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注目新刊:ちくま学芸文庫11月新刊、ほか

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★まもなく発売となる、ちくま学芸文庫の11月新刊6点を列記します。


『中国名詩集――美の歳月』松浦友久(著)、ちくま学芸文庫、2024年11月、本体1,800円、文庫判576頁、ISBN978-4-480-51268-0
『アステカ・マヤの神話』カール・タウベ(著)、藤田美砂子(訳)、ちくま学芸文庫、2024年11月、本体1,200円、文庫判224頁、ISBN978-4-480-51262-8
『野生のうたが聞こえる』アルド・レオポルド(著)、新島義昭(訳)、ちくま学芸文庫、2024年11月、本体1,400円、文庫判400頁、ISBN978-4-480-51272-7
『増補 アルコホリズムの社会学――アディクションと近代』野口裕二(著)、ちくま学芸文庫、2024年11月、本体1,200円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-51273-4
『言葉を復元する――比較言語学の世界』吉田和彦(著)、ちくま学芸文庫、2024年11月、本体1,200円、文庫判240頁、ISBN978-4-480-51269-7
『映像の発見――アヴァンギャルドとドキュメンタリー』松本俊夫(著)、ちくま学芸文庫、2024年11月、本体1,300円、文庫判304頁、ISBN978-4-480-51275-8


★『中国名詩集』は、1992年に朝日文庫で刊行されたものの再文庫化。12のテーマ別に名作詩篇が集められています。12のテーマについては書名のリンク先にある目次でご確認いただけます。白文、書き下し、現代語訳を含む解説付きで、非常に味わい深い1冊となっています。著者の松浦友久(まつうら・ともひさ, 1935-2002)さんはすでにお亡くなりになっており、編集部による巻末特記によれば「明らかな誤りは適宜訂正した」とのことです。解説「漢詩の愉しみ」は國學院大學名誉教授の赤井益久さんがお寄せになっています。


★『アステカ・マヤの神話』は、1996年に丸善出版のシリーズ「丸善ブックス」の1冊として刊行されたもの文庫化。カリフォルニア大学教授のカール・タウベ(Karl Taube, 1957-)の著書『Aztec and Maya Myths』(University of Texas Press, 1993)の訳書で、アステカ神話、マヤ神話、メソアメリカ神話が解説されています。「碑文解読や史料研究を踏まえつつ、考古学調査の成果も紹介する」(カバー表4紹介文より)。文庫版解説「メソアメリカの神話と歴史」は茨城大学教授の青山和夫さんによるもの。


★『野生のうたが聞こえる』は、米国の環境思想家アルド・レオポルド(Aldo Leopold, 1887-1948)の著書『A Sand County Almanac』(1949年)の訳書(森林書房、1986年;講談社学術文庫、1997年)を再文庫化するもの。「アメリカの自然をみずみずしく描き出して環境運動のバイブルとなった。〔…〕ソローの著作と並び立つ環境倫理学の古典」(カバー表4紹介文より)。講談社学術文庫版訳者あとがきや、三嶋輝夫さんによる同文庫版解説を併録するほか、ちくま学芸文庫版解説として南山大学准教授の太田和彦さんによる「レオポルドは何を聞いていたのか」が加えられています。


★『増補 アルコホリズムの社会学』は、東京学芸大学名誉教授の野口裕二(のぐち・ゆうじ, 1955-)さんが1996年に日本評論社より上梓した単独著を増補改訂して文庫化するもの。「ベイトソンやギデンズの思想に依拠しつつ、アディクションを社会学的に解明した先駆的名著」(カバー表4紹介文より)。著者による文庫版あとがきと、信田さよ子さんによる解説が付されています。信田さんは「本書は、私にとってバイブルのような存在である」と述懐されています。


★『言葉を復元する』は、京都大学名誉教授の吉田和彦(よしだ・かずひこ, 1954-)さんが1996年に三省堂書店より上梓した単独著の文庫化。「幻の〈祖語〉を求めて――原語はいかに生まれ、変わりゆくのか。その永遠の謎に迫る世界水準の入門書」(カバー表4紹介文より)。著者による文庫版あとがきが加わっています。曰く「過去28年のあいだにも、言葉を復元するうえでの新しい方法論の導入があったとは思えない。〔…〕このような事情に鑑み、豊富な事例に基づいて本書のなかで説明されている方法論については特段書き改める必要がないと判断し、修正は誤字・脱字など最小限にとどめた」とのことです。


★『映像の発見』は、映像作家で評論家の松本俊夫(まつもと・としお, 1932-2017)さんの第一評論集(三一書房、1963年;清流出版、2005年)の文庫化。巻末特記によれば「明らかな誤りは適宜訂正し〔…〕図版も一部差し替えた」とのことです。清流出版版のあとがきである「再版に寄せて」と、同版で加えられた中条省平さんによる解説「輝きを失わない真の古典的名著」は、今回の文庫版でもそのまま収録されています。「内容がきわめて高度で挑発的だった(つまりモード的にもカッコよかった)という側面もさることながら、そうした受容のされかたを見るにつけ、当時の日本の映画ファンが、知的にかなり高度な欲求を抱いていたことがよく分かる」と中条さんは述べています。


★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。


『思想 2024年11月号【特集】デリダ没後20年』岩波書店、2024年11月、本体2,500円、A5判並製240頁、ISSN0386-2755
『アデュー ――エマニュエル・レヴィナスへ』ジャック・デリダ(著)、藤本一勇(訳)、岩波文庫、2024年10月、本体1,100円、文庫判310頁、ISBN9784003860472
『紫式部の「ことば」たち――源氏物語と引用のコラージュ』中西智子(著)、ブックレット〈書物をひらく〉:平凡社、2024年10月、本体1,500円、A5判並製104頁、ISBN978-4-582-36472-9
『休息の歴史』アラン・コルバン(著)、小倉孝誠/佐野有沙(訳)、藤原書店、2024年10月、本体2,600円、四六変型判上製176頁+カラー口絵4頁、ISBN978-4-86578-438-1
『〈決定版〉ミシュレ入門――愛/宗教/歴史』大野一道(著)、藤原書店、2024年10月、本体2,600円、四六変型判上製312頁、ISBN978-4-86578-439-8
『玉井義臣の全仕事 あしなが運動六十年(1)すべては母の事故死に始まる 1963-1969』玉井義臣(著)、藤原書店、2024年10月、本体8,000円、A5判上製672頁+口絵4頁、ISBN978-4-86578-440-4
『新左翼・過激派全書――1968年から現在まで』有坂賢吾(著)、作品社、2024年10月、本体4,500円、46判並製672頁、ISBN978-4-86793-053-3
『民藝のみかた』ヒューゴー・ムンスターバーグ(著)、柳宗悦(序文)、田栗美奈子(訳)、朝倉圭一(監訳)、鞍田崇(監訳・解説)、古屋真弓(序文監訳)、作品社、2024年10月、本体2,700円、A5判並製200頁、ISBN978-4-86793-052-6
『降りていこう』ジェスミン・ウォード(著)、石川由美子(訳)、青木耕平(附録解説)、作品社、2024年10月、本体2,700円、四六判並製288頁、ISBN978-4-86793-061-8
『デーヴァ――ブッダの仇敵』三田誠広(著)、作品社、2024年10月、本体4,500円、四六判上製644頁、ISBN978-4-86793-051-9


★岩波書店10月新刊より2点。いずれもデリダ関連です。月刊『思想』誌11月号の特集は「デリダ没後20年」。デリダの論考「私たち?」(西山雄二訳)とインタヴュー「アブラハムのメランコリー」(郷原佳以訳)をはじめ、アンヌ・エマニュエル・ベルジェの講演録「心のポリティック」(西山雄二/柿並良佑訳)、サミュエル・ウェーバーの来日講演録「応答と呼びかけ──他者との交渉」(板倉圭佑訳)、カトリーヌ・マラブーの来日講演録「今日の脱構築──伝統と革新のあいだで」(吉松覚/桐谷慧訳)、さらに日本人研究者9氏による論考が併録されています。巻頭の「思想の言葉」には、鵜飼哲さんが「イスラエルの脱構築」と題した一文を寄せておられます。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。なお、来日公演に関連したウェーバーさん自身の補足的説明が『多様体6』(月曜社、2024年9月)に「ディスジャンクティヴについての簡潔な応答」として英文原文のまま掲載されています。


★『アデュー』は、「デリダがパンタン墓地で読み上げた弔辞と、集会「エマニュエル・レヴィナスへのオマージュ」で行った講演「迎え入れの言葉」を収録」(カバー表1紹介文より)。『Adieu』(Galilée, 1997)の全訳(岩波書店、2004年)の文庫化ですが、文庫化にあたり「訳文を全面的に見なおし、口調も「ですます」調に改めた。本文に大幅に加筆・修正をほどこし、訳注にも変更・異同が多い。事実上の「新訳」である」(訳者あとがき)とのことです。


★「エマニュエル・レヴィナスを読み、読み直すたびに、私は感謝と賞賛で目が眩みます。強制とは違う、とても優しい力の必然性によって目が眩みそうなのです。その優しい力は縛ります。けれどもその場合の縛りとは、他者の尊重のために思考空間を別様に屈服させることではなく、まったき他者へ私たちを関係づけるような、別の他律的な湾曲に従うことです(〈まったき他者へ〉とは、言い換えれば、レヴィナスがある箇所で潜勢力に富む恐るべき省略法で語るように、正義へ、ということです。すなわち、レヴィナス曰く、他者への関係は、換言すれば、正義なのです)」(「アデュー」24頁)。


★「私たちはそこに、地上のイェルサレムに、戦争と平和のあいだにいます。「和平プロセス」という戦争、信じられてもいないし、またそれを信じさせる努力も見られないにもかかわらず、あらゆる方法から「和平プロセス」と呼ばれているあの戦争のなかにいます。私たちは、脅かされた約束あるいは人を脅かす約束のなかに、現在なき現在のなかに、〈約束されたイェルサレム〉の切迫のうちにいます」(「迎え入れの言葉」200~201頁)。『思想』特集号とともにいまこそ本書を再読するときではないかと思います。


★『紫式部の「ことば」たち』は、シリーズ「ブックレット〈書物をひらく〉」の第32弾。「源氏物語には、どのような先行作品のフレーズが、どのような方法で引用されているのか。引き込まれた「ことば」のコラージュが、虚構の物語世界にいかほど魅力的なかたちを与えているのか」(カバー表1紹介文より)をめぐる論考。中西智子(なかにし・さとこ, 1979-)さんは国文学研究資料館准教授。単独著に『源氏物語 引用とゆらぎ』(新典社、2019年)があります。


★藤原書店の10月新刊は3点。『休息の歴史』は、フランスの歴史家アラン・コルバン(Alain Corbin, 1936-)の『Histoire du repos』(Plon, 2022)の訳書。「「休息」には、「永遠の安息」「隠居」「失脚」などの“日常”の外への扉を開く、きわめて豊かな含意があった。「感性の歴史」の第一人者が、19世紀の大きな転換を見据えつつ、古代から現代までを俯瞰する」(帯文より)。「狙いとするのは、俯瞰的な視線でもって、休息の姿かたちや技法の起源また発展を、時代を通じてあきらかにすることである」(序、13頁)。


★『〈決定版〉ミシュレ入門』は、『フランス史』全6巻をはじめ、藤原書店より多数のミシュレの訳書に加えて『ミシュレ伝』も出版されてきた大野一道(おおの・かずみち, 1941-)さんによる書き下ろし入門書。「決定版」と謳われていますが、先行する版があるわけではなく、没後150周年にあたる今年2024年という節目を踏まえ、長年ミシュレ研究に携わられてき著者の功績を踏まえての表現かと思います。「一神教的絶対神への信仰を基に歴史が形成されてきたという、それまでの歴史の主流自体を反省し、絶対神への信仰を超えて新しい信仰を求めるような動きの出発点として、フランス革命を〔ミシュレは〕見ようとしていたように思われる。〔…〕彼の書き残した膨大な歴史書や、それ以外の自然を巡るエッセー等も参照しながら〔…〕、これから考えていってみよう」(はじめに)。


★『すべては母の事故死に始まる 1963-1969』は、「生涯を遺児救済運動に捧げてきた稀有の社会運動家の軌跡」(帯文より)を集成する『玉井義臣の全仕事』全4巻別巻1のうちの第3回配本となる第Ⅰ巻。「「交通遺児育英会」の誕生! 母の交通事故死をきっかけに書き上げた論文が『朝日ジャーナル』に掲載され、当時の代表的知識人である都留重人氏が激賞。初の交通評論家として「桂小金治アフタヌーン ショー」などのTVで大活躍する中で、交通遺児救済運動に踏み出し、「交通遺児育英会」の発足へ」(同)と。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。


★作品社の10月新刊より4点。『新左翼・過激派全書』は、学生運動関連史料のコレクター、有坂賢吾(ありさか・けんご, 1991-)さんによる、新左翼の政治集団やセクトを党派ごとに紹介する労作。「革共同系」「共産同系」「社青同系」「構改派系」「日共左派系」「アナキスト」「自治会系」「ゲバスタイル総説」「中村警部補慰霊碑訪問記」の9部構成で、口絵、写真、資料など数百点以上を掲載。「本書はなるべく網羅的に新左翼党派の基本的な情報を収録するように努めた。また著者個人のこだわりとして、写真や図版を多く用い、機関紙誌についても同名のものが多いことから題字や書影など視覚的な史料を豊富に掲載することにも重きを置いた。更に主要な声明や規約などもなるべく収録し、資料集としての機能も持たせようと試みた」(「はじめに」4頁)。


★『民藝のみかた』は、ベルリンに生まれアメリカで活躍した東洋美術史家ヒューゴー・ムンスターバーグ(Hugo Münsterberg, 1916-1995)の著書『The Folk Art of Japan』(1958年)の初めての訳書。帯文に曰く「日本に四年滞在した東洋美術史の碩学が、〈民藝〉のすべてを工芸分野ごとに詳説。民藝の精神から説き起こし、陶器、籠、漆器、玩具、織物、絵画、農家の建物、そして1950年代の民藝運動の隆盛にいたるまで。日本の民藝の歴史を知るための最良の一冊。図版100点超収録」。著者と同姓同名の米国の心理学者(1863-1916)がいますが、別人です。


★『降りていこう』は、米国の作家ジェスミン・ウォード(Jesmyn Ward, 1977-)の長編小説『Let Us Descend』(Scribner, 2023)の訳書。「奴隷の境遇に生まれた少女は、祖母から、そして母から伝えられた知識と勇気を胸に、自由を目指す――。40歳の若さで全米図書賞を二度受賞した、アメリカ現代文学最重要の作家が新境地を開く、二度目の受賞後初の長篇小説」(帯文より)。二度目の受賞というのは、全米図書館賞を受賞した彼女の二作『骨を引き上げろ(Salvage the Bones)』(原著2011年;石川由美子訳、作品社、2021年)と『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え(Sing, Unburied, Sing)』(原著2017年;石川由美子訳、作品社、2020年)のこと。


★『デーヴァ』は、作家の三田誠広(みた・まさひろ, 1948-)さんによる長篇小説。「この作品な、渇愛の物語だ。胸の痛みとともに烈しく求める強い執着としての渇愛。主人公のデーヴァダッタが従兄であり義兄でもあるシッダルタに抱く思いが、二つの父殺しの事件を誘発し、そこから結果として奥深いスートラ(経典)が生まれる」(あとがきより)。「わたしにとって最後の長篇となるだろう。〔…〕書くことはわたしの生業ではあったが、同時につねに探究していたのは言葉の限界と、その限界を超えたところにある一種の存在論のごときものであった。人生の最後にその存在論というテーマと向き合えたことに、静かな達成感を覚えている」(同)。

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