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注目新刊:2017年1月~3月

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通常の週末記事で手一杯で、言及できてない書目のフォローをここしばらくできていませんでしたが、今年からは少しでも多くの書名を留めておくよう心掛けたいと思います。とはいえ今回できたのは、アマゾン・ジャパンの「人文・思想」分野とその関連書2か月分強の見直しだけで、他分野全体を通覧できてはいません。往々にして「これは」という発見は他分野のものだったりするので、本当は全分野の新刊一覧にしっかり目を通すべきですが、昔ネットでも公開されていたTRCの週刊新刊全点案内のような便利な情報源が見当たらないのが残念です。アマゾンの「人文・思想」分野には学参に移してもらった方がいいような書目や、似たようなハウツー電子書籍も多数見受けるので、そういう中から選別していくのがしんどいですね。

★2017年1月既刊

0105『アレント入門』中山元著、ちくま新書
0106『日本十二支考――文化の時空を生きる』濱田陽著、中公叢書
0110『本屋、はじめました――新刊書店Title開業の記録』辻山良雄著、苦楽堂
0110『キリストを生きる』トマス・ア・ケンピス著、山内清海訳、文芸社セレクション
0110『現代語訳 蓮華面経』仁科龍著、雄山閣
0110『「革命」再考――資本主義後の世界を想う』的場昭弘著、角川新書
0112『質的研究法』G・W・オルポート著、福岡安則訳、弘文堂
0112『ジェンダー史とは何か』ソニア・O・ローズ著、長谷川貴彦/兼子歩訳、法政大学出版局
0113『共時性の深層――ユング心理学が開く霊性への扉』老松克博著、コスモスライブラリー
0114『われわれはいかに働き どう生きるべきか――ドラッカーが語りかける毎日の心得、そしてハウツー』P・F・ドラッカー述、上田惇生訳、ダイヤモンド社
0120『本能の現象学』ナミン・リー著、中村拓也訳、晃洋書房
0120『カント 美と倫理とのはざまで』熊野純彦著、講談社
0120『カント哲学の奇妙な歪み――『純粋理性批判』を読む』冨田恭彦著、岩波現代全書
0124『社史の図書館と司書の物語――神奈川県立川崎図書館社史室の5年史』高田高史著、柏書房
0124『アーカイヴの病〈新装版〉』ジャック・デリダ著、福本修訳、法政大学出版局
0125『生の悲劇的感情〈新装版〉』ウナムーノ著、神吉敬三/佐々木孝訳、法政大学出版局
0125『キリスト教教父著作集 第2巻I エイレナイオス1 異端反駁1』大貫隆訳、教文館
0125『泳ぐ権力者――カール大帝と形象政治』ホルスト・ブレーデカンプ著、原研二訳、産業図書
0125『ダンヒル家の仕事』メアリー・ダンヒル著、平湊音訳、未知谷
0125『ローカルブックストアである――福岡 ブックスキューブリック』大井実著、晶文社
0125『「本をつくる」という仕事』稲泉連著、筑摩書房
0126『岩波茂雄文集 第1巻 1898-1935年』植田康夫/紅野謙介/十重田裕一編、岩波書店
0126『正常と病理〈新装版〉』ジョルジュ・カンギレム著、滝沢武久訳、法政大学出版局
0126『世界宗教の経済倫理――比較宗教社会学の試み 序論・中間考察』マックス・ウェーバー著、中山元訳、日経BPクラシックス
0128『学生との対話』小林秀雄著、国民文化研究会/新潮社編、新潮文庫

一覧をローラーするまで『キリスト教教父著作集 第2巻I エイレナイオス1 異端反駁1』(大貫隆訳、教文館)に気づいていなかったのは不覚でした。エイレナイオス『異端反駁』はこれまでに第3分冊と第4分冊が小林稔訳で1999年に刊行されましたがその後しばらく続刊が途絶えていました。大貫先生が訳者を務められているということで、今後はさほど待たずに完結しそうな気がします。

文芸社セレクションは文庫サイズのシリーズで、ブラヴァツキーの『シークレット・ドクトリン』第三巻を昨年刊行したりして、要チェックなレーベルです。今般もトマス・ア・ケンピスの新訳(『キリストを生きる』山内清海訳)が発売されていて驚きました。雄山閣の単行本、仁科龍『現代語訳 蓮華面経』は同社の『大蔵経全解説大事典』(1998年、新装版2016年)よりの抜粋とのこと。同事典は税込45,360円なので、こうした切り売りは悪い感じはしません。

『泳ぐ権力者――カール大帝と形象政治』(原研二訳、産業図書)はブレーデカンプの8点目の訳書。初期の訳書である『古代憧憬と機械信仰――コレクションの宇宙』(藤代幸一/津山拓也訳、法政大学出版局、1996年)が品切のようですが、ブレーデカンプの知名度や業績から言ってそろそろ文庫の仲間入りを果たしても良いような気がします。


★2017年2月既刊
0201『絵画の歴史――洞窟壁画からiPadまで』デイヴィッド・ホックニー/マーティン・ゲイフォード著、木下哲夫訳、青幻舎
0201『シュタイナーのアントロポゾフィー医学入門』日本アントロポゾフィー医学の医師会監修、ビイングネットプレス
0203『ドイツ啓蒙と非ヨーロッパ世界――クニッゲ、レッシング、ヘルダー』笠原賢介著、未來社
0206『天災と日本人――地震・洪水・噴火の民俗学』畑中章宏著、ちくま新書
0206『カンギレムと経験の統一性――判断することと行動すること 1926-1939年』グザヴィエ・ロート著、田中祐理子訳、法政大学出版局
0206『『法華経釈問題』翻刻研究――翻刻校訂・国訳〔新版〕』『法華経釈問題』翻刻研究会 著、ノンブル社
0206『メディアの歴史――ビッグバンからインターネットまで』ヨッヘン・ヘーリッシュ著、川島建太郎訳、法政大学出版局
0207『アナトミカル・ヴィーナス――解剖学の美しき人体模型』ジョアンナ・エーベンステイン著、布施英利監修、グラフィック社
0209『芸術の終焉のあと――現代芸術と歴史の境界』アーサー・C・ダントー著、山田忠彰監訳、河合大介/原友昭/粂和沙訳、三元社

ホックニーの『絵画の歴史――洞窟壁画からiPadまで』は同版元のホックニーの既刊書『秘密の知識』(木下哲夫訳、青幻舎、2006年;普及版2010年)が品切になっていることを考えると早めに購入しておくのがいいのかもしれません。同じく芸術の分野ではダントーの『芸術の終焉のあと』は見逃せない一書(原著は1997年刊)。さらに『メディアの歴史』はキットラーやボルツに並ぶドイツ・メディア論の大家ヘーリッシュ(Jochen Hörisch, 1951-)の待望の初訳。このところ書店人や司書、出版人の新刊は色々と出ておりそれぞれ注目すべきなのですが、本書は特に業界人必読と強く推すべき重厚な一冊です。


★2017年2月刊行予定
0214『アート・パワー』ボリス・グロイス著、石田圭子/齋木克裕/三本松倫代/角尾 宣信訳、現代企画室
0214『ソシオパスの告白』M・E・トーマス著、高橋祥友訳、金剛出版
0214『セルバンテス全集 第2巻 ドン・キホーテ 前篇』岡村一訳、水声社
0215『キリスト教神学で読みとく共産主義』佐藤優著、光文社新書
0216『プルーストと過ごす夏』アントワーヌ・コンパニョン/ジュリア・クリステヴァ/ほか著、國分俊宏訳、光文社
0217『イスラーム入門――文明の共存を考えるための99の扉』中田考著、集英社新書
0217『アレフ』J・L・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫
0222『芸術の言語』ネルソン・グッドマン著、戸澤義夫/松永伸司訳、慶應義塾大学出版会
0222『〈新装〉増補修訂版 相互扶助論』ピョートル・クロポトキン著、大杉栄訳、同時代社
0222『オネイログラフィア――夢、精神分析家、芸術家』ヴィクトル・マージン著、斉藤毅訳、書肆心水
0222『エックハルト〈と〉ドイツ神秘思想の開基――マイスター・ディートリッヒからマイスター・エックハルトへ』長町裕司著、春秋社
0227『ドゥルーズと多様体の哲学――二○世紀のエピステモロジーにむけて』渡辺洋平 著、人文書院
0227『主体の論理・概念の倫理――二〇世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義』上野修/米虫正巳/近藤和敬編、以文社
0228『義科『廬談』摩訶止觀――論草3』天台宗典編纂所編、春秋社
0228『アフリカ美術の人類学――ナイジェリアで生きるアーティストとアートのありかた』緒方しらべ著、清水弘文堂書房
0228『無神論と国家』坂井礼文著、ナカニシヤ出版
0228『メルロ=ポンティ哲学者事典(第3巻)歴史の発見・実存と弁証法・「外部」の哲学者たち』モーリス・メルロ=ポンティ編著、加賀野井秀一/伊藤泰雄/本郷均/加國尚志監修・翻訳、白水社

ホックニーやダントーの新刊に続いて芸術論関連ではグロイス『アート・パワー』やグッドマン『芸術の言語』、マージン『オネイログラフィア』と、どんどん話題書が続くことになり、活況を呈するでしょう。水声社版『セルバンテス全集』はアマゾンでは扱いがありませんが、まさか全集が刊行開始とは驚きです。哲学系では全3巻別巻1予定の『メルロ=ポンティ哲学者事典』に注目。4月には第2巻、6月には第1巻、8月に別巻の刊行が予定されています。基礎文献です。


★2017年3月刊行予定
0301『世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話』ボブ・エクスタイン著、藤村奈緒美訳、 エクスナレッジ
0308『語録 要録』エピクテトス著、中公クラシックス
0311『社会問題としての教育問題――自由と平等の矛盾を友愛で解く社会・教育論』ルドルフ・シュタイナー著、今井重孝訳、イザラ書房
0311『アルキビアデス クレイトポン』プラトン著、三嶋輝夫訳、講談社学術文庫
0314『グリム兄弟言語論集――言葉の泉』ヤーコプ・グリム/ヴィルヘルム・グリム著、千石喬/高田博行/木村直司/福本義憲訳、ひつじ書房
0315『幻覚V―器質・力動論2』アンリ・エー著、影山任佐/阿部隆明訳、金剛出版
0317『シュタイナー 根源的霊性論――バガヴァッド・ギーターとパウロの書簡』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳、春秋社
0322『〈世界史〉の哲学 近世篇』大澤真幸著、講談社
0330『ラカン 真理のパトス』上尾真道著、人文書院

まだリリースされている情報が少ないため点数も少ないものの、『グリム兄弟言語論集』と、エー『幻覚』第V巻は押さえたいところです。2点とも高額本ですが、品切になればいっそう高値がつくことは目に見えています。『幻覚』は全5巻完結で、品切になっている既刊書はオンデマンド版が出るようです。ほっとされる読者もいらっしゃるのではないかと想像します。


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