オブジェクト)に出会う存在者がどんなものであれ、感覚的対象(オブジェクト)はそれに従属しているということ――をわれわれは区別しなければならないということである」(11頁)。

◆溝口昭子さん(寄稿:『多様体1』)
◆吉田裕さん(寄稿:『多様体1』)
先月末発売され今月より店頭発売開始となった以下の論文集に『多様体1』へのご寄稿との関連がある論考を執筆されています。溝口さんは第Ⅰ部「ネイションを求めて――コロニアリズムからの脱却」の第2章「国民国家(ネイション=ステイト)を希求する人びと――南アフリカ人作家H・I・E・ドローモの劇における国家観の変遷」(61~97頁)を執筆され、吉田さんは第Ⅱ部「ネイションのはざまで――ポストコロニアリズムの位相」の第4章「植民地主義と情動、そして心的な生のゆくえ――ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』と『故郷喪失の喜び』における恥の位置」(137~174頁)を執筆されています。


国民国家と文学――植民地主義からグローバリゼーションまで
庄司宏子編著
作品社 2019年2月 本体3,200円 46判上製340+11頁 ISBN978-4-86182-727-3
帯文より:〈国民国家〉の“本質”とはなにか? 文学的想像力から迫るポストコロニアル研究の最前線。


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取次搬入日決定および書影公開:ロザリンド・クラウス『視覚的無意識』

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弊社3月新刊、ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』の取次搬入日が決定しましたので、お知らせいたします。日販、トーハン、大阪屋栗田、ともに3月22日(金)です。書店さんへの着荷はおおよそ26日(火)ないし27日(水)以降、順次となります。店頭発売開始はおおよそ来週後半からです。どうぞよろしくお願いいたします。どこの書店さんに並ぶかは、地域をご指定いただければお答えします。電話、FAX、Eメール、当ブログコメント欄、ツイッター、等々でお気軽にお問い合わせください。


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ブックツリー「哲学読書室」に森田裕之さんの選書リストが追加されました

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オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『ドゥルーズ『差異と反復』を読む』(作品社、2019年2月)の著者、森田裕之さんによるコメント付き選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室


1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる」
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!」
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想」
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている」
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために」
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える」
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?」
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す」
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について」
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置」
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも」
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む」
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在」
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流」
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ」
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書」
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する」
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ」
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!」
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき」
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える」
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために」
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流」
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える」
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る」

27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う」
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する」

29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体」

30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く」
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊」
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために」
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊」
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊」
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。」
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊」
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち」
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊」
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?」
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか」
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化」
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知」
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選」
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ」


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ジョルジョ・アガンベン「ホモ・サケル」シリーズ

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◎アガンベン「ホモ・サケル」シリーズ


I) Homo Sacer: Il potere sovrano e la nuda vita, Torino: Einaudi, 1995.『ホモ・サケル――主権権力と剥き出しの生』高桑和巳訳、以文社、2003年。


II, 1) Stato di eccezione, Torino: Bollati Boringhieri, 2003.『例外状態』上村忠男・中村勝己訳、未來社、2007年。


II, 2) Stasis: La guerra civile come paradigma politico, Torino: Bollati Boringhieri, 2015.『スタシス――政治的パラダイムとしての内戦』高桑和巳訳、青土社、2016年4月。


II, 3) Il sacramento del linguaggio: Archeologia del giuramento, Roma: Laterza, 2008.


II, 4) Il Regno e la Gloria: Per una genealogia teologica dell'economia e del governo, Vicenza: Neri Pozza, 2007, Torino: Bollati Boringhieri, 2009.『王国と栄光――オイコノミアと統治の神学的系譜学のために』高桑和巳訳、青土社、2010年。
※『王国と栄光』の原書は当初「ホモ・サケル」第II部第2巻として初版が2007年に刊行され、2009年に別の版元から図版が増補された新版が刊行された。日本語訳はこの新版を底本としている。2015年に新たに『スタシス』が第II部第2巻として刊行されるに伴い、『王国と栄光』は第II部第4巻に変更された。


II, 5) Opus Dei: Archeologia dell'ufficio, Torino: Bollati Boringhieri, 2012.『オプス・デイ』杉山博昭訳、以文社、近刊。


III) Quel che resta di Auschwitz: L'archivio e il testimone, Torino: Bollati Boringhieri, 1998.『アウシュヴィッツの残りのもの――アルシーヴと証人』上村忠男・廣石正和訳、月曜社、2001年。


IV, 1) Altissima povertà: Regole monastiche e forma di vita, Vicenza: Neri Pozza, 2011.『いと高き貧しさ――修道院規則と生の形式』上村忠男・太田綾子訳、みすず書房、2014年。


IV, 2) L'uso dei corpi, Vicenza: Neri Pozza, 2014.『身体の使用――脱構成的可能態の理論のために』上村忠男訳、みすず書房、2016年1月。


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注目新刊:ele-king臨時増刊号『黄色いベスト運動』、岡田聡『ヤスパースとキリスト教』

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様のご活躍をご紹介します。



★毛利嘉孝(著書:『文化=政治』、共訳:ギルロイ『ブラック・アトランティック』、クリフォード『ルーツ』)
★鵜飼哲(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★栗原康(寄稿:『多様体1』)
「eleking」誌の臨時増刊号2019 vo.l1『黄色いベスト運動』が今月発売となり、毛利さんが「「暴動」と新自由主義的グローバリズムの終焉──排他主義的極右勢力の台頭か、新しいコミュニズムか」と題したコラムを寄稿され(135~138頁)、鵜飼さんがセルジュ・カドリュッパニさんとの緊急討論「フランス「黄色いベスト(ジレ・ジョーヌ)」運動はどこに向かうのか?」を行ない(140~146頁)、栗原さんは白石嘉治さんと対談「黄色いベストはやさしい──問われているのは資本主義ではなく国家的なものである」を行なっています(147~154頁)。このほかにも、堀茂樹、松尾匡、國分功一郎の各氏へのインタヴューや、コリン・コバヤシさんらによる論考、『ル・モンド・ディプロマティーク』からの主要記事を掲載しています。目次詳細は誌名のリンク先でご確認下さい。


ele-king臨時増刊号 黄色いベスト運動──エリート支配に立ち向かう普通の人びと
ele-king編集部編
ele-king books: Pヴァイン 2019年3月 本体1,660円 A5判並製160頁 ISBN978-4-909483-25-6
帯文より:地方に暮らす “おじさん・おばさん” が起こした奇跡のムーヴメント、エスタブリッシュメントへの反撃。いま何が問題なのかを私たちにも教えてくれる、今世紀もっとも重要な社会運動の真相に迫る!

★岡田聡(訳書:シュスラー『ヤスパース入門』)
初めての単独著『ヤスパースとキリスト教』を今月上梓されました。巻頭の「はじめに」によれば、「2014年の博士論文「精神医学から哲学へいたるヤスパースの思索全体と根本態度」にもとづきつつ、精神医学に関する部分を切り離して、ヤスパースとキリスト教にかかわる部分に加筆、修正したものである」とのことです。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。


ヤスパースとキリスト教――二〇世紀ドイツ語圏のプロテスタント思想史において
岡田聡著
新教出版社 2019年3月 本体2,500円 四六判上製224頁 ISBN978-4-400-31088-4
帯文より:ヤスパース思想はキリスト教からいかなる影響を受けたのか、またキリスト教にいかなる影響を与えたのか。本書はこの課題を、ヤスパースとキリスト教との「近さ」と「遠さ」の間に探りつつ、ブルトマン、ブーリ、ティリッヒ、H・バルト、K・バルトらとの関係を通して明らかにする。
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ブックツリー「哲学読書室」に久保田晃弘さんの選書リストが追加されました

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オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ジェームズ・ブライドル『ニュー・ダーク・エイジーーテクノロジーと未来についての10の考察』(NTT出版、2018年11月)の訳者、久保田晃弘さんによるコメント付き選書リスト「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?」が追加されました。以下のリンク先一覧からご覧になれます。


◎哲学読書室


1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる」
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!」
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想」
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている」
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために」
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える」
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?」
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す」
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について」
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置」
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも」
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む」
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在」
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流」
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ」
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書」
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する」
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ」
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!」
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき」
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える」
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために」
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流」
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える」
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る」

27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う」
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「壊れた脳が歪んだ身体を哲学する」

29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体」

30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「「偶然」にかけられた魔術を解く」
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊」
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために」
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「AIの危うさと不可能性について考察する5冊」
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊」
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。」
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「『nyx』5号をより楽しく読むための5冊」
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち」
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊」
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「資本主義史研究の新たなジンテーゼ?」
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか」
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「映画論で見る表象の権力と対抗文化」
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知」
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選」
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ」
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?」


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注目新刊:エーディト・シュタイン『有限存在と永遠存在』水声社、ほか

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『有限存在と永遠存在――存在の意味への登攀の試み』エーディト・シュタイン著、道躰章弘訳、水声社、2019年3月、本体8,000円、A5判上製602頁、ISBN978-4-8010-0420-7
『新装版 ライプニッツ著作集 第I期[6]宗教哲学[弁神論]上』G・W・ライプニッツ著、佐々木能章訳、工作舎、2019年3月(初版1990年1月)、本体8,200円、A5判上製352頁+手稿8頁、ISBN978-4-87502-505-4 
『新装版 ライプニッツ著作集 第I期[7]宗教哲学[弁神論]下』G・W・ライプニッツ著、佐々木能章訳、工作舎、2019年3月(初版1991年5月)、本体8,200円、A5判上製336頁+手稿8頁、ISBN978-4-87502-506-1
『精神分析学入門』フロイト著、懸田克躬訳、中公文庫、2019年3月、本体1,500円、文庫判768頁、ISBN978-4-12-206720-2



★『有限存在と永遠存在』は、ブレスラウ(旧ドイツ帝国、現ポーランド)生まれ、フッサールに学んだユダヤ人哲学者で、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のガス室で亡くなった修道女のエーディト・シュタイン(Edith Stein, 1891-1942)の主著『Endliches und ewiges Sein: Versuch eines Aufstiegs zum Sinn des Seins』(Nauwelaerts / Herder, 1950)の全訳。執筆されたのは1935年から36年にかけての時期ですが、当時の発禁処分により死後刊行となったものです。底本はヘルダー社の新版全集11巻および12巻の合本版(2013年版、初版は2006年)とのことです。主要目次は書名のリンク先をご覧ください。訳者後記の言葉を借りると本書は、現象学を用いつつ「神を意識する哲学を構築し」「全存在の知解性の根源たる「第一存在」の意味へ」と向かうことにより「有限と無限なる両原理を総合」しようとしたもの。訳者の道躰さんによるシュタインの訳書は『国家研究』(水声社、1997年)に続く2点目です。


★シュタインは『有限存在と永遠存在』の第1章「緒論――存在の問題」でこう書いています。「神は己れの叡智が良しとする範囲内で、己れの叡智に相応しい方法で、人間精神に己れを伝達する。範囲を拡げるか否かは神の意志次第である。人間の思考方法に適合した形で、つまり漸進的認識に合わせ、概念的・断定的把握に即して啓示を与える、人間を自然的思考方法から引き上げ、それとは似ても似つかぬ認識方法へと拉し去り、一目ですべてを把捉する神の視点に据える、いずれも神の裁量である。真理探究としての哲学の到達点とは他でもない、神的叡智である。神をも全被造物をも把握せしめる単一の視点である。被造の精神が(無論自力によらずして)到達し得る極致とは、神のお蔭で神との合一を現出する「至福の視点」である。神の恵与せる視点である。被造の精神は神の生命と共生し、かくて神的認識に参入するのである。地上に生を営む間は、神秘的視覚心像が、上記の至高の目的を達成するための最重要な手掛かりとなる。が、かかる至福の恩寵に頼らぬ予備段階もある。真の生きた信仰がそれである」(43~44頁)。


★偶然ではありますが、シュタインの『有限存在と永遠存在』が初訳されたのとほぼ同時期にライプニッツの『弁神論』上下巻が再刊されたのは読書界にとっては良い贈物です。この二作を並行して読むことは、西欧哲学の深淵を読者に覗かせるものとなるでしょう。


★『新装版 ライプニッツ著作集 第I期[6/7]宗教哲学[弁神論]上下』は、新装復刊の第4回配本。『弁神論(Essais de Théodicée)』は1710年にアムステルダムで刊行。本論の副題にある通り、「神の正義、人間の自由、悪の起源について」を主題として書かれており、フランスの同時代人ピエール・ベール(Pierre Bayle, 1647-1706)による大著『歴史批評辞典』や『田舎人の問いへの答え』(野沢協個人訳『ピエール・ベール著作集』第3~5巻、第7~8巻参照)への批判的検討を試みています。


★ライプニッツは序文と本論の間に置かれた「信仰と理性の一致についての緒論」でこう述べています。「理性が何らかの命題を破壊するなら、理性はその反対の命題を打ち建てるのである。反対しあう二つの名大を理性が同時に破壊しているように思えるときには、理性が進めるところまでわれわれが付いて行くなた、理性はわれわれに何か深いものを約束してくれる。ただしこのときには論争的な精神によって付いて行くのではなく、真理を求め洞見せんとする熱い願いをもって付いて行くのである。こうすれば必ず望外の成果を収めることになろう」(112頁)。


★さらにこうも書いています。「啓示的信仰に対する反論が現われたときには、神の栄光を保持し高めようという意図の下で、柔順にして情熱的な精神をもってすれば反論を突き返すことが十分にできる。そして神の正義に対する反論を巧みに一蹴できたなら、神の偉大さについて改めて驚嘆し、神の善意に心魅かれることであろう。これら神の正義、偉大さ、善意は、われわれには見えないが十分に確実な真の理性によって精神が高まるに応じて、それまで視覚によって欺かれていた見かけの理性という雲を突き抜けて行くようだ」(113頁)。


★「神の善意と正義とを論証的に確信しているならば、われわれの目に映じる偏狭な世界での冷酷さや不公正という現象は、無視できるのである。これまでわれわれを照らしていたのは自然の光と恩寵の光であったが、それに栄光の光を付け加えることはなかった。地上にはみかけの不公正があるが、われわれはそこに神の正義の真理が隠されていることを信じているし、知ってもいる。しかし正義という太陽がその真相を露わにするときには、われわれはその正義を目にすることであろう」(113~114頁)。


★『精神分析学入門』は中公文庫プレミアム「知の回廊」シリーズの最新刊。旧版は1973年刊。巻末の編集付記によれば、旧版29刷(2014年10月)を底本とし、中公クラシックス版『精神分析学入門』全2巻を参照したとのことで、新たに柄谷行人さんによるエッセイ「フロイトについて」(759~764頁)が追加されています。


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★また最近では次の新刊との出会いがありました。


『イタリアン・セオリーの現在』ロベルト・テッロージ著、柱本元彦訳、平凡社、2019年3月、本体4,200円、4-6判上製464頁、ISBN978-4-582-70347-4
『大清律・刑律――伝統中国の法的思考(2)』谷井俊仁/谷井陽子訳解、東洋文庫(894):平凡社、2019年3月、B6変判上製函入376頁、ISBN978-4-582-80894-0

『〈後期〉ハイデガー入門講義』仲正昌樹著、作品社、2019年3月、本体2,000円、46判並製400頁、ISBN978-4-86182-739-6
『黒人小屋通り』ジョゼフ・ゾベル著、松井裕史訳、作品社、2019年3月、本体2,600円、四六判上製296頁、ISBN978-4-86182-729-7



★まずは平凡社さんの3月新刊より2点。『イタリアン・セオリーの現在』はイタリアでキュレーターとして活躍し、現在はイタリアと日本の各大学で教鞭を執るロベルト・テッロージ(Roberto Terrosi, 1965-)さんによる2015年の書き下ろし作『Filosofia italiana contemporanea: Un'introduzione critica』の訳書。テッロージさんはイタリアの美学者マリオ・ペルニオーラ(Mario Perniola, 1941-2018)の弟子で、本書が初めての訳書となります。目次は以下に転記しておきます。


はじめに
序説
第一部 イタリアン・セオリー
 前史 1960・70年代のイタリア極左運動――イタリアのポストモダンとイタリアン・セオリーの文化的土壌
 イタリア・セオリー――鍵概念
 生政治
  ネグリの生政治
  アガンベンの生政治
  エスポジトの生政治
  生政治に関する結論
 共同体とコモン
  アガンベンの共同体
  エスポジトの共同体
  マルチチュードとしての共同体
  共同体に関する結論
 政治神学
  シュミット・リヴァイヴァル
  基本的概念
  討論
 身体の政治学とイタリアン・セオリーの背景
  剥き出しの生とペルソナ
  ネグリ工房
  ナポリの状況
インテルメッツォⅠ
 1990年代のテクノロジーの思想と哲学的人間学
  サイバーパンク
  ポストヒューマン
  哲学的人間学の再発見
第二部 イタリアのポストモダン
 イタリアのポストモダン誕生時の社会と文化
  ニーチェ・ルネサンス
  ヴァッティモとハイデガー主義
  主観なき主観主義
  資本主義の再編
  ポストモダンのベル・エポック
  弱い思考
  ラディカル・シック
  イタリアのメディア、そして記号学の短い黄金時代
  シミュラクル
  雑誌『アルファベータ』
  イタリアのポストモダンとアメリカのモストモダン
  ヴェルディリョーネ――八方美人的知識人から犯罪的知識人へ
 ポストモダンのテーマ
  美学
  解釈学
  ハイデガーの影響
  ニヒリズム
  古典文化への回帰
 ポストモダンの哲学者たちと神学文化
  教会とカトリック神学の状況
  カッチャーリの展開
  ヴァッティモとペルニオーラ
 フェミニズムの思想
 複雑系の科学認識論
インテルメッツォⅡ
 地方とメディア
  エンツォ・メランドリ
  ロベルト・ディオニジ
  「セヴェリーノ」のケース
  ウンベルト・ガリンベルディ
  アウトサイダー――マンリオ・ズガランブロの場合
第三部 アカデミズムの哲学
 イタリアのアカデミズムの状況
 現象学のハイデガー
  ミラノの現象学派
  受動的綜合
  神経現象学と鏡ニューロン
 イタリアの分析哲学
  新実在論
 科学史と認識論
 古代哲学
 アカデミズムの政治哲学
  マルクス主義
  超保守主義と秘教主義
  右翼思想
あとがき
引照・参考文献一覧
人名索引


★「第一部はいわゆるイタリアン・セオリーを扱う。つまり政治的または政治神学的な背景をもったあれらの哲学、アメリカをはじめ英語圏の国々で思いがけない流行現象を巻き起こした思想がテーマである。第二部はイタリアン・セオリーに先行するポストモダンの哲学、そして第三部はアカデミズムの哲学の特徴と主な潮流について述べる。さらにテクノロジーの思想に関する記述を追加した。これはとりわけ1990年代のイタリアに展開したものだが、ポストモダンやイタリアン・セオリーのような世界的影響力はもたなかった」(「はじめに」9頁)。


★イタリア現代思想の入門書には、岡田温司さんの二つの著書、『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ、2008年)、『イタリアン・セオリー』(中公叢書、2014年)などがありましたが、テッロージさんの新刊は新たな定番として認知されていくのではないでしょうか。本書の刊行は日本におけるイタリア現代思想の受容を新たなレベルに引き上げるものだと感じます。


★『大清律・刑律2』は全2巻の第2巻。中国清代の法典『大清律』巻18~28の「刑律」の本文と原註(いわゆる小註)の全訳。沈之奇『大清律輯註』での注釈に基づく解説を付しています。第2巻は、受贓篇、詐欺篇、犯姦篇、雑犯篇、捕亡篇、断獄篇を収録。巻末には訳註、改訂箇所一覧(雍正律、乾隆律)、参考文献、あとがき、索引が配されています。次回配本は2019年6月、『泰山』とのことです。


★次に作品社さんの3月新刊より2点。『〈後期〉ハイデガー入門講義』は2017年4月から11月にかけて読書人スタジオで行われた全7回の連続講義に加筆修正したもの。『形而上学入門』と『「ヒューマニズム」について』の読解を通じ、『存在と時間』以後の転回(ケーレ)を経た後期ハイデガーを解説しています。本書の冒頭で仲正さんはこう書いています。「近現代の哲学史の標準的教科書を書く場合〔…〕ハイデガーを省くことは困難だろう。ハイデガーを消せば、少なくとも、サルトル、メルロ=ポンティ、レヴィナス、アーレント、ハーバマス、デリダも消さざるを得なくなる。最近、天才哲学者として人気が出ているマルクス・ガブリエルを新たに書き加えるのも困難になるだろう」(1頁)。『ハイデガー哲学入門――『存在と時間』を読む』(講談社現代新書、2015年)に続く成果です。


★『黒人小屋通り』はフランス領マルチニック島(マルティニーク島とも)生まれの小説家ジョゼフ・ゾベル(joseph Zobel, 1915-2006)の自伝的小説『La Rue Cases-Nègres』(Éditions Présence Africaine, 1950)の訳書。1920年代から30年代前半のマルチニック島での植民地社会が少年の視点で描かれており、カリブ海文学の古典として高名。別刷付録として「マルチニック島詳細図」と「マルチニック島周辺地図」が付されています。同作品は1983年に映画化され日本でも1985年に『マルチニックの少年』として公開されていましたが、原作の日本語訳は初めてです。


★さらに次の書目との出会いもありました。年度末の忙しさから詳しくは言及できないのですが、書誌情報を列記します。


『全ロック史』西崎憲著、人文書院、2019年2月、本体3,800円、A5判並製512頁、ISBN978-4-409-10041-7
『皇室財産の政治史――明治二〇年代の御料地「処分」と宮中・府中』池田さなえ著、人文書院、2019年3月、本体6,800円、A5判上製444頁、ISBN978-4-409-52076-5
『長崎の痕』大石芳野写真、藤原書店、2019年3月、本体4,200円、四六倍判変型並製288頁、ISBN978-4-86578-219-6
『象徴でなかった天皇――明治史にみる統治と戦争の論理』岩井忠熊/広岩近広著、藤原書店、2019年3月、本体3,300円、四六並製304頁、ISBN978-4-86578-217-2
『兜太 TOTA vol.2〈特集〉現役大往生』藤原書店、2019年3月、本体1,800円、A5並製192頁、ISBN978-4-86578-216-5
『現実のクリストファー・ロビン――瀬戸夏子ノート2009-2017』瀬戸夏子著、書肆子午線、2019年3月、本体2,700円、四六判並製筒函入416頁、ISBN978-4-908568-20-6
『現代思想2019年4月号 特集=新移民時代――入管法改正・技能実習生・外国人差別』青土社、2019年3月、本体1,400円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1379-0



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月曜社4月発売予定新刊『表象13:ファッション批評の可能性』

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2019年4月26日取次搬入予定
※ゴールデンウィーク直前の物流混雑の影響が見込まれるため、連休明けの発売にずれこむ可能性があります。


表象13:ファッション批評の可能性
表象文化論学会=発行 月曜社=発売
本体:2,000円 A5判並製304頁 ISBN978-4-86503-074-7 C0010


アマゾン・ジャパンにて予約受付中


20世紀末のファッション研究の興隆とともに、ファッション批評の試みも盛んとなった。しかし、多様な方法論と領域横断的アプローチを包摂するファッション研究は、未だ人文科学において独自の学術分野を形成しているとは言い難い。本特集では、共通項の多い映画批評/研究を補助線としつつ、現代のメディア環境における文化産業と批評の実践や研究の遂行との間の諸問題を剔抉し、ファッション批評/研究の可能性を徹底討議する。21世紀以降のファッション・スタディーズや、ファッション批評の包括的モデルを思考する上で礎石となるテクストの本邦初訳と解題も掲載。


目次:
★巻頭言
「経験と学問、あるいは、影を奪うために」田中純
★特集「ファッション批評の可能性」
共同討議「ファッション批評は可能か」平芳裕子+蘆田裕史+牧口千夏+三浦哲哉+門林岳史[司会]
「翻訳テクストへの序」蘆田裕史
「ベンヤミンと近代のファッションという革命」ウルリッヒ・レーマン|田邉恵子訳・解題
「ファッション批評の包括的システム」キョン-ヒ・チョイ&ヴァン・ダイク・ルイス|藤嶋陽子訳・解題
★投稿論文
「浮遊するカメラ・アイ――ヒッチコック『裏窓』とベケット『フィルム』をめぐって」岡室美奈子
「ミシェル・タピエの「アンフォルメル」概念について――『別の芸術』を中心に」野田吉郎
「王の肖像と装飾――ベルリン新博物館装飾壁画に描かれたフリードリヒ二世をめぐって」三井麻央
「エドワード・ゴードン・クレイグの仮面論と能の受容」山口庸子
★書評
「哲学は形式的告示であらざるをえないのか?――串田純一『ハイデガーと生き物の問題』書評」國分功一郎
「主体の哲学と概念の哲学のあいだで――阿部崇『ミシェル・フーコー、経験としての哲学』書評」柵瀨宏平
「ふたつの名をもつ国際展の定点観測――山下晃平『日本国際美術展と戦後美術史』書評」鯖江秀樹
「シェイクスピア受容研究と「女性史」の更新――北村紗衣『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち』書評」米谷郁子
「文学と映画の結節点としてのグレアム・グリーン――佐藤元状『グレアム・グリーン』書評」高村峰生
「映画/テレビ産業間の闘争と協働――北浦寛之『テレビ成長期の日本映画』書評」北村匡平
「「どこ」への郷愁――岡村民夫『立原道造』書評」串田純一
「「自由」な芸術のアクチュアリティ――木水千里『マン・レイ』書評」利根川由奈
「書かれている順番で読むことの難しさ――福尾匠『眼がスクリーンになるとき』書評」廣瀬純
「見ることと真似ること――平芳裕子『まなざしの装置』書評」北村紗衣


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注目新刊:デリダ『プシュケーII』、ネグリ『デカルト・ポリティコ』、ほか

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様のご活躍をご紹介します。


★ジャック・デリダさん(著書『条件なき大学』)
『Psyché : inventions de l'autre, tome 2』(Galilée, 2003)の訳書がついに刊行されました。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。70年代後半から80年代の主要論考16篇を収録した第Ⅰ巻は2014年6月に刊行済です。



プシュケー――他なるものの発明(Ⅱ)
ジャック・デリダ著 藤本一勇訳
岩波書店 2019年3月 本体8,700円 A5判上製576頁 ISBN978-4-00-024690-3
帯文より:デリダが希望を込めた投壜通信。「ハイデガーの手」「いかに語らずにいられるか」「不時のアフォリズム」ほか、全12篇を収録。いかに脱構築を受け継ぐか。


★アントニオ・ネグリさん(著書『芸術とマルチチュード』)
ネグリさんの最初期作『Descartes politico o della ragionevole ideologia』(Feltrinelli, 1970)の訳書がこちらもついに刊行です。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。なお、manifestolibriから2007年に原著が復刊された際に付された新たな序文は訳出されていません。



デカルト・ポリティコ――政治的存在論について
アントニオ・ネグリ著 中村勝己/津崎良典訳
青土社 2019年4月 本体3200円 四六判上製254+134頁 ISBN978-4-7917-7149-3
帯文より:ネグリ思想の原点。世界を震撼させたベストセラー『〈帝国〉』『マルチチュード』へと連結する、ネグリの幻の出世作。不在とされたデカルトの政治思想を、彼の形而上学のなかに大胆に読み込んで抉り出し、哲学者デカルトによる〈ブルジョア〉即ち市民のための哲学的急進主義として甦生させる。ネグリの可能性が横溢する野心的論考。


★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』)
新潟大学大学院現代社会文化研究科/人文学部哲学・人間学部会による『知のトポス』第14号が刊行され、宮﨑さんは編集長として共訳と編集後記を寄せておられます。同号はいずれ「人間学ブログ NINGENGAKU Blog」にてPDFが各論文ごとに無償配布されるだろうと思われます。第14号の目次は以下の通りです。


スタンリー・カヴェル「近代哲学の美学的諸問題」宮﨑裕助/高畑菜子訳
ヨハネス・ローマン「西洋人と言語の関係(言述における意識と無意識的形式)〔一〕」阿部ふく子/渡邉京一郎訳
アレクサンドル・コイレ「ヘーゲルの言語と専門用語についてのノート」小原拓磨訳
ゲルハルト・クリューガー「カントの批判における哲学と道徳(五)」宮村悠介訳
編集後記


★立木康介さん(共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★廣瀬純さん(著書『絶望論』、共著『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★佐藤嘉幸さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
2018年5~6月にかけて京都大学人文科学研究所で開催された「人文研アカデミー連続セミナー〈68年5月〉と私たち」で発表された10名の論考を収録した論文集『〈68年5月〉と私たち』に寄稿されています。佐藤嘉幸さんは「ドゥルーズ=ガタリと〈68年5月〉(1)――『アンチ・オイディプス』、『千のプラトー』をめぐって」、廣瀬純さんは「ドゥルーズ=ガタリと〈68年5月〉(2)――「〈68年5月〉は起こらなかった」読解」、 編者をつとめる立木康介さんは「〈68年5月〉にラカンはなにを見たか」と「あとがき」を担当されています。なお、同書の巻頭には35頁にわたり、故・西川長夫さんが撮影された〈68年5月〉のカラー写真が多数収められています。


〈68年5月〉と私たち――「現代思想と政治」の系譜学
王寺賢太/立木康介編
読書人 2019年4月 本体3,600円 A5判上製324頁 ISBN978-4-924671-37-9
帯文より:「左派も、一枚岩ではない。別の未来を切り開くために、決して単純ではなかった歴史と理論の結び目に、もう一度立ち返らなければならない」(千葉雅也)。50年の時の隔たりと政治的・文化的流行の盛衰を超えて、〈68年5月〉の出来事と同時代の思想の双方に触発されながら、現在について考える―― 。2018年5月、京都大学人文科学研究所で行われた連続セミナー(全10回)の全記録。〈68年5月〉は今、私たちに何を問うているのか。フランス現代思想、政治、哲学、精神分析、歴史、エピステモロジー…… 、10名の論者が、それぞれの専門領域から思考する。


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