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注目新刊:斎藤幸平『マルクス解体』講談社、ほか

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『記憶理論の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1903-1904年度』アンリ・ベルクソン(著)、藤田尚志/平井靖史/天野恵美理/岡嶋隆佑/木山裕登(訳)、書肆心水、2023年10月、本体3,600円、A5判並製416頁、ISBN978-4-910213-43-9
『ミシェル・フーコー講義集成(2)刑罰の理論と制度――コレージュ・ド・フランス講義1971-1972年度』ミシェル・フーコー(著)、八幡恵一(訳)、筑摩書房、2023年10月、本体6,200円、A5判上製432頁、ISBN978-4-480-79042-2

『碩学の旅(Ⅲ)ギリシアへの旅――建築と美術と文学と』​マリオ・プラーツ(著)、伊藤博明/金山弘昌/新保淳乃(訳)、ありな書房、2023年10月、本体2,400円、A5判並製168頁、ISBN978-4-7566-2387-4

『アラン・バディウ、自らの哲学を語る』アラン・バディウ(著)、近藤和敬(訳)、水声社、2023年10月、本体2,000円、四六判上製156頁、ISBN978-4-8010-0764-2

『マルクス解体――プロメテウスの夢とその先』斎藤幸平(著)、斎藤幸平/竹田真登/持田大志/高橋侑生(訳)、講談社、2023年10月、本体2,700円、四六判上製432頁、ISBN978-4-06-531831-7



★『記憶理論の歴史』は、書肆心水版のベルクソン講義シリーズの、『時間観念の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1902-1903年度』(藤田尚志/平井靖史/岡嶋隆佑/木山裕登訳、2019年)に続く第2弾。『Histoire des théories de la mémoire. Cours au Collège de France 1903-1904』(PUF, 2018)の全訳です。「ベルクソンの時間と心の哲学において、「記憶」が中核的な概念であることは疑いの余地がない。〔…〕その「記憶」をめぐって、円熟期のベルクソン当人が、一般大衆向けに、しかし水準を落とすことなく、たっぷりと時間を使って講義をしてくれる。この新資料の発見とその出版がもたらす恩恵は、専門家にとどまらず、ベルクソン哲学に関心を寄せる多くの人々にとって計り知れないものだ」(訳者解説より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。


★『刑罰の理論と制度』は、筑摩書房版「ミシェル・フーコー講義集成」全13巻の第2巻で、第12回配本。『Théories et Institutions pénales : Cours de Michel Foucault au Collège de France (1971-1972)』(Seuil, 2015)の全訳です。「国家の抑圧システムの隠された起源をさぐり、フーコー権力論の源泉となった記念碑的講義」(帯文より)。付論として2篇、「エティエンヌ・バリバールから編者〔ベルナール・E・アルクール〕への手紙」(2014年12月4日付)、クロード=オリヴィエ・ドロン「フーコーと歴史家たち――「民衆の反乱」にかんする論争」が付されています。原書では本書目がコレージュ・ド・フランス講義シリーズの最終巻です。訳書では残る配本は第10巻『主体性と真理』(1980-1981年度:Subjectivité et vérité, Seuil, 2014)となります。


★『ギリシアへの旅』は、ありな書房版「マリオ・プラーツ〈碩学の旅〉」シリーズ全8巻予定の第3巻。帯文に曰く「永遠の都ローマを知り尽くしたこの碩学が、西欧文芸のアルカディア的幻想に誘われてギリシアを旅し、白い大理石の半神たちのイメージに秘められた、時空を超えた深い歴史的意味と栄枯盛衰への哀悼と芸術的精華を探る、珠玉のエッセイ集」。9篇が収められています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。シリーズ既刊書は、第1巻『パリの二つの相貌』(2023年5月)と第2巻『オリエントへの旅』(2023年8月)の2点です。


★『アラン・バディウ、自らの哲学を語る』は、フランスの哲学者アラン・バディウ(Alain Badiou, 1937-)による自著解説書『Alain Badiou par Alain Badiou』(PUF, 2021)の訳書。「バディウは他の著作などでも自身の哲学を要約する手際の良さで知られているが、今回は、とりわけ、バディウの哲学の全体像だけでなく、彼の哲学の三大主著として知られる『存在と出来事』〔藤本一勇訳、藤原書店、2019年〕、『諸世界の諸論理』〔未訳〕、『諸真理の〈内在〉』〔未訳〕について、それぞれカギとなる考え方について突っ込んだ説明をしており、バディウ哲学入門書の決定版ともいえる」(訳者あとがきより)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。


★『マルクス解体』は、東京大学准教授の斎藤幸平(さいとう・こうへい, 1987-)さんの著書『Marx in the Anthropocene. Towards the Idea of Degrowth Communism』(Cambridge University Press, 2023;直訳題『人新世のマルクス――脱成長コミュニズムの理念に向けて』)の日本語版。日本語版あとがきによれば「日本語としての読みやすさを優先して〔…〕私自身が表現や内容の修正をかなり施している。そのため、英語版と対応していない箇所が多々あり、日本語訳というよりは、日本語版である」とのことです。目次確認や試し読みは書名のリンク先でできます。


★「マルクスが最終的に獲得したポスト資本主義像は、「脱成長コミュニズム」と呼ぶべきものなのである。脱成長コミュニズムの理念は、「資本主義リアリズム」を克服することを可能にしてくれる。晩期マルクスに立ち返ることでこそ、人新世における未来社会の積極的な展望を提示することができるようになるのだ。これこそまさに、今日私たちがマルクスを読むべき理由である」(「はじめに」15頁)。


★「脱成長とマルクス主義は長いあいだ敵対関係にあった〔…〕。しかし、もし晩期マルクスがラディカルに平等で持続可能な社会を求めて、定常経済や脱成長の理念を受け入れたとしたら、両者の間には新たな対話の空間が生まれる。そのような新たな対話を実りある形で始めるために、最終章〔第七章「脱成長コミュニズムと富の潤沢さ」〕では『資本論』や他の著作を脱成長の観点から再検討していく」(同19頁)。「本書による旧来のマルクス像の「解体」が〔…〕新しい「発展」や「解放」のビジョンに貢献できることを心から願っている」(「日本語版あとがき」379頁)。


★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。


『テスト・ジャンキー ――薬物ポルノ時代のセックス、ドラッグ、生政治』ポール・B・プレシアド(著)、藤本一勇(訳)、叢書・ウニベルシタス:法政大学出版局、2023年11月、本体4,000円、四六判上製516頁、ISBN978-4-588-01162-7
『デリダのハイデガー講義を読む』亀井大輔/長坂真澄(編著)、峰尾公也/加藤恵介/齋藤元紀/須藤訓任(著)、白水社、2023年10月、本体4,000円、4-6判並製258頁、ISBN978-4-560-09363-4

『評伝 立花隆――遥かなる知の旅へ』高澤秀次(著)、作品社、2023年11月、本体2,700円、46判並製312頁、ISBN978-4-86792-997-0

『森のロマンス』アン・ラドクリフ(著)、三馬志伸(訳)、作品社、2023年11月、本体3,600円、46判上製544頁、ISBN978-4-86793-004-5



★『テスト・ジャンキー』は、叢書・ウニベルシタスの第1162番。スペイン出身で米国で活躍する哲学者ポール・B・プレシアド(Paul B. Preciado, 1970-)の著書『Testo Junkie: Sex, Drugs, and Biopolitics in The Pharmacopornographic Era』(The Feminist Press, 2013)の全訳。3冊目の訳書となる本書は「プレシアドの主著と言ってよい。とくに本書は「薬物ポルノ権力」という概念を打ち出し、フーコーが精密に分析した近代の「規律訓練権力」、ドゥルーズが指摘した「コントロール権力」に続く現代と未来の新たな権力システムとして提示。その成立の政治的・歴史的なプロセスと理論的なメカニズムを解明した。その意味で本書は、2000年に『カウンターセックス宣言』を出版して注目を集めたプレシアドが、彼/彼女の哲学の内実を明らかにし、トランスセクシュアルの思想家として自己を確立し、21世紀の、新世紀の哲学者の一人として世界に躍り出た重要な本と言ってよい」(訳者あとがきより)。


★「西洋では、現代まで、哲学とは考える頭のことだと信じられてきた。〔…〕相容れない二つの道。〔…〕身体を追い求めるか、頭を追い求めるか。〔…〕哲学のポテンシャルが頭と身体の選択にあるのではなく、明晰で自主的な自己斬首の実践にあるとしたら、どうだろう? 私は本書の冒頭で、テストステロンを摂取した(ヘーゲル、ハイデガー、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、バトラーについて注釈する代わりに)。私は自分の頭を斬りたかった。ジェンダーというプログラムによって型どられた私の頭を斬り落とし、私のなかに取り憑いた分子モデルの一部を解剖したかったのだ。この本は、その切断が残した痕跡である」(第13章「永遠の生」373~374頁)。


★『デリダのハイデガー講義を読む』は、「ジャック・デリダが1964~65年に高等師範学校で実施した講義の草稿にもとづく講義録『ハイデガー ――存在の問いと歴史』の日本語訳(白水社、2020年)の刊行を機縁として、日本の哲学研究者がこの講義を読み解く論考6篇を収めたもの」(亀井大輔「はじめに」より)。「デリダで/とともに、「存在と時間を考える」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。白水社版「デリダ講義録」は今のところ5点刊行されています。


★作品社さんの11月新刊より2点。『評伝 立花隆』は、文芸評論家の高澤秀次(たかざわ・しゅうじ, 1952-)さんによる書き下ろし評伝。高澤さんが「類い希な「万能知識人」」と評する立花隆(たちばな・たかし, 1940-2021)さんの「仕事と生涯を丹念に追う」長編作です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。『森のロマンス』は英国の作家アン・ラドクリフ(Ann Radcliffe, 1764-1823)の『The Romance of the Forest』(1791年)の訳書。帯文に曰く「名著『ユドルフォ城の怪奇』〔上下巻、三馬志伸訳、作品社、2021年〕に先駆けて執筆され、著者の出世作となったゴシック小説の傑作。刊行から232年を経て本邦初訳」と。

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