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注目新刊:アガンベン「ホモ・サケル」シリーズIV-2

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『思考の潜勢力』『涜神』『到来する共同体』)
★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
アガンベンさんのライフワークである「ホモ・サケル」シリーズ第4部第2巻が上村忠男さんによって翻訳されました。原著はL'uso dei corpi (Neri Pozza, 2014)です。「身体の使用」「存在論の考古学」「〈生の形式〉」の三部構成。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。訳者あとがきに「ホモ・サケル」シリーズの一覧がありますので、書店さんはこの一覧でシリーズの売場の欠本をチェックされてみてください。

身体の使用――脱構成的可能態の理論のために
ジョルジョ・アガンベン著、上村忠男訳
みすず書房 2016年1月 本体5,800円 四六判上製512頁 ISBN978-4-622-07964-4
帯文:《ホモ・サケル》、極点の思考――政治呂倫理の新しい次元を可能態の観想が開く。「芸術・哲学・宗教・政治はその時代を終えてしまったが、私たちはそこに新しい生を汲むことができる」(本文より)。


★廣瀬純さん(著書:『絶望論』、共著:『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★トニ・ネグリさん(著書:『芸術とマルチチュード』)
イタリア、スペイン、ギリシャの政治理論家8人に廣瀬さんが昨夏行ったインタヴューをまとめ、同時期に彼らが発表した論考を併載した魅力的な一冊が刊行されました。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。第Ⅰ部「ヨーロッパ」では、サンドロ・メッザードラ、マウリツィオ・ラッザラート、フランコ・ベラルディ(ビフォ)へのインタヴューを収録し、バリバールらの関連論考が訳出されています。第Ⅱ部「スペイン/ギリシャ」では、フアン=ドミンゴ・サンチェス=エストップ、ラウル・サンチェス=セディージョ、アマドール・フェルナンデス=サバテル、パンチョ・ラマス、スタヴロス・スタヴリデスへのインタヴューを収録し、ネグリらの関連論考が訳出されています。廣瀬さんによる巻末解説「現代南欧政治思想への招待」にはこんな一文があります。フランス知性のそうした嘆かわしい現況とは反対に、スペインやイタリアといった「南欧」では(ラテンアメリカにおけるとの同様に)今日もなお、情勢の下で思考する営みが精力的に続けられている」(370頁)。この前段にあるフランス哲学への鋭い言及を人文書担当の書店員さんは必ずチェックされてみてください。現代思想棚にはたいてい「米英」「ドイツ」「フランス」の分類はあると思いますが、大書店さんではさらに「イタリア」をまとめていらっしゃると思います。この「イタリア」に本書を接続し、さらに、あまり点数がありませんがスペインやギリシャの類書を繋げていくとよいと思います。

資本の専制、奴隷の叛逆――「南欧」先鋭思想家8人に訊くヨーロッパ情勢徹底分析
廣瀬純編著
航思社 2016年1月 本体2,700円 四六判並製384頁 ISBN978-4-906738-15-1
帯文より:ディストピアに身を沈め、ユートピアへ突き抜けよ。スペイン、ギリシャ、イタリアの最先端政治理論家たちがポスト産業資本時代の「絶望するヨーロッパ」をラディカルに分析する。

なお、以下の通り出版記念イベントが今週行われます。

◎廣瀬純×マニュエル・ヤン「民衆はいかに攻勢に転じるか――「シアトル」から「国会前」まで」
日時:2016年01月28日(木)19:30~
場所:ジュンク堂書店池袋本店4F喫茶コーナー
料金:税込1,000円(飲物代込)
内容:反グローバライゼイションから反戦を経てオキュパイへ。反貧困から反原発を経て反安保法制へ。90年代以後この20年のあいだ、民衆運動はどのような戦略・戦術にもとづいて展開され、何を獲得したか。日本ではどうだったか。資本がその破壊的本性を全面展開させるなか、「労働者」はどこへいったのか。アンダークラスは到来するのか。スペイン、ギリシャ、イタリアの政治理論家たちが呈示するヨーロッパ情勢分析とともに考える。

◎廣瀬純×北川眞也×上尾真道×箱田徹「「階級構成」とは何か」
日時:2016年01月29日(金)19:00~20:30
場所:地下2階 MARUZEN CAFÉにて
料金:税込1,000円(飲物代込)定員40名
内容:理論においても実践においても「階級」が語られなくなって久しい。「我々は99%である」と言われるときそこで語られているのは「階級」か。そうではあるまい。「階級」とはまさにその「99%」を二つに割るときにこそ初めて語られ得るものだからだ。安保法制反対運動がなぜあれほど多くの人々を運動へと招き得たのか。参加者にいっさいの「階級」的自覚を求めなかったからだろう。新たな人民は「空虚なシニフィアン」(ラクラウ/ムフ)の下で団結する「誰でもよい者」(ランシエール)として到来する? サンドロ・メッザードラをはじめとした「南欧」の理論家たちの議論を読み、「階級構成」分析のその今日的可能性を検討する。廣瀬純『資本の専制、奴隷の叛逆』、サンドロ・メッザードラ『逃走の権利』(人文書院)刊行記念イベント。


★佐藤嘉幸さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★立木康介さん(共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
さて、さきほど引用した廣瀬さんの文章の中に「情勢の下で思考する」という言葉がありましたが、これは下記のアンソロジー集『現代思想と政治』に廣瀬さんが寄稿された論考のタイトルでもあります。「情勢の下で思考する――アントニオ・ネグリと「六八年の哲学」」がそれです。『現代思想と政治』は京都大学人文科学研究所による共同研究成果報告書で、「政治/哲学」「資本/闘争」「主体/精神分析」の三部構成に17の論考を配置し、巻頭の序文を市田良彦さんが執筆されています。このアンソロジー集には佐藤嘉幸さんの論考「分裂分析と新たな主体性の生産――ガタリ『アンチ・オイディプス草稿』」や、立木康介さんの論考「ラカンの六八年五月――精神分析の「政治の季節」」も収録されています。

現代思想と政治――資本主義・精神分析・哲学
市田良彦・王寺賢太編
平凡社 2016年1月 A5判上製624頁 ISBN978-4-582-70340-5
帯文より:フーコー、ドゥルーズ、アルチュセール、ラカン……現代思想たちは、政治をどう指向したか? そこで政治は、どのようなものとしてとらえられたか? そのとき思想はどんな意味で現代であるか? 政治/哲学/資本主義/闘争/主体/精神分析……拡散しつつ円環を形作る、18人による根底的な論究。


★上野俊哉さん(著書:『アーバン・トライバル・スタディーズ』、共訳:ギルロイ『ブラック・アトランティック』)
★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★清水知子さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★本橋哲也さん(共訳:スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
月刊誌『現代思想』2016年1月号「ポスト現代思想」に上野俊哉さんの論考「フルッサー、知られざる群島としての」が、そして同誌の1月臨時増刊号「パリ襲撃事件――新しい<戦争>の行方」に鵜飼哲さんの論考「「みずから播いた種」――二一世紀のフランスの変貌」が掲載されています。後者に併載されているジジェクのエッセイ「キューポラの騒乱」の翻訳を清水知子さんが、そしてゼムデナ・アベベのエッセイ「なぜ世界は、パリをこれほど悼む、のか?」の翻訳を本橋哲也さんが担当されています。


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