★弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆さんの最新刊と既刊書を列記します。まずは明日17日発売予定の新刊2点から。
『哲学で抵抗する』高桑和巳著、集英社新書、2022年1月、本体820円、新書判222頁、ISBN978-4-08-721201-3
『恥のきずな――新しい文献学のために』カルロ・ギンズブルグ著、上村忠男編訳、みすず書房、2022年1月、本体5,800円、四六判上製368頁、ISBN978-4-622-09057-1
★『哲学で抵抗する』は、ジョルジョ・アガンベンの訳書を数多く手掛けてきた高桑和巳(たかくわ・かずみ, 1971-)さんの初めての新書書き下ろしです。「本書は一種の哲学入門、哲学へのお誘いとして読んでいただけます。〔…〕哲学入門の先には、いわゆる哲学書を読むことが待っているのでは必ずしもない。/私たちの先には、言ってみれば、あらゆるものが哲学に見えてくるという奇妙な経験が待っている。〔…〕何を見ても哲学が見える、哲学に見える。本書で私が示したいと思っているのはそのような、世界のちょっと変わった見えかたです」(15頁)。「哲学とは、概念を云々することで世界の認識を更新する知的な抵抗である」(27頁)。主な内容や目次は書名のリンク先でご確認いただけます。
★『恥のきずな』は、イタリアの歴史学者ギンズブルグ(Carlo Ginzburg, 1939-)の最新論集『La lettera uccide』(Adelphi, 2021)収録の論考から、既訳書『ミクロストリアと歴史』(みすず書房、2016年)や『それでも。マキァヴェッリ、パスカル』(みすず書房、2020年)に収録済の5本を除いた26篇からさらにその半分の13篇を精選し、書き下ろしの「序言――日本の読者へ」と、編訳者の上村さんによる付論「イーミックとエティック――距離をとることにかんするギンズブルグの省察」を添えて1冊としたもの。書名は第7章の章題から採られていますが、著者自身による選択であるとのことです。
★次に既刊書から列記します。
『政治神学――主権の学説についての四章』カール・シュミット著、中山元訳、日経BPクラシックス、2021年11月、本体2,400円、4-6変型判上製264頁、ISBN978-4-296-00036-4
『フロイト、無意識について語る』フロイト著、中山元訳、光文社古典新訳文庫、2021年11月、本体1,100円、文庫判408頁、ISBN978-4-334-75453-2
『ラボラトリー・ライフ――科学的事実の構築』ブリュノ・ラトゥール/スティーヴ・ウールガー著、立石裕二/森下翔監訳、金信行/猪口智広/小川湧司/水上拓哉/吉田航太訳、ナカニシヤ出版、2021年9月、本体3,800円、A5判並製330頁、ISBN978-4-7795-1601-6
『新訳 実存哲学』カール・ヤスパース著、中山剛史訳、リベルタス出版、2021年10月、本体3,800円、A5判上製168頁、ISBN978-4-905208-11-2
★『政治神学』は、シュミットの1922年刊の主著『Politische Theologie. Vier Kapitel zur Lehre von der Souveränität』の新訳。翻訳にあたり34年刊第二版も参照したとのことで、第二版まえがきが訳出されています。また、凡例によれば付録として『政治的なものの概念』第二版に掲載された「中性化と脱政治化の時代」(Das Zeitalter der Neutralisierungen und Entpolitisierungen)も併載されています。『政治神学』の既訳書には、田中浩/原田武雄訳(未來社、1971年)があり、実に半世紀ぶりの新訳となります。
★『フロイト、無意識について語る』は、5篇の論考「心的な出来事の二つの原則の定式」1911年、「精神分析における無意識の概念についての論考」1912年、「想起、反復、徹底操作」1914年、「抑圧」1915年、「無意識について」1915年、を第一部とし、第二部に1921年の著書『集団心理学と自我分析』を収録したオリジナル論集。中山さんによる編訳で昨年刊行された一連の文庫本、『フロイト、夢について語る』2021年5月、『フロイト、性と愛について語る』2021年7月、に続く第3弾になります。
★なお、中山さんは来月、紀伊國屋書店よりエリック・ホッファー『大衆運動』の新訳を上梓されるご予定です。
★『ラボラトリー・ライフ』は、『Laboratory Life: the Social Construction of Scientific Facts』(Sage, 1979; revised paperback edition, Princeton University Press, 1986)の全訳。帯文に曰く「実験室(ラボ)ではどのように科学的事実が構築されていくのか。〔…〕ラボのエスノグラフィー第一世代の代表的研究にして、科学人類学・科学社会学における「古典」、待望の邦訳」と。巻末には金信行さんによる解説論文「解説論文 経験的研究においてブリュノ・ラトゥールの理論はいかなる意義を持つのか――ラトゥールが行なった経験的研究の比較検討に基づくアクターネットワーク理論の学説史/理論研究」が併録されています。
★『新訳 実存哲学』は、1938年に刊行された『Existenzphilosophie. Drei Vorlesungen』の全訳。帯文に曰く「ヤスパースがナチズムの危機の時代に公的な場所で行った最後の連続講義に基づく著書『実存哲学』の新訳」と。既訳には、鈴木三郎訳(理想社版『ヤスパース選集(1)』1961年)があります。「訳者によるあとがき」にはこうあります。「現在、ヨーロッパでは批判校訂版のカール・ヤスパース全集がスイスのシュヴァーベ社から刊行されつつあるが、〔…〕こうした動向に呼応して、このたび日本ヤスパース協会がヤスパース全集とは別個にヤスパースの著作の新訳を刊行することになった。まずは『実存哲学』『理性と実存』『歴史の起源と目標』などの著作の新訳を順次刊行していく予定である」。