『メルロ=ポンティ哲学者事典 第二巻 大いなる合理主義・主観性の発見』モーリス・メルロ=ポンティ編著、加賀野井秀一/伊藤泰雄/本郷均/加國尚志監訳、白水社、2017年5月、本体5,400円、A5判上製382頁、ISBN978-4-560-09312-2
『タラウマラ』アントナン・アルトー著、宇野邦一訳、河出文庫、2017年6月、本体800円、文庫判224頁、ISBN978-4-309-46445-9
★『メルロ=ポンティ哲学者事典 第二巻 大いなる合理主義・主観性の発見』は、第2回配本。目次は以下の通り。スラッシュで区切ってある一群は書き手のイニシャルが付された小項目です。
Ⅳ 大いなる合理主義(モーリス・メルロ=ポンティ)
大いなる合理主義(17世紀):ガリレイ/ベーコン/ホッブズ/デカルト
ベーコン(アンドレ・ラランド)
ホッブズ(レイモン・ポラン)
デカルト(フェルディナン・アルキエ)
ガッサンディ/メルセンヌ/ラ・フォルジュ/コルドモワ/ユエ/クラウベルク/ゲーリンクス/アルノー/レジス/
スピノザ(ロラン・カイヨワ)
スピノザ/ラミ/ブーランヴィリエ/ドルトゥス・ド・メラン/マルブランシュ/ベルナール・ラミ/フェデ/アンドレ
マルブランシュ(フェルディナン・アルキエ)
ライプニッツ(イヴォン・ベラヴァル)
ライプニッツ/ヴォルフ
ロック(レイモン・ポラン)
ディグビー/ジョン・スミス/カドワース/モア/ロック/ロシュ/ニュートン/クラーク/コリンズ/ベール/フォントネル
18世紀の合理主義(ジャン・スタロバンスキー)
モンテスキュー/ヴォーヴナルグ/ヴォルテール/ディドロ/ダランベール/ラ・メトリ/エルヴェシウス/ドルバック/ビュフォン/ボスコヴィチ/ケネー
コンディヤックと観念学:コンディヤック/ハートリー/ボネ/カバニス/デステュット・ド・トラシ
Ⅴ 主観性の発見(モーリス・メルロ=ポンティ)
16世紀:ラブレー/タロン/モンテーニュ
モンテーニュ(ジャン・スタロバンスキー)
パスカル(ジョルジュ・ギュスドルフ)
17世紀:デカルト/パスカル
18世紀:シャフツベリ/マンデヴィル/ビュフィエ/コリアー/バークリー
バークリー(T・E・ジェソップ)
ハチソン/ユベール/ヒューム
ヒューム(ギルバート・ライル)
ヘルムステルホイス/アダム・スミス/リード/サン=マルタン
コンディヤック(ジョルジュ・ル・ロワ)
ルソー(ピエール・ビルジュラン)
カント(ジュール・ヴュイユマン)
カント/レッシング/ヘルダー/ヤコービ/マイモン
フィヒテ(ジュール・ヴュイユマン)
19世紀:フィヒテ/ゲーテ/シラー/フリース/ヘルバルト/ショーペンハウアー/ブーストレム/スチュワート/ブラウン/ハミルトン/ミル/ニューマン
メーヌ・ド・ビラン(ジョルジュ・ル・ロワ)
ビシャ/メーヌ・ド・ビラン/ラロミギエール/ロワイエ=コラール/アンペール/ジュフロワ/クザン/ボルダス=ドゥムラン/マレ/グラトリー/ヴァシュロ/シモン/ジャネ/テーヌ/ルキエ/ロスミーニ=セルバーティ/ジョベルティ/マッツィーニ/キルケゴール
キルケゴール(ジョルジュ・ギュスドルフ)
エマーソン/アミエル/スクレタン/マッハ/アヴェナリウス
19世紀の終わりと批判主義の復活:ルヌヴィエ/カントーニ/コーエン/ナトルプ/ヴィンデルバント/リッケルト/フォルケルト/バウフ/リーベルト/ヘフディング/ラシュリエ/ラニョー/ブロシャール/アムラン/セアイユ/フイエ/デュナン/パロディ
索引
★第3回配本は7月27日発売予定、第1巻『東洋と哲学・哲学の創始者たち・キリスト教と哲学』とのことです。
★アルトー『タラウマラ』は6月6日発売。河出文庫のアルトー作品は『神の裁きと訣別するため』(宇野邦一/鈴木創士訳、2006年7月、品切)、『ヘリオガバルス――あるいは戴冠せるアナーキスト』(鈴木創士訳、2016年8月)に続いて3点目になります。奥付前の特記によれば「本書は『アルトー後期集成I』(河出書房新社、2007年)所収の『タラウマラ』を改訂の上、文庫化したもの」と。訳者による「解説」の末尾にはより詳しくこう説明されています。「この訳書は、『アルトー後期集成I』の中のタラウマラ関連の文章に、未訳の書簡三通を付け加えたものである。収録にあたって訳文を再検討し、できるだけ誤りをただすようにした」。この書簡三通というのは「タラウマラ族に関する手紙」において追加されたもので「ポケット版(Idées / Folio essais)には、ポーラン宛の三つの書簡(1937年5~6月)が増補されているので、本書にはそれも訳出した」と記されています。
★ご参考までに本書の目次を以下に列記します。
タラウマラ族におけるペヨトルの儀式
タラウマラの国への旅について
記号の山
ペヨトルのダンス
アンリ・パリゾーへの手紙
トゥトゥグリ
『エル・ナシオナル』に掲載されたタラウマラ族に関する三つのテクスト
東方の三博士の国
自然はみずからの円環において……
ある原理-種族
アトランティス王たちの儀式
『ヴヮラ』掲載されたテクスト
失われた人々の種族
『タラウマラの国への旅』の補遺
付録
ペヨトルに関する一注釈
タラウマラ族に関する手紙
訳注
解説
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★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。
『西洋美術の歴史(8)20世紀 越境する現代美術』井口壽乃/田中正之/村上博哉著、中央公論新社、2017年5月、本体3,800円、B6判上製600頁、ISBN978-4-12-403598-8
『異貌の同時代――人類・学・の外へ』渡辺公三・石田智恵・冨田敬大編、以文社、2017年5月、本体4,600円、A5判上製650頁、ISBN978-4-7531-0340-9
『クリストファー・ノーランの嘘――思想で読む映画論』トッド・マガウアン著、井原慶一郎訳、フィルムアート社、2017年5月、本体3,200円、四六判上製520頁、ISBN978-4-8459-1622-1
『ソヴィエト・ファンタスチカの歴史』ルスタム・カーツ著、梅村博昭訳、共和国、2017年6月、本体2,600円、菊変型判並製280頁、ISBN978-4-907986-41-4
『夜明けの約束』ロマン・ガリ著、岩津航訳、共和国、2017年6月、本体2,600円、菊変型判並製336頁、ISBN978-4-907986-40-7
★『西洋美術の歴史(8)20世紀 越境する現代美術』は同シリーズ全8巻の最終回配本。20世紀を扱う最終巻の構成は、序章「20世紀西洋美術史を語るために」、第1章「抽象芸術の成立と展開」、第2章「イメージと物」、第3章「第二次世界大戦後の抽象芸術」、第4章「現代生活と美術」、第5章「身体表象と20世紀美術」、第6章「美術と政治」、第7章「美術とさまざまなメディア」、となっています。なおシリーズ完結を記念して今月、よみうりカルチャー大手町にて、同シリーズの執筆者4氏による連続講演会「『西洋美術の歴史』完結記念講座」全4回が開催されるそうです。詳細はリンク先をご覧ください。
★『異貌の同時代』は文化人類学者・渡部公三さんの退官予定を見据えて企画された論文集ですが、いわゆる「退官記念論文集」然としたものではなく、「関係者の論文を寄せ集めただけの「記念」論文集にはしたくないという思い」から編まれた意欲的な論文集で、ポール・デュムシェル(第9章「知覚、感覚、感情、アフォーダンス」近藤宏訳)、マルセル・エナフ(第18章「他者とともに生きる――レヴィ=ストロースあるいは他者性と互酬性」渡辺公三訳)、そして最近水声社から初訳書『流感世界』が出たばかりのフレデリック・ケック(第19章「クロード・レヴィ=ストロースの陰画的エコロジー」泉克典訳)といった翻訳も収録されています。
★マガウアン『クリストファー・ノーランの嘘』の原書は『The Fictional Christopher Nolan』(University of Texas Press, 2012)。帯文によれば「『フォロウィング』から『インターステラー』まで、作品内で巧みに仕組まれた観客を欺く構造を、ヘーゲル哲学やラカンは精神分析で徹底的に読み解く」というもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者のマガウアン(Todd McGowan, 1967-)はバーモント大学准教授。ご専門は映画研究と文化理論で、ジジェクに近い立場の研究者かとお見受けしました。本書が初めての訳書で、未訳ですがデイヴィッド・リンチ論なども上梓されています。本書は本格的なノーラン研究本としても本邦初だそうです。巻末には中路武士さんによる詳細なノーラン作品解題が併載されています。
★カーツ『ソヴィエト・ファンタスチカの歴史』と、ガリ『夜明けの約束』は共和国さんの新シリーズ「世界浪漫派」の二冊同時初回配本です。巻頭にはフリードリッヒ・シュレーゲルの言葉「小説〔ロマン〕とは、ロマン的な書物のことである」が掲げられています。前者の原書は2013年刊の改訂第4版。凡例によれば「ファンタスチカ」とは現代ロシアにおいて、SFおよび幻想文学全般を指す言葉だそうです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。カバーには「鎌とハンマー」の抜き型加工が施されていますが、これはロシア革命100周年記念で、初版のみの仕様とのこと。帯文にある「ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィッチ』は月面開発の物語」という文言に吃驚しましたが(詳細は162頁以降)、読者諸姉兄に一言だけ申し上げておくと、この本を楽しむためには絶対に訳者解説から読んではダメですし、訳者解説を読まずに終えるのも(たぶん)危ういです。
★後者『夜明けの約束』の原著は1960年刊。帯文に曰く「史上唯一、ゴンクール賞を2度受賞した作家で外交官、女優ジーン・セバーグの伴侶にして、拳銃自殺を遂げたロマン・ガリ。その代表作であり、戦後フランスを象徴する自伝小説の白眉、ついに刊行」と。2度の受賞作というのは、『自由の大地』(原著1956年刊;日本語訳上下巻、ロオマン・ギャリィ著、岡田真吉/澁澤龍彦訳、人文書院、1959年;『世界動物文学全集』第9巻所収、講談社、1979年;『澁澤龍彦翻訳全集』第4巻所収、河出書房新社、1997年)と、『これからの一生』(エミール・アジャール名義、原著1975年;日本語訳、荒木亨訳、早川書房、1977年)のこと。なお、同作品はエリック・バルビエ監督によって映画化されるそうで、年末(2017年12月)にフランスで上映決定なのだそうです。
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