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注目新刊:原瑠璃彦『洲浜論』作品社、ほか

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★まず、最近出会いのあった新刊を列記します。


『洲浜論』原瑠璃彦(著)、作品社、2023年6月、本体3,600円、四六判上製464頁、ISBN978-4-86182-978-9
『現代語訳 源氏物語 二』紫式部(著)、窪田空穂(訳)、作品社、2023年5月、本体2,700円、46判並製384頁、ISBN978-4-86182-964-2

『源氏手帖』長谷川春子(著)、共和国、2023年5月、本体2,700円、四六変型判上製356頁、ISBN978-4-907986-89-6

『人間関係の悩みがなくなる カントのヒント』秋元康隆(著)、ワニブックス【PLUS】新書、2023年6月、本体900円、新書判192頁、ISBN978-4-8470-6695-5

『フィッティングルーム――〈わたし〉とファッションの社会的世界』小野瀬慶子(著)、アダチプレス、2023年6月、本体2,200円、四六変型判並製344頁、ISBN978-4-908251-17-7

『負債と信用の人類学──人間経済の現在』佐久間寛(編)、箕曲在弘/小川さやか/佐川徹/松村圭一郎/酒井隆史/デヴィッド・グレーバー/キース・ハート/田口陽子/林愛美(著)、以文社、2023年6月、本体4,200円、A5判上製カバー装396頁、ISBN978-4-7531-0376-8​

『現代思想2023年6月号 特集=無知学/アグノトロジーとは何か――科学・権力・社会』青土社、2023年5月、本体1,900円、A5判並製270頁、ISBN978-4-7917-1447-6

『反戦平和の詩画人 四國五郎』四國光(著)、藤原書店、2023年5月、本体2,700円、四六判上製448頁+カラー口絵8頁、ISBN978-4-86578-387-2

『高校生のための「歴史総合」入門――世界の中の日本・近代史(3)国際化と大衆化の時代』浅海伸夫(著)、藤原書店、2023年5月、本体3,600円、A5判並製552頁、ISBN978-4-86578-388-9



★特記したいのは『洲浜論』。洲浜(すはま)とは「洲が曲線を描きながら出入りする海辺」(序、7頁)を指す言葉。画像検索しても分かりにくいかもしれないので、もう少し自分なりに説明を試みると、日本文化においては庭園などで、池の中に張り出した岸辺が複数あるような入り組んだ景色のことを表しているようです。著者の原瑠璃彦(はら・るりひこ, 1988-)さんは現在、静岡大学人文社会科学部専任講師。あとがきによれば本書は「2020年1月に東京大学大学院総合文化研究科表象文化論研究室に提出した博士論文「洲浜の表象文化史」を原形とし、大幅に加筆・修正を行ったもの」。主査は松岡心平教授。審査会には田中純教授、田村隆准教授、森元庸介准教授、小林康夫名誉教授も参加されています。


★本書は「日本における洲浜の表象文化史の全貌を明らかにすることが本書の目的である」(序、17頁)とのこと。第一部「平安時代における洲浜の成立とその意義」、第二部「中近世における洲浜の展開」の二部構成で、各部末に補論が一篇ずつ付されています。第一部では「主に洲浜の表象の成立とその機能と意義について論じ」(11頁)、第二部では「洲浜台が平安時代において衰退してゆく過程を考察するとともに、その後の日本文化の各所に見られる洲浜の表象、また、それに関わる事象の展開を跡付けてゆく」(13~14頁)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。


★ちなみに洲浜台というのは、「洲浜のかたちをかたどった台であり、その上に和歌的表象のミニチュアが置かれる箱庭のようなものだった」(第一章、22頁)。「洲浜の表象が文化の中心にあったと言えるのは洲浜台を盛んに用いる歌合が行われていた平安時代の二百年くらいのことであり、それ以後、洲浜の表象は基本的には周縁的なものに過ぎなくなった」(結び、414頁)。「洲浜の表象とは、時代とともに徐々に抑圧されていった。本書はこれらの表象をたどってゆくことで、日本文化史を新たな視点から読み直そうとするものである」(序、17頁)。本書は原さんのデビュー作です。帯文にある通り「画期的な文化史」として話題を呼ぶのではないかと思います。


★続いて、まもなく発売となるちくま学芸文庫の6月新刊5点を掲出します。


『死と後世』サミュエル・シェフラー(著)、森村進(訳)、ちくま学芸文庫、2023年6月、本体1,200円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-51188-1
『記録 ミッドウェー海戦』澤地久枝(著)、ちくま学芸文庫、2023年6月、本体1,700円、文庫判640頁、ISBN978-4-480-51187-4
『歴史学研究法』今井登志喜(著)、ちくま学芸文庫、2023年6月、本体1,000円、文庫判208頁、ISBN978-4-480-51067-9
『民藝図鑑 第三巻』柳宗悦(監修)、ちくま学芸文庫、2023年6月、本体1,700円、文庫判432頁、ISBN978-4-480-51185-0
『ロシア・アヴァンギャルド――未完の芸術運革命』水野忠夫(著)、ちくま学芸文庫、2023年6月、本体1,600円、文庫判432頁、ISBN978-4-480-51189-8


★『死と後世』は文庫オリジナル。米国の道徳哲学者サミュエル・シェフラー(Samuel Scheffler, 1951-)の著書『Death and the Afterlife』(Oxford University Press, 2013)。巻頭に付された著者自身による「日本語版への序文」によれば、「本書の中心的主張は〈われわれ自身の死後も人類が生存することは、通常認められているよりもわれわれにとってはるかに重要である〉というものです」(3頁)。本書のもとになっているのは2012年3月にカリフォルニア大学バークレー校で行われた「人間的価値にかんするタナー講義」で発表されたもの。同校哲学教授のニコ・コロドニが序論を書き、同氏のほか、スーザン・ウルフ、ハリー・G・フランクファート、シーナ・ヴァレンタイン・シフリン、といった哲学者たちのコメントを併載しています。シェフラーによる応答も収録。


★『記録 ミッドウェー海戦』は、1986年に文藝春秋より刊行された、ノンフィクション作家澤地久枝(さわち・ひさえ, 1930-)さんの労作の文庫化。巻末に「ちくま学芸文庫版あとがき」と、呉市海事歴史科学館館長の戸髙一成(とだか・かずしげ, 1948-)さんによる解説「『記録 ミッドウェー海戦』を想う」が加えられています。


★『歴史学研究法』は、西洋史学者の今井登志喜(いまい・としき, 1886-1950)さんが1935年に岩波書店より上梓し、近年では東京大学出版会より新装版が1991年に刊行されたものの文庫化。巻末解説「「転回以前」の歴史学?――古典的歴史学方法論・入門」は、慶應義塾大学教授の松澤裕作(まつざわ・ゆうさく, 1976-)さんが書かれています。


★『民藝図鑑 第三巻』は1963年に宝文館出版より刊行されたものの文庫化。巻末解説は陶器作家の柴田雅章(しばた・まさあき, 1948-)さんによる「外邦民藝と美の標準」。曰く「第三巻には、イギリスのスリップウェアやウィンザーチェア、スペインの色絵陶器、デルフトのタイル、メキシコのレタブロ、タイの宋胡録、中国の天啓染附など、海外の工芸品が多く収録されています」。帯文にある通り「柳宗悦、最後の仕事」。全三巻完結です。


★『ロシア・アヴァンギャルド』は、1985年にPARCO出版より刊行された単行本の文庫化。巻末特記によれば「文庫化にあたっては、注・年譜などのレイアウトに変更を施した」とのことです。巻末解説は東京工業大学准教授の河村彩(かわむら・あや, 1979-)さんによる「政治革命に先駆けた芸術革命」。著者の水野忠夫(みずの・ただお, 1937-2009)さんはロシア文学研究者。ドストエフスキー、ザミャーチン、ブルガーコフ、シクロフスキー、ショーロホフ、ソツジェニーツィンなど、多数の訳書があるのはご承知の通りです。


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【雑記14】


日書連(日本書店商業組合連合会」が発行する「全国書店新聞」の2023年6月1日号に掲載された記事「「本業の復活」へ近藤社長が決意/出版社との取引条件見直しに言及/全国トーハン会代表者総会」から、トーハンの今後の方向性を確認してみる。2023年度全国トーハン会代表者総会は4月27日(木)、ホテル椿山荘東京で行われた。書店や出版社の参加者は215名。対面実施は昨年3年ぶりに再開され、今回は「4年ぶりに出版社も招待しての開催」とのこと。


トーハンの帳合書店や取引出版社の中には総会の案内を今まで一度たりとも受け取ったことのない人々がいるだろう。同社の基本方針や主要施策を発表する場に取引先を呼ばないということ自体がそもそもおかしい。会場のキャパシティの話ではない。参加要請をしなかった書店や版元に、会合でどんなことを話したのかをせめて知らせるべきだろう。昨年では出版社に参加要請を行わなかったため、出版社には6月にオンライン配信したはずだが、今年は代表者が参加しているのだから、オンライン配信予定はないかもしれない。


トーハンの中期経営計画「REBORN」を遂行するさなかでの4期連続本業赤字を受け、近藤敏貴社長は次のように挨拶している。「取次事業は構造的な赤字状態で、はっきり言って異常な状況だ。既存構造のままでは、もはや出版流通は成立しない。業界の収益構造そのものへメスを入れる必要がある。今後、コストが賄えていない出版社に対して、取引条件の見直しも視野に入れたご相談をさせていただく。出版流通を未来につなげるという当社の使命を全うするため、決意と覚悟を持って経営判断した」。


以前も言及したが、この「コストが賄えていない出版社」をトーハンがどう定義するのかが注目される。個別交渉だから、という理由でおそらくトーハンはその定義を公開しないだろう。記事では後段で川上浩明副社長の発言を紹介している。曰く「運賃協力金は満額回答を目指した交渉を続けるが、特に物流コストが補えていない出版社にはその状態を是正すべく、踏み込んだ話をさせていただく。公正性や公平性の観点を重視してお話ししていきたい」。


公正性や公平性の観点というが、それはトーハンというブラックボックスの中での話である。私企業の取引条件は、もとより公正でも公平でもない。区別と差別があることは明白で、それについて業界団体から長年にわたって疑義を呈されてきた。近藤社長が言うように異常な構造があり、川上副社長が言うように「公正性や公平性の観点を重視」するならば、まずは取次自体のブラックボックスの中身が問われなければならず、その異常構造が明らかにされなければならないだろう。それを抜きにしていかなる公正性も公平性もない。異常構造の内実が公正公平に分析されないまま危機を喧伝し、個別交渉に終始するなら、それは何も変革しえず元の木阿弥に帰すリスクが充分にある。交渉決裂となった出版社とトーハンは取引を続けられるのだろうか。


ちなみに「新文化」2023年4月28日付の記事「トーハン近藤社長、「流通コストが賄いきれていない出版社の取引条件を見直す」」では、近藤社長の発言として以下のように報じていた。「中期経営計画のうえでは、売上高は計画値を上回っているが、4年連続となる赤字については、出版社からの協力金を加えても出版流通コストは賄いきれず、「既存構造のなかで、出版流通は機能していない」とし、今後、コストに見合わない出版社の取引条件の見直しについて相談していく考えを伝えた」。


「出版社からの協力金を加えても出版流通コストは賄いきれず」という近藤社長の発言は、「全国書店新聞」の記事で紹介された川上副社長の発言「運賃協力金は満額回答を目指した交渉を続ける」とどう整合するのか判然としない。想像するに、出版社に対して運賃協力金の交渉も継続するが、それだけでは充分ではないので、取引条件改定の交渉にも踏み込む、という話だろう。優先ターゲットになるのは、バラマキ配本(パターン配本)を行っている出版社となるはずだ。実績として、過剰送品かつ過剰返品となっている出版社はパターン=ランクの見直し、つまりはプロダクトアウトの改善を求められるだろうし、それでも送品をしたいというのならば、相応の対価をトーハンは求めるだろう。


近藤社長の発言に戻る。「全国書店新聞」の記事では重点をおかれる3項目が言及されていた。「1:マーケットイン型出版流通の具現化、2:リアルとデジタル両面での事業展開、3:物流拠点再配置と輸配送改革」である。このうち第1項「マーケットイン型出版流通の具現化」については、さらに3つの施策を推進していくと明かされている。1つめは新仕入配本プラットフォーム「enCONTACT」であり、2つめはDNP(大日本印刷)との協業プロジェクトである。3つめが「適正仕入と実売改善のもとに返品率を改善し、出版流通のサプライチェーン全体でコストを最適化し、書店利益の改善を図る「マーケットイン型販売契約」」と報じられている。


出版業界で言うマーケットインというと、書店側で新刊や既刊の仕入数を決定し、出版社や取次が満数出荷することで、書店自身が実売改善を目指す、というイメージを抱くこともできる。しかし記事を読む限りではトーハンのニュアンスは少し違うようだ。出版社主導で、書店をランク付けて自動的に新刊を配本する従来のプロダクトアウト型から、取次主導の「マーケットイン型販売契約」に書店や出版社を巻き込もうというものだ、と見える。出版社や書店の要望は聞くが、いいなりにはならないつもりだろう。


〈売りたい新刊をバラマキたい〉出版社の要望と、〈売れる銘柄だけたくさん欲しい〉書店の要望は、しばしば相容れない。取次は取次の都合で動くしかなく、そこにはぶっちゃけ、公正性も公平性もあったものではない。複雑な力関係に縛られたカネの流れがビジネスの現実としてあるだけだ。


トーハンがウェブサイトで「経営ビジョン」として掲げている、2019年度から2023年度までの5か年の中期経営計画「REBORN」をもう一度、振り返ってみよう。トーハン自身にとってこの計画は、「事業構造改革に取り組む第二の創業期と位置づけ」られている。「本業の復活」と「事業領域の拡大」が2本の柱であり、「マーケットイン型流通とプロダクトアウト型流通を融合させた新たな商品供給モデルを構築し、併せて企業としてさらなる成長を期すため新規事業にも積極的に挑戦してまいります」と書いてある。


今回は「本業の復活」と題された項目の全文を再確認してみよう。次の通りである。


「出版社や書店との連携のもと、広く世の中に出版物を流通させてゆく、取次としての本業を進化させてまいります。
 従来は、出版社が発行した出版物を、書店の立地条件や販売実績などに基づき配本するプロダクトアウト型流通がメインでした。しかし、近年は出版を取り巻く環境が大きく変わり、より読者のニーズに沿った流通システムの構築が求められています。
 これに対しトーハンは、マーケットイン型流通の導入を提唱しています。新刊情報を元に書店が需要を見極め、マーケットを起点とした必要部数をトーハンが出版社に伝え、出版業界としてお客様へのより確実な販売を可能にしていく構想です。併せて、プロダクトアウト型流通においても、配本の過程にAI(人工知能)の知見を取り入れ、様々な手法で販売機会の最大化を目指します。
 新しい流通システムの構築と並行して物流機能の再配置を進め、他の取次との物流協業も含めて流通合理化を推進し、持続可能な出版流通ネットワークを構築してまいります。
 さらに、旧来の取次の枠を超え、本業領域における新規事業も積極的に開発し、デジタル事業などの新たな付加価値を伴った出版流通ソリューションを提供してまいります」。


以上である。補足しておきたいことが2点ある。ひとつには「新刊情報を元に書店が需要を見極め」とあるように、書店は出版社のパターン配本に頼りきりになるのではなく、自身の情報収集に基づいた仕入力を高める必要がある、ということ。もうひとつは「配本の過程にAI(人工知能)の知見を取り入れ」とあるように、出版社のパターン配本は取次側に適宜修正されるだろう、ということだ。この「AIの知見」なるものは、取次が扱っている売上と返品のデータをAIに学習させて、適正配本を算出するものだろう。


個別の出版社や個別の書店、個別の著者に紐づけられた売上と返品のデータは数量的に解析できるだろうが、商材は書籍や雑誌である。多品種で多様な、悪く言えば統一感や整合性を欠いた雑多で恣意的な内容物(コンテンツ)から、果たして有効な傾向性は抽出しうるのだろうか。現時点ではコンテンツまで取り込んだ全文学習は行われていないだろう。著作権の問題もある。将来的に抽出しえたところで、個々のコンテンツの個性や可能性はそうしたデータ解析で適切に理解したり売上予測を立てられたりするだろうか。個性や可能性をあらかじめ把握することは不可能で、かなりガサツな抽象化が必要になるのではないだろうか。新刊は剽窃や模倣でないかぎり、基本的に未知の要素や学習が充分ではない組み合わせを含む。過去から未来を十全に導出できるものばかりで構成されているのではなく、何かしらの思いがけない結合や分別を内包しうるものである。学習する情報を制限されたAIがベテラン書店員の経験知や勘を上回る判断ができるようになることは、まだ期待できそうにない。


コンテンツそのものは大したことがなくても、紐づけたタグや宣伝文句で集客できる、というような、AIを騙すようなマーケティングが無駄に研究されるような懸念も覚える。そもそもAI配本自体がブラックボックスである以上、AIに予測と判断を任せることは無責任ですらある。


「全国書店新聞」記事に戻ると、川上副社長は「23年度は、出版社が主導する従来の仕入から、出版社別仕入計画にenCONTACT経由の書店事前申込みを反映した数字を基にするトーハン・書店主導仕入に転換し、効率販売、返品減少で利益改善につなげていくと説明」した、という。出版社が主導する配本ではなく、取次と書店が主導する仕入。聞こえは良いが、先述の通り書店の情報力や仕入力が試されているのだし、それが望めないなら取次の主導に従うほかなくなるのではないか。


enCONTACTの利用状況は4月21日時点で約600社の出版社が参加し、新刊点数ベースの占有は75%で、利用書店数は約2100店舗だという。昨年の10月27日から運用スタートし、まだ半年足らずだから、数字だけを見るとまずまずの進み具合に見える。この新システムについては、トーハンの2022年11月1日付のニュースリリース「トーハン、マーケットイン志向の新刊流通プラットフォーム「en CONTACT」の運用をスタート」を参照されたい。そこには「「en CONTACT」を通して近刊情報や市場ニーズを取引先と共有し、書店を起点としたマーケットイン型の流通構造への転換を促進します」、とか「書店店頭や読者のニーズを起点とする「マーケットイン」の視点に立ち、出版流通ネットワークの改革を進めております」との文言が目に付く。書店に焦点が当てられてはいるものの、繰り返すように注意が必要だ。


運用テストを行ったトーハンのグループ書店約300店舗を含め、2100店舗の書店はじっさいにenCONTACTをどのように活用しているのだろうか。寡聞にして現場からの声を耳にしないし、運用の内実も見えてこない。だが、トーハンがREBORNの達成まであと9ヶ月足らずが勝負だと捉えていること自体には、単なる危機感以上のものがある。トーハン会代表者総会に参加した書店と出版社の代表者250名、enCONTACTに参加したグループ書店300店舗を含む帳合書店2100店舗と出版社600社、そしてそこにまだ含まれない多数の書店や出版社。このグラデーションが現実だとして、トーハンは〈その他大勢〉とどう連携するつもりなのだろう。〈その他大勢〉との距離感を年度内に縮めることは、トーハンにとってのゴールに含まれているだろうか。〈その他大勢〉は実際はすでに参加している店舗や会社のなかにも社内グラデーションとして存在しているだろう。


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