★まず、注目の新刊書および既刊書を列記します。
『地球の歩き方 ムーJAPAN~神秘の国の歩き方』地球の歩き方編集室(編)、地球の歩き方(発行)、Gakken(発売)、2024年3月、本体2,200円、A5変型判並製400頁、ISBN978-4-05-802153-8
『パーソナリティの発達』C・G・ユング(著)、横山博(監訳)、大塚紳一郎(訳)、みすず書房、2023年3月、本体4,000円、四六判上製312頁、ISBN978-4-622-09683-2
『すばらしい孤独――ルネサンス期における読書の技法』リナ・ボルツォーニ(著)、宮坂真紀(訳)、白水社、2024年2月、本体6,300円、4-6判上製362頁、ISBN978-4-560-09399-3
『話が通じない相手と話をする方法――哲学者が教える不可能を可能にする対話術』ピーター・ボゴジアン/ジェームズ・リンゼイ(著)、藤井翔太(監訳)、遠藤進平(訳)、晶文社、2024年2月、本体2,400円、四六判並製400頁、ISBN978-4-7949-7409-9
『無用の効用』ヌッチョ・オルディネ(著)、栗原俊秀(訳)、河出書房新社、2023年2月、本体2,250円、46判上製272頁、ISBN978-4-309-23124-2
★『地球の歩き方 ムーJAPAN~神秘の国の歩き方』は、『地球の歩き方 ムー 異世界〔パラレルワールド〕の歩き方~超古代文明 オーパーツ 聖地 UFO UMA』(2022年2月)に続く「地球の歩き方」と「ムー」の第2弾。第1弾は世界各地の紹介でしたが、今回は日本国内篇です。「アナタも行ける47都道府県のミステリースポットを厳選」(帯文より)。オールカラーでてんこ盛りの内容です。第1弾は2か月で13万部突破したとのこと。第2弾も第1弾同様にリバーシブルの特製帯(マイナス2mm帯※)付きです。返品改装されると小口が研磨されるので、研磨痕が嫌いな方はお早めのご購入をお薦めします。
※マイナス2mm帯・・・書籍本体の表紙より天地が2mmだけ短い帯のこと。カバーが寸足らずになったものではない。『地球の歩き方 ムー』の場合、書籍本体の表紙にバーコードが付いているので、もともとは本体のみでの流通を想定したもの。それに宣伝用のマイナス2mm帯がつき、さらに標準的な寸法の帯も付いている。
★『パーソナリティの発達』は、ドイツ語版ユング著作集の第17巻『パーソナリティの発達』に収録された全8篇に、同第8巻収録の論文「人生の転機」(Die Lebenswende, 1930)を加えて訳出したもの。8篇は以下の通り。
子どものこころの葛藤(Über Konflikte der kindlichen Seele, 1910/39/70)
フランシス・G・ウィックス著『子どものこころの分析』への序文(Einführung zu Frances G. Wickes «Analyse der Kindesseele», 1927/31)
教育にとっての分析心理学の意義(Die Bedeutung der Analytischen Psychologie für die Erziehung, 1923/71)
分析心理学と教育(Analytische Psychologie und Erziehung, 1924/26/70)
才能に恵まれた子ども(Der Begabte, 1942/43)
個人的教育にとっての無意識の意義(Die Bedeutung des Unbewussten für die individuelle Erziehung, 1925/28/71)
パーソナリティについて(Vom Werden der Persönlichkeit, 1932/34)
心理学的関係としての結婚(Die Ehe als psychologische Beziehung, 1925/31)
★「本書が伝えているのは〔…〕大人としての責任、本当の意味で成長することの困難とその意義といった、重みのある課題ばかりです。けれども、だからこそ本書に収められた各論考は生きていく上で何度も振り返る価値のある、そしてそのたびに味わいが増していく、特別なものばかりなのです。/ユング心理学に専門的な関心を持つ方だけでなく、親と子の関係、教育の役割、人間の成長、つまり心に関心を抱くすべての人にとって、本書はかけがえのない一冊になる」(訳者あとがきより)。
★『すばらしい孤独』は、ピサ高等師範学校名誉教授でイタリア文学研究者のリナ・ボルツォーニ(Lina Bolzoni, 1947-)さんによる『Una meravigliosa solitudine. L'arte di leggere nell'Europa moderna』(Einaudi, 2019)の全訳。帯文に曰く「ルネサンス期の知識人にとって、著書は「魂の肖像」であり、読書は古の知性との対話だった。ペトラルカ、マキャヴェッリ、モンテーニュら著名な文人の著作に、当時の読書のあり方を見る」。ボルツォーニの訳書は、『記憶の部屋』『イメージの網』『クリスタルの心』(いずれも、ありな書房刊)に続く4点目です。
★『話が通じない相手と話をする方法』は、米国の哲学者ピーター・ボゴジアン(Peter Boghossian, 1966-)と米国の批評家ジェームズ・リンゼイ(James Lindsay, 1979-)の共著『How to Have Impossible Conversations: A Very Practical Guide』(Da Capo Lifelong Books, 2019)の全訳。「この本のテーマは、考えが極端に異なる人と効果的にコミュニケーションをとる方法である。私たちは分断と二極化の時代を生きていて、互いに話しあうことがなくなっている。このことの影響は広大で深刻だ」(7頁)。「敬意を保ったままで、あなたを勇気づけ、そして凝り固まった考えを変えることすらできる会話、それは可能なのだ――たとえ深い断絶があったとしても」(19頁)。本書ではそのための「36のテクニック」が紹介されています。
★1年前の新刊ですが、『無用の効用』は、イタリアのルネサンス文化研究者でジョルダーノ・ブルーノ研究の第一人者ヌッチョ・オルディネ(Nuccio Ordine, 1958-)さんの著書『L'utilità dell'inutile. Manifesto』(Bompiani, 2013)の訳書。「この世には、実用的な目的に囚われない、「知ること」そのものが目的であるような知識がある。そうした知識がどう「役に立つ」のかを明らかにすることが、この本のテーマである。私欲のために用いられるのではない、無償の知。実地での応用など考えない、金もうけとは無縁の知。それは、わたしたちの社会を発展させ、文化を育てていくうえで、なくてはならない役割を果たす「知」でもある」(11頁)。オルディネさんの単独著の既訳書には『ロバのカバラ――ジョルダーノ・ブルーノにおける文学と哲学』(加藤守通訳、東信堂、2002年)があります。
★続いて、最近出会いのあった新刊を列記します。
『アブソリュート・チェアーズ――現代美術のなかの椅子なるもの』埼玉県立近代美術館/愛知県美術館(編)、平凡社、2024年3月、本体3,000円、B5変型判上製184頁、ISBN978-4-582-20735-4
『キングと兄ちゃんのトンボ』ケイスン・キャレンダー(著)、島田明美(訳)、金原瑞人選モダン・クラシックYA:作品社、2024年3月、本体2,200円、46判並製240頁、ISBN978-4-86793-022-9
『現代思想2024年4月号 特集=〈子ども〉を考える』青土社、2024年3月、本体1,600円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1462-9
『琉球 揺れる聖域――軍事要塞化/リゾート開発に抗う人々』安里英子(著)、藤原書店、2024年3月、本体3,600円、四六判上製496頁、ISBN978-4-86578-417-6
『花巡る――黒田杏子の世界』『黒田杏子の世界』刊行委員会(編)、藤原書店、2024年3月、本体3,300円、四六判上製440頁+カラー口絵8頁、ISBN978-4-86578-416-9
『日本ワイン産業紀行』叶芳和(著)、作品社、2024年3月、本体2,700円、A5判並製352頁、ISBN978-4-86578-418-3
★『アブソリュート・チェアーズ』は、埼玉県立近代美術館(2024年2月17日~5月12日)で開催中の同名展覧会の公式図録。「「椅子」をめぐる国内外29組のアーティストの平面・立体・映像作品から、現代美術における椅子がもつ意味や象徴性を考察する」(帯文より)。収録作家はアンディ・ウォーホル、アンナ・ハルプリン、石田尚志、潮田登久子、岡本太郎、オノ・ヨーコ、草間彌生、工藤哲巳、クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)、ジム・ランビー、シャオ・イーノン(邵逸農)&ムゥ・チェン(慕辰)、ジョージ・シーガル、スッティー・クッナーウィチャーヤノン、ダイアナ・ラヒム、高松次郎、竹岡雄二、ダラ・バーンバウム、名和晃平、ハンス・オプ・デ・ビーク、檜皮一彦、副産物産店、フランシス・ベーコン、マルセル・デュシャン、ミシェル・ドゥ・ブロワン、宮永愛子、ミロスワフ・バウカ、YU SORA、ローザス、渡辺眸。埼玉のあと、愛知県美術館(2024年7月18日~9月23日)でも開催。展覧会で出展があるかどうかは、各館のリンク先でご確認下さい。
★『キングと兄ちゃんのトンボ』は、「金原瑞人選オールタイム・ベストYA」に続く新たなシリーズ「金原瑞人選モダン・クラシックYA」の初回配本。「アイデンティティを探し求める黒人少年の気づきと成長から、弱さと向き合い、自分を偽らずに生きることの大切さを知る物語」(帯文より)。続刊予定にヴィーラ・ヒラナンダニ『夜の日記』6月刊、リサ・イー『メイジー・チェンのラストチャンス』8月刊、などが挙がっています。
★『現代思想2024年4月号 特集=〈子ども〉を考える』は、版元紹介文に曰く「学校の内外に広がる教育の場面を背景としつつも、より広い視野のもと現代の日本において子どもとは何かを問い、子どもを産み育てるとはいかなることかを見つめ直す」。貴戸理恵さんと矢野利裕さんの討議「子どもがいる世界を豊かに――学校内外に広がる共同性から」のほか、19篇の論考を収録。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。
★藤原書店さんの3月新刊は3点。目次詳細は各書名のリンク先でご覧いただけます。『琉球 揺れる聖域』は、「1991年版に大幅に増補し、「本土復帰」から50年以上を経た沖縄の今を抉る」(帯文より)。著者の安里英子(あさと・えいこ, 1948-)さんは沖縄県那覇市首里生まれのライター。『花巡る』は、「稀有の俳人、一周忌記念出版。交遊のあった文化人・俳人・「藍生」会員など多数の方々の寄稿により、84年の生涯を多角的に照らす」(帯文より)。『日本ワイン産業紀行』は「急速に活性化する「日本ワイン」産業、日本各地のワイナリーを訪れた現地ルポ」(帯文より)。著者の叶芳和(かのう・よしかず, 1943-)さんは経済学者。農業誌『農業経営者』への寄稿が本書の中核となっています。