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注目新刊:バイエ『デカルトの生涯』工作舎、ついに完訳なる、ほか

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『デカルトの生涯 校訂完訳版』アドリアン・バイエ著、山田弘明/香川知晶/小沢明也/今井悠介訳、アニー・ビトボル=エスペリエス緒論/注解、工作舎、2022年2月、本体12,000円、A5判上製函入2分冊1306頁、ISBN978-4-87502-538-2

★『デカルトの生涯 校訂完訳版』は、パリの名家ラモワニョン家の図書館司書で著述家のアドリエン・バイエ(Adrien Baillet, 1649-1706)による大著『La vie de monsieur Descartes』(2巻本、1691年)の全訳。フランスのéditions Encre marine(Les Belles lettres)より刊行される校訂版を元にしたもので、原著より日本語訳が先に刊行されたことになるかと思います。

★この校訂作業は日本の訳者たちとパリ大学デカルト研究センターのアニー・ビトボル=エスペリエス(Annie Bitbol-Hespériès, 1950-)によってなされた、かつてない画期的なもの。校訂版以前の既訳に、井沢義雄/井上庄七訳『デカルト伝』(講談社、1979年)がありますが、こちらは縮約版でした。ビトボル=エスペリエスは、デカルト研究の大家ジュヌヴィエーヴ・ロディス=レヴィス(Geneviève Rodis-Lewis, 1918-2004)の弟子。

★デカルトの死後40余年を経て公刊された本書は、いまなおデカルト研究の基本文献として重要なものです。上巻4部58章で前半生を扱い、下巻4部64章で後半生やその評価が扱われます。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。圧倒的な労作が、工作舎さんらしい美麗な造本設計で、A5判2段組函入2巻本がたったの本体価格12,000円という、思わず手が震える安さ。売切必至と思われますので、後悔しない内に入手されることをお薦めします。

★このほか最近では、以下の新刊との出会いがありました。

『アーバンソウルズ――黒人青年、宗教、ヒップホップ・カルチャー』オサジェフォ・ウフル・セイクウ著、山下壮起訳、新教出版社、2022年2月、本体2,400円、B6変型判160頁、ISBN978-4-400-51767-2
『東アジアにおける哲学の生成と発展――間文化の視点から』廖欽彬/伊東貴之/河合一樹/山村奨編著、法政大学出版局、2022年2月、本体9,000円、A5判上製886頁、ISBN978-4-588-15123-1
『現代思想2022年3月号 特集=憲法を考える』青土社、2022年2月、本体1,500円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1427-8
『ビトナ――ソウルの空の下で』J・M・G・ル・クレジオ著、中地義和訳、作品社、2022年2月、本体2,200円、四六判上製240頁、ISBN978-4-86182-887-4
『失われた時、盗まれた国――ある金融マンを通して見た〈平成30年戦争〉』増田幸弘著、作品社、2022年2月、本体2,400円、四六判並製270頁、ISBN 978-4-86182-851-5
『グローバル世界の日本農業』小林寛史著、作品社、2022年2月、本体2,400円、四六判並製272頁、ISBN978-4-86182-886-7

★『アーバンソウルズ』は、アメリカの伝統的黒人教派チャーチ・オブ・ゴッド・イン・クライストの牧師オサジェフォ・ウフル・セイクウ(Osagyefo Uhuru Sekou, 1971-)が、都市問題、ヒップホップ、霊性について率直に綴ったコンパクトな著書『Urbansouls: reflections on youth, religion, and hip-hop culture』(urban press, 2001; revised edition, Chalice Press, 2018)の訳書。著者の年長の友人であるコーネル・ウェストが序文を寄せています。巻末にアーティスト索引あり。

★『東アジアにおける哲学の生成と発展』は、帯文に曰く「先人たちの遺産をもとに、東アジアにはどんな〈世界哲学〉の構想が可能なのか。日中台韓越の研究者が集結し、国際日本文化研究センターで開かれた共同研究会〔2019~2021年〕の画期的成果」。「日本哲学と西洋哲学」「中国・台湾哲学と西洋哲学」「日本哲学の多様な展開」「中国と日本の思想的邂逅」「朝鮮・ベトナム哲学と知の越境」の五部構成で全44章が収められた大冊です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。先月、中公新書で『中国哲学史』を上梓された中島隆博さんは、「桑木厳翼と中国哲学」と題した論考を寄せておられます。

★『現代思想2022年3月号 特集=憲法を考える』は、版元紹介文に曰く「憲法にかかわる喫緊の論点を、国際的な知見や思想史的な視座も踏まえつつ多角的に考察」するもの。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。今月末発売予定の次号、4月号の特集は「危機の時代の教育」で、同誌の鉄板コンテンツの最新版です。

★作品社さんの2月新刊より3冊。ル・クレジオ『ビトナ』は『Bitna, sous le ciel de Séoul』(Stock, 2018)の全訳。韓国を舞台にした小説です。『失われた時、盗まれた国』は、外為どっとコムの創設メンバー笹子善充(ささご・よしみつ, 1961-)氏に取材し、平成期の日本金融史を描いたもの。『グローバル世界の日本農業』は、JAグループの国際協力活動を担うIDACA(一般財団法人アジア農業協同組合振興機関)の常務理事の小林寛史(こばやし・ひろふみ, 1963-)氏による、食の安全保障をめぐる一書。なお作品社さんでは来月、『ル・クレジオ、文学と書物への愛を語る(仮)』(鈴木雅生訳)を刊行予定とのこと。  

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