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月曜社2017年2月新刊:人文書1点、写真集2点

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弊社2017年2月中旬刊行予定の新刊3点をご紹介します。

【人文・哲学思想】

崇高の修辞学 アマゾン予約
星野太=著
月曜社 2017年2月 本体3,600円 A5判[タテ216mm×ヨコ147mm×ツカ21mm]並製288頁 ISBN978-4-86503-041-9

われわれが用いる言葉のうち、およそ修辞的でない言葉など存在しない。美学的崇高の背後にある修辞学的崇高の系譜を、ロンギノス『崇高論』からボワローらによる変奏を経て、ドゥギー、ラクー=ラバルト、ド・マンらによるこんにちの議論までを渉猟しつつ炙り出す。古代から現代へと通底する、言語一般に潜む根源的なパラドクスに迫る力作。シリーズ「古典転生」第13回配本、本巻第12巻。

目次:序論|第Ⅰ部 『崇高論』と古代【第一章 真理を媒介する技術――「ピュシス」と「テクネー」|第二章 情念に媒介されるイメージ――「パンタシアー」と「パトス」|第三章 瞬間と永遠を媒介するもの――「カイロス」と「アイオーン」】|第Ⅱ部 変奏される『崇高論』――近代におけるロンギノス【第四章 崇高論の「発明」――ボワロー『崇高論』翻訳と新旧論争|第五章 言葉と情念――バーク『崇高と美の観念の起源』と言語の使命|第六章 「美学的崇高」の裏箔――カント『判断力批判』における修辞学】|第Ⅲ部 崇高なるパラドクス――二〇世紀における「崇高」の脱構築【第七章 放物線状の超越――ミシェル・ドゥギーと「崇高」の詩学|第八章 光のフィギュール――フィリップ・ラクー=ラバルトと誇張の哲学|第九章 読むことの破綻――ポール・ド・マンにおける「崇高」と「アイロニー」】|結論|あとがき|参考文献|索引

星野 太(ほしの・ふとし):1983年生まれ。専攻は美学、表象文化論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、金沢美術工芸大学講師。共編著にThe Sublime and the Uncanny(UTCP、2016年)、共著に『コンテンポラリー・アート・セオリー』(イオスアートブックス、2013年)、共訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で』(千葉雅也・大橋完太郎との共訳、人文書院、2016年)などがある。『崇高の修辞学』は著者の単独著デビュー作である。

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【芸術・写真】

SLASH【スラッシュ】 アマゾン予約
佐野方美写真集
月曜社 2017年2月 本体4,000円 A4変形(タテ280mm×ヨコ210mm×ツカ155mm)、ハードカバー上製120頁(作品点数176点、オール4C印刷) ISBN:978-4-86503-039-6

コマーシャルフォト界で活躍を続ける佐野方美、初の撮り下ろし写真集。
情景やモノ、コトの断片、街角のポスター、アスファルトや路上の車など、彼女が無意識下で惹きつけられた裸形のものが淡々と映し撮られる。巨大なパズルを組み立てるように、あらゆる境界線を取り払い、目に映るものすべてをパーツとして納めた一冊。いつでも同じテンションで撮り続けること。ただシャッターを押し続けること。純粋な行為が果てしなく重なり合い、反復そのものの間隙が露出する。

佐野方美(さの・まさみ):神奈川県生まれ。2000年、東京ビジュアルアーツ専門学校写真学科卒業。2000年「写真新世紀」優秀賞。ファッション誌やブランド・カタログ、CDジャケットなどの広告撮影を中心に活動。写真集に、玉城ティナフォトブック『Tina』 (講談社、2015年)、水原希子フォトブック『KIKO』(講談社、2010年)、加藤ミリヤ写真集『MILIYAH 300 STYLES』(講談社、2010年)など。


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【芸術・写真】

Hashima【ハシマ】 アマゾン予約
松江泰治写真集
月曜社 2017年2月 本体3,600円 A5変形(タテ146mm×ヨコ225mm×ツカ12mm) ソフトカバー168頁(作品点数160点、ダブルトーン印刷) ISBN:978-4-86503-040-2

廃坑-無人島となって9年後、1983年に軍艦島=端島(Hashima)の廃墟をとらえた未発表作品集。作家本人がフィルム原板から精緻にデジタルデータ化・リマスタリングした究極の廃墟作品集。

松江泰治(まつえ・たいじ):1963年東京生まれ。東京大学理学部地理学科卒業。1996年、第12回東川賞国内作家賞受賞。2002年、第27回木村伊兵衛写真賞。2012年、第28回東川賞国内作家賞受賞。写真集に、『LIM』(青幻舎、2015年)、『JP-01 SPK』(赤々舎、2014年)、『TYO-WTC』(赤々舎、2013年)、『jp0205』(青幻舎、2013年)、『世界・表層・時間』(NOHARA、2013年)、『cell』(赤々舎、2008年)、『JP-22』(大和ラヂエーター製作所、2006年)、『CC』(大和ラヂエーター製作所、2005年)、『Gazetteer』(大和ラヂエーター製作所、2005年)、『Taiji Matsue』(うげやん、2004年)、『Hysteric 松江泰治』(ヒステリックグラマー、2001年)。

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注目新刊:栗原康さんの一遍上人伝、ほか

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死してなお踊れ――一遍上人伝
栗原康著
河出書房新社 2017年1月 本体1,600円 46版上製256頁 ISBN978-4-309-24791-5

帯文より:家も土地も財産も、奥さんも子どもも、ぜんぶ捨てた一遍はなぜ踊り狂ったのか――いま最高度に注目される思想家による絶後の評伝。
推薦文(瀬戸内寂聴氏):踊り狂うほど、民衆を熱狂させた、一遍上人の希有な魅力を、瑞々しい栗原さんの新鮮な文体で描いた、最高に魅力的な力作!
推薦文(朝井リョウ氏):栗原康の言葉を通せば、教科書の中のあの人もこの人もまるで旧知の悪友のよう。一遍と踊りたい、朝まで、床が抜けるまで!

目次:
はじめに
第一章 捨てろ、捨てろ、捨てろ
第二章 いけ、いけ、往け、往け
第三章 壊してさわいで、燃やしてあばれろ
第四章 国土じゃねえよ、浄土だよ
第五章 チクショウ

参考文献
おわりに

★まもなく発売。売り出し中の若手の中でもっとも破天荒で転覆的で痛快な評伝を世に送り出せるアナーキスト、栗原康さんによる最新作。大杉栄伝(夜光社、2013年)、伊藤野枝伝(岩波書店、2016年)に続く第三弾で、踊り念仏で知られる時宗の開祖、一遍を扱います。瀬戸内さん、朝井さんを魅了したその文体は読む者の魂を鼓舞する生気に満ちたもので、このテンションを維持するのはなかなかのエネルギーを必要とするのではないかと思います。栗原さんのエネルギーの源泉のひとつかもしれないものが本書の冒頭にずばり書き記されていますが、こんな書き出しが近年の人文書にあっただろうかという赤裸々な告白になっています。引用するのも無粋なので、ぜひ現物を手に取ってみていただければ幸いです。

★「富も権力もクソくらえ。アミダにまかせろ、絶対他力。浄土にいくということは、権力とたたかうということとおなじことだ」(33頁)。「トンズラだ、トンズラしかない。いちど人間社会をとびだして、アミダの光をあびにゆこう。一遍は、それをやるのが念仏なんだといっている」(57頁)。「だいじなことなので、くりかえしておこう。念仏に作法なんてありゃしない。うれしければうれしいし、たのしければたのしい。念仏は爆発だ。はしゃいじまいな」(110頁)。一遍につられて踊り念仏の輪が広がる様を描いた第三章の「踊り念仏の精神――壊してさわいで、燃やしてあばれろ」の節は、あたかも野外のレイヴでのトランス状態にも似た沸騰の中で、一遍の時代と現代とが見事にひとつになる瞬間を捉えています。「まるで獣だ、野蛮人だ。ここまでくると身分の上下も、キレイもキタナイも、男も女も関係ない。およそ、これが人間だとおもいこんできた身体の感覚が、かんぜんになるなるまで、自分を燃やして、燃やして、燃やしつくす。いま死ぬぞ、いま死ぬぞ、いま死ぬぞ。体が念仏にかわっていく」(114頁)。

★「生きて、生きて、生きて。生きて、生きて、往きまくれ。おまえのいのちは、生きるためにながれている。なんでもできる、なんにでもなれる、なにをやっても死ぬ気がしない。あばよ、人間、なんまいだ。気分はエクスタシー!!」(114~115頁)。「さけべ、うたえ、おどれ、あそべ。おのれの神〔たましい〕をふるわせと。だまされねえぞ、鎌倉幕府。したがわねえぞ、戦争動員。念仏をうたい、浄土をたのしめ。しあわせの歌をうたうということは、あらゆる支配にツバをはきかけつということだ」(158頁)。「一遍にとって、念仏をとなえて死ぬというのは、いまある自分を殺してしまう、からっぽにしてしまうということであった。なんどでも、なんどでも、ゼロから自分の人生をやりなおす、やりなおしていい、やりなおせる。そういう境地を成仏するといっていた」(161頁)。今まで様々な仏僧伝があったとはいえ、栗原さんのそれは最初から最後までそれ自体が「歌」のようで、今までにない、天にも昇るようなヴァイブレーションを発散しています。

★本書『死してなお踊れ』と同日発売となる河出書房新社さんの新刊に、荒川佳洋『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』があります。こちらも評伝です。ジュニア小説と官能小説をともに数多く残した流行作家、富島健夫(とみしま たけお:1931-1998)の生涯を描いたもの。富島の代表作は『おさな妻』(1970年)で、幾度となく映画化やTVドラマ化されています。

★このほか、最近の新刊では『子午線――原理・形態・批評 Vol.5』(書肆子午線、2017年1月、本体2,000円、B5変型判並製264頁、ISBN978-4-908568-10-7)に注目しました。八幡書店社主の武田崇元さんの長編インタヴュー「願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」が掲載されています。子午線ではこれまで既刊号で、松本潤一郎さん(第1号)、大杉重男さん、安里ミゲルさん(ともに第2号)、金井美恵子さん、花咲政之輔さん(ともに第3号)、稲川方人さん(第4号)といった方々のインタヴューを掲載されてきましたが、今回の相手はオカルト界の重鎮。レフトとオカルトのあわいの変遷をたどることのできる貴重な内容で、必読です。

アガンベン『哲学とはなにか』ほか、書評情報

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
昨年イタリアで刊行されたばかりのアガンベンさんの最新刊『哲学とは何か』の訳書が早くも上村忠男さんによって実現されました。書誌情報を以下に掲出しますが、目次を含めた詳細は書名のリンク先をご覧ください。なお、上村さんは来月、グラムシ『革命論集』を講談社学術文庫より上梓されます。2月10日発売予定、本体1,680円です。弊社の12月新刊、カッチャーリ『抑止する力』を合わせると、3か月連続でイタリア思想の訳書を世に送り出したことになります。

哲学とはなにか
ジョルジョ・アガンベン著 上村忠男訳
みすず書房 2017年1月 本体4,000円 四六判上製224頁 ISBN978-4-622-08600-0

帯文より:音声を奪われて文字と化した知の弱さ、無調律の政治風景。哲学は今日、音楽の改革としてのみ生じうる。言葉の始原=詩歌女神〔ムーサ〕たちの場所へと、思考を開く。

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なお『抑止する力』と『哲学とはなにか』をめぐっては、文化人類学者の真島一郎さん(東京外国語大学大学院国際協力講座教授)がブログ「真島一郎研究室」1月21日付エントリー「カッチャーリ 『抑止する力』 / アガンベン 『哲学とはなにか』 」で論及してくださっています。

「現実の歴史のうちでカテコーンの抑止的な力が危機を迎えるとき、 当のカテコーンによって維持されていたプロメーテウス的秩序が、エピメーテウス(プロメーテウスの弟)の時の到来により復讐されることになるというのが、著者カッチャーリの予測です。とりわけ、世界の現在と未来を展望する本書末尾の一文は、読み手を戦慄させることになるかもしれません。「プロメーテウスは引退してしまった。あるいはふたたび岸壁に縛りつけられてしまった。そしてエピメーテウスがわたしたちの地球を徘徊してはパンドラの壺の蓋をつぎつぎに開けて回っている」(159頁)。エピメーテウスが扉をひらいてしまう永続的な危機の時とは、かつて『政治神学』のシュミットが、「例外状況」についてふれたのち鮮やかに描いてみせた、ドイツロマン派の「永遠の対話」と、そしてあの「純粋決定/決意」の対立と、どこまで交叉した問題系を形成しうるのか、大いに興味を惹かれるところです」。

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いっぽう最近、弊社11月既刊書、森山大道×鈴木一誌『絶対平面都市』に書評が2本寄せられています。ひとつは「キネマ旬報」2017年2月上旬号「映画・書評」欄に掲載された上野昂志さんによる書評「急かされ。考えさせられる」です。

「『遠野物語』に書かれた森山の言葉を引いた鈴木が、「現実世界のあちら側に、写され、コピーされ、印刷されたものたちの別世界がかたちづくられている」というのは「単なる比喩ではないんですね」と問い、森山が「比喩ではすまない感じ」といい「おびただしい印刷物の世界。コピーされたものの反乱〔ママ〕のなかに人々はいますから」と応えるというような刺激的な応酬が随所にある」(本書294~295頁参照)。

もうひとつは「朝日新聞」2017年1月22日付読書欄の、大竹昭子さんによる書評です。

「森山の発言はつねにブーメランのように同じ場所に戻ってくる。「なにも写さなかったんじゃないか」という自問と「こうしちゃいられない」という焦り。〔・・・〕無意識と自意識のはざまを行き来する言葉の彼方から、写真の不思議さが立ち上がってくる。世界を理解するのではない。世界が謎の集積であることを可視化するのが写真なのだと」。

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佐野方美写真展「SLASH」

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◎佐野方美写真展「SLASH」

期日:2017年1月27日(金) ~ 2月5日(日)12:00~19:00 会期中無休
料金:入場無料
場所:AL(アル;東京都渋谷区恵比寿南3-7-17;電話03-5722-9799;代官山駅から徒歩5分;JR恵比寿駅から徒歩8分)

内容:佐野方美(さの・まさみ)の撮り下ろし写真集第一作『SLASH』 (スラッシュ) が月曜社より発売されることを記念して、同タイトルの写真展を開催いたします。写真集176点の中から50点程をセレクトし、デジタルプリントにて展示。作品の販売に加え、G.V.G.V.FLATと河村康輔氏との三者コラボレーションにより実現したTシャツを販売しています。

※同時開催として、2017年1月26日(木)~2月5日(日)に、NADiff Window Gallery(東京都渋谷区恵比寿1-18-4 1F)にてコラージュ作品展示しております。

注目新刊:『現代思想の転換2017』『コミュニズムの争異』『政治の理論』、ほか

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『現代思想の転換2017――知のエッジをめぐる五つの対話』篠原雅武編、人文書院、2017年1月、本体1,800円、4-6判並製208頁、ISBN978-4-409-04109-3
『コミュニズムの争異――ネグリとバディウ』アルベルト・トスカーノ著、長原豊訳、航思社、2017年1月、本体3,200円、46判上製308頁、ISBN978-4-906738-21-2
『フレイマー・フレイムド』トリン・T・ミンハ著、小林富久子+矢口裕子+村尾静二訳、水声社、2016年12月、水声社、本体4,000円、四六判上製407頁、ISBN978-4-8010-0206-7
『十九世紀フランス哲学』フェリックス・ラヴェッソン著、杉山直樹+村松正隆訳、知射水書館、2017年1月、本体6,500円、菊判上製440頁、ISBN978-4-86285-247-2

★『現代思想の転換2017』は人文書院のウェブサイト上で連載された4本の対談「いま、人文学の本を書くとは」に新たな1本を加えて1冊としたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。編者の篠原さんは中村隆之さん(中村さんは「不透明なものを訳す」という追記も寄稿しておられます)、小泉義之さん、藤原辰史さん、千葉雅也さんと対談し、さらにティモシー・モートンさんにもインタヴューしています。モートンさんへのインタヴューは篠原さんが先月上梓した『複数性のエコロジー』(以文社、2016年12月)にも別のものが付録として掲載されており、すでに目にした方もいらっしゃるかと思います。『現代思想の転換2017』に収められた諸篇は篠原さんが「歴史学、哲学、文学という、人文学の基礎にかかわる人たちに、研もので、究をおこなううえでのモチベーションを、新年を、率直に聞きたいと考え」て行ったものだ、と巻頭の「はじめに」には書かれています。また、巻末の「インタヴューを終えて」ではこう書かれています。「私は、このインタヴューをする前、現在は、先行き不透明で暗い時代だと考えていた。「唯ぼんやりした不安」に強く苛まれていた。終えてみた今の気分を率直にいうと、不安はわずかに薄れてきて、新しいことが始まっている、もっと楽に構えていいと思えるようになってきた。〔・・・〕いま始まりつつあるのは、喪失と崩壊を本当に埋め合わせようとする機運ではないか。〔・・・〕私はこのインタヴューをつうじて、新しい思想、新しい人文学が、すでに始まっていることを感じ取ったということだけはいっておきたい」。

★『コミュニズムの争異』はまもなく発売。日本オリジナル編集の論文集で、帯文によれば、自らの師であるネグリとバディウの理論をめぐる批判的入門書とのことです。今回が初訳となるトスカーノ(Alberto Toscano, 1977-)はロンドン大学コールドスミス校で社会学を講じており、バディウやネグリ、アリエズらの著書の英訳のほか、『生産の劇場』『ファナティシズム』などの自著があり、マルクス主義の新たな再生を模索する「歴史的唯物論」誌の編集委員を務めています。『コミュニズムの争異』にはネグリ論が3編、バディウ論が4編おさめられています。目次明細は近く版元サイトで公開されるものと思われます。書き下ろしの序文「係争のもとにあるさまざまなコミュニズム」でトスカーノが綴った次の言葉が印象的です。「僕らの手近にはやや妥協的な別種のコミュニズム哲学があったことも確かだ。古典的なマルクス主義的展望の数知れない反復は言うまでもないが、アガンベン、ナンシー、デリダの哲学がそうである。けれども、当時、コミュニズムの釈明なき肯定を哲学の必要性の等しく「純真な」強調に、より精確には、(単に)歴史的に積み上がった思想の身体-遺体としての哲学ではなく一箇の能動的実践としての哲学の必要性の強調に、結びつけていた思想家は、ネグリとバディウだけだったのである」(8~9頁)。

★『フレイマー・フレイムド』は叢書「人類学の転回」の第6弾。『Framer Framed』(Routledge, 1992)の全訳です。ヴェトナム出身でアメリカで活躍する思想家・映像作家であるトリン・ミンハ(Trinh T. Minh-ha, 1952-)の4つ目の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。映像作品三作(「ルアッサンブラージュ」1982年、「ありのままの場所――生きることは円い」1985年、「姓はヴェト、名はナム」1989年)の台本や、インタヴュー9本を収録しています。既訳書と異なり、映像作家としてのトリンに焦点を当てた本で、待望久しかった刊行です。原書とは判型こそ違いますが、多数掲載されていた図版は訳書でもすべて収められているようです。共訳者の小林富久子さんはこれまでもトリンの著書の翻訳に携わってこられており、『月が赤く満ちる時』の上梓から数えて20年以上貢献されています。本書の翻訳を思い立ったのは原著刊行より間もない頃と言いますから、四半世紀以上の献身と言うべきでしょう。

★『十九世紀フランス哲学』は発売済。『La Philosophie en France au XIXe siècle』(Hachette, 1867)の全訳です。ラヴェッソン(Félix Ravaisson, 1813-1900)の単独の訳書は実に『習慣論』野田又夫訳、岩波文庫、1938年;原著『De l'habitude』1838年)以来のもので、約80年ぶりの刊行に驚きを禁じえません。ラヴェッソンがベルクソンに影響を与えていることは良く知られているはずですが、19世紀ヨーロッパの思想家で日本人が思い浮かべるのはヘーゲル、マルクス、ディルタイ、ニーチェなどドイツの巨星たちであり、フランスの思想家たちについてはあまり多くを知らなかったと思われます。本書はその欠落を埋めてくれるものであり、人物小事典ともなっている巻末の人名索引を含め、特筆すべき労作と呼ぶべき成果です。内容紹介や目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

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★このほか以下の新刊との出会いがありました。特に稲葉振一郎さんの『政治の理論』は先述の『現代思想の転換2017』や『コミュニズムの争異』との対比において非常に示唆的です。稲葉さんの前作『宇宙倫理学入門』や篠原さんの『複数性のエコロジー』などの既刊書と合わせて、人文知を問い直し活気づける必読書となっています。

『日本批評大全』渡部直己著、河出書房新社、2017年1月、本体7,000円、46判上製644頁、ISBN978-4-309-02534-6
『青年の主張――まなざしのメディア史』佐藤卓己著、河出ブックス、2017年1月、本体1,800円、B6判並製440頁、ISBN:978-4-309-62500-3
『政治の理論――リベラルな共和主義のために』稲葉振一郎著、中公叢書、2017年1月、本体1,700円、四六判並製320頁、ISBN978-4-12-004935-4
『解離の舞台――症状構造と治療』柴山雅俊著、金剛出版、2017年1月、本体4,200円、A5判上製320頁、ISBN978-4-7724-1531-6
『短歌で読む哲学史』山口拓夢著、田畑書店、2017年1月、本体1,300円、A5判並製136頁、ISBN978-4-8038-0340-2

★河出書房新社さんの新刊2点は発売済。渡部直己『日本批評大全』は、上田秋成『雨月物語』序や本居宣長『源氏物語玉の小櫛』から、蓮實重彦『夏目漱石論』、柄谷行人『日本近代文学の起源』まで、近現代日本の約百年間の批評70作を渡部さんによる解題を付して収録ないし抄録したアンソロジーです。全8頁の投込小冊子には、本書のサポートを担った大澤聡さんと渡辺さんの対談「近代批評の記念碑のために」が収められています。「「批評」はいま明らかに死にかけている。すでに心肺停止に陥っているといって過言ではない」(638頁)と渡辺さんは後記に本書編纂の動機を明かしておられます。

★2009年10月に創刊された河出ブックスが8年目にして100点目に到達したとのことです。佐藤卓己『青年の主張』はその記念すべき100番で、NHKが毎年の「成人の日」に放送してきた番組「NHK青年の主張全国コンクール」(ラジオ中継は1956年より;テレビ放送は1960~1989年;1990~2004年は「NHK青春メッセージ」と改題)をめぐる初めての総括的研究です。章立ては以下の通り。序章「《青年の主張》の集合的記憶」、第一章「ラジオから響く「小さな幸せ」――1950年代」、第二章「ブラウン管に映る弁論大会――1960年代」、第三章「「らしさ」の揺らぎと再構築――1970年代」、第四章「笑いの時代の「正しさ」――1980年代」、第五章「《青年の主張》のレガシー――1990年以降」。

★稲葉振一郎『政治の理論』は昨年末に刊行された『宇宙倫理学入門』に続く稲葉さんの新著。「すべてが「資本」として流動化していく世界の中で、確固とした(アレント的な意味での)公共世界と私有財産を、資本主義といかに折り合いをつけつつ構築し維持していくか」(298頁)を基本課題とする「リベラルな共和主義」を論じたもの。もともとは入門書として新書で刊行するはずが膨らんだものだそうで、以下の十章から成ります。第一章「政治権力はどのように経験されるか」、第二章「アレントの両義性」、第三章「フーコーにとっての政治・権力・統治」、第四章「自由とは何を意味するのか」、第五章「市場と参加者のアイデンティティ」、第六章「信用取引に潜在する破壊性」、第七章「「市民」の普遍化」、第八章「リベラルな共和主義と宗教」、第九章「リベラルな共和主義の可能性」、第十章「政治の場」。巻末のあとがきには〈ドゥルーズ=ガタリ左派〉への批判が素描されており、興味深いです。

★柴山雅俊『解離の舞台』は帯文に曰く「解離性障害を理解・支援するための比類なき決定書」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「解離性障害では、解離性の意識変容(空間的変容)が基盤にあって、そこからさまざまな解離症状が発展していく。誤解を恐れずに表現すれば、解離とは現実と夢(空想)の接近の諸相である」(22頁)。「夢と現実が織りなす意識変容の夢幻空間が「解離の舞台」である。それは解離の病理であるとともに、解離から回復するための重要な契機となるように思われる」(23頁)。付録として「解離の主観的体験チェックリスト」が巻末に掲載されています。本来の用途ではありませんが、自己診断の手掛かりになるかもしれません。

★山口拓夢『短歌で読む哲学史』は、昨秋に休眠状態から脱し新たな出発を開始した田畑書店さんが放つ「田畑ブックレット」の創刊第一弾です。著者の山口拓夢(やまぐち・たくむ:1966-)さんはかの山口昌男さんのご子息で、本書が初の単独著となります。ギリシア哲学に始まり、イエス・キリストと教父哲学、中世神学、ルネッサンスの哲学、近世哲学、近現代哲学、構造主義以降までの西洋哲学史を概括する入門書となっており、特徴をなすのは哲学者の思想的核心を短歌で表現している点です。たとえばハイデガーはこう詠まれています。「ものごとを立ち現せる「在る」というはたらきに目をじっと凝らそう」。なるほど覚えやすいかもしれませんね。目次や内容詳細については書名のリンク先をご覧ください。

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ブックフェア「エコロジカル・シフトの時代へーーティモシー・モートンとの対話」

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紀伊國屋書店新宿本店3階人文書売場I-28棚にて、1月30日よりブックフェア「エコロジカル・シフトの時代へーーティモシー・モートンとの対話」が開始されています。『複数性のエコロジー』(以文社、2016年12月)、『現代思想の転換2017』(人文書院、2017年1月)を上梓された篠原雅武さんによる「じんぶんや選書フェア」で、篠原さんによる解説冊子も無料配布されています。2月末ないし3月上旬まで開催予定とのことです。

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「人文書出版の希望と絶望」要旨

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先月(1月20日)にお邪魔した新潟哲学思想セミナーでの私の拙い発表「人文書出版の希望と絶望」の要旨をまとめていただいた記事「第24回新潟哲学思想セミナーが開催されました。 【NiiPhiS】」が、新潟大学人文学部「人間学ブログ」に掲載されました。ご来場いただきました皆様、質問してくださった皆様、宮崎裕助先生をはじめ運営スタッフの皆様に深く御礼申し上げます。会場でお配りしたレジュメにメールアドレスを記しましたので、よろしければ今後も意見交換ができれば嬉しいです。

同日午前中には宮崎先生の「現代思想論」講座にて「汎編集論的転回」と題して発表しましたが、受講された皆さんのコメントペーパーはすべて拝読させていただき、ご質問については応答を先生にお送りしました。またの交流の機会を楽しみにしております。

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注目新刊:ブルデュー『男性支配』、ほか

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『男性支配』ピエール・ブルデュー著、坂本さやか/坂本浩也訳、藤原書店、2017年1月、本体2,800円、四六上製240頁、ISBN978-486578-108-3
『キャリバンと魔女――資本主義に抗する女性の身体』シルヴィア・フェデリーチ著、小田原琳/後藤あゆみ訳、以文社、本体4,600円、四六判上製528頁、ISBN978-4-7531-0337-9
『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか――人間の心の芯に巣くう虫』シェルドン・ソロモン/ジェフ・グリーンバーグ/トム・ピジンスキー著、大田直子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2017年2月、本体2,200円、46判並製280頁、ISBN978-4-7726-9554-1
『チャムパ王国とイスラーム――カンボジアにおける離散民のアイデンティティ』大川玲子著、平凡社、2017年2月、本体5,000円、A5判上製248頁、ISBN978-4-582-70354-2

複数の新刊をまとまりとして見ることで、人文書と現代とが響き合う「今」が見えてくることがあります。自分自身や自集団の価値観から他者を排除することを正当化するような強弁がまかり通る危険性に曝されつつある現代において、支配的思想を歴史的に再検証することは一種の「ワクチン」として非常に重要です。ラルフ・キーズが言うところの「ポスト・トゥルースの時代」(『The Post-truth Era: Dishonesty And Deception In Contemporary Life』St. Martins Press, 2004)が、米国の新政権の誕生によっていよいよ顕在化し始めています。もうひとつの世界の可能性を示唆してきたオルタナティヴという言葉がもはや左派の専売特許ではなくなったこんにち、コンウェイ大統領顧問が言う「オルタナティヴ・ファクツ」や、バノン首席戦略官が与してきた「オルト・ライト」が言論の最前線で影響力を発揮し、皮肉にもオーウェルのディストピア小説『1984』がベストセラーに躍り出ています。

日本においても政治やマスコミ、市民運動や一般企業に至るまで右傾化の懸念が年々深刻になっているのは周知の通りです。米国ほどではないにせよ、『1984』をはじめとするオーウェルの作品や、ハクスリーの『素晴らしい新世界』が日本でも再評価される機運が高まるかもしれません。すでにコーナーづくりやフェアの準備を始めている書店さんもあると聞きます。以下にご紹介する書籍のいくつかは、長い目で見た人間社会の弱点を明らかにするのに役立つと思われます。

ここ最近ではジェンダー論やフェミニズム方面で注目新刊が続いています。ブルデュー『男性支配』の原著は1998年刊。「男性的な社会弁護論は、支配関係を、生物学的な自然のなかに組み込むことによって正当化するのだが、その生物学的な自然自体が、自然化された社会的構築物なのである」(41頁)と教えます。「男らしさとは、きわめて関係的な観念であり、〔・・・〕何よりも自己自身のなかの女性的なものに対する一種の恐怖のなかで構築されている観念なのである」(80頁)とも。フェデリーチ『キャリバンと魔女』の原著は2004年刊。「封建制から資本主義への「移行」を女性、身体、そして本源的蓄積という観点から再検討する」(14頁)もの。「資本主義の書くには、契約による賃金労働と奴隷状態の間の共生関係だけでなく、それとともに、労働力の蓄積と破壊という弁証法的対立も存在する。そのために、身体、労働、生命によってもっとも大きな犠牲を強いられたのは、女性であった」(26頁)とフェデリーチは指摘します。フェミニズム、フーコー、マルクス主義の諸理論との交差は、書棚づくりや芋づる式読書ののヒントになるはずです。

ソロモンほか『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか』の原書は2015年刊。原題は「果心の虫――人生における死の役割」。心理学者三氏による「恐怖管理理論」を明かしたもので、自尊心や偏見の昂進や他者嫌悪の裏に潜む恐怖の心的メカニズムを鋭く分析しています。死の恐怖こそが人間の行動に大きな影響を及ぼしている、と暴く本書のユニークさは非常に説得的です。大川玲子『チャムパ王国とイスラーム』は「カンボジアのチャム人の宗教文化であるイスラームについて論じたもの」で「このテーマを論じた日本語著作としては初めて」(18頁)だそうです。チャム人は、2世紀の歴史資料に名を留め、19世紀前半にヴェトナムによって滅ぼされたチャムパ(占城)王国の末裔。東南アジアのムスリム史の興味深い一面を学べます。

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このほか、新訳や新装版、展覧会図録の注目新刊をご紹介します。

『テクストの楽しみ』ロラン・バルト著、鈴村和成訳、みすず書房、2017年1月、本体3,000円、四六判上製184頁、ISBN978-4-622-08566-9
『[新装版]星と人間──精神科学と天体』ルドルフ・シュタイナー著、西川隆範編訳、風濤社、2017年1月、本体2,200円、四六判上製216頁、ISBN978-4-89219-427-6
『アドルフ・ヴェルフリ――二萬五千頁の王国』アドルフ・ヴェルフリ画、服部正監修、国書刊行会、2017年1月、本体2,500円、AB判上製232頁、ISBN978-4-336-06141-6

バルト『テクストの楽しみ』は原著が1973年刊、初訳は沢崎浩平訳『テクストの快楽』で1977年にみすず書房から刊行され、99年に第15刷を数えるロングセラーでした。46の断章から成る比較的に親しみやすい本で、「理論から自伝への回帰を徴づけたバルト後期の代表作」(帯文より)。シュタイナー『星と人間』は2001年に刊行されたものの新装版で編訳者はしがきによれば「シュタイナーが星々の性質について解き明かした幾多の講義のなかから基本的な」9篇の講義を訳出したものです。全354巻という膨大なシュタイナー全集(スイス、ルドルフ・シュタイナー出版社)の規模を考えると今後もシュタイナーの訳書は増えていくに違いありません。『アドルフ・ヴェルフリ』は日本初となる大規模個展「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」の公式図録。図録だけあって豪華な造本の割には非常に安く、お買い得です。2017年1月11日~2月26日まで兵庫県立美術館、3月7日から4月16日まで名古屋市美術館、4月29日から6月18日まで東京ステーションギャラリーにて開催。曼荼羅と楽譜を融合させたような特異な作品群は見る者を別世界に引きずり込む魔力を湛えています。自伝的旅行記『揺りかごから墓場まで』だけでも全45冊2万5千頁に及ぶという膨大な作品群のうち、初期のドローイングから最晩年作まで74点をオールカラーで収録。圧倒的な秩序と圧倒的な自由が共存する驚異的な作品世界を垣間見ることができる、待望の一冊です。

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星野太『崇高の修辞学』取次搬入日決定、先行販売やイベント情報など

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星野太『崇高の修辞学』の取次搬入日が決定しました。日販と大阪屋栗田が2月7日、トーハンが8日です。現在、代官山蔦屋書店とナディッフアパート(恵比寿本店)にて先行販売中。そのほかの書店さんでは取次を経由して今週末から来週以降に順次店頭発売開始となります。

なお、弊社の人文書新刊ではあまり起こらないことですが、今回の新刊は受注多数のため、発売と同時に版元品切になります。書店さんの店頭には在庫がありますから、どうぞ皆様店頭よりお買い求め下さい。比較的に在庫を多めに持っている書店さんを以下に列記しておきます。

【先行発売】
代官山蔦屋書店、ナディッフアパート(恵比寿本店)
【一般発売】
紀伊國屋書店新宿本店、ブックファースト新宿店、丸善丸の内本店、ジュンク堂書店池袋店、東京堂書店神田神保町店、東大生協駒場書籍部。ほか全国108店舗にて発売。電話・メール・FAX、当エントリーのコメント欄などで地域を限定してお尋ねいただければ詳細をお答えいたします。
【ネット書店】
アマゾン・ジャパン、Honto。

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◎トークイベント:『崇高の修辞学』(月曜社)刊行記念・星野太講演会

当日ご希望の方にサイン会を予定しております。サイン対象本は、当店でご購入いただきました対象書籍のみとさせていただきます。また、今回のイベントご来場のお客様にのみ、限定の書き下ろし「『崇高の修辞学』本編未収録の覚書」特別小冊子をプレゼントする予定です。

日時:2017年03月24日(金) 19:00~
場所:蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
定員:70名

参加条件:代官山 蔦屋書店にて、対象書籍『崇高の修辞学』(月曜社刊/3,888円税込)をご予約・ご購入頂いたお客様。またはオンラインストアにて参加券をご購入のお客様。
お申込み方法:①代官山 蔦屋書店 店頭(1号館1階 レジ)、②オンラインストア(2017年3月22日午前9時まで受注)、③お電話 03-3770-2525(1号館 1階 人文フロア)

対象商品:『崇高の修辞学』(月曜社 3,888円/税込/地方発送も可能)もしくはイベント参加券(1,000円/税込)

注意事項:参加券1枚でお一人様にご参加いただけます。イベント会場はイベント開始の15分前からで入場可能です。当日の座席は、先着順でお座りいただきます。参加券の再発行・キャンセル・払い戻しはお受けできませんのでご了承くださいませ。止むを得ずイベントが中止、内容変更になる場合があります。

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注目新刊:ルフォール『民主主義の発明』勁草書房

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弊社出版物でお世話になっている訳者の皆さんの最近のご活躍をご紹介します。

★渡名喜庸哲さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
クロード・ルフォール(Claude Lefort, 1924-2010)の『L'invention democratique』(Fayard, 1981/1994)の共訳書を上梓されました。帯文に曰く「民主主義はまだ発明されていない。全体主義を総括しながら、現代民主主義の理論を打ち立てる、原題フランスの政治哲学者ルフォールの主著」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。あとがきによれば「本書のきっかけとなったのは、〔・・・訳者のうち数名がパリのカフェで集った際に〕フランス政治哲学で何かまだ訳されていない古典的な著作を訳そうと盛り上がったことを機縁にしている」とのことです。ルフォールの訳書でもっとも古いものはサルトルとの論戦を一冊にまとめた『マルクス主義論争』(白井健三郎訳、ダヴィッド社、1955年)ですが、その後刊行された訳書の数は片手で足りる少なさだっただけに、今回のような発掘は非常に有益です。

渡名喜さんは巻末解説「クロード・ルフォールの新しさと古さ」で次のように述べておられます。「「民主主義」および「全体主義」についての今なお色あせない根源的な考察がルフォールにはあるはずだ。〔・・・〕ルフォールが問題にしているのは、「共産主義」対「自由主義」という構図そのものがもはや効力を有さない「ポスト共産主義」(iv頁)の社会だということは忘れないようにしよう」(390頁)。

民主主義の発明――全体主義の限界
クロード・ルフォール著 渡名喜庸哲/太田悠介/平田周/赤羽悠訳
勁草書房 2017年1月 本体5,200円 A5判上製432頁 ISBN978-4-326-30254-3

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★竹峰義和さん(共訳書:シュティーグラー『写真の映像』)
東京大学出版会のPR誌「UP」2017年2月号にご論考「投壜通信の宛先――フランクフルト学派の思想家たちの亡命期の手紙」(1~6頁)を寄稿されています。「われわれのような後世の読者が、みずからに宛てられたわけではないテクストを、あたかも海岸に漂着した「投壜通信」を開封するかのように紐解き、読み進めていくとき、そこにたまたま書きつけられていなければ永遠に失われていたはずの過去の生が刹那的に息を吹き返す。「過去の救済」とはフランクフルト学派の思想における鍵語であるが、そこで志向されているのは、かつて在りしものを、いまでは失われてしまったものを、追想というかたちでよみがえらせようとするような、祈りにも似た営みなのである」(6頁)。

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メモ(13)

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東京商工リサーチの2017年2月10日付「TSR速報」によれば、老舗の地図取次である日本地図共販株式会社(江戸川区南葛西3-9-20、設立1946年7月、資本金9600万円)が本日2月10日、東京地裁へ破産を申請したとのこと。負債総額は14億6304万円(平成28年9月期決算時点)。売上のピークは平成9年9月期の109億9065万円。その後、ピーク時の約3分の1まで落ち込んでいた、と。「得意先書店の大手取次への帳合変更の流れは止まらず〔・・・〕最近になって複数の出版社が当社に対する出荷を停止し、事業の継続が困難になっていた」と報じられています。

「文化通信」2月10日付記事「日本地図共販、自己破産を申請」では「近年は減収基調にあり、営業段階から毎期赤字計上が続いていた。〔・・・〕この間、営業所の閉鎖を実施するなど立て直しに努めていたが、今年初めに出版社への支払ができず、大手取引先出版社が相次いで出荷を取りやめたことで破産申請に至った」と。一般読者にはあまりなじみがない会社かもしれませんが、出版業界にとっては無視できないニュースです。

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注目新刊:2017年1月~3月

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通常の週末記事で手一杯で、言及できてない書目のフォローをここしばらくできていませんでしたが、今年からは少しでも多くの書名を留めておくよう心掛けたいと思います。とはいえ今回できたのは、アマゾン・ジャパンの「人文・思想」分野とその関連書2か月分強の見直しだけで、他分野全体を通覧できてはいません。往々にして「これは」という発見は他分野のものだったりするので、本当は全分野の新刊一覧にしっかり目を通すべきですが、昔ネットでも公開されていたTRCの週刊新刊全点案内のような便利な情報源が見当たらないのが残念です。アマゾンの「人文・思想」分野には学参に移してもらった方がいいような書目や、似たようなハウツー電子書籍も多数見受けるので、そういう中から選別していくのがしんどいですね。

★2017年1月既刊

0105『アレント入門』中山元著、ちくま新書
0106『日本十二支考――文化の時空を生きる』濱田陽著、中公叢書
0110『本屋、はじめました――新刊書店Title開業の記録』辻山良雄著、苦楽堂
0110『キリストを生きる』トマス・ア・ケンピス著、山内清海訳、文芸社セレクション
0110『現代語訳 蓮華面経』仁科龍著、雄山閣
0110『「革命」再考――資本主義後の世界を想う』的場昭弘著、角川新書
0112『質的研究法』G・W・オルポート著、福岡安則訳、弘文堂
0112『ジェンダー史とは何か』ソニア・O・ローズ著、長谷川貴彦/兼子歩訳、法政大学出版局
0113『共時性の深層――ユング心理学が開く霊性への扉』老松克博著、コスモスライブラリー
0114『われわれはいかに働き どう生きるべきか――ドラッカーが語りかける毎日の心得、そしてハウツー』P・F・ドラッカー述、上田惇生訳、ダイヤモンド社
0120『本能の現象学』ナミン・リー著、中村拓也訳、晃洋書房
0120『カント 美と倫理とのはざまで』熊野純彦著、講談社
0120『カント哲学の奇妙な歪み――『純粋理性批判』を読む』冨田恭彦著、岩波現代全書
0124『社史の図書館と司書の物語――神奈川県立川崎図書館社史室の5年史』高田高史著、柏書房
0124『アーカイヴの病〈新装版〉』ジャック・デリダ著、福本修訳、法政大学出版局
0125『生の悲劇的感情〈新装版〉』ウナムーノ著、神吉敬三/佐々木孝訳、法政大学出版局
0125『キリスト教教父著作集 第2巻I エイレナイオス1 異端反駁1』大貫隆訳、教文館
0125『泳ぐ権力者――カール大帝と形象政治』ホルスト・ブレーデカンプ著、原研二訳、産業図書
0125『ダンヒル家の仕事』メアリー・ダンヒル著、平湊音訳、未知谷
0125『ローカルブックストアである――福岡 ブックスキューブリック』大井実著、晶文社
0125『「本をつくる」という仕事』稲泉連著、筑摩書房
0126『岩波茂雄文集 第1巻 1898-1935年』植田康夫/紅野謙介/十重田裕一編、岩波書店
0126『正常と病理〈新装版〉』ジョルジュ・カンギレム著、滝沢武久訳、法政大学出版局
0126『世界宗教の経済倫理――比較宗教社会学の試み 序論・中間考察』マックス・ウェーバー著、中山元訳、日経BPクラシックス
0128『学生との対話』小林秀雄著、国民文化研究会/新潮社編、新潮文庫

一覧をローラーするまで『キリスト教教父著作集 第2巻I エイレナイオス1 異端反駁1』(大貫隆訳、教文館)に気づいていなかったのは不覚でした。エイレナイオス『異端反駁』はこれまでに第3分冊と第4分冊が小林稔訳で1999年に刊行されましたがその後しばらく続刊が途絶えていました。大貫先生が訳者を務められているということで、今後はさほど待たずに完結しそうな気がします。

文芸社セレクションは文庫サイズのシリーズで、ブラヴァツキーの『シークレット・ドクトリン』第三巻を昨年刊行したりして、要チェックなレーベルです。今般もトマス・ア・ケンピスの新訳(『キリストを生きる』山内清海訳)が発売されていて驚きました。雄山閣の単行本、仁科龍『現代語訳 蓮華面経』は同社の『大蔵経全解説大事典』(1998年、新装版2016年)よりの抜粋とのこと。同事典は税込45,360円なので、こうした切り売りは悪い感じはしません。

『泳ぐ権力者――カール大帝と形象政治』(原研二訳、産業図書)はブレーデカンプの8点目の訳書。初期の訳書である『古代憧憬と機械信仰――コレクションの宇宙』(藤代幸一/津山拓也訳、法政大学出版局、1996年)が品切のようですが、ブレーデカンプの知名度や業績から言ってそろそろ文庫の仲間入りを果たしても良いような気がします。


★2017年2月既刊
0201『絵画の歴史――洞窟壁画からiPadまで』デイヴィッド・ホックニー/マーティン・ゲイフォード著、木下哲夫訳、青幻舎
0201『シュタイナーのアントロポゾフィー医学入門』日本アントロポゾフィー医学の医師会監修、ビイングネットプレス
0203『ドイツ啓蒙と非ヨーロッパ世界――クニッゲ、レッシング、ヘルダー』笠原賢介著、未來社
0206『天災と日本人――地震・洪水・噴火の民俗学』畑中章宏著、ちくま新書
0206『カンギレムと経験の統一性――判断することと行動すること 1926-1939年』グザヴィエ・ロート著、田中祐理子訳、法政大学出版局
0206『『法華経釈問題』翻刻研究――翻刻校訂・国訳〔新版〕』『法華経釈問題』翻刻研究会 著、ノンブル社
0206『メディアの歴史――ビッグバンからインターネットまで』ヨッヘン・ヘーリッシュ著、川島建太郎訳、法政大学出版局
0207『アナトミカル・ヴィーナス――解剖学の美しき人体模型』ジョアンナ・エーベンステイン著、布施英利監修、グラフィック社
0209『芸術の終焉のあと――現代芸術と歴史の境界』アーサー・C・ダントー著、山田忠彰監訳、河合大介/原友昭/粂和沙訳、三元社

ホックニーの『絵画の歴史――洞窟壁画からiPadまで』は同版元のホックニーの既刊書『秘密の知識』(木下哲夫訳、青幻舎、2006年;普及版2010年)が品切になっていることを考えると早めに購入しておくのがいいのかもしれません。同じく芸術の分野ではダントーの『芸術の終焉のあと』は見逃せない一書(原著は1997年刊)。さらに『メディアの歴史』はキットラーやボルツに並ぶドイツ・メディア論の大家ヘーリッシュ(Jochen Hörisch, 1951-)の待望の初訳。このところ書店人や司書、出版人の新刊は色々と出ておりそれぞれ注目すべきなのですが、本書は特に業界人必読と強く推すべき重厚な一冊です。


★2017年2月刊行予定
0214『アート・パワー』ボリス・グロイス著、石田圭子/齋木克裕/三本松倫代/角尾 宣信訳、現代企画室
0214『ソシオパスの告白』M・E・トーマス著、高橋祥友訳、金剛出版
0214『セルバンテス全集 第2巻 ドン・キホーテ 前篇』岡村一訳、水声社
0215『キリスト教神学で読みとく共産主義』佐藤優著、光文社新書
0216『プルーストと過ごす夏』アントワーヌ・コンパニョン/ジュリア・クリステヴァ/ほか著、國分俊宏訳、光文社
0217『イスラーム入門――文明の共存を考えるための99の扉』中田考著、集英社新書
0217『アレフ』J・L・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫
0222『芸術の言語』ネルソン・グッドマン著、戸澤義夫/松永伸司訳、慶應義塾大学出版会
0222『〈新装〉増補修訂版 相互扶助論』ピョートル・クロポトキン著、大杉栄訳、同時代社
0222『オネイログラフィア――夢、精神分析家、芸術家』ヴィクトル・マージン著、斉藤毅訳、書肆心水
0222『エックハルト〈と〉ドイツ神秘思想の開基――マイスター・ディートリッヒからマイスター・エックハルトへ』長町裕司著、春秋社
0227『ドゥルーズと多様体の哲学――二○世紀のエピステモロジーにむけて』渡辺洋平 著、人文書院
0227『主体の論理・概念の倫理――二〇世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義』上野修/米虫正巳/近藤和敬編、以文社
0228『義科『廬談』摩訶止觀――論草3』天台宗典編纂所編、春秋社
0228『アフリカ美術の人類学――ナイジェリアで生きるアーティストとアートのありかた』緒方しらべ著、清水弘文堂書房
0228『無神論と国家』坂井礼文著、ナカニシヤ出版
0228『メルロ=ポンティ哲学者事典(第3巻)歴史の発見・実存と弁証法・「外部」の哲学者たち』モーリス・メルロ=ポンティ編著、加賀野井秀一/伊藤泰雄/本郷均/加國尚志監修・翻訳、白水社

ホックニーやダントーの新刊に続いて芸術論関連ではグロイス『アート・パワー』やグッドマン『芸術の言語』、マージン『オネイログラフィア』と、どんどん話題書が続くことになり、活況を呈するでしょう。水声社版『セルバンテス全集』はアマゾンでは扱いがありませんが、まさか全集が刊行開始とは驚きです。哲学系では全3巻別巻1予定の『メルロ=ポンティ哲学者事典』に注目。4月には第2巻、6月には第1巻、8月に別巻の刊行が予定されています。基礎文献です。


★2017年3月刊行予定
0301『世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話』ボブ・エクスタイン著、藤村奈緒美訳、 エクスナレッジ
0308『語録 要録』エピクテトス著、中公クラシックス
0311『社会問題としての教育問題――自由と平等の矛盾を友愛で解く社会・教育論』ルドルフ・シュタイナー著、今井重孝訳、イザラ書房
0311『アルキビアデス クレイトポン』プラトン著、三嶋輝夫訳、講談社学術文庫
0314『グリム兄弟言語論集――言葉の泉』ヤーコプ・グリム/ヴィルヘルム・グリム著、千石喬/高田博行/木村直司/福本義憲訳、ひつじ書房
0315『幻覚V―器質・力動論2』アンリ・エー著、影山任佐/阿部隆明訳、金剛出版
0317『シュタイナー 根源的霊性論――バガヴァッド・ギーターとパウロの書簡』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳、春秋社
0322『〈世界史〉の哲学 近世篇』大澤真幸著、講談社
0330『ラカン 真理のパトス』上尾真道著、人文書院

まだリリースされている情報が少ないため点数も少ないものの、『グリム兄弟言語論集』と、エー『幻覚』第V巻は押さえたいところです。2点とも高額本ですが、品切になればいっそう高値がつくことは目に見えています。『幻覚』は全5巻完結で、品切になっている既刊書はオンデマンド版が出るようです。ほっとされる読者もいらっしゃるのではないかと想像します。

注目新刊:デリダ『嘘の歴史』とロレッドのデリダ論、ほか

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★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』
★西山雄二さん(訳書:デリダ『条件なき大学』、共訳:『ブランショ政治論集』)
『Histoire du mensonge : Prolégomènes』(Galilée, 2012)の訳書が刊行され、一昨年来日を果たしたフランスの哲学者パトリック・ロレッド(Patrick Llored)さんのデリダ論『Jacques Derrida : Politique et éthique de l'animalité』(Sils Maria, 2013)の共訳書もまもなく発売されます。それぞれの目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ロレッドさんのデリダ論は西山さんの巻末解説によれば「日本語版のために本文に微修正を施し、後書きを追加しているので、本書は独自編集版となっている」とのことです。

嘘の歴史 序説
ジャック・デリダ著 西山雄二訳
未來社 2017年2月 本体1,800円 四六判上製106頁 ISBN978-4-624-93270-1

カバー紹介文より:晩年のデリダが1997年におこなった講演録。プラトン、アリストテレス、ルソー、カント、ニーチェ、ハイデガー、フロイトを参照しつつ、時代や文化によってことなる嘘の概念の歴史を問い、とりわけアーレントとコイレのテクストを読解する。意識的に嘘をつくことと知らずに間違うことの差異を明確にし、嘘の概念を脱構築的に問い直す。村山富市元首相の1995年の日本軍の戦争犯罪を認めた戦後50年談話や、ヴィシー政府の戦争中のユダヤ人狩りという犯罪的行為を認めたシラク元大統領の発言などを具体的に論じながら、現代の政治的な嘘をアクチュアルに考察する味読すべき小著。


ジャック・デリダ――動物性の政治と倫理
パトリック・ロレッド著 西山雄二/桐谷慧訳
勁草書房 2017年2月 本体2,200円 四六判上製160頁 ISBN978-4-326-15444-9

帯文より:近代政治の主権概念は人間と動物の区分と不可分であり、政治は常に人間に固有なものとされてきた。西欧思想においては、人間と人間ではない生きものたちの政治関係の発明が回避され、獣と主権者のアナロジーによって動物たちに日々ふるわれる根底的な暴力が見えなくされてきたのだ。デリダが人生の最後に発明した「動物-政治」概念から、「民主主義的な主権」の問いが開かれる。いかにしてデリダは動物たちを来たるべき民主主義へ参入させるのか。

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★岡本源太さん(著書:『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』)
★近藤和敬さん(著書:『カヴァイエス研究』、訳書:カヴァイエス『論理学と学知の理論について』)
2月3日発売の『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=人類学の時代』に岡本さんのご論考「イメージにおける自然と自然の「大分割」を超えて――イメージ論の問題圏(三)」(317-325頁)が掲載されました。岡本さんの不定期寄稿「イメージ論の問題圏」はこれまでに「現代思想2013年1月号 特集=現代思想の総展望2013」に「囚われの身の想像力と解放されたアナクロニズム――イメージ論の問題圏」が、そして「現代思想2015年1月号 特集=現代思想の新展開2015――思弁的実在論と新しい唯物論』に「眼差しなき自然の美学に向けて――イメージ論の問題圏(二)」が掲載されています。

また、2月14日発売の『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=知のトップランナー50人の美しいセオリー』では、近藤さんのご論考「ある理論が美しいと言われるとき、その真の理由は何でありうるか」(226-232頁)が掲載されました。同特集号では、ジュンク堂書店の福嶋聡さんによる「〈未来の自分〉と読書」(242-245頁)も掲載されています。

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「SLASH」「Hashima」取次搬入日決定とイベント情報

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佐野方美写真集『SLASH』は2月10日に日販と大阪屋栗田に搬入し、トーハンには明日15日に搬入となります。「i-D」マガジン「the fifth sense」欄2月1日付記事「至極感覚的な組合せの美を追求する、佐野方美の作品世界」(SHIN FRANCIS MIYAGI氏記名)で写真集の一部をご覧いただけます。

一方、松江泰治写真集『Hashima』は2月16日に日販、トーハン、大阪屋栗田に搬入です。発売を記念して以下のトークイベントが行われます。

◎松江泰治×タカザワケンジ「写真家の初期と現在」

日時:2017年2月24日 (金)19:00~20:30 開場18:30
料金:1,080円(税込)
定員:50名様
会場:青山ブックセンター本店内 小教室
お問合せ先:青山ブックセンター本店 03-5485-5511 (10:00~22:00)

内容:1983年に軍艦島=端島(Hashima)の廃墟をとらえた完全未発表作品を上梓した松江泰治さん。初期作品といえる今回の写真が、現在の精緻な作品とどう繋がっているのか、あるいはどう断絶しているのか、写真家の初期と現在に焦点をあて、松江作品の真髄を探る。スライド上映あり。

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書評、注目新刊、新書大賞

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弊社11月刊行の、森山大道・鈴木一誌『絶対平面都市』の書評が二本掲載されています。「週刊読書人」2017年2月10日号に、IZU PHOTOMUSEUM研究員の小原真史さんによる「奇妙なダイアローグ――優れた森山大道論であり写真論」が掲載されました。「本書では鈴木の言葉に誘われるようにして制作時における衝動や焦燥感が惜しげもなく語られ、そこに過去の森山の言葉がジグソーパズルのようにバラバラと組み上げられていく。そして、そのピースの中には東松照明、中平卓馬、荒木といった森山と長い付き合いのある写真家の名前も含まれており、彼らとの差異によってこの写真家の体質が浮かび上がってもくる」と評していただきました。

また「北海道新聞」2月12日付書評欄には、札幌の出版社「有限会社寿郎社(じゅろうしゃ)」の代表取締役編集長、土肥寿郎さんが「写真の本質 対話重ね迫る」という書評を寄せて下さっています。「反復される本質的問いに訥々と答える森山の言葉にはブレもボケもないことに驚く。言語化できない〈撮影の衝動〉とプリンティング・メディアとしての〈写真の本質〉に1ミリでも近づくための言葉を求めて〔・・・〕対話を重ねた写真家と想定かによる労作である」と評していただきました。

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★上村忠男さん(訳書:カッチャーリ『抑止する力』、アガンベン『到来する共同体』、パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
講談社学術文庫より新訳で、グラムシのオリジナル論集を今月上梓されています。帯文に曰く「ムッソリーニに挑んだ男の壮絶な軌跡。社会党参加直後の1914年10月から逮捕・収監される直前の1926年10月まで――本邦初訳を数多く含む待望の論集! グラムシ没後80年」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。


革命論集
アントニオ・グラムシ著 上村忠男編訳
講談社学術文庫 2017年2月 本体1,680円 A6判並製624頁 ISBN978-4-06-292407-8

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2月10日発売の月刊誌「中央公論」2017年3月号の「祝10周年! 新書大賞2017」に今年も参加いたしました。私が選んだベスト5は以下の通りです。

〔1〕小熊英二ほか編『在日二世の記憶』集英社新書
〔2〕セキュリティ集団スプラウト『闇〔ダーク〕ウェブ』文春新書
〔3〕今野晴貴『ブラックバイト――学生が危ない』岩波新書
〔4〕吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』集英社新書
〔5〕エドワード・ルトワック『中国4.0』文春新書

今年も(?)見事に他の皆さんが選んだベスト20位にはかぶりませんでした。拙評は本誌をご高覧いただけたら幸いです。また、「新書大賞10周年記念 10年間の新書ベスト3」にも投票しました。10年分のブックガイドを中公さんがお作りになられても良いような気がします。

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注目新刊:坂口恭平『けものになること』河出書房新社、ほか

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けものになること
坂口恭平著、河出書房新社、2017年2月、本体1,700円、46判上製226頁、ISBN978-4-309-02547-6

★まもなく発売(2月23日予定)。いとうせいこうさんをして「ベケット!」と驚嘆せしめた前作『現実宿り』(2016年10月刊)に続き、最新作ではドゥルーズが降臨します。版元紹介文に曰く「ドゥルーズになった「おれ」は『千のプラトー』第10章を書き始めた。狂気と錯乱が渦巻きながら23世紀の哲学をうみだす空前の実験。『現実宿り』を更新する異才の大傑作」と。

★書き出しはこうです。「おれはドゥルーズだ。どう考えてもそうだ。見た目も知らなければ、彼がいつ死んだかも知らない。死んでいないかもしれない。しかし、明白なことがある。それはおれがドゥルーズであるということで、つまり死んだ男が、今、ここにいるのだ。わたしは、いつまでもそれが続くとは思えない。もう足の指先は幾分冷たくなっていて、小指の爪は跡形もない。それなのに、わたしは、おれがドゥルーズだと分かっていた。明確にそう認識していた」(3頁)。

★「おれは、わたしの体の反乱軍である。わたしはまだそこにはいない。わたしはまだおれに会っていない。おれは向っている。おれは一人で出て行った」(3~4頁)。「書くこと、それもまた加速である。書くことは己の体に針を刺している」(4頁)。「書くことは言語に麻薬を飲ませることだ。言語に呪術をかける魔術師よろしく、己の存在を消し、税務署から、戸籍から、家族から、共同体から、国家から完全に脱獄することだ。つまり、捕まったとしても、わたしにはわからない。完全に麻薬体となったわたしはその意味がわからない。わたしは一本のサボテンである。無数のサボテンである。言語を攪乱する体である」(5頁)。

★「わたしは二十八冊の文献をもとにこの本を書いた。しかし、その本は読んですらいない。つまり、本は読むものではなく、言語を錯乱にいたらせるための魔術師の薬草の一つである。それは干からびた薬草。薬草に見えないただの草。しかし、そこに死はない。われわれもまた死なないのだが、それは肉体が滅びないのではなく、草のように死なない。本は、一本の草、無数の草、見たことのない草である。名前をつけることもできない草」(6~7頁)。『千のプラトー』の第十章『けものになること』を突然書く羽目になった(8頁)という著者の筆致は、保坂和志さんを次のように触発しています。

★「この言葉の激流はなんだ?音楽?ダンス?それも空き缶の中で。あらゆる文献?部屋の中には虎までいた!稲妻?切り落とした自分の中指?焼きもせずそれを食べた。白と黒の中の極彩色?ガタリの持っていた小さな杖?病原菌そのもの。/いや、これは小説だ。信じがたいことにここには言葉しか使われていない!言葉がすべてをやっている。これは小説の奇跡だ」(帯文より)。「あらゆる生命の予感のままでいること」(213頁)を目論んだ本書は、すでに発売前から奇書です。廃位された、とてつもなく(分裂が)速いために止まって見える、幻の王。河出さんのすごいところはドゥルーズの訳書や研究書を多数刊行している守護者であると同時に、それらを訓詁学の閉鎖空間に封じ込めてほとんど誰も入り込めないようにするのではなく、むしろ本作のような思いもよらない通気口を設置して、内と外を爆音で共鳴させる共謀者であることを厭わないというスタンスです。

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★ここ最近ではさらに以下の新刊との出会いがありました。

『新装版 生命と現実――木村敏との対話』木村敏/檜垣立哉著、河出書房新社、2017年2月、本体2,400円、46判上製226頁、ISBN978-4-309-24794-6
『高橋和巳――世界とたたかった文学』河出書房新社編集部編、河出書房新社、2017年2月、本体1,900円、A5判並製240頁、ISBN978-4-309-02549-0
『理性の起源――賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ』網谷祐一著、河出ブックス、2017年2月、本体1,700円、B6判並製240頁、ISBN978-4-309-62501-0
『貧困と地域――あいりん地区から見る高齢化と孤立死』白波瀬達也著、中公新書、2017年2月、本体800円、新書判並製240頁、ISBN978-4-12-102422-0
『欧州周辺資本主義の多様性――東欧革命後の軌跡』ドロテー・ボーレ/ベーラ・グレシュコヴィッチ著、ナカニシヤ出版、2017年2月、本体4,800円、A5判上製420頁、ISBN978-4-7795-1127-1
『【増補新版】ポスト・モダンの左旋回』仲正昌樹著、作品社、2017年1月、本体2,200円、46判上製352頁、ISBN978-4-86182-617-7

★『けものになること』のほかの河出さんの今月新刊には、同じく23日発売予定で、木村敏さんと檜垣立哉さんとの対談本『生命と現実』の新装版や、アンソロジー『高橋和巳』があります。『生命と現実』の初版は2006年。新装版刊行にあたり、檜垣さんによる「『生命と現実』の10年後」という一文が新たに巻末に加えられています。『高橋和巳』では、三島由紀夫と高橋和巳との対談「大きなる過渡期の論理」(初出:「潮」1969年11月号)が再録され、今なお不気味なアクチュアリティを放っています。作品ガイドや年譜も充実。河出文庫では『わが解体』『日本の悪霊』『我が心は石にあらず』が近刊予定だそうです。また、今月第101弾に突入した河出ブックスでは、科学哲学と生物学哲学がご専門の網谷祐一さんによる『理性の起源』が発売済です。戸田山和久さんが「痛快作」と絶賛されている本書では、進化生物学とそれをめぐる科学哲学の観点から理性の起源と進化について分析されています。

★中公新書の新刊『貧困と地域』は大阪の釜ヶ崎をめぐるエリアスタディーズ。著者の白波瀬達也(しらはせ・たつや:1979-)さんは関西学院大学准教授で、著書に『宗教の社会貢献を問い直す』(ナカニシヤ出版、2015年)があるほか、共編著に『釜ヶ崎のススメ』(洛北出版、2011年)があります。今回の新著は「地区指定から半世紀以上が経過し、地域の様相は大きく変化している」ものの「貧困が集中している現実は変わっていない」というあいりん地区(釜ヶ崎)の検証を通じて「「貧困の地域集中」とそれによって生じた問題を論じるものだ」とまえがきにあります。「対策を講じても、また新たな問題が生じることも頻繁にある。絶対的な正解やわかりやすい正義と悪は存在せず、現実は複雑かつ混沌としたものだ。その現実にできる限り目を凝らして考えた成果が本書である」(v頁)。

★ボーレ/グレシュコヴィッチ『欧州周辺資本主義の多様性』は『Capitalist Diversity on Europe's Periphery』(Cornell University Press, 2012)の全訳。巻頭の「日本語版への序文」によれば、ホール/ソスキス『資本主義の多様性――比較優位の制度的基礎』(原著『Varieties of Capitalism』2001年; 遠山弘徳ほか訳、ナカニシヤ出版、2007年)が提示した問題圏に中東欧を適用したもので、「いかに資本主義がポスト社会主義諸国の中で構築され安定してきたか」が明らかにされています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★『【増補新版】ポスト・モダンの左旋回』の親本は情況出版より2002年に刊行。増補新版にあたり、旧版全九章に加えて、「情況」誌に2003年から2004年にかけて発表された五篇の論考と、「増補新版への前書き」「増補新版へのあとがき」が収められています。旧版の目次はこちらをご覧いただくとして、以下には追加された五章の章題を列記しておきます。第十章「『言葉と物』の唯物論」、第十一章「ドゥルーズのヒューム論の思想史的意味」、第十二章「戦後左翼にとっての「アメリカ」」、第十三章「加藤典洋における「公共性」と「共同性」」、第十四章「『ミル・プラトー』から『〈帝国〉』へ――ネグリの権力論をめぐる思想史的背景」。なお、「2015年以降の政治情勢を受けての補遺」と銘打たれ、第十二章には「トランプという逆説」、第十三章には「21世紀の加藤典洋」と、それぞれ新たな節が書き加えられています。

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松江泰治インタビュー「Hashimaのころ」公開

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2月16日取次搬入済新刊、松江泰治写真集『Hashima』をめぐり、弊社編集部が松江泰治さんにインタビューした「Hashimaのころ」をPDFで公開します。写真集には収録していない貴重な一問一答です。

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる本屋さん

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2017年4月17日(月)開店
三省堂書店名古屋本店:1,000坪
愛知県名古屋市中村区名駅1-1-3 タカシマヤゲートタワーモール 8F
トーハン帳合。弊社へのご発注は、芸術書の主要書と人文書の主要書。出品依頼書の「書店概況」欄や、トーハンの挨拶状によれば、2017年4月7日に開業する、JR名古屋駅の新駅ビル「JRゲートタワー」の2階~8階を占める「タカシマヤゲートタワーモール」の8階にオープン。「店名を「名古屋本店」とし、現〔三省堂書店〕名古屋高島屋店様を上回るワンフロア1,000坪の東海地区最大級の出店となります」とのこと。また、三省堂の挨拶状に曰く「2027年にはリニア中央新幹線の開業も控え、より幅広い顧客の多様な知的欲求に応え、かつ出会いと発見のある「次世代型アメージング・ブックストア」を目指します」と。書籍や雑誌のほか、文具と雑貨、さらにカフェも併設するそうです。

それにしても「次世代型アメージング・ブックストア」というのはすごいキャッチフレーズですね。隣接するジェイアール名古屋タカシマヤの11Fにある既存店、三省堂書店名古屋高島屋店もトーハン帳合で、同じチェーンで競合している気がしないでもないですが、他チェーンに踏み込まれるよりかはいい、ということなのでしょうか。駅前にはジュンク堂書店名古屋店(大阪屋栗田帳合)がありますし、電車で5分の栄地区にはジュンク堂書店名古屋栄店(日販帳合)、ジュンク堂書店ロフト名古屋店(大阪屋栗田帳合)、丸善名古屋本店(大阪屋栗田帳合)、等々、大型店がひしめいています。

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このほか、短冊のみのご発注で詳細を自力で調べるしかなかったのは、

・未来屋書店りんくう泉南店
・エディオン蔦屋家電

の2店舗です。前者は2016年11月6日(日)に閉店したと聞く、旭屋書店イオンモールりんくう泉南店の後継店のようです。南海本線「樽井」駅徒歩10分のイオンモールりんくう泉南(大阪府泉南市りんくう南浜3-12)の2Fで、12月5日(月)~2017年3月12日まで、Right-on隣のイオンホールにて仮店舗営業中。臨時版フロアガイドを確認する限り、イオンシネマの隣でユニクロとともに3月16日(木)に正式オープンするようです。弊社への発注はトーハン経由で、音楽書主要書と昨年の新刊数点でした。なお同モールにはヴィレッジヴァンガードも入店しており、イオンシネマとユニクロを挟んでほぼ隣り合わせで営業しています。

後者は二子玉川店に続く、蔦屋家電の2店舗目になるかと思います。弊社へのご発注は日販経由で、写真集主要アイテムと人文書少々。公式サイトによれば4月14日(金)に広島駅南口にグランドオープン。店舗コンセプトは、「居心地の良い時間(とき)を楽しむ 新しい発見に出会える家電店」で、お店のテーマは「くらしを遊ぼう」だそうです。曰く「旅行したり、家でゲームしたり、遊園地に出かけたりするだけが、遊びでしょうか。大人にとって「遊び」ってなんでしょう? それはきっと、新しい刺激を受けたり、何かを発見したり、自分がワクワクできる場所ですごす、心地のよい時間のこと。読書したり、お茶したり、好きな小物を探したり、部屋の模様替えを想像したり・・・そんな、ふだんの生活を上手に遊べたら、人生はもっと楽しく、もっと充実するはず。エディオン蔦屋家電には、家電はもちろん、独自にセレクトした本や文具、それにカフェもあって、行くたびに、今を感じるライフスタイルや、新しい出会いのひとときでいっぱい。さあ、いっしょに新しい「遊び」、はじめませんか」と。店長の渡辺伸一さんのインタヴュー記事も公開されています。

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いっぽう閉店情報が出ているのは、ジュンク堂書店秋田店(トーハン帳合)と、ジュンク堂書店大分店(大阪屋栗田帳合)。どちらも2月26日に閉店で、常備ではなく必備扱いの版元にとっては悶絶の返品量になりがちです。弊社の場合、それでも版元品切本などの扱いでずいぶんと工夫していただきました。ジュンク堂さんの挨拶状によれば、秋田店さんは入居するビルの耐震工事に伴い閉店となり、今年冬(というのは年末ないし来年初めということでしょう)に耐震工事が完了次第、再入居の予定だそうです【本件では新しい選択肢が生まれたようです。当エントリーコメント欄をご覧ください】。いっぽう、大分店は挨拶状によれば、デベロッパーの都合によるビルの取り壊し・建て替えでの退店で、「また新たな場所が見つかり次第再開したい思いはございます」とやや弱いトーンです。

このほか、ブックファースト銀座店(トーハン帳合)が3月10日(金)に閉店(ブックファースト1月31日付お知らせ)、あゆみBOOKS小石川店(日販帳合)が3月19日(日)に閉店(「新文化」2017年2月7日付記事)、ヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川(トーハン帳合)が3月26日(日)に閉店(開店閉店ドットコム2月10日付)とのこと。「開店閉店ドットコム」の「書店・文具」部門を見ると、やはり開店より閉店の方が目立ちます。

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注目文庫新刊(2017年1月~2月)、ほか

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★ここ2ヶ月(2017年1月~2月)の文庫新刊から、今まで取り上げていなかった書目で注目しているものをまとめておきます。

『アレフ』J・L・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫、2017年2月
『統辞理論の諸相――方法論序説』チョムスキー著、福井直樹/辻子美保子訳、岩波文庫、2017年2月
『漫画 坊ちゃん』近藤浩一路著、岩波文庫、2017年1月
『ティラン・ロ・ブラン4』マルトゥレイ/ダ・ガルバ著、田澤耕訳、岩波文庫、2017年1月
『シェイクスピア・カーニヴァル』ヤン・コット著、高山宏訳、ちくま学芸文庫、2017年2月
『社会学的想像力』C・ライト・ミルズ著、伊奈正人/中村好孝訳、ちくま学芸文庫、2017年2月
『ヘーゲル・セレクション』廣松渉/加藤尚武編訳、平凡社ライブラリー、2017年2月
『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス著、木村榮一訳、河出文庫、2017年2月
『考えるということ』大澤真幸著、河出文庫、2017年1月
『時間の非実在性』ジョン・エリス・マクタガート著、永井均訳・注解と論評、講談社学術文庫、2017年2月
『朝日の中の黒い鳥』ポール・クローデル著、内藤高訳、講談社学術文庫、2016年11月
『無意識の幻想』D・H・ロレンス著、照屋佳男著、中公文庫、2017年2月
『吉本隆明 江藤淳 全対話』中公文庫、2017年2月
『英語襲来と日本人――今なお続く苦悶と狂乱』斎藤兆史著、中公文庫、2017年1月
『忍者の兵法――三大秘伝書を読む』中島篤巳著、角川ソフィア文庫、2017年2月
『古代研究Ⅲ 民俗学篇3』折口信夫著、角川ソフィア文庫、2017年2月
『古代研究Ⅱ 民俗学篇2』折口信夫著、角川ソフィア文庫、2017年1月
『貞観政要』湯浅邦弘著、角川ソフィア文庫、2017年1月
『仏教の大意』鈴木大拙著、角川ソフィア文庫、2017年1月

★まずは創刊90年を迎えるという岩波文庫。ボルヘス『アレフ』(鼓直訳)は内田兆史さんが解説を執筆。既訳には、土岐恒二訳『不死の人』(白水社、1968年;白水uブックス、1996年)、篠田一士訳「エル・アレフ」(『世界の文学(9)』所収、集英社、1978年)、木村榮一訳『エル・アレフ』(平凡社ライブラリー、2005年)があります。『統辞理論の諸相』は『統辞構造論――付『言語理論の論理構造』序論』(福井直樹/辻子美保子訳、2014年1月)に続く、岩波文庫のチョムスキー本第二弾。福井/辻子共訳では岩波現代文庫でも『生成文法の企て』(2011年8月)に刊行されており、文庫で読めるチョムスキー言語学はこれで三冊目になります。近藤浩一路『漫画 坊ちゃん』はいわゆるコミックではなく、簡略な筋書にイラストが付されたもの。底本は1925年6月刊の新潮社版改版第三版。文庫化にあたり清水勲さんが解説を書かれています。『ティラン・ロ・ブラン4』はこれで全4巻完結。巻末に「文庫版へのあとがき」が付されています。なお、同文庫では2月21日発売で「2017年〈春〉のリクエスト復刊」38点43冊が発売。今回はシラー『ヴィルヘルム・テル』(桜井政隆/桜井国隆訳、1929年第1刷;1957年第14刷改版、2017年第27刷)を購入。ヴィルヘルム・テルの息子ヴァルターが言います、「父ちゃん、早く射ておくれ。僕こわいことなんかないよ」、その言葉に父は決心し矢をつがえます、「ぜひもない」(129頁)。この喩えようもない緊迫感。来月の同文庫新刊にはヴェイユの『重力と恩寵』が冨原眞弓訳で16日発売と予告されています。同日発売の岩波現代文庫では折口信夫『口訳万葉集(上)』(全三巻予定)が出るそうです。

★次にちくま学芸文庫。ヤン・コット『シェイクスピア・カーニヴァル』の親本は1989年より平凡社より刊行。文庫化にあたり「文庫版訳者あとがき」が追加されています。原書は『The Bottom Translation: Marlowe and Shakespeare and the Carnival Tradition』(Northwestern University Press, 1987)で、これは英訳版オリジナル論集という体裁なのかと思います。C・ライト・ミルズ『社会学的想像力』は新訳。既訳には鈴木広訳『社会学的想像力』(紀伊國屋書店、1965年;新装版、1995年)があり、目下「書物復権2017」で15票を得票しています(2月26日現在)。今回の新訳の底本は1959年のOUP初版本。凡例および訳者あとがきによれば同書は2000年に出版40周年記念版を謳う改訂版が出ているものの本文に変更はないとのことで、改訂版に付されたトッド・ギトリンの解説は訳出していないとのことです。なお3月のちくま学芸文庫では、山室静『北欧の神話』、アロー『組織の限界』村上泰亮訳など、4月にはカンディンスキー『点と線から面へ』宮島久雄訳などが予告されています。

★続いて平凡社ライブラリー。廣松渉/加藤尚武編訳『ヘーゲル・セレクション』廣松渉/加藤尚武編訳の親本は平凡社より1976年に刊行された『世界の思想家12 ヘーゲル』。
帯文の佐藤優さんによる推薦コメントに曰く「学生時代、この本によってヘーゲルと出会った。ヘーゲル哲学最良の入門書」。ライブラリー化にあたり、加藤さんが「平凡社ライブラリー版あとがき」をお書きになっています。再版にあたり「新全集版のページ数と照合できるようにする作業は滝口清栄氏が行ってくれた。〔・・・〕また文献案内の改訂も、滝口氏が行ってくれた」とあります。なお、ヘーゲル関連のアンソロジー近刊には、村岡晋一/吉田達訳『ヘーゲル初期論文集成 全新訳』が作品社より4月下旬刊行予定と予告されています。

★続いて河出文庫。リャマサーレス『黄色い雨』は奥付前の特記によれば、2005年にソニー・マガジンズ(現ヴィレッジブックス)から刊行された単行本『黄色い雨』に、訳し下ろし二篇「遮断機のない踏切」と「不滅の小説」を加えて文庫化したもの。大澤真幸『考えるということ』は2013年刊『思考術』の改題文庫化。書名は親本の方がより端的で良いような気もしますが気のせいでしょうか。文庫化にあたり「文庫版あとがき」のほか、木村草太さんによる解説「凡庸な警察と名探偵」が付されています。なお河出文庫では3月6日発売予定で、ボッカッチョ『デカメロン 上』(平川祐弘訳)が予告されています。これは見逃せません。

★続いて講談社学術文庫。『時間の非実在性』は巻頭の「はじめに」によれば、1908年に『Mind』誌第17号(456~474頁)に載ったイギリスの哲学者ジョン・マクタガート(John McTaggart, 1866年-1925)の論文「The Unreality of Time」の翻訳に永井均さんによる「要約」「注解と論評」「付論」を付したものとのことです。「ほとんどの読者にとって、本書はやっと出現したあの有名なマクタガート論文の本邦初訳ということになるだろう。しかし私自身にとっては、それはいわば本文理解のために付けられた付録のようなものであって、本文はあくまでも「注解の論評」のうちのいくつかと「付論」である」(7頁)と永井さんはお書きになっておられます。クローデル『朝日の中の黒い鳥』は昨年11月に同文庫の創刊40周年記念「リクエスト限定復刊」として再版された20点のうちの一冊です。カバーは特別仕様。遅まきながら先月になってようやく購入しました。同書はクローデルによる高名な日本論。今回4刷で、久しぶりの再版のような気がします。20点のラインナップについては書名のリンク先をご覧ください。なお同文庫では3月にプラトン『アルキビアデス クレイトポン』三嶋輝夫訳や、青木正次訳注『新版 雨月物語 全訳注』、4月にはキェルケゴール『死に至る病』鈴木祐丞訳や、杉本圭三郎訳注『新版 平家物語(一) 全訳注』などの発売が予定されています。また、講談社文芸文庫では3月にワイド版『小林秀雄対話集』、4月には吉本隆明『写生の物語』、大澤聡編『三木清大学論集』などが予定されています。

★続いて中公文庫です。ロレンス『無意識の幻想』は新訳。原書は1922年に刊行された『Fantasia of the Unconscious』で、2004年にケンブリッジ大学出版より刊行された版を底本に使用。主要目次を列記すると、まえがき、第1章「序文」、第2章「聖家族」、第3章「神経節、横隔膜の上下のレベル等」、第4章「樹木・幼児・パパ・ママ」、第5章「五感」、第6章「知性の最初の微光」、第7章「教育の最初の諸段階」、第8章「教育・男女の性・子供の性」、第9章「性の誕生」、第10章「親の愛」、第11章「悪循環」、第12章「連禱風に――強く勧めたいこと」、第13章「宇宙論」、第14章「眠りと夢」、第15章「下半身」、エピローグ。なお、同書には既訳として小川和夫訳(青木書店、1940年;南雲堂、1957年;改訂版、1966年;『D・H・ロレンス紀行・評論選集5』所収、南雲堂、1987年)があります。『吉本隆明 江藤淳 全対話』は、2011年11月に中央公論新社より刊行された『文学と非文学の倫理』が親本。文庫化にあたり、吉本隆明さんへのインタヴュー「江藤さんについて」(聞き手=大日方公男、中央公論特別編集『江藤淳1960』所収、2011年)を増補し、さらに内田樹さんと高橋源一郎さんによる解説対談「吉本隆明と江藤淳――最後の「批評家」」が加えられています。斎藤兆史『英語襲来と日本人』の親本は講談社より2001年に刊行。文庫化にあたって副題を「えげれす語事始」から「今なお続く苦悶と狂乱」に変更し、新版あとがきが加えられました。新版あとがきでは「イギリスがEUを離脱すれば、EU加盟国の中から英語を国語とする国が消え〔・・・〕公用語でなくなる可能性がある」と指摘し「世界における英語の位置」が変化しつつあることに注意を喚起されています。

★最後に角川ソフィア文庫。中島篤巳『忍者の兵法』は『忍術秘伝の書』(角川選書、1994年)の改題改稿版。三つの秘伝書『正忍記』『万川集海』『忍秘伝』を読み解き解説したもので、忍術を総合生活術だとする観点が面白いです。付録として初公開資料 『武田流忍之書(全)』が収められています。折口信夫『古代研究Ⅱ 民俗学篇2』『古代研究Ⅲ 民俗学篇3』は全六巻中の第二巻と第三巻。湯浅邦弘『貞観政要』は「ビギナーズ・クラシックス 中国の古典」シリーズの一冊。「源頼朝や徳川家康、明治天皇も治世の参考にしたと言われる帝王学の最高傑作」(カバー紹介文より)の抄訳で、各条は現代語訳・書き下し文・原文(返り点付き)・解説で構成されています。社会人必読かと。鈴木大拙『仏教の大意』は昭和天皇への「御進講」原稿を増補して公刊したもの。第一講「大智」、第二講「大悲」から成ります。巻末には若松英輔さんによる解説「霊性の体現者・鈴木大拙」(145~158頁)が付されています。なお同書は同じく先月に中公クラシックスでも刊行されています。こちらでは山折哲雄さんの解説「近代思想とは一線を画した人」(5~22頁)を読むことができます。没後50年とあって鈴木大拙の本が各社より文庫本や単行本で再刊されており、単行本では今月は筑摩書房よりワイド版『禅』工藤澄子訳が刊行され、来月は河出書房新社より『禅のつれづれ』が発売予定です。

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★このほか、最近では亜紀書房さんの新刊2点との出会いがありました。サイとロクサーヌ、二人の素敵な女性との出会いでした。

『愛しのオクトパス――海の賢者が誘う意識と生命の神秘の世界』サイ・モンゴメリー著、小林由香利訳、亜紀書房、2017年2月、本体2,200円、四六判上製352頁、ISBN978-4-7505-1503-8
『バッド・フェミニスト』ロクサーヌ・ゲイ著、野中モモ訳、亜紀書房、2017年1月、本体1,900円、四六判並製394頁、ISBN978-4-7505-1494-9

★モンゴメリー『愛しのオクトパス』は『The Soul of an Octopus: A Surprising Exploration into the Wonder of Consciousness』(Atria Books, 2015)の翻訳です。著者のサイ・モンゴメリー(Sy Montgomery, 1958-)はアメリカ在住のナチュラリストで作家。既訳書に『彼女たちの類人猿――グドール、フォッシー、ガルディカス』(羽田節子訳、平凡社、1993年)、『幸福の豚――クリストファー・ホグウッドの贈り物』(古草秀子訳、バジリコ、2007年)、『テンプル・グランディン――自閉症と生きる』(杉本詠美訳、汐文社、2015年)があります。今回の新刊では、モンゴメリーはとある水族館で雌のミズダコ「アテナ」に出会い、たちまち虜になります。冷たい水槽に腕を突っ込んだ著者にタコの触手が絡みつきます。「アテナの吸いつきかたは、しっかりとではあるけれど、優しかった。エイリアンにキスされている感じがした」(12頁)。そしてアテナの死後には今度は年若いオクタヴィアと知り合います。さらにその後、カーリーやカルマと。もちろん皆、タコの話。彼女たちと著者との交流が愛情に満ちているためか、何とも不思議な世界に読者は引きずり込まれ、魅了されることになります。読む前は食べ物としてしかタコを見ていなかった自分が読後には恥ずかしく思えるくらいの、とても素敵な本です。

★ゲイ『バッド・フェミニスト』は『Bad Feminist』(Harper Perennial, 2014)の翻訳。著者のロクサーヌ・ゲイ(Roxane Gay, 1974-)はアメリカの作家。イースタン・イリノイ大学で教鞭も取っています。今回が彼女の初めての日本語訳書となる本書は、彼女のエッセイ集第一作であり、全米ベストセラーの一書です。「これは私たちの文化と、そてを私たちがどう消費するのかについての考察です。本書に収録されたエッセイでは、現代の映画における人種問題、「多様性」の限界、革新がいかに不十分かについても論じています」(14頁)と彼女は巻頭の「はじめに――フェミニズム(名詞):複数」で書いています。「私たち全員が同じフェミニズムを信じる必要はないのです。フェミニズムは多元的なものとして存在することができます。私たちが各々の内にあるさまざまなフェミニズムにお互いに敬意を払う限り。〔・・・〕たくさんの若い女性が、自分を重ね合わせることができる有名なフェミニストを見つけられないと言うのを私は耳にしてきました。これは残念なことかもしれませんが、しかし、この世界を歩む姿を見たいと思うようなフェミニストに、私たち自身がなりましょう(なろうとしましょう)」(同)。どうかぜひ店頭で、この短い「はじめに」だけでも良いので立ち読みしてください。上に引いた箇所以外にも胸に響く率直な言葉があり、きっと惹かれると思います。また、彼女のTEDトーク「バッド・フェミニストの告白」もご参照ください。あらかじめ言っておくと、この短いプレゼンテーションでは伝わり切らないかもしれない奥行き――彼女が壇上で「バッド・フェミニズム、つまりより懐の広いフェミニズム」と端的に述べたものの内実――が本書にはあります。

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