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注目新刊:近藤和敬『ドゥルーズとガタリの『哲学とは何か』を精読する』講談社選書メチエ

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_a0018105_17363620.jpg弊社でお世話になっている著訳者の皆さんの最近のご活躍についてご紹介します。

★近藤和敬さん(著書:『カヴァイエス研究』、訳書:カヴァイエス『論理学と学知の理論について』)
『〈内在の哲学〉へ――カヴァイエス・ドゥルーズ・スピノザ』(青土社、2019年6月)以来一年ぶりとなる単独著『ドゥルーズとガタリの『哲学とは何か』を精読する』を今月上梓されました。ドゥルーズ&ガタリの最後の共著『哲学とは何か』の「一言一句を、その背景にあるあらゆる哲学史の襞にも分け入って「考古学的に」探査、丹念に、精密に、鮮やかに読み解いた画期的快著」(カバー表4紹介文)。また、6月末に発売された『現代思想2020年7月号』(特集=圏論の世界)には、論考「アラン・バディウの哲学と数学の関係についての批判的考察――「概念の哲学」のポスト・カヴァイエス的展開の諸相という観点から」を寄稿されています。


ドゥルーズとガタリの『哲学とは何か』を精読する――〈内在〉の哲学試論

近藤和敬著

講談社選書メチエ 2020年8月 本体2,900円 四六判並製608頁 ISBN978-4-06-520834-2
序論より:「〔本書は〕彼らのテクストにわたしが見出す〈内在の哲学〉の実像を浮かび上がらせようとするものである」(21頁)。「わたしの本書での真のねらいは、『哲学とは何か』における〈内在の哲学〉を理解するにとどまらず、そこからリスタートするための端緒をえることにこそある」(23頁)。


現代思想2020年7月号 特集=圏論の世界――現代数学の最前線

青土社 2020年6月 本体1,500円 A5判並製246頁 ISBN978-4-7917-1399-8

版元紹介文より:本特集では圏論の基本からさまざまな応用の実際、さらには哲学的な射程についても紹介・検討することで、今ひときわ注目をあつめる数学的思考法の真髄に迫る。


※なお月曜社では、ロドルフ・ガシェ『地理哲学――ドゥルーズ&ガタリ『哲学とは何か』について』の全訳を今秋刊行予定です。


★ジャン=ジャック・ルソーさん(ウェブ連載:『化学教程』)
「戦争法の諸原理」1756~1758年頃執筆、「サンピエール師の永久平和論抜粋」1761年刊、「永久平和論批判」1754~1758年頃執筆、の3篇の校訂版と解説論考をまとめた『Principes du droit de la guerre. Écrits sur la paix perpétuelle』(dir. Blaise Bachofen et Céline Spector, Vrin, 2008)の全訳が先月末に出版されました。「戦争法」は永見文雄訳、「抜粋」「批判」は三浦信孝訳です。既訳には、板倉裕治訳「戦争法原理」(ルソー『人間不平等起源論』所収、講談社学術文庫、2016年)、宮治弘之訳「サン=ピエール師の永久平和論抜粋」「永久平和論批判」(『ルソー全集(4)』所収、白水社、1978年;『ルソー・コレクション 文明』所収、白水社、2012年)があります。


ルソーの戦争/平和論――『戦争法の諸原理』と『永久平和論抜粋・批判』

ジャン=ジャック・ルソー著

ブレーズ・バコフェン/セリーヌ・スペクトール監修 ブリュノ・ベルナルディ/ガブリエッラ・シルヴェストリーニ編 永見文雄/三浦信孝訳
勁草書房 2020年7月 本体5,700円 A5判上製440頁 ISBN978-4-326-10281-5
帯文より:断片化していた草稿を綿密なテキスト生成研究により校訂、ルソーが意図していた形に復元。『戦争法の諸原理』に『永久平和論抜粋・批判』の新訳を合わせ解説も加えて、完全版ルソーの戦争/平和論を提示する。


★ジャン=リュック・ナンシーさん(著書:『ミューズたち』)
★安原伸一朗さん(訳書:ブランショ『問われる知識人』、共訳:『ブランショ政治論集』)
『Maurice Blanchot, passion politique』(Gallilée, 2011)の全訳が6月に発売されました。「本書は、モーリス・ブランショがロジェ・ラポルトに宛てた1984年12月22日の書簡、ディオニス・マスコロがフィリップ・ラクー=ラバルトに宛てた1984年7月27日の書簡、およびそれらに対するジャン=リュック・ナンシーの解説から成っている」と、訳者の安原さんは巻末に配された長文の「フランス的、たぶんフランス的な――訳者あとがきにかえて」で説明されています。


モーリス・ブランショ――政治的パッション

ジャン=リュック・ナンシー著 安原伸一朗訳

水声社 2020年6月 本体2,000円 46判上製174頁 ISBN978-4-8010-0486-3
本文より:「ブランショの「転向」はまた、キリスト教内的とでも言いうる転向でもあった。彼は、社会制度としてのカトリシズムから、無神論と有神論という組み合わせそれ自体を限りなく超出することの考察へと、つまり、「極限」とも呼びうる絶対的な超越の要素をも運んでゆく超出の考察へと向かったのだ」(43頁)。


★ヴィンフリート・メニングハウスさん(著書:『生のなかば』)
『Wozu Kunst? Ästhetik nach Darwin』(Suhrkamp, 2011)の訳書が先月刊行されました。訳者あとがきによれば、本書の底本は「著者が英語版〔2019年〕を作るために書き下ろしたドイツ語原稿」とのことです。凡例には、「英語版刊行にあたり全面的に改訂を施したドイツ語版原稿」と特記されています。訳者あとがきに曰く、『美の約束』(現代思潮新社、2013年)の第五章「ダーウィンとカントにおける美的「判断」」の発展形が本書(原題は『何のための芸術か?』)だそうです。


※弊社でもナンシーさんのブランショ論を刊行予定です。詳細はいずれ。


ダーウィン以後の美学――芸術の起源と機能の複合性

ヴィンフリート・メニングハウス著 伊藤秀一訳

法政大学出版局 2020年7月 本体3,600円 四六判上製302頁 ISBN978-4-588-01119-1


序説より(その1):「動物と人間の技芸はいずれも進化した適応とみなすことができるのか。そしてそれぞれの進化は可能的には同じような機能的利得によって促されてきたのか。さらに、人間の技芸だけに特有の特徴(たとえば芸術制作を目的としたテクノロジーの使用や虚構的なコンテンツ等々のような)を見ると、それに先立って進化した人間の適応がいかにしてそうした特徴の発現を容易にしてきたのか、そして現在の人間の技芸はいまだに潜在的な過去の起源と機能の痕跡を示しているのだろうか、という疑問もわき起こる。/本書は経験的なエビデンスの見直しをする一方で、こうした根本的な疑問にかかわる理論的な仮説を論じるものである。すべての動物と人間の技芸についての進化論的解説は、結局「何のための芸術か」という問いに対する返答を含んでいる」(4頁)。


序説より(その2):「ダーウィンの『人間の由来、性と関係する淘汰』が人文科学者と自然科学者の双方からまだ発見されていない〔…〕理由がある。人文科学者はこの本を読まない。なぜなら彼らは生物学的進化に興味がないからである。自然科学者もこの本を読まない。なぜなら彼らはそもそも800頁以上もある本など読まないし、それが150年以上前のものであるならなおのことである。実際に、私が話したことがある何人かの進化生物学者たちは、一度もダーウィンの本を読んだことがないと躊躇なく告白した」(9頁)。


序説より(その3):この〔本書第一章「競争的な求愛と美的判断/選り好み──ダーウィンの技芸モデル」〕精読の努力の重要な部分は今日まで自然科学と人文科学の両者によって無視されてきた何かを引き出すことである。ダーウィンは一貫して「美の感覚」に関する進化論の仮説と人文科学の美学の伝統の間を架橋してきた。特に、美的長所と美的判断に関する彼の一般的な前提は、イギリスとドイツの18世紀および19世紀の哲学的美学と民族学によって形成されている。もっと重要なのは、ダーウィンの考察の様々なニュアンスに精緻な注目を寄せることで、彼が技芸の動物モデルの根底にある機能――美しい外見の誇示や芸術的な能力が競争的な性的求愛の成功率を高める――の仮説を非常に慎重にかつ決定的な資格をもって人間の技芸の進化論的な理解を求める彼の探求に用いていることが明らかになるということである。つまるところ、この理解は、広く流布している「セックスのために歌う」仮説とはまったく異なっている」(10頁)。


★渡名喜庸哲さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
★柿並良佑さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』、ガシェ『脱構築の力』)
先月下旬に刊行された、日本アーレント研究会による『アーレント読本』に三氏が寄稿されています。「序」によれば法政大学出版局の『読本』シリーズは本書で17冊目で「女性の名を冠したものは、本書が初めて」とのことです。宮﨑裕助さんは、第Ⅰ部「アーレントにおける基本概念」の第14項「判断──政治的なものと歴史的なものの交叉」の執筆を担当されています。三浦隆宏さんらとともに共同編集を担当された渡名喜庸哲さんは、第Ⅱ部「現代世界におけるアーレント」の第4項「責任・道徳・倫理──アーレント責任論の意義と限界」の執筆を担当し、さらに第Ⅲ部「各国における受容」の第4項「フランス」を柿並良佑さんとともに共同執筆されています。


アーレント読本

日本アーレント研究会編

法政大学出版局 2020年7月 本体3,200円 A5判並製430頁 ISBN978-4-588-15109-5
帯文より:ベテランから若手まで総勢50名の気鋭の執筆者が、主要なテーマ群を最新の視点で掘り下げる決定版の入門書。各著作の解題や略年譜付。


★中井亜佐子さん(著書『〈わたしたち〉の到来』、共訳:ロイル『デリダと文学』)
先月末に発売された、日本初となるウェールズ文学の5人の作家の小説作品を各1篇ずつ収めたアンソロジーで、マージアッド・エヴァンズ(Margiad Evans / Peggy Eileen Whistler, 1909–1958)の「失われた釣り人」(The Lost Fisherman)の翻訳と解題を担当されています。


暗い世界――ウェールズ短編集

河野真太郎編

堀之内出版 2020年7月 本体1,800円 B6変型判上製244頁 ISBN978-4-909237-53-8
編者「おわりに」より:本書のために選んだ作品は、ウェールズという、多くの読者にとって縁遠い国の経験を描くものというよりは、「近代」と呼ぶしかない、私たちに共有された経験を描くものです。ですがやはり、その一方で、それぞれの作品には、ウェールズの、それぞれの時代における特殊な経験が見まごうことなく刻みこまれてい〔ます。…〕そのような特殊な経験を理解し、作品を十全に楽しむためには、ある程度の補助線が必要になる部分があります。そこで本書では各作品の訳者による解題を付しました。ぜひともそちらも読んで、一読では明らかにならなかったかもしれない、それぞれの作品の側面を発見していただきたいと思います。



★久保明教さん(著書:『ブルーノ・ラトゥールの取説』)
★ジュディス・バトラーさん(著書:『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★清水知子さん(著書:『文化と暴力』、共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★アントニオ・ネグリさん(著書:『芸術とマルチチュード』)
先月末発売された『現代思想2020年8月号』(特集=コロナと暮らし)で、久保さんが猪瀬浩平との往復書簡「忘却することの痕跡――コロナ時代を記述する人類学」を寄稿しています。また、バトラーの論考「世界の表面の人間の痕跡」を清水知子さんがお訳しになっています。さらに、ネグリさんとハートさんの共同論文「〈帝国〉からの二〇年」が訳出されています。バトラーさんの論考の原題は「Human Traces on the Surfaces of the World」で、清水さんの解題によれば、Hemi Pressの特集ページConTactosで4月20日に発表されたもの。ネグリさんとハートさんの論文の原題は「Empire, Twenty Years On」で、英国の雑誌「ニューレフト・レヴュー」の2019年11-12月号に掲載されたもの。


現代思想2020年8月号 特集=コロナと暮らし――対策の現場から

青土社 2020年7月 本体1,500円 A5判並製246頁 ISBN978-4-7917-1400-1

関連特集号:4月末発売『現代思想2020年5月号』(緊急特集=感染/パンデミック――新型コロナウイルスから考える)、8月中旬発売予定『現代思想2020年9月臨時増刊号』(総特集=コロナ時代を生きるための60冊)。


★ヒロ・ヒライさん(編著:『ミクロコスモス 第1号』)
後藤護さんが編集人をつとめ、好評を博している『機関精神史』の第2号が2刷(2020年2月)となり、ようやく出会うことができました。特集は「観念史の破壊」。今号も充実した誌面となっています。ヒロ・ヒライさんは後藤護さんを聞き手にインタヴューを受けておられます。学術から音楽まで幅広い話題にお答えになっています。


機関精神史 2019年第2号 特集*観念史の破壊
後藤護編集
高山えい子発行 2019年11月 2,300円 A5判並製232頁


目次:
序文
 観念史宣言――「脱領域」をさまよう蝶たち|後藤護
interviews
 魂のゆくえ――BHのマザーシップ・コネクション|ヒロ・ヒライ(聞き手・構成:後藤護)
 山本貴光の宇宙――百学のコペルニクス的転向〔ロックンロール〕|山本貴光(聞き手・構成:後藤護)
ideas
 結晶の観念史|奥村大介
 舌上のユートピア――小野二郎の飲食文化論|山田宗史
 メエルシュトレエムを追いかけて――E・ユンガーをめぐる渦の観念史|内田賢太郎
 幽境の人形劇|ランシブル
translations
 ロマン主義とマニエリスム|マリアンネ・タールマン(平井敏晴/高山えい子訳)
 外部と内部・廃墟と都市|ミハイル・ヤンポリスキイ(澤直哉訳)
books
 書物漫遊記――観念史への旅
  アレゴリーの時代の驚異について|内田賢太郎
  エンサイクロペディアの根源へ|加藤聡
  文化に常しえに流れる暗黒|後藤護
  劇場としての食卓|山田宗史
  脳髄の散歩者|ランシブル
  輝ける闇|山田宗史
  霧、未だ退治されず|空想メスメリスト
  地球よ、まわれ!|高山えい子
  メトセラに帰れ――スタロバンスキー追悼、あるいは『作用と反作用』について|奥村大介


執筆者プロフィール
編集後記


※なお、山本さんへのインタヴューの冒頭で、私と高山えい子さんとの間で交わされた私信について後藤さんが言及してくださっています。私の私信は、『機関精神史』第1号に掲載された後藤さんの序文の一節に関わるものです。どこにも発表する機会がないので、ここで一言申し上げておきますが、ご懸念は無用です。山本さんが前段で仰っていることに同意いたします。


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