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注目新刊:『ゲンロン12』、トリスタン・ガルシア『激しい生』、ほか

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『ゲンロン12』genron、2021年9月、本体2,600円、A5判並製492頁、ISBN978-4-907188-42-9


★『ゲンロン12』は3連休前の9月17日に発売開始。既刊号と比べて最厚となった第12号の特集は「無料とはなにか」。それに先立ち、政治学者の宇野重規さんと東浩紀さんの対談「観光客の民主主義は可能か」が巻頭に置かれ、続いて東浩紀さんの「ゲンロン0 観光客の哲学」の続編となる8万字の論考「訂正可能性の哲学、あるいは新しい公共性について」が掲出されています。この論考は部分をウェブで読むことができます。「同書〔『観光客の哲学』〕には大きな欠落がある。「観光客の哲学」と題する第1部と「家族の哲学」と題する第2部が接続されておらず、観光客について考えることと家族について考えることがどう関係するのか、きちんと説明できていないのだ。〔…〕それゆえ、欠落を埋める論考を書くことにした。以下に掲載するのは、そのために書かれた8万字ほどの長い原稿である。この原稿は、もうひとつこれから書き下ろす論文とともに、2022年前半に出版される『観光客の哲学』増補版の第3部(新しい部)に収められる。『観光客の哲学』では章番号は部の区別にかかわらず連番なので、この論文は第8章となる」。


★特集頁では、飯田泰之、井上智洋、東浩紀の3氏による座談会「無料は世界をよくするのか」(部分の立ち読み)を中心に、楠木建、鹿島茂、桜井英治、飯田泰之、井上智洋、小川さやか、の各氏による論考が並んでいます。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。なお次号13号は、約1年後の2022年夏に刊行される予定とのことです。


★まもなく発売となる新刊4点を掲出します。


『激しい生――近代の強迫観念』トリスタン・ガルシア著、栗脇永翔訳、人文書院、2021年9月、本体2,500円、4-6判並製230頁、ISBN978-4-409-03112-4
『格差の自動化――デジタル化がどのように貧困者をプロファイルし、取締り、処罰するか』ヴァージニア・ユーバンクス著、ウォルシュ・あゆみ訳、堤未果解説、人文書院、2021年9月、本体2,800円、4-6判並製326頁、ISBN978-4-409-24138-7

『沖縄観光産業の近現代史』櫻澤誠著、人文書院、2021年9月、本体4,500円、4-6判上製300頁、ISBN978-4-409-52088-8

『みんな政治でバカになる』綿野恵太著、晶文社、2021年9月、本体1,700円、四六判並製256頁、ISBN978-4-7949-7275-0



★人文書院さんの新刊3点は今月末発売。『激しい生』はフランスの哲学者トリスタン・ガルシア(Tristan Garcia, 1981-)の著書の初紹介となる訳書。『La vie intense : Une obsession moderne』(Autrement, 2016)の全訳。訳者解説に曰く「小著ながらガルシアの哲学の中心に位置する示唆的な著作」と。帯文の文言を借りると、強さ=激しさに憑りつかれた時代としての近代における、刺激を求め続ける人間の生と思考を分析する書。「新しい世界の強さ=激しさは新しい主体の形成を必要としたのです。すなわち、強い=激しい人間の形成を」(82頁)。「実存の領域の大部分における強さ=激しさのルーチーン。私たちの倫理的な状況にとってその帰結は絶対的に悲惨なものです。〔…〕人間の文化においては叡智と救済の形式の下で、あらゆる強さ=激しさからの最終的な解放の表象が定期的に現れ続けるのです」(141頁)。


★『格差の自動化』は米国の政治学者ヴァージニア・ユーバンクス(Virginia Eubanks, 1972-)の初訳本で、『Automating Inequality: How High-tech Tools Profile, Police, and Punish the Poor』(St. Martin's Press, 2018)の全訳。デジタル化・自動化行政の技術が、ハイテクな監視システムとして貧困層を追い詰めている米国の実情を暴いた問題作。ナオミ・クラインが推薦し、堤未果さんが短めの解説を寄せています。






★『沖縄観光産業の近現代史』は、大阪教育大学准教授の櫻澤誠(さくらざわ・まこと, 1978-)さんの4冊目の単著。前著『沖縄の保守勢力と「島ぐるみ」の系譜――政治結合・基地認識・経済構想』(有志舎、2016年)以降の、沖縄観光産業史に関わる論考4本に加筆修正を施し書き下ろし3本を加えた一冊。


★『みんな政治でバカになる』は、批評家の綿野恵太(わたの・けいた, 1988-)さんの、「晶文社スクラップブック」でのウェブ連載「オルタナレフト論」(2019~2021年)をもとに、「ほとんど最初から」書き直したという一書。フェイクニュースや陰謀論に騙される現代人の政治的無知と認知バイアスの実例の数々を最新科学の知見にもとづきつつ分析し解剖しています。橘玲さんと千葉雅也さんが推薦文を寄せています。


★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。


『書物と貨幣の五千年史』永田希著、集英社新書、2021年9月、本体900円、新書判並製280頁、ISBN978-4-08-721183-2
『尼将軍』三田誠広著、作品社、2021年9月、本体2,000円、46判上製296頁、ISBN978-4-86182-867-6

『小説集 北条義時』海音寺潮五郎/高橋直樹/岡本綺堂/近松秋江/永井路子著、三田誠広解説、作品社、2021年9月、本体1,800円、46判上製304頁、

ISBN978-4-86182-862-1


★『書物と貨幣の五千年史』は永田希(ながた・のぞみ, 1979-)さんによる、『積読こそが完全な読書術である』(イースト・プレス、2020年4月)以来となる意欲的な新著。ウェブサイト「集英社新書プラス」での連載(2020年11月~2021年3月)に加筆修正したもの。「すべてがブラックボックスになる」「情報革命の諸段階、情報濁流の生成過程」「人間は印字されたページの束である」「物語と時間」の全4章立て。岩井克人さんと松岡正剛さんが推薦文を寄せておられます。


★作品社の発売済新刊2点は歴史小説。『尼将軍』は三田誠広さんによる書き下ろし長編作。源頼朝の正妻で頼朝没後は尼将軍として鎌倉幕府で権勢を揮った北条政子をめぐる物語。『小説集 北条義時』は同じく三田さんによる解説付きで、北条政子の弟、北条義時をめぐる6篇の作品を収録したもの。海音寺潮五郎「梶原景時」、高橋直樹「悲命に斃る」、岡本綺堂「修禅寺物語」、近松秋江「北条泰時」、永井路子「執念の家譜」、同「承久の嵐 北条義時の場合」。

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