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注目新刊:長田真作『すてきなロウソク』共和国、ほか

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『すてきなロウソク』長田真作著、共和国、2018年1月、本体1,700円、B5変型判上製64頁、ISBN978-4-907986-44-5
『ハンス・ヨナスを読む』戸谷洋志著、堀之内出版、2018年1月、本体1,800円、四六判並製232頁、ISBN 978-4-909237-34-7
『国民票決と国民発案――ワイマール憲法の解釈および直接民主制論に関する一考察』カール・シュミット著、仲正昌樹監訳・解説、松島裕一訳、作品社、2018年1月、本体2,000円、46判上製128頁、ISBN978-4-86182-679-5
『公共的なるもの――アーレントと戦後日本』権安理著、作品社、2018年1月、本体2,800円、46判上製336頁、ISBN978-4-86182-671-9



★『すてきなロウソク』は長田真作(ながた・しんさく:1989-)さんの10作目となる絵本。デビューは一昨年の2016年で、昨年は7冊も上梓されており、たいへんなスピードです。今回の『すてきなロウソク』は黒インクとニスのみで繊細な表現を試みたもので、その内容は極めて寓話的です。主人公やロウソクを何の象徴と見るか、またラッパの音の意味をどうとるかで解釈が変わってきそうです。版元さんのプレスリリースによれば「作者はこの作品のモティーフとして、自身の出生地である広島県呉市の現代史を重ね合わせている」とのことです。児童書というよりかは大人もゆっくりひもといてみたい作品。絵本はもはや絵本売場に留めておくべきではなく、他の各売場でも併売して大人との出会いを作った方がいいと感じます。ジャンルの壁を乗り越えて自身の作りたい本を作っておられる共和国さんの「自由」さが素敵です。


★『ハンス・ヨナスを読む』は戸谷洋志(とや・ひろし:1988-)さんによる『Jポップで考える哲学――自分を問い直すための15曲』(講談社文庫、2016年9月)に続く単独著第二弾です。ハンス・ヨナス(Hans Jonas, 1903-1993)はドイツ出身の哲学者。『責任という原理――科学技術文明のための倫理学の試み』(加藤尚武監訳、東信堂、2000年;新装版2010年)や『グノーシスと古代末期の精神』(二分冊、大貫隆訳、ぷねうま舎、2015年)、『生命の哲学――有機体と自由』(細見和之ほか訳、法政大学出版局、2008年;新装版2014年)、『ハンス・ヨナス「回想記」』(盛永審一郎ほか訳、東信堂、2010年)等々ありますが、入門書は本書が初めて。目次詳細は書名のリンク先をご覧下さい。年々注目が高まりつつある哲学者であるだけに、時宜を得た出版ではないでしょうか。「複雑に錯綜したヨナスのテクストを読み解きながら、これから彼を知ろうとする読者に一つの明瞭な手引きを提供すること、それによって、ヨナスの眼を借りながら、留まることのない科学技術文明の激動を、未来への責任を、世界を、新しい光のもとで眺める可能性を開くこと、それがこの本の目的です」(8頁)と戸谷さんはお書きになっています。


★『国民票決と国民発案』は『Volksentscheid und Volksbegehren: Ein Beitrag zur Auslegung der Weimarer Verfassung und zur Lehre von der unmittelbaren Demokratie』(Gruyter, 1927)の初訳。1926年12月11日にシュミットがベルリン法律家協会で行った講演が元になっており、「直接民主制の問題を扱った〔本書の〕最終部分は、講演のときよりも詳細に論じている」(「はじめに」より)と。帯文に曰く「ナチスの桂冠法学者が、ヒトラー政権樹立前、「世界で最も民主的」といわれたワイマール憲法を素材に、民主主義、議会と立憲主義などを論じる」。目次詳細は書名のリンク先をご覧下さい。監訳者解説「シュミット理論の魔(魅)力」で仲正さんはこう書いておられます。「九十年前のドイツで書かれたシュミットのテクストを、現代の日本の政治状況に直接的に重ね合わせることには慎重にならねばならないが、少なくとも、民衆の圧倒的な情熱に過度の期待を寄せる「直接民主主義」が、予想外の危険を秘めていることは読み取れるだろう。このテクストを通して読めば分かるように、魔性の法学者カール・シュミットは、少なくとも本人の理解では、“立憲民主主義者”だったのである」(125頁)。


★『公共的なるもの』は、権安理(ごん・あんり:1971-)さんの博士論文(早稲田大学大学院社会科学研究科)に大幅な加筆修正を程と越したもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。本書は「戦後日本という具体的な歴史の内に、〈公共的なるもの〉の概念を再構成する」こと(7頁)を目的としており、「はじめに」で著者はこう述べておられます。「アーレントは〔『人間の条件』で〕次のようにいっているが、この「世界」を「間もしくは空間」と読み替えてもよいだろう。「『public』という用語は、世界それ自体を意味する。世界が我われ全員に共通するものとなり、我われが私的に所有する場所と区別される限りにおいて」。〔・・・家とも職場・学校とも異なる〕第三のものが場所として考えられるとき、あるいは場所として顕在化するとき、それは公共空間や公共的領域、公共圏として見出されることになる。またあるいは私的で個別的な見方とは異なる視座から何らかの事象や物事が考えられ、その結果として何かが作られるとき、それは公共的な性質、つまりは公共性を持つということになる」(6頁)。


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