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注目新刊:サボ『フーコー『言葉と物』を読む』明石書店、ほか

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★まず、注目の新刊と既刊書を並べます。


『イデオロギーの崇高な対象』スラヴォイ・ジジェク(著)、鈴木晶(訳)、河出文庫 文庫、2025年6月、本体1,500円、文庫判440頁、ISBN978-4-309-46817-4
『ニコル・オレーム『貨幣論』とその世界』金尾健美(訳著)、知泉学術叢書:知泉書館、2025年4月、本体2,700円、新書判上製170頁、ISBN978-4-86285-431-5
『ハイデッガー=リッカート往復書簡 1912-1933』アルフレート・デンカー(編)、渡辺和典(訳)、知泉学術叢書:知泉書館、2025年1月、本体3,600円、新書判上製232頁、ISBN978-4-86285-426-1
『思想 2025年6月号(No.1214)』岩波書店、2025年5月、本体2,100円、A5判並製192頁、ISSN0386-2755


★『イデオロギーの崇高な対象』は、スロヴェニア出身の哲学者スラヴォイ・ジジェク(Slavoj Zizek, 1949-)の著書『The Sublime Object of Ideology』(Verso, 1989)の全訳書(河出書房新社、2000年;河出文庫、2015年)の新装版。訳者あとがきと大澤真幸さんの解説に加筆はありません。大澤さん曰く「ジジェクは、黄昏になってやっと鳴くミネルバの梟ではない。彼は、昼日中から鳴く、奇妙な変種の梟である」(427頁)。「本書の中に、革命がなぜ必然的に反復なのかが説かれている。同様に、本質的な思想もまた反復としてのみ実現する。それを例証しているのが本書である」(431頁)。


★知泉学術叢書の既刊書より2点。『ニコル・オレーム『貨幣論』とその世界』は14世紀フランスの思想家ニコル・オレーム(Nicole Oresme, 1320/22-1382)の著書『Tractatus de origine, natura, iure et mutationibus monetarum』の全訳と解説。底本はウォロウスキー編1864年版で、フォー編1990年などを参考にされています。『貨幣論』は「アリストテレス倫理学を踏まえ、貨幣の起源、本性、権利、改変について考察した論考」(カバー表4紹介文より)。初訳です。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。


★『ハイデッガー=リッカート往復書簡 1912-1933』は、ドイツの独立研究者アルフレート・デンカー(Alfred Denker, 1960-)の編纂による、ハイデッガーとリッカートの往復書簡集『Briefwechsel 1912-1933: Und andere Dokumente』(Klostermann, 2002)の訳書で、1912年から1933年までの43通を収め、関連する7点の文書資料を併載しています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。カバー表4紹介文に曰く「若きハイデッガーの師弟関係というと現象学の祖フッサールとの関係が語られることが多い。しかし、それ以前より始まる新カント派のリッカートとの師弟関係はどれほど知られているだろうか。この関係を抜きにして『存在と時間』(1927年)へ至る初期ハイデッガーの思想形成を紐解くことはできない。〔…〕本書は、かつて日本で多くの翻訳・研究が出されていた新カント派の視点からハイデッガーの思索の現場を照らし、これまで見過ごされてきた思想的鉱脈を見つけるきっかけとなろう。さらに新カント派が時代を担った意味を再考するための有意義な資料である」。なおデンカーの編書の既刊には『ハイデガー=レーヴィット往復書簡』(後藤嘉也/小松恵一訳、法政大学出版局、2019年)があります。


★『思想 2025年6月号』は、「哲学史の中のドゥルーズ――生誕100年」と題して、財津理さんの巻頭言、宇野邦一・合田正人・檜垣立哉の三氏による討議「超越論的経験論と哲学史」、そして上野修、山内志朗、平田公威、堀千晶、江川隆男、檜垣立哉、須藤訓任、押見まり、中村昇、の各氏による論考計9本が掲載されています。各論考の題名は誌名のリンク先でご確認いただけます。


★次に、最近出会いのあった新刊を列記します。


『フーコー『言葉と物』を読む――言語の回帰と人間の消滅』フィリップ・サボ(著)、坂本尚志(訳)、明石書店、2025年6月、本体3,500円、4-6判上製352頁、ISBN978-4-7503-5947-2
『ファッションセオリー――ヴァレリー・スティール著作選集』ヴァレリー・スティール(著)、平芳裕子/蘆田裕史(監訳)、五十棲亘/鈴木彩希/工藤源也(訳)、アダチプレス、2025年6月、本体6,000円、A5判上製544頁(モノクロ図版135点)、ISBN978-4-908251-19-1
『わたしの上海游記――揚子江のほとりで本を読む』夏申(著)、紀伊國屋書店、2025年6月、本体2,500円、四六判並製452頁、ISBN978-4-314-01210-2


★『フーコー『言葉と物』を読む』は、フランスのリール大学教授で現代思想や人文学が専門のフィリップ・サボ(Philippe Sabot, 1969-)の著書『Lire « Les mots et les choses » de Michel Foucault』(PUF, 2006)の全訳。底本には2014年の第2版が使用されています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻頭には日本語版序文「二〇〇六年~二〇二四年 『言葉と物』を読み、ふたたび読む』」が配されています。巻末の訳者解説「なぜわれわれは『言葉と物』を最後まで読み通せないのか」によれば「〔フーコー『言葉と物』の〕2015年のプレイヤード版の刊行は、サボの校訂の成果である充実した注と解説によって、この著作を理解するための新たな手がかりを提供した。/それに加えて、サボが日本語版への序文でも述べている通り、フランス国立図書館に所蔵されているフーコー・アルシーヴには、『言葉と物』の準備段階の読書カードや、刊行に先立ってサンパウロ大学で行われた講義などが収められている。サンパウロ講義については、サボの編集によって2025年に刊行予定である。『言葉と物』をめぐる研究状況は、こうした未公刊資料の出版によって、新たな段階へと突入するのではないだろうか。本書はそうした新たな研究状況においても、確固たる参考軸として機能するはずである」(342~343頁)。






★『ファッションセオリー』は、米国のキュレーターでファッション史研究家のヴァレリー・スティール(Valerie Steele, 1955-)の日本版オリジナルの著作選集。「「ファッション界のフロイト」と称されるファッションスタディーズの第一人者の全貌をはじめて紹介する、日本オリジナルの著作選集。研究の方法論からアートやセクシュアリティとのかかわりまで、19世紀パリから現代日本まで、「文化としてのファッション」を幅広い視点にもとづいて論じた重要論考17編を、135点の図版とともに収録」(カバー表4紹介文より)。「ファッションとは何か」「近代社会とファッション」「ジェンダーとセクシュアリティ」「服の見方、イメージの読み方」の4部構成に17本を収め、巻頭には書き下ろしの「まえがき」が配されています。その「まえがき」を含め、「Fワード」「ファッションミュージアムの台頭」「エレガンスの黒太子」「人為と自然」「クィアなファッションの歴史」「シャネルの位置づけ」「日本はいまなお未来か?」「解題・監訳者あとがき」の冒頭を署名のリンク先で立ち読みできます。


★『わたしの上海游記』は、2018年から上海の大学で日本文学・日本文化を教えておられる夏申(かしん)さんが、メールマガジン「[本]のメルマガ」と紀伊國屋書店のPR誌「scripta」での好評連載を単行本化したもの。「上海の大学で日本文学と日本文化を教える“外教″である著者が、コロナ禍の上海で数多の本を読みながら、「上海について、上海を通して、上海をきっかけにして」縦横無尽にめぐらした思考の軌跡」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。上海での日常の描写から様々なことを垣間見せてくれます。たとえば以下のような大学の話。


★「中國の大学の組織は日本とはまったく違う。一番の違いは、当局が二重構造となっていることだろう。たとえば学部の組織において当局の中心に位置しているのは、日本であれば学部長である。もちろん中国の大学にいも学部長はいる。学部全体の会議で、学部を代表して話すのも学部長である。しかし実際のところ、学部長の権限はそこまで大きくないようだ。学部長以上に重要な存在が控えているからである。“書記〔シュージー〕”である」(126頁)。続きはぜひ本書現物をご確認ください。

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