弊社で好評直販中の、哲学書房さんの「哲学」「ビオス」「羅独辞典」について、1点ずつご紹介しております。「羅独辞典」「哲学」0号、同2号、同4号、同6号に続いては同7号のご紹介です。7号はジュンク堂=丸善での哲学書房フェアではもっともよく売れた書目のひとつです。同フェアは4月30日まで丸善丸の内本店にて開催されているほか、ジュンク堂書店立川高島屋店では当面フェアが継続されるようです。
季刊哲学 ars combinatoria 7号 アナロギアと神――トマス・アクィナス、今日の
哲学書房 1989年7月15日 本体1,900円 A5判並製246頁 ISBN4-88679-034-8 C1010
目次:
【中世復興】
山田晶「アナロギアと一義性――トマス、今日の」 pp.8-18
【本邦初訳原典】
トマス・アクィナス「真理の概念――『ペトルス・ロンバルドゥス命題集註解』第一巻第十九篇第五問」花井一典訳 pp.52-70
トマス・アクィナス「紙の存在の真性について――『ペトルス・ロンバルドゥス命題集註解』第一巻第八篇第一問」坂田登訳 pp.72-82
トマス・アクィナス「天使論――『対異教徒大全』第二巻第五二-五四章」脇宏行訳 pp.90-105
トマス・デ・ヴィオ・カエタヌス「名称の類比について」井澤清訳 pp.154-182
【論理と表象】
藁谷敏晴「Ens ut Comparatio――述定の附帯性と純存在論的繋辞」 pp.106-123
花井一典「文の一般的構造から神へ――トマスの言語思想」 pp.139-153
山内志朗「アナロギアと共約不可能性」 pp.183-203
中川純男「神の名――ことばと概念」 pp.19-33
飯塚知敬「神の存在証明は可能か――トマスの〈結果による〉証明」 pp.34-51
【超越と普遍】
吉本隆明「論理の体温――理路の神と恩寵の神の総合」 pp.126-138
U・エーコ「トマスの美学――超越的特質としての美」浦一章訳 pp.204-220
P・T・ギーチ「唯名論」草野章訳 pp.234-243
【時間と言語】
養老孟司「『スンマ』の網状回路と辺縁系――臨床哲学3」 pp.226-233
井辻朱美「北方の千と一つの夜」 pp.221-325
Fra Angelico「楽の喩の天使――Linaiuoli Triptychより」 pp.83-89
編集後記:
●―絶対的な〈他性〉と絶対的な〈同一性〉とを統一する理法で、アナロギアはあった。トマスの思惟の到達した深みを告げる徴であった、というべきであろう。「すべての同義的(一義的)なものは、一つの、同義的ではなく類比的な第一のもの、すなわち存在するもの(ens)へと還元させられる」(『スンマ』)。
●―もとより、トマスの形而上学は「エッセ」をめぐる思惟において極みを印づける。「存在」はあらゆるもののうちで最高の完全性であり、〈在りて在るもの〉である神によって在らしめられて、なべて被造的存在者は在るのであった。ところで存在がそのまま本質であるような無限者と、存らしめられて有限な者とについて、「存在するもの」が述語づけられるとき、それは同義的ではありえず、類比的であるほかはない。
●―「(比例の一致の)様態にしたがえば、ある名称が神と被造物に類比的に語られることを妨げるものは何もない」(『真理論』)。とはいえ、神という無限が、被造的な有限な存在との比例によって測りうるのではない。アナロギアとは、有限と無限との間の、比例的に同一的な関係(ratio)のことにほかならないのだ。
●―アナロギアは、同義性と異義性との、一義性と多義性との間にたゆたって、同義性や一義性とは相容れない。〈概念〉の一義性を追いつめるドゥンス・スコトゥスの選びとった道を、哲学の七百年は、ひた走ったもののようだ。たとえば「(表出が成り立つためには)一方における関係ともう一方における関係との間に何らかの類比が保たれていれば足りる」と記される〈表出〉において、アナロギアとの濃い血縁を疑わせながら、ライプニッツは実はきっぱりと、概念の一義性をこそ言いたてたのであった。
●―若く、全ての異義的なものは同義的なものに還元されるべきであるとしたトマスの、〈存在〉と無限をめぐる思惟のはて、言語の臨界点にアナロギアは現れた。いま姿を見せつつある、史上何度目かの中世復興は、一義性の明晰さをさらに研いで来るべき思考を準備させようとするのか、あるいはトマスの道に思考を誘惑しようとしているのだろうか。けだしアナロギアは、カエタヌスもいうように、「それについての無知が諸学に多くの誤謬を」もたらす態のものでありつづけたのである。
●―次号は「可能世界」。(N)
補足1:欧文号数は「vol.III-2」。すなわち第3年次第2巻。
補足2:71頁には「季刊思潮」の全面広告が前号に続き掲載されており、第1号から第5号までの既刊が紹介されている。言うまでもないが、「季刊思潮」は「批評空間」誌の前身である。
補足3:244~245頁は「季刊哲学」0号から6号までの総目次が掲載されている。
補足4:編集後記の下段には「哲学書房編集部員・営業部員募集」の記載あり。曰く「次の要領で、哲学書房の編集部員と営業部員を募集します」。条件が以下に続く。
◎募集人員:若干名
◎応募資格:二六才までの方
◎応募要領:次の書類を「哲学書房人事係」あてにお送り下さい。
①履歴書(市販のもので可)
②小論:次のうち一点または何点かを読んで、これを千五百字前後で論じて下さい。
a―吉本ばなな『TUGUMI』中央公論社
b―甘利俊一『バイオコンピュータ』岩波書店
c―季刊哲学7「アナロギアと神」
◎応募締切:八月二十日必着
補足5:表紙表4はフラ・アンジェリコの絵画「Trittico di San Pietro Martire」がカラーで掲載されている。トマス・アクィナスが右端に描かれた作品である。また、絵の下には当号に掲載されたトマスの「真理の概念」からの一節が掲出されている。
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月曜社では哲学書房の「哲学」「ビオス」「羅独辞典」を直販にて読者の皆様にお分けいたしております。「季刊ビオス2号」以外はすべて、新本および美本はなく、返本在庫であることをあらかじめお断りいたします。「読めればいい」というお客様にのみお分けいたします。いずれも数に限りがございますことにご留意いただけたら幸いです。
季刊哲学0号=悪循環 (本体1,500円)
季刊哲学2号=ドゥンス・スコトゥス (本体1,900円)
季刊哲学4号=AIの哲学 (本体1,900円)
季刊哲学6号=生け捕りキーワード'89 (本体1,900円)
季刊哲学7号=アナロギアと神 (本体1,900円)
季刊哲学9号=神秘主義 (本体1,900円)
季刊哲学10号=唯脳論と無脳論 (本体1,900円)
季刊哲学11号=オッカム (本体1,900円)
季刊哲学12号=電子聖書 (本体2,816円)
季刊ビオス1号=生きているとはどういうことか (本体2,136円)
季刊ビオス2号=この私、とは何か (本体2,136円)
羅独-独羅学術語彙辞典 (本体24,272円)
※哲学書房「目録」はこちら。
※「季刊哲学12号」には5.25インチのプロッピーディスクが付属していますが、四半世紀前の古いものであるうえ、動作確認も行っておりませんので、実際に使用できるかどうかは保証の限りではございません。また、同号にはフロッピー版「ハイパーバイブル」の申込書も付いていますが、現在は頒布終了しております。
なお、上記商品は取次経由での書店への出荷は行っておりません。ご注文は直接小社までお寄せ下さい。郵便振替にて書籍代と送料を「前金」で頂戴しております(郵便振替口座番号:00180-0-67966 口座名義:有限会社月曜社)。送料については小社にご確認下さい。後払いや着払いや代金引換は、現在取り扱っておりません。
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『季刊哲学』7号=アナロギアと神
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