★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
ハイデガー『存在と時間』(全8巻、光文社古典新訳文庫)の第3巻と、ウィーン『マルクスの『資本論』』(ポプラ社、2007年)の改題新書版『今こそ『資本論』』(ポプラ新書)を先週上梓されました。
ハイデガー『存在と時間3』に収録されているのは、第一部「時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明」第一篇「現存在の予備的な基礎分析」第三章「世界の世界性」第一七節「指示とめじるし」から、第四章「共同存在と自己存在としての世界内存在、「世人〔ひと〕」第二七節「日常的な自己存在と〈世人〉」まで。中山さん訳の『存在と時間』の最大の特徴は、長大な解説にあります。翻訳と懇切解説が一冊で読めることによって理解が深まるわけです。
なお光文社古典新訳文庫の9月新刊には、ソポクレス『オイディプス王』河合祥一郎訳、マキャヴェッリ『君主論』森川辰文訳、などが予告されています。
フランシス・ウィーン『今こそ『資本論』』は単行本刊行からすでに10年が経過している、という巻頭言にあらためて驚きます。巻頭言というのは、佐藤優さんによる「資本主義システムの下で生き残るために――新書化によせて」という一文です。「ウィーンの『資本論』解釈は、宇野〔弘蔵〕に近い」と佐藤さんは指摘しています。その理由については店頭で本書をご確認下さい。この巻頭言で佐藤さんはこうもしたためられています。「筆者は、学生時代だけでなく、外交官時代も、職業作家になった今も、『資本論』の論理は正しいと考えている。〔・・・〕自らの利潤を犠牲にして、労働者に回すような「人道的」資本家は、資本主義システムの下では生き残ることができないのだ。これが階級社会の本質だ」(5頁)。「資本主義が人間にとって理想的なシステムとは思わない」(6頁)。佐藤さんは親本刊行の時点で書かれた本書の巻末解説「『資本論』の論理で新自由主義を読み解く」において、「本書はこれから『資本論』の標準的な入門書になるであろう」とお書きになっています。なお本書では中山さんによる解説やあとがきの類は掲載されていません。
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