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注目新刊:ちくま学芸文庫2020年4月新刊、ほか

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『近代日本思想選 西田幾多郎』小林敏明編、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,600円、文庫判592頁、ISBN978-4-480-09981-5
『メソポタミアの神話』矢島文夫著、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,000円、文庫判224頁、ISBN978-4-480-09987-7

『中国禅宗史――「禅の語録」導読』小川隆著、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,300円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-09964-8

『米陸軍日本語学校』ハーバート・パッシン著、加瀬英明訳、ちくま学芸文庫、2020年4月、本体1,100円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-09973-0



★ちくま学芸文庫の4月新刊は4点。『近代日本思想選 西田幾多郎』は新シリーズ「近代日本思想選」の第1弾。西田幾多郎(1870-1945)の著作7本、「善の研究」(第一編・第二編)、「場所」、「永遠の今の自己限定」、「私と汝」、「行為的直観」、「日本文化の問題」、「生命」を収録。さらに、西田論を複数上梓している小林敏明さんによる解題と解説を付し、巻末に年譜を配しています。帯文には「『日本文化の問題』と未完の論考「生命」、文庫初収録」とあります。筑摩書房創業80周年記念出版のひとつである「近代日本思想選」は、特設サイトによれば「テーマ別ではなく人物別とし、ある思想家について、その重要論考、ないしは今日的意義の深い論考を精選」するとのこと。続刊予定には、『福沢諭吉』宇野重規編、『大杉栄』梅森直之編、『九鬼周造』田中久文編、が挙がっています。


★『メソポタミアの神話』は筑摩書房のシリーズ「世界の神話」の1冊として1982年に刊行されたものの文庫化。文庫化に際して、沖田瑞穂さんによる解説「世界とつながる、メソポタミア神話」が付され、巻末特記によれば書誌情報等を補った箇所があるとのこと。「天地創造の神話」「タンムーズ神話」「ギルガメシュ神話」「神々と人間の物語」の四部構成。いわゆる解説本ではなく再説本で、15本の神話を物語として蘇らせています。


★『中国禅宗史』は筑摩書房のシリーズ「禅の語録」(全20巻22冊、1969~2016年)の第20巻として2016年に刊行された『「禅の語録」導読』を文庫化したもの。同シリーズ完結の経緯はいささかややこしいようで、巻頭の「はじめに」によれば全20巻のうち第5巻『神会語録』、第12巻『洞山録』、第20巻『語録の歴史(総説)』を除く17点までは1969年から1981年にかけてまず刊行され、2016年の復刊の際に、84~99年代に禅文化研究所が刊行した2点の「事実上の続編」を編入して第5巻『馬祖の語録』と第12巻3分冊『玄沙広録』とし、第20巻も併せて刊行したそうです。このかん、第1巻である柳田聖山『達磨の語録――二入四行論』は96年に学芸文庫として刊行されていますが、現在は品切です。「禅の語録」全20巻22冊は現在もセットで販売中。独立の概論として読めるということでその中からいわばシングルカットされた『「禅の語録」導読』改め『中国禅宗史』は、巻末に加えられた「ちくま学芸文庫版あとがき」によれば、「単純な軸の誤脱を補正し、ふりがなの追加や表記・体裁上の修整などを施しはしましたが、文脈・論旨は一切変えていません」とのことです。「「禅」とは」「伝灯の系譜」「問答・公案・看話」「唐宋禅宗史略」「二十世紀の中国禅研究」の5章立て。


★『米陸軍日本語学校』は、1981年にTBSブリタニカより刊行された単行本の文庫化。英語版は『Encounter with Japan』(講談社インターナショナル、1983年)として日本語訳より後に公刊されていますが、「ちくま学芸文庫版訳者あとがき」によれば「本書はパッシン教授と相談しながら、翻訳を進めた。そのために本書の英語版とは必ずしも精確に対応しないことを、お断りしたい」と説明されています。著者のハーバート・パッシン(Herbert Passin, 1916-2003)はアメリカの文化人類学者で日本研究家。1946年にGHQ職員として来日し、民間情報局に配属。1951年に帰国されています。「この本は、ひとりの外国人の日本との出会いの記録である」(「序にかえて」9頁)。「日本語学校は、私にとっては一つの経験であった」(13頁)。


★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。


『女性ホルモンは賢い――感情・行動・愛・選択を導く「隠れた知性」』マーティー・ヘイゼルトン著、西田未緒子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2020年4月、本体2,300円、四六判並製320頁、ISBN978-4-7726-9568-8
『文藝 2020年夏季号』河出書房新社、2020年4月、本体1,350円、A5判並製520頁、ISBN978-4-309-98007-2

『耽酒妄言――枯骨閑人文酒閑話』沓掛良彦著、大和プレス発行、平凡社発売、2020年4月、本体4,500円、A5変判上製函入 272頁、ISBN978-4-582-83836-7



★『女性ホルモンは賢い』は『Hormonal: The Hidden Intelligence of Hormones. How They Drive Desire, Shape Relationships, Influence Our Choices, and Make Us Wiser』(Little, Brown and Company, 2018)の訳書。誌名のリンク先で目次詳細と「はじめに:女性を導くホルモン」を閲覧することができます。帯文に曰く「女性ホルモン研究の第一人者が、進化によって育まれた女性の複雑な感情・行動の秘密を解き明かします」と。著者のマーティー・ヘイゼルトン(Martie G. Haselton)は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学教授および、社会・遺伝学研究所教授。


★「私は自分たちが手にした興味深い研究の成果を伝えたくて、この本を書いている。私たちのホルモンはとても賢い。交際相手をほしいと感じる欲求(第2章「発情期って何?」および第4章「進化した欲求――セクシー、安定性、どちらを選ぶ?」)から、競争したい衝動(第5章「パートナーを探す――競争とリスク」)、妊娠中や出産直後の体や行動の変化(第7章「卵子経済――女性の人生を脳とホルモンから見る」)、さらには人生の「次章」である更年期になると繁殖とは無関係に新しい経験を自由に味わえる可能性をもたらすなど(同章)、ホルモンが影響を与える範囲は広大だ。/この本を書いている理由には、女性の脳と体に関する情報を増やしたいという気持ちもある」(7~8頁)。


★「私は、新しい系統のフェミニズム、新たなダーウィン的フェミニズムを主張したい。/この種のフェミニズムは、私たちの生きものとしての側面を尊重し、それを十分に調べる。女性には、自分たちの体と心が形成されてきた歴史を――進化の歴史をも含めて――理解する権利がある。私たちには自分たちの生物としての――そしてホルモンの――性質に関するもっと上質な情報が必要だ」(13~14頁)。「私たちはホルモンからの指令の源と働きをよく理解すればするほど、それをきちんと発揮できる(あるいは無視したいなら無視できる)と、私は確信している。それがこの本で(特に第7章、第8章「ホルモンは賢い」で)最も伝えたいメッセージになる」(14頁)。






★『文藝 2020年夏季号』は、特集1が「源氏!源氏!源氏!」、特集2が「「日本文学全集」完結」、さらに緊急特集として「アジアの作家は新型コロナ禍にどう向き合うのか」、そして古井由吉さんの追悼頁が設けられており、盛りだくさんの内容。源氏特集ではユルスナールの短篇「源氏の君の最後の恋」の野崎歓さんによる新訳や、ヴァージニア・ウルフによる書評のほか、「夢浮橋」の現代語訳を十種並べたりと興味深いです。目次詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。次号(秋季号)は7月7日発売予定で、特集が「もうシスターフッドしか愛せない」と予告されています。


★『耽酒妄言(たんしゅもうげん)』は『文酒閑話』(平凡社、2000年)を大幅に増補改訂した新版。旧版は著者が還暦を迎える時節に上梓されたもので、「勝手に師友を評したり、その酒境・酒態を綴ったり、本をめぐっての書簡や書評を収めたりした気ままな内容の本だった」と今回の新版のあとがきで回想されています。旧版の編集担当は二宮隆洋さん。新版の担当者は大和プレスの鈴木美和さん。「人」「本」「酒」「耄碌漫語」の五部構成。副題にある枯骨閑人(ここつかんじん)は著者の戯号とのことです。巻末には著者の最新の著訳書一覧があります。


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