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メモ(25)

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「DIAMOND online」2017年7月25日付、須賀彩子(ダイヤモンドZAi編集部)氏記名記事「ヤマトがアマゾンに1.7倍の運賃値上げと総量抑制を要請、ヤマ場は9月」によれば、ヤマト運輸はアマゾン・ジャパンの宅配便数の4分の3を担っており、残り4分の1は日本郵便だと言います。記事ではアマゾンからの荷物の平均単価はヤマトの運賃表の4割程度であり、「これは2013年に佐川急便が利益が出ないとしてアマゾンの仕事から撤退したときの価格に等しい」と。ヤマトは値上げを要求し、さらに現在引き受けている宅配便のうち20%前後の荷物は引き受けられないとも伝えていると言います。詳しくは同記事をお読みください。コメント欄付のヤフーニュース版はこちら。



記事によれば「アマゾンは、自前で物流網を築くとしているが、「そんなにすぐにはできない。4~5年は要するだろう」(物流関係者)という」。時間がかかるだろうことは明白ではありますが、アマゾンはそこまでは待てないでしょうから、何かしらの手を打つだろうと思われます。とはいえ、中小の運送会社にいくら頼ったところで・・・という各方面の嘆き節はしばらくは収まらないでしょう。自動運転やドローンによる配送が実現するのも、この日本では近い将来、とまではなかなか思えません。


直取引を開始している版元や検討している版元からすでに様々な「ボヤキ」が聞こえてくる昨今、とうとうバックオーダー発注停止から1ヶ月が経とうとしています。版元によっては日販の売上がどの程度変化しているかを見極めて、アマゾンとの直取引の是非を考えざるをえないでしょう。実際のところアマゾンが検討すべきなのは、直取引に固執しないもう一つの回路を作っておくことではないかと思います。すなわち、版元への直発注です。普通の書店ではやっていることをアマゾンがやらないのはなぜか。結局版元が納品するのは日販にであって、そこからアマゾンに届くまでの時間を何とかして短くしたいなら、手っ取り早いのはやはり直取引だ、ということだからでしょう。


しかし、日販との取引の積み重ねがある大方の版元にとっては、信義上、簡単に直取引に乗り換えられるものではありません。加えて、そもそもアマゾンが取引先として信頼に足る相手なのかどうか、版元には根強い不信感があります。その不信感は版元が一方的に抱いている偏見などではなく、アマゾン自身が引き起こしているものです。そのことにそろそろアマゾンは気づくべきです。なぜ緑風出版、水声社、晩成書房が今なお出荷停止をしているのか。学生への割引販売は大学生協でもやっていますから、学生が安く買える状況に文句を言いたいわけではないだろうと思います。そうではなく、アマゾンはおおむね、版元への事前相談なしに大事なことを決めてしまい、それについて版元と真摯に協議する姿勢が見られない、というのが一番の問題なのではないでしょうか。「アマゾンはいずれ再販制を無視して本の安売りを始めるに違いない」と疑われても仕方ない態度しか見せてこなかった、という版元にとっての「現実」に対して、アマゾン自身が何かしらの反省をしているようには残念ながら見えません。「それは誤解だ」と平然と言ってのけている内は、版元との距離感は縮まりようがないでしょう。


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バックオーダー発注停止から1ヶ月経とうとしている今、不思議なのは、アマゾンが在庫を持っていない商品についても買い物カゴがまだついている、ということです。いわゆる「カート落ち」になっておらず、取寄せ表示になっています。「通常9~14日以内に発送します」「通常1~4週間以内に発送します」「通常2~4週間以内に発送します」「通常1~2か月以内に発送します」だけでなく、「一時的に在庫切れ、入荷時期は未定」と表示していても、買い物カゴがついているケースを7月半ばまで見かけました。これはおかしい。取寄せはしないんじゃないの? 取寄せ発注しないのに在庫復活は無理でしょう。お客様とトラブルになりかねないではないですか。25日現在、弊社本の場合、取り寄せはむしろ減って、1冊でも在庫しよう、と努力しているように見えます(それでもまだ取寄せ表示の銘柄が数点残っています)。


アマゾンにとってもカート落ちは怖いのだと見えます。それはそうでしょう。今のままアマゾンが発注をやめていれば、直取引版元以外で、日販ともMD契約をしていない版元の銘柄は間違いなくガンガン「カート落ち」します。驚いてしまうのは、「ロングテールの終焉」のリスクというごく当たり前の展開を、アマゾンがさほど真剣には考えてこなかったらしいことです。アマゾンへの「誤解」が解ければ、出版社は直取引に応じるはずだ、という期待も、今となっては甘すぎました。日販経由のバックオーダー短冊は止まったものの、日販のウェブブックセンターへの発注は止めていないのではないかと想像できます。そうでなければ、弊社銘柄の在庫の復活は説明できません。


とはいえ、今後どうなるのかは今しばし観察する必要があります。カート落ちが発生した場合、弊社がお客様にお薦めしたいのは、hontoとMJB(丸善、ジュンク堂、文教堂の店頭在庫)からの購入です。アマゾンしか通販の選択肢がないわけではない、というごくごく当たり前の事実をもう一度見直す必要があります。


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