「図書新聞」第3452号(2020年06月20日付)に弊社3月刊、エルンスト・ユンガー『エウメスヴィル』の書評「文明社会の生態系を知り尽くした老いた「マタギ」の手になる「SF小説」――語りのなかに夥しい数の歴史上の人名や出来事への言及を織り込む」が掲載されました。評者は立教大学教授・前田良三さんです。「リベラル市民社会も全体主義社会もともに没落した後の文明社会に生きる人間の姿を幻視し続けた作家のこの書物が、歴史的パンデミックという「例外状態」のただ中の日本に出現したこと――これは単なる偶然だろうか」。「複数のシステムに関与しながらもそれらから自由であろうとする〔主人公の〕マルティンは、自分の基本的態度を「アナーク」(Anarch)とする。〔…〕ユンガーその人の出処進退を彷彿とさせるこの人間類型は、「兵士」、「労働者」、「森人」(Waldgäenger)と並んで作者が美的に造形した人間像、根本的に変容した世界で生き延びる人間の新たな「形姿〔ゲシュタルト〕」と言えるだろう」と評していただきました。
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