◆2016年8月25日17時現在。
ジュンク堂書店福嶋聡さんの最新著『書店と民主主義』(人文書院、2016年6月)を読まれた仲俣暁生さんが「マガジン航」で「本屋とデモクラシー」と題した記事を7月1日に公開されたことは皆さんご存知かと思いますが、このテーマ「書店/本屋と民主主義/デモクラシー」をめぐって、仲俣さんの司会進行で来月、トークイベントが以下の通り開催されるとのことです。これは「キックオフ・ミーティング:本屋は民主主義の土台になれるか?」と謳われていて、今後も関連イベントが控えているそうです。
◎シブヤ・いちご白書・2016秋 #本屋とデモクラシー
日時:2016年9月6日(火)OPEN 19:00 / START 19:30
前売¥2,000(e+にて発売)/ 当日¥2,300(税込・要1オーダー500円以上)
ゲスト:
・藤谷治(小説家、元フィクショネス店主)
・松井祐輔(小屋BOOKS、H.A.Bookstore)
・梶原麻衣子(月刊『Hanada』編集部員)
・碇雪恵(日販リノベーショングループ)
・辻山良雄(「本屋Title」店長)
※スペシャルゲストの可能性あり
司会:仲俣暁生(「マガジン航」編集人)
内容:大きな選挙が相次いだここ数年、デモクラシー(民主主義)という言葉を目にすることが増えた。街頭で行われるデモに出かける人もいれば、家のなかで本を読んで考えた人もいた。本屋では政治にまつわる店頭フェアやイベントがさかんに行われ、それに抗議する人もいた。本屋は多様な意見が戦い合う「闘技場」だという『書店と民主主義~言論のアリーナのために』という本も出た。/民主主義が危機だといわれるいま、本屋はそれを支える基盤になりうるか? そのために本屋にできることは、フェアやイベントのほかになにがあるのか。「政治の季節」がひとまず終ったあとに、日常活動のなかから「デモクラシー」のありかを考えるため、本を読む人と読まない人が集まって話をしてみたい。題して、「シブヤ・いちご白書・2016秋」。なんで「いちご」なのかは、来てのお楽しみ!
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◆8月25日18時現在。
なお、私なりに出版/言論とデモクラシーを考える上で参照しておきたいのは、「現代ビジネス」に今月掲出された次の二つの記事です。
「スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」――なぜ私たちは米国の「監視」を許すのか」8月22日付、小笠原みどり氏記名記事
「『シン・ゴジラ』に覚えた“違和感”の正体~繰り返し発露する日本人の「儚い願望」――野暮は承知であえて言う」8月13日付、辻田真佐憲氏記名記事
前者に曰く「スノーデンはNSAの仕事を請け負うコンピュータ会社デルの社員として2009年に来日し、東京都福生市で2年間暮らしていた。勤務先は、近くの米空軍横田基地内にある日本のNSA本部。NSAは米国防長官が直轄する、信号諜報と防諜の政府機関だが、世界中の情報通信産業と密接な協力関係を築いている。デルもその一つで、米国のスパイ活動はこうした下請け企業を隠れみのにしている。/米国の軍産複合体は、いまやIT企業に広く浸透し、多くの技術が莫大な予算を得て軍事用に開発され、商用に転化されている。NSAはテロ対策を名目にブッシュ政権から秘密裏に権限を与えられ、大量監視システムを発達させていった。/スノーデンが働くNSAビルには、日本側の「パートナーたち」も訪れ、自分たちの欲しい情報を提供してくれるようNSAに頼んでいたという」云々。
また曰く「NSAの大規模盗聴事件「ターゲット・トーキョー」〔・・・〕。対象分野は、金融、貿易、エネルギー、環境問題などで、いずれもテロとはなんの関係もない。〔・・・〕ターゲット・トーキョーの盗聴経路はわかっていないが、NSAが国際海底ケーブルへの侵入、衛星通信の傍受、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックなどインターネット各社への要請によって、世界中のコミュニケーションの「コレクト・イット・オール」(すべて収集する)を目指していることは、スノーデンの公表した機密文書によって明らかになっている。〔・・・〕日本の監視拠点は、米海軍横須賀基地(神奈川県)、米空軍三沢基地(青森県)、同横田基地と米大使館(東京都)、米海兵隊キャンプ・ハンセンと米空軍嘉手納基地(沖縄県)で、約1000人が信号諜報に当たっているという。このうち米大使館は官庁、国会、首相官邸に近く、NSAの特殊収集部隊が配置されているといわれる。米軍基地は戦闘拠点であるだけでなく、監視活動を主要任務としているのだ」云々。
さらに曰く「標的にされているのは、政府機関だけではない。「コレクト・イット・オール」はすべての人々の通信を対象にしているのだ。〔・・・〕NSAの最高機密文書に記された情報収集地点(「窒息ポイント」と呼ばれる)〔・・・〕。日本からのデータがこの地点で吸い上げられている可能性は高い。中国、台湾、韓国もつなぐこの光ファイバー・ケーブルには、日本からNTTコミュニケーションズが参加。千葉県南房総市に陸揚げ局・新丸山局を設置している。〔・・・〕調査報道ジャーナリストたちが「国家の脅威」としてリストに上がっている〔・・・〕。大量監視は私たちの安全ではなく、グローバルな支配体制を守るために、すべての個人を潜在的容疑者として見張っているようだ。〔・・・〕情報通信産業は利益の追求という「経済的インセンティブ」に突き動かされながら、いまや世界の軍産複合体の中心部で、この広範な戦争と支配の構造を下支えしている」云々。
一方後者に曰く「この国にあって、政治家や官僚は非常時にあっても都合よく「覚醒」しないし、一致団結もしない。これは現在だけではなく歴史的にもそうである。だからこそ、『沈黙の艦隊』や『紺碧の艦隊』のような虚構の作品が受け入れられ続けてきたのだ。/『シン・ゴジラ』では、政治家や官僚の肩書、服装、しゃべり方などがかなりリアルだっただけに、一層その「覚醒」の異様さが浮き立って見える。それは、現実社会における不能ぶりとのギャップを想起させないではおかず、痛ましくもあった。〔・・・〕なんという「美しい」物語だろう。ただしそれは、われわれがいまだかつて一度も手にしなかった歴史でもあるのである」。
また曰く「本作の内容を正確に反映するならば、「願望(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。」とでもいうべきであろう。〔・・・〕われわれが「立派な指導者が出てくれば、日本はまだまだやれる」というストーリーを「無駄」と考えず、あまりにも自然に、快楽として受容しているということ〔・・・〕。もし、『シン・ゴジラ』を観て、「立派な指導者が出てくれば、日本はまだまだやれる」と本当に思ったとすれば、そんなものは虚構のなかにとどめておかなければならない。「失われた20余年」に繰り返されてきたこうした願望の発露は、その実現可能性ではなく、その徹底的な不可能性を示していると考えるべきだ。/劇中に描かれる美しき挙国一致の「ニッポン」は、極彩色のキノコである」。
一方には国外の諜報機関と繋がらざるをえない通信産業、他方には「面白い日本映画」を目指した映画産業。それらは出版産業と隣り合っています。スノーデンさんや小笠原さんが指摘した「民主主義の腐敗」、辻田さんの言う願望と快楽の「極彩色のキノコ」、これらは出版界にもすでに久しく侵食していると言わざるを得ない、というのが私の印象です。
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雑談(34)
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