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注目新刊:イアン・ハミルトン・グラント『シェリング以後の自然哲学』人文書院、ほか

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『シェリング以後の自然哲学』イアン・ハミルトン・グラント(著)、浅沼光樹(訳)、人文書院、2023年12月、本体6,000円、4-6判上製456頁、ISBN978-4-409-03129-2
『超越論的存在論――ドイツ観念論についての試論』マルクス・ガブリエル(著)、中島新/中村徳仁(訳)、人文書院、2023年12月、本体4,500円、4-6判上製348頁、ISBN978-4-409-03128-5

『反ユダヤ主義と「過去の克服」――戦後ドイツ国民はユダヤ人とどう向き合ったのか』高橋秀寿(著)、人文書院、2023年12月、本体4,500円、4-6判上製334頁、ISBN978-4-409-51100-8

『ガリバー』クロード・シモン(著)、芳川泰久(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2023年12月、本体4,500円、四六変型判上製480頁、ISBN978-4-86488-290-3

『魂の語り部 ドストエフスキー』藤倉孝純(著)、作品社、2023年12月、本体2,700円、46判上製208頁、ISBN978-4-86793-012-0

『ウィキペディアでまちおこし――みんなでつくろう地域の百科事典』伊達深雪(著)、紀伊國屋書店、2023年12月、本体2,000円、46判並製326頁、ISBN978-4-314-01202-7



★人文書院さんの12月新刊より3点。『シェリング以後の自然哲学』は、英国の哲学者イアン・ハミルトン・グラント(Iain Hamilton Grant, 1963-)の単独著第一作『Philosophies of Nature After Schelling』(Continuum, 2006)の全訳。底本は2008年刊のペーパーバック版で、巻頭には「ペーパーバック版の序」が訳出されています。帯文に曰く「シェリングを現代哲学の最前線に呼び込み、カント主義批判により思弁的実在論の始原ともなった重要作」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。グラントの著書の翻訳はこれが初めてです。


★「本書は二つの課題を果たすことを意図していた。第一の課題は、シェリングの哲学上および概念上の驚嘆すべき独創性をヨーロッパ哲学の一つの文脈〔〈カント以後〉の哲学という文脈〕のなかで導入するということである。〔…〕第二の課題は、ヨーロッパ哲学の問題に直面してシェリングがみずからの自然学にもとづいて考案した解決策を推奨すること、さらにシェリングの解決策を用いて〔じっさいに〕ある種の〈自然の形而上学〉を構築する、ということである」(ペーパーバック版の序、9頁)。「本書で論じられている存在論、つまり、シェリングが提示している〈時間的であるとともに場の理論でもあるような力能の存在論〉とはどのようなものか、という問題が、自然哲学についての私の次著『シェリング以後の〈根拠〉について』(仮題)では集中的に論じられるだろう」(同、11頁)。


★『超越論的存在論』は、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル(Markus Gabriel, 1980-)の著書『Transcendental Ontology: Essays in German Idealism』(Continuum. 2011)の全訳。帯文によれば「物自体への接近を論じるメイヤスーらの思弁的実在論と、ヘーゲルを独自の形で解釈するブランダム、マクダウェルらの分析哲学の批判的検討により、カント以降のドイツ観念論を新たな存在論として再構成することを試みた力作」。「この著作の大部分は、すでにドイツ語で執筆・刊行されていたいくつかの論考を修正・改稿するかたちで編まれており、ドイツ語から英語への翻訳はほぼTom Krellが手掛けたとある。本書の註に「原訳者による注」があるのはそのためだ」(訳者あとがきより)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。


★「本書独自の貢献は、カント以降の観念論の重要な動向のいくつかを超越論的存在論という観点から再構成すること、そして、その超越論的存在論という構想の概略を現代的な条件のもとで擁護することになる。私はカント以降の観念論のなかにある超越論的存在論の本質的なモチーフをいくつか取り上げ、それらを存在-神学の文脈から切り離すことを試みたい」(序論、18頁)。「超越論的存在論は、世界の在り方についての私たちの思考そのものが世界の一つの在り方なのである、という考えを付け加えてくれる。〈あちらの方に摩天楼が実在する〉という私がいま抱いている思考そのものは摩天楼ではない。ところが、私の思考そのものが摩天楼でなくとも、私の思考そのものは実在しているというわけだ」(同、21~22頁)。


★『反ユダヤ主義と「過去の克服」』は、「歴史的犯罪に直面する「民衆」〔……〕戦後、ドイツ人が「ユダヤ人」の存在を通してどのように「国民」を形成したのかを明らかにし、「過去の克服」に新たな視座を与える画期作」(帯文より)。「「過去の克服」と反ユダヤ主義論」「ナチ期・終戦期の反ユダヤ主義とドイツ国民」「終戦後の反ユダヤ主義」「「過去の克服」の生成と反ユダヤ主義」「戦後反ユダヤ主義の構造変化」「「現代」の反ユダヤ主義と「過去の克服」」の全6章立て。著者の高橋秀寿(たかはし・ひでとし, 1957-)さんは立命館大学文学部特任教授。ご専門はドイツ現代史・現代社会論です。


★『ガリバー』は、幻戯書房さんのシリーズ「ルリユール叢書」の第37回配本(51冊目)。フランスのノーベル文学賞作家クロード・シモン(Claude Simon, 1913–2005)の3作目の小説『Gulliver』(Calmann-Lévy, 1952)の全訳。帯文に曰く「第二次大戦末期の、とある日曜日の出来事の〈居場所のなさ〔デペイズマン〕〉をめぐる初期の長編小説。本邦初訳」。訳者の芳川泰久さんは本書を次のように評しておられます。「一日のうちに起こす小さな出来事が積み重なるうちに、やがて物語に一つの方向性が生まれてくるのだが、その成り行きの取り返しのつかなさには、分かっているのにどうにもならないような不可抗力性があって、それが悲劇の趣にさえ繋がっているように感じられる」(464頁)。「最後のページを閉じても、開かれたままの物語はいかにして可能かをめぐるシモンの探究心のようなものが刻まれている」(同)。


★『魂の語り部 ドストエフスキー』は、著者の藤倉孝純(ふじくら・たかすみ, 1937-)さん自身による紹介によれば、「若い頃、ドストエフスキーは秘密結社に加わり、ためにシベリアで懲役・流刑の十年を余儀なくされた。「信念の更生」とは、かくも長い年月にわたる心労を人に与えずにはおかない。本書は彼の五編の作品を手掛かりに、更生の推移を確かめようとするものである」(はじめに、3頁)。五編というのは、『スチェパンチコヴォ村とその住人』『死の家の記録』『夏象冬記』『地下室の手記』、そして論文「土地主義宣言(雑誌『ヴレーミャ』創刊に際しての予約募集広告文)」。主に河出書房新社版の『ドストエーフスキイ全集』が参照されています。


★『ウィキペディアでまちおこし』は、京都府立高校で学校図書館司書を務める伊達深雪(だて・みゆき)さんが「ウィキペディアやウィキペディアタウンの魅力や課題、その可能性について、またウィキペディア編集とウィキペディアタウン開催のための基本的なノウハウについて、経験から得た知識」(はじめに、12頁)をまとめた一冊。ウィキペディアタウンとは、ウィキペディアで「地域情報を編集・発信する」取り組みのこと。「ウィキペディアタウン、始めました――地域を知る・新たなつながりが生まれる」「読者から編者へ――地域情報を“正しく”発信する」「イベントから日常へ――ウィキペディアタウンの課題と可能性」の3部構成。随所にコラムもちりばめられています。

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