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注目新刊既刊:『新装版 シェリング著作集(1b)自然哲学』文屋秋栄、ほか

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★単行本の注目既刊書を列記します。


『〈新装版〉シェリング著作集(1b)自然哲学』松山壽一(編)、文屋秋栄、2024年5月、本体6,000円、A5判上製384頁、ISBN978-4-906806-12-6
『うつむく眼――二〇世紀フランス思想における視覚の失墜〈新装版〉』マーティン・ジェイ(著)、亀井大輔/神田大輔/青柳雅文/佐藤勇一/小林琢自/田邉正俊(訳)、叢書・ウニベルシタス:法政大学出版局、2024年5月、本体6,600円、四六判上製798頁、ISBN978-4-588-14084-6

『諸原理について(ペリ・アルコーン)』オリゲネス(著)、小高毅(訳)、キリスト教古典叢書:教文館、2024年4月、本体7,800円、A5判上製534頁、ISBN978-4-7642-1814-7

『アドルノ/ツェラン往復書簡 1960-1968』ヨアヒム・ゼング(編)、細見和之(訳)、郁文堂、2023年12月、本体2,400円、四六判上製168頁、ISBN978-4-261-07361-4



★『〈新装版〉シェリング著作集(1b)自然哲学』は、『〈新装版〉シェリング著作集』の第8回配本。第1a巻は2020年4月に刊行済。第1b巻では、「自然哲学に関する諸考案(1797年)」浅沼光樹・松山壽一訳、「世界霊について(1798年)」松倉寿・松山壽一訳、「自然哲学体系の第一草案(1799年)」渋谷理江・松山壽一訳、「自然哲学体系草案への序説(1799年)」後藤正英・松山壽一訳を収録。訳注と解説は編者の松山壽一さんが担当されています。「近代科学に真っ向から挑んだシェリング自然哲学の精髄がここにある」(帯文より)。完結までの続刊予定はあと2巻4分冊。第3a巻『同一哲学』伊坂青司・加藤紫苑編、第3b巻『芸術哲学』小田部胤久・八幡さくら・平井涼編、第5a巻『神話の哲学〈上〉』大橋良介編、第5b巻『神話の哲学〈下〉』大橋良介編。第3ab巻は、燈影舎版「シェリング著作集」第3巻『同一哲学と芸術哲学』(伊坂青司・西村清和編、2006年)の改訂分冊化で、『同一哲学』は著作を追加し加筆修正され、『芸術哲学』は全訳とのことです。


★マーティン・ジェイ『うつむく眼〈新装版〉』は、2017年刊行の訳書を新装版で再刊ということで初版を講読された方はスルーしがちかもしれません。店頭で念のため「訳者あとがき」を確認したところ「追記」があり「新装版の刊行にあたり、誤訳や誤植の若干の修正、原註で参照されている文献の日本語訳の書誌情報のアップデート等をおこなった」とのことで、私は再度購入しました。


★オリゲネス『諸原理について(ペリ・アルコーン)』は、帯文に曰く「創文社版の訳文を全面改訂し、ラテン語訳からの翻訳に加えて新たにギリシア語断片の翻訳も併記した改訳決定版。同一主題を扱った小品『ヘラクレイデスとの対話』も収載」。創文社「キリスト教古典叢書」版『諸原理について』は1978年に初版が、1995年に新装版が刊行されていたもの。長期品切のなか版元さんが廃業し、古書価が下がらず入手困難でしたが、今般全面改訂版が刊行されました。46年ぶりの改訳です。しかも、同じく長期品切だった創文社「キリスト教古典叢書」版『ヘラクレイデスとの対話』(初版1986年、新装版1999年)が併載されており、見逃せない1冊です。創文社「キリスト教古典叢書」では、同じく小高毅さん訳で、オリゲネスの『雅歌注解・講話』1982年、『ヨハネによる福音注解』1984年、『祈りについて/殉教の勧め』1985年、『ローマの信徒への手紙注解』1990年、が刊行されていました。講談社「創文社オンデマンド叢書」にはまだ入っていないので、今後の予定が気になるところです。


★『アドルノ/ツェラン往復書簡 1960-1968』は、訳者の細見さんによるあとがきによれば、本書は「『フランクフルター・アドルノ・ブレッター』第8号〔2003年〕に、ヨアヒム・ゼングの編集で掲載されている「アドルノ/ツェラン往復書簡 1960-1968」と同号に掲載されているゼング自身の論考〔「「真実なる投壜通信」――テオドーア・W・アドルノとパウル・ツェランのあいだの関係について」〕の翻訳、それに私の論考〔「アドルノとツェラン――両者の往復書簡を手がかりとして」〕を合わせて一書としたもの」で、「翻訳部分は最初、大阪で刊行されている詩誌『イリプスⅡnd』(澪標)の第21号(2017年2月)、第22号(2017年6月)、第23号(2017年10月)、第24号(2018年3月)に掲載されたものに修正を施したもの」とのことです。書店店頭で見つけるまでに半年もかかってしまいましたが、店頭になければ見逃していたかもしれず、リアル書店のありがたみを再認識しました。


★このほか最近では以下の新刊との出逢いがありました。『バビロンの路上で』のみまもなく発売で、ほかは発売済です。


『バビロンの路上で――律法に抗う散歩者の夢想』マニュエル・ヤン(著)、以文社、2024年6月、本体2,700円、四六判並製288頁、ISBN978-4-7531-0386-7
『アートの潜勢力』岡田温司(著)、共和国、2024年6月、本体2,700円、四六変形判上製280頁、ISBN978-4-907986-94-0

『ラテンアメリカ文学を旅する58章』久野量一/松本健二(編著)、エリア・スタディーズ:明石書店、2024年5月、本体2,000円、4-6判並製376頁、ISBN978-4-7503-5775-1

『天皇論――「象徴」と絶対的保守主義』子安宣邦(著)、作品社、2024年5月、本体2,700円、46判上製160頁、ISBN978-4-86793-034-2

『シーア派――起源と行動原理』平野貴大(著)、作品社、2024年5月、本体2,700円、46判並製352頁、ISBN978-4-86182-983-3

『哲学者カフカ入門講義』仲正昌樹(著)、作品社、2024年5月、本体2,000円、46判並製272頁、ISBN978-4-86793-027-4



★『バビロンの路上で』は、日本女子大学人間社会学部准教授のマニュエル・ヤン(Muanuel Yang, 1974-)さんが新教出版社の月刊誌『福音と世界』で連載した「バビロンの路上で Conjectures of a Son of a Preacher Man」全24回分を加筆改稿して1冊としたもの。巻頭には栗原康さんによる解説「「謎のアメリカ人」マニュエル・ヤン小伝」が配されています。「霊と肉、求道と背徳の狭間を自己破壊的に歩き抜く、異邦の歴史学者が語る現代の福音書にして、ラディカル・オートバイオグラフィ」(帯文より)。担当編集者は新教出版社から今年、以文社に移籍した堀真悟さんです。


★『アートの潜勢力』は、京都大学名誉教授で京都精華大学特任教授の岡田温司さんが2012年から2023年にかけて各種媒体で発表してきた文章に加筆修正し、書き下ろし数篇を加えて1冊にまとめたもの。「近現代のアート/アーティストを《思想》として読みとき、時代に対峙させる精緻な批評的エッセイ集」(帯文より)。「開かれとしてのモダニズム」「アナクロニーとしての批評」「アントロポセン下のアート」の3部構成で16篇が収められています。「振り返ってみるにわたしはこれまでずっと、花田清輝と林達夫に少しでも追いつこうとして文章を書いてきたような気がしている」(9頁)。


★『ラテンアメリカ文学を旅する58章』は「15世紀にコロンブスがアメリカ大陸を発見してから、現代までを文学の視点から概観し、ラテンアメリカ文学の多様性を描き出す珠玉の入門書」(版元紹介文より)。第35章「ジョージ・ラミングと新しさの予感――『私の肌の砦のなかで』について」は、ラミング『私の肌の砦のなかで』(月曜社、2019年)の訳者、吉田裕さんが担当された章。「主人公が言及する「物事」や「感情」こそが、カリブ文学にとっての資源であり足場であるのだろう」(212頁)。


★作品社の新刊より3点。子安宣邦『天皇論』は「本居宣長、津田左右吉近を手掛かりに、近世から登場した天皇制の言説を丁寧に追いながら、現代天皇制の本質に迫る。日本思想史の大家、ライフワーク」(帯文より)。「私がいま本書でしていることは18世紀徳川時代の宣長による〈天皇語〉の語り出しに遡ってなされる〈天皇的日本〉の批判である。〔…〕「何がどのように言い出され、語り出されたのか」という〈言説の批判的分析〉を思想史の方法として私はもってきた。本書はこの言説論的立場からする私の思想史的作業の恐らく最後の作品であるだろう。宣長から始まった私の思想史的作業は宣長をもって終えることになるようだ。これも天皇制国家日本で思想史的作業をするものの負わざるをえない当然の帰結であるだろう」(序言、3~4頁)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。


★『シーア派』は、「イラン一国の枠に収まらないそのグローバルな実態。特に信仰と世界観を深掘り、「何を考え」、「いかに形成され」、「他派・他宗教とどう向き合ってきたか」という問いに答える。唯一の本格的入門書」(帯文より)。「シーア派思想史」「シーア派の教義」「シーア派の他者観」の3部構成。著者の平野貴大(ひらの・たかひろ, 1991-)さんは筑波大学人文社会系助教。単独著は本書が初めてとなるようです。


★『哲学者カフカ入門講義』は、仲正昌樹さんの連続講義全6回(読書人隣り、2020年10月~2021年9月)に大幅加筆したもの。「講義内容に即した会場からの質問も、編集のうえ収録」したとのことです。「ドゥルーズ+ガタリ、ベンヤミン、アドルノなど、哲学/現代思想の諸理論の視座から、カフカの主要作品を精読し、解釈を加えることを通して、世界を見る時の「自分」の視線の動きを変調させるやり方を学ぶ」(帯文より)。カフカは今年没後100年で様々な新刊が出ていますね。

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