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注目新刊:アミタヴ・ゴーシュ『大いなる錯乱』以文社、ほか

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『大いなる錯乱──気候変動と〈思考しえぬもの〉』アミタヴ・ゴーシュ[著]、三原芳秋/井沼香保里[訳]、以文社、2022年10月、本体2,700円、四六判並製344頁、ISBN978-4-7531-0370-6
『製本屋と詩人』イジー・ヴォルケル[著]、大沼有子[訳]、共和国、2022年10月、本体2,500円、菊変型判上製188頁、ISBN978-4-907986-95-7
『縄文論』安藤礼二[著]、作品社、2022年10月、本体2,700円、四六判上製336頁、ISBN978-4-86182-930-7
『布団の中から蜂起せよ――アナーカ・フェミニズムのための断章』高島鈴[著]、人文書院、2022年10月、本体2,000円、4-6判並製240頁、ISBN978-4-409-24152-3
『「日本心霊学会」研究――霊術団体から学術出版への道』栗田英彦[編]、人文書院、2022年10月、本体3,000円、4-6判上製256頁、ISBN978-4-409-03117-9

★『大いなる錯乱』は発売済。インド出身の作家アミタヴ・ゴーシュ(Amitav Ghosh, 1956-)が、2015年にシカゴ大学で行った全4回の講演「大いなる錯乱――地球温暖化時代における小説・歴史・政治」をもとに、「物語」「歴史」「政治」の三部構成で上梓されたエッセイ集です。「今日の変動する気候にまつわる諸事象は、人類がながい時間をかけて行ってきた活動の総体を表象しているという点で、歴史の終着駅の表象ともなっている。〔…〕この時代の気候変動にともなう諸事象は、人類の歴史全体の抽出物なのだ。それらの事象は、わたしたち人類がながい時間をかけて行ってきたことすべてを物語っているのである」(「歴史」191~192頁)。

★巻末には日本語版独自コンテンツとして、訳者がゴーシュ邸で2021年11月に収録した「著者インタヴュー」が併載されています。「今日の作家が向き合うべき根本的な困難=挑戦は、わたしたちをとりまく人間ならざるものに声を与えることにあると思います。わたしたちが根本的に誤ってしまったのは、人間ならざる諸存在とのやりとりのなかで、これらの諸存在は不活性で声明を持たないものと、人間が勝手に決めてかかるようになってしまったことです」(303頁)。「わたしたち物語作家=語り部には、わたしたちの現実に組みこまれたものとして人間ならざるものの声が〔物語のうちに〕聴きとられるようにするという、じつに重大な責務があるとわたしは考えます」(304頁)。

★『製本屋と詩人』は発売済。20世紀初頭のチェコスロバキアの早逝詩人、イジー・ヴォルケル(Jiří Wolker, 1900-24)の作品群から訳者が選んで収録した日本語版オリジナル文集です。物語5篇、詩24篇、評論1篇を収録。底本はプラハで1934年に刊行された著作集3巻本。ヴォルケルの翻訳が1冊でまとめて読めるようになるのは、日本では初めてのこと。収録作品は書名のリンク先でご確認いただけます。表題作「製本屋と詩人」は物語の1篇。詩人が書いた『あらゆる喜びからあふれるさらなる喜び』という本を製本屋のベルティンが製本し、その本を朗読すると、死の床にある製本屋の妻とベルティンの「二人の苦痛が本に吸収されていきました」(17頁)。そのあと、どうなったかというと……。

★『縄文論』はまもなく発売。文芸評論家で多摩美術大学教授の安藤礼二(あんどう・れいじ, 1967-)さんが2011年から2022年にかけて各媒体で発表してきた論考を1冊にまとめたもの。「『縄文論』として一冊にまとめられたこの書物は、人間にとって原型的な存在の在り方、原型的な思考の在り方、原型的な表現の在り方を問うたものである」(5頁)。「『縄文論』は狩猟採集を主題とした「芸術」の考古学にして「芸術」の人類学として確立される。そのことを、なによりも大きな目標としている。「芸術」は時間と空間の限定を乗り越え、学問の諸分野を横断し、研究と表現の差異を乗り越える」(11頁)。「この『縄文論』は、前著『列島祝祭論』が展開される条件、その根底にして起源を明らかにする試みでもある」(13頁)。『列島祝祭論』は2019年に作品社より上梓されています。

★人文書院さんのまもなく発売となる近刊2点。『布団の中から蜂起せよ』は、ライターの高島鈴(たかしま・りん, 1995-)さんの初の単著となるエッセイ集。2019年から2021年までに各媒体にて発表してきたテクスト15本に加筆修正を施し、14本の書き下ろしを足して1冊としたもの。「現時点で私がもっている地図は、国家、家父長制、異性愛規範、資本主義をはじめとするあらゆる権力、差別、中心主義を解体・否定し、その先に感情的関係性を必要としない相互扶助によって成立する社会を見据えること、そればかりである」(序章、7頁)。

★同書のサイン会+交歓会が、2022年11月5日(土) 15時から19時まで、国立市の古書店「書肆 海と夕焼」にて行われるとのことです。詳細はリンク先をご覧ください。

★『「日本心霊学会」研究』は、人文書院創立100周年記念出版。帯文に曰く「霊術団体はいかにして人文系出版社へと姿を変えたのか。日本近代の宗教、学知、出版を総合的に捉え直す画期的研究」と。版元紹介文を参照すると、民間の精神療法団体として明治末期に京都で誕生した「日本心霊学会」の機関誌『日本心霊』の全号発見(2013年)によって可能となった研究書、とのことです。なお、機関誌『日本心霊』(1915年創刊~1939年廃刊、約700号)のデジタルアーカイブが、来月、丸善雄松堂より発売される予定だそうです。

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