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雑談(35)

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★2016年8月27日13時現在。
「東洋経済オンライン」2016年8月27日付、永谷薫氏記名記事「ヴィレッジヴァンガード、大赤字脱却なるか――雑貨チチカカを売却でも見えぬ復活の道筋」によれば、ヴィレッジヴァンガードは「8月1日、エスニック雑貨を販売する子会社のチチカカを、金融情報配信会社フィスコ(ジャスダック上場)の親会社であるネクスグループに売却した。チチカカはこの2年間、ヴィレヴァンの業績の足を引っ張ってきた赤字子会社だ」と。

ヴィレヴァンが近年、取次を大阪屋からトーハンに「戻して」いるのは周知の通りですが、それはヴィレヴァンの立て直し(後段に引用)の過程と重なっています。「新文化」2014年12月26日付記事「ヴィレッジヴァンガード、トーハンに帳合変更へ」をご参照ください。「ヴィレッジヴァンガードコーポレーションは来年〔2015年〕2月1日、主帳合取次を大阪屋からトーハンに変更する。対象は全401店舗のうち、出版物を扱う385店すべて(FC店含む)。〔・・・〕ヴィレッジヴァンガードコーポレーションは、元々トーハンと取引きしていたが、2003年のJASDAQ上場前に大阪屋へ帳合変更。今回、再びトーハンと取引きすることになった。〔・・・〕書籍販売部門のてこ入れの必要と、トーハンから新たなMDに関する「いい提案があった」ことから変更に踏み切った」と。

「東洋経済」の記事に戻ると、「ヴィレヴァンはまだ店頭登録制度があった2003年4月、創業17年目にして店頭登録を果たした。当時121だった店舗数は2012年8月末時点で395に達し、その後は一進一退を繰り返し、今年8月20日時点では391にとどまっている。/上場した当時、87億円だった売上高は、直近の2016年5月期には467億円へと増えた。売上高に限れば、上場からの13年間はほぼ右肩上がりの成長を続けてきたといえる。/だが、利益の方はここ数年苦戦が続いている。ターニングポイントになったのは2013年5月期。2009年2月以降、直営店の既存店売上高は昨対比で断続的に前年割れが続いていた。2012年4月以降は新規出店も含めた全店でも慢性的に前年割れを起こすようになった」と。

ヴィレヴァンの店舗拡大は全国各地に新たな巨大商業施設が建設される過程と並行してきたように見えます。テナントとして複合書店が専業書店とは「別腹」なので併設可能だ、とSC開発側は見なしてきたのではないでしょうか。むろんヴィレヴァンの新規出店はSC内ばかりではないとはいえ、新規SCで専業書店チェーンのほかにヴィレヴァンが入居する例は多いように見受けます。ヴィレヴァンはTSUTAYAとともに複合書店の先駆者でした。この二つのチェーン以外にも、複合書店はどんどん増えています。ニッチたりえるか、中途半端に転落するか、複合書店の岐路が見えてきた、と言うべきでしょうか。

さらに東洋経済記事に曰く「このため、既存店のてこ入れに重心を移し、新規出店を抑制する一方、抜本的に在庫管理体制や評価方法を変更。この結果、2013年5月期に46億円の在庫評価損が発生し、最終赤字に転落している。2014年5月期は営業損益段階から赤字に陥っている。/約2年かけてヴィレヴァンの立て直しが一段落すると、今度はチチカカが火を噴いた。〔・・・〕2013年以降は円安の進行で製造原価が急騰し、採算が悪化。これを規模の成長でカバーしきれなくなると商品開発力が低下。店が魅力を失って客離れが起き、2014年5月末時点で大量の在庫が問題になる。そこで、翌2015年5月期は仕入れを抑制し、セールによる在庫処分を優先したが、これがさらなる客離れを引き起こす」。

ヴィレヴァンに限りませんが、せっかくの並行事業が本業の足を引っ張るという事態は、この業界ではまま見受けることです。青山BC(現在ブックオフ傘下)や草思社(現在文芸社傘下)がかつて不動産で失敗したことはよく知られています。「こうすれば必ず失敗する」という特定の事業や投資があるわけではないのでしょうけれども、新たなビジネスの挑戦が挫折した場合のリスクは過小評価できません。本記事の結論部分では、チチカカの切り離し果たしたものの「何より本業のヴィレヴァンの店舗網拡大が望めない中、どのような成長戦略を描けるのか」と問うています。この問いはひとりヴィレヴァンのみに当たるものではなく、出版業界全体が抱えているものです。

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