★今福龍太さん(著書:『ブラジルのホモ・ルーデンス』)
集英社さんの月刊誌「すばる」で2014年12月から2017年6月号まで隔月連載されていたものが単行本化され、先週より発売開始となっています。印象的な造本は佐藤篤司さんによるもの。
ハーフ・ブリード
今福龍太著
河出書房新社 2017年10月 本体3,800円 46判上製368頁 ISBN978-4-309-24830-1
星野智幸氏推薦文:自らが純血ではなくハーフ・ブリードだと気づくことが、これほどの解放をもたらすとは! メキシコ性を極限まで探究したこの驚くべき詩的散文は渡したいtの未来を映す鏡だ。
辻原登氏推薦文:目に見えぬ「Soul-line」が、“風という靴底を持つ男”今福隆太によって、メキシコの地から、精緻かつ果敢に、地球上に引かれた!
坂口恭平氏「『ハーフ・ブリード』に寄せて」:覚えていたのが時間のことだったのか 空間のことだったのか わからなくなると鏡を見る 大木が映りこんでいた 知らない木だった そこに寄り添っている自分がいて それを黙って見ていた 音は何も聞こえずに 水がながれていることはわかった どこも行ったことがないのに記憶だけは次から次へと蘇ってくる 誰の記憶なのか 体は、まあ待てと肩を叩いてきた しばらくお茶を飲んで過ごした 風が吹いた 何かを焼く匂いがした 目の前にいる男が昔の海について話をしている 「お前は船に乗ってた。櫂も持たずに」 男は言った 上を見たら、昼間なのに星が見えた 「お前は森のことを知っていた」 誰のことなのだろうか 「ずっと昔のことだ」 男はそう言うと、煙草の火を消していなくなった 消えるようにしていなくなった 耳が思い出したように音をかき集めはじめた 水の音が少しずつ大きくなってきた いつのまにか音は水しぶきをあげて 洪水となって茂みの奥から溢れ出てきた 飲み込まれ 息もできなくなった 元の自分に戻った 息もせず 目も見えず あるのは記憶だけだった 記憶の中に隠れ家があった ところが、右に言えば、体は底に落ち 這い上がろうとすると忘れてしまった 一瞬のうちにカーテンや廊下が水滴になった 「知らないことなんかひとつもなかっただろう」 男はまだ煙草を吸っていた ずっと昔のことだった 本を読みながら、今そのことをふと思い出した
目次:
Prologue
Ⅰ 赤と黒の十字路
Ⅱ 蛇と黒曜石の物語
Ⅲ 雑種或いはKの交差点
Ⅳ アルトゥーロ、砂漠の吐息
Ⅴ 流れよ川、歌えよギタレーロ
Ⅵ 風と炎のある風景
Ⅶ 反転-人類学の呪術師
Ⅷ マヤの漂泊者
Ⅸ 国境の詩篇〔カントス〕
Ⅹ 砂漠と監獄
Ⅺ 峡谷〔カニャーダ〕へ
Ⅻ 水で書かれた父と母の歌
Epilogue
引用出典一覧
あとがき
+++
知り合いの版元さんから色々な冊子をいただいたのでご紹介します。
1)「大学出版」2017年秋号「特集=一冊入魂!――編集の愉楽」
大学出版部協会さんが発行するPR誌「大学出版」が最新号で協会員ではない版元の編集者の方々から、自らの仕事をめぐるエッセイを寄せてもらっていて、とても興味深いです。業界人必読かと。PDFを協会のウェブサイトでダウンロードできます。
左右社・小柳学さん「こんどはもっと遅かった『〆切本2』の編集」
亜紀書房・内藤寛さん「いま、小説を作るということ」
共和国・下平尾直さん「ページの奴隷、編集者!」
堀之内出版・小林えみさん「『nyx』は百年後の光となるか」
ちなみに堀之内出版さんは、今月末に開催予定の、本好きのためのブックフェア「BOOK MARKET 2017」や、後段でご紹介するブックフェア「版元やおよろず」に出展されるとのことです。後者には共和国さんも参加されています。
◎ブックフェア「BOOK MARKET 2017」
期間:2017年 10月28日(土)、29日(日)
時間:28日 11:00 〜 19:00
29日 11:00 〜 18:00
場所:アートコンプレックス・センター
〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9 TEL03-3341-3253
主催:アノニマ・スタジオ
内容:BOOK MARKETは、今年で9回目を迎える「本当におもしろい本」だけを集めた本好きのためのブックフェアです。 出展社もさらにパワーアップ。 1年でいちばん本を読みたくなる晩秋の開催です。 「本のお祭り」BOOK MARKET 2017で、読者のみなさまとお会いできることを楽しみにしております!
出展社:フィルムアート社、誠文堂新光社、地球丸、夏葉社、エクスナレッジ、偕成社、京阪神エルマガジン社、作品社、G.B.、自然食通信社、青幻舎、西日本出版社、而立書房、ニジノ絵本屋、パイ インターナショナル、HaoChi Books、ビーナイス、堀之内出版、本の雑誌社、ミシマ社、港の人、雷鳥社、リトルモア、グラフィック社、リットーミュージック、アタシ社、カンゼン、木楽舎、アノニマ・スタジオ、かもめブックス、メリーゴーランド京都、藤原印刷。
2)「版元やおよろず2017 ハンドブック」
23の出版社が参加する、双子のライオン堂で今月開催されているブックフェア「版元やおよろず2017」で100円で販売されている冊子です。出店版元が「代表する書籍」「出版社自己紹介」「なぜ出版社を立ち上げたのか、なぜ出版社で働いているのかなど」「他社のお薦め本」の4つの質問に答えたものをまとめています。様々な出版社の横顔が分かって楽しい一冊です。
◎ブックフェア「版元やおよろず」
期間:10/11(水)~10/20(金)
時間:15:00~21:00
※10/16、17はお休み。10/15(日)は13:00~18:00。
内容:「まっすぐに本を売る」出版社たちのブックフェア。一人ひとりの読者の顔を思い浮かべながら、直接手渡しをするかのように丁寧に本を作り売る出版社が集まりました。小さな版元さんが魂込めて作られた本たちをドドンと!展開いたします。
出展社:アタシ社、えにし書房、キーステージ21、共和国、ころから、猿江商會、三輪舎、センジュ出版、太郎次郎社エディタス、TANG DENG、トランスビュー、バナナブックス、羽鳥書店、H.A.B.、ビーナイス、ブックエンド、ブリコルール・パブリッシング、ポット出版、堀之内出版、本の種出版、マドレーヌブックス、まむかいブックスギャラリー、ユウブックス。
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集英社さんの月刊誌「すばる」で2014年12月から2017年6月号まで隔月連載されていたものが単行本化され、先週より発売開始となっています。印象的な造本は佐藤篤司さんによるもの。
ハーフ・ブリード
今福龍太著
河出書房新社 2017年10月 本体3,800円 46判上製368頁 ISBN978-4-309-24830-1
星野智幸氏推薦文:自らが純血ではなくハーフ・ブリードだと気づくことが、これほどの解放をもたらすとは! メキシコ性を極限まで探究したこの驚くべき詩的散文は渡したいtの未来を映す鏡だ。
辻原登氏推薦文:目に見えぬ「Soul-line」が、“風という靴底を持つ男”今福隆太によって、メキシコの地から、精緻かつ果敢に、地球上に引かれた!
坂口恭平氏「『ハーフ・ブリード』に寄せて」:覚えていたのが時間のことだったのか 空間のことだったのか わからなくなると鏡を見る 大木が映りこんでいた 知らない木だった そこに寄り添っている自分がいて それを黙って見ていた 音は何も聞こえずに 水がながれていることはわかった どこも行ったことがないのに記憶だけは次から次へと蘇ってくる 誰の記憶なのか 体は、まあ待てと肩を叩いてきた しばらくお茶を飲んで過ごした 風が吹いた 何かを焼く匂いがした 目の前にいる男が昔の海について話をしている 「お前は船に乗ってた。櫂も持たずに」 男は言った 上を見たら、昼間なのに星が見えた 「お前は森のことを知っていた」 誰のことなのだろうか 「ずっと昔のことだ」 男はそう言うと、煙草の火を消していなくなった 消えるようにしていなくなった 耳が思い出したように音をかき集めはじめた 水の音が少しずつ大きくなってきた いつのまにか音は水しぶきをあげて 洪水となって茂みの奥から溢れ出てきた 飲み込まれ 息もできなくなった 元の自分に戻った 息もせず 目も見えず あるのは記憶だけだった 記憶の中に隠れ家があった ところが、右に言えば、体は底に落ち 這い上がろうとすると忘れてしまった 一瞬のうちにカーテンや廊下が水滴になった 「知らないことなんかひとつもなかっただろう」 男はまだ煙草を吸っていた ずっと昔のことだった 本を読みながら、今そのことをふと思い出した
目次:
Prologue
Ⅰ 赤と黒の十字路
Ⅱ 蛇と黒曜石の物語
Ⅲ 雑種或いはKの交差点
Ⅳ アルトゥーロ、砂漠の吐息
Ⅴ 流れよ川、歌えよギタレーロ
Ⅵ 風と炎のある風景
Ⅶ 反転-人類学の呪術師
Ⅷ マヤの漂泊者
Ⅸ 国境の詩篇〔カントス〕
Ⅹ 砂漠と監獄
Ⅺ 峡谷〔カニャーダ〕へ
Ⅻ 水で書かれた父と母の歌
Epilogue
引用出典一覧
あとがき
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知り合いの版元さんから色々な冊子をいただいたのでご紹介します。
1)「大学出版」2017年秋号「特集=一冊入魂!――編集の愉楽」
大学出版部協会さんが発行するPR誌「大学出版」が最新号で協会員ではない版元の編集者の方々から、自らの仕事をめぐるエッセイを寄せてもらっていて、とても興味深いです。業界人必読かと。PDFを協会のウェブサイトでダウンロードできます。
左右社・小柳学さん「こんどはもっと遅かった『〆切本2』の編集」
亜紀書房・内藤寛さん「いま、小説を作るということ」
共和国・下平尾直さん「ページの奴隷、編集者!」
堀之内出版・小林えみさん「『nyx』は百年後の光となるか」
ちなみに堀之内出版さんは、今月末に開催予定の、本好きのためのブックフェア「BOOK MARKET 2017」や、後段でご紹介するブックフェア「版元やおよろず」に出展されるとのことです。後者には共和国さんも参加されています。
◎ブックフェア「BOOK MARKET 2017」
期間:2017年 10月28日(土)、29日(日)
時間:28日 11:00 〜 19:00
29日 11:00 〜 18:00
場所:アートコンプレックス・センター
〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9 TEL03-3341-3253
主催:アノニマ・スタジオ
内容:BOOK MARKETは、今年で9回目を迎える「本当におもしろい本」だけを集めた本好きのためのブックフェアです。 出展社もさらにパワーアップ。 1年でいちばん本を読みたくなる晩秋の開催です。 「本のお祭り」BOOK MARKET 2017で、読者のみなさまとお会いできることを楽しみにしております!
出展社:フィルムアート社、誠文堂新光社、地球丸、夏葉社、エクスナレッジ、偕成社、京阪神エルマガジン社、作品社、G.B.、自然食通信社、青幻舎、西日本出版社、而立書房、ニジノ絵本屋、パイ インターナショナル、HaoChi Books、ビーナイス、堀之内出版、本の雑誌社、ミシマ社、港の人、雷鳥社、リトルモア、グラフィック社、リットーミュージック、アタシ社、カンゼン、木楽舎、アノニマ・スタジオ、かもめブックス、メリーゴーランド京都、藤原印刷。
2)「版元やおよろず2017 ハンドブック」
23の出版社が参加する、双子のライオン堂で今月開催されているブックフェア「版元やおよろず2017」で100円で販売されている冊子です。出店版元が「代表する書籍」「出版社自己紹介」「なぜ出版社を立ち上げたのか、なぜ出版社で働いているのかなど」「他社のお薦め本」の4つの質問に答えたものをまとめています。様々な出版社の横顔が分かって楽しい一冊です。
◎ブックフェア「版元やおよろず」
期間:10/11(水)~10/20(金)
時間:15:00~21:00
※10/16、17はお休み。10/15(日)は13:00~18:00。
内容:「まっすぐに本を売る」出版社たちのブックフェア。一人ひとりの読者の顔を思い浮かべながら、直接手渡しをするかのように丁寧に本を作り売る出版社が集まりました。小さな版元さんが魂込めて作られた本たちをドドンと!展開いたします。
出展社:アタシ社、えにし書房、キーステージ21、共和国、ころから、猿江商會、三輪舎、センジュ出版、太郎次郎社エディタス、TANG DENG、トランスビュー、バナナブックス、羽鳥書店、H.A.B.、ビーナイス、ブックエンド、ブリコルール・パブリッシング、ポット出版、堀之内出版、本の種出版、マドレーヌブックス、まむかいブックスギャラリー、ユウブックス。
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