「東洋経済オンライン」2016年9月8日付、中村淳彦氏記名記事「月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」――公営図書館の嘱託職員は5年で"雇い止め"に」に曰く「行政機関で通常の常勤職員として働き、非正規雇用の平均給与を稼ぐひとり暮らしの女性が「相対的貧困」に足を突っ込みかねない時代に突入している」と。「図書館などの公共サービスは、自治体が民間の指定管理会社に運営を委託する流れがある。将来的に賃金上昇や雇用改善が期待できない業種だ」とも。
また「公共機関で働く彼女は、残酷なほどの正規非正規格差の渦中にいる。全産業での正規職員の平均賃金は321万1000円(平成27年賃金構造基本調査統計)と比べると約6割の収入しかない。さらに職場の同僚にいる正規の地方公務員と比べると、正規は平均年収669万6464円(平成26年地方公務員給与実態調査)と好待遇で、非正規の賃金は正規の3分の1にも満たない。/努力や自身の成長、仕事の成果ではどうにもならない絵に描いたような官製貧困、官製格差だ。貧困から抜けて、普通の生活をするためには学芸員の資格取得ではなく、ダブルワークをして長時間労働によって差額を埋めていくしかない」。
現在の中にすでに未来の萌芽があるのだとしたら、図書館運営の未来も見えてくる気がします。
+++
「NHKニュースウェブ」9月8日付記事「News Up ピンチ 公立図書館の運営」によれば、石川県穴水町の町立図書館では、9年前の能登半島地震により「図書館の建物が大きな被害を受けたため、新しい建物に移設するまでの間、図書を一時的に保管するスペースが足りなくなり」、地元の研究者から寄贈された図書のうち、歴史や民俗学に関する図書「1800冊余りを、利用頻度が低いなどの理由から廃棄した」とのこと。1800冊の中には、今では入手が困難なものも含まれていた、とも。図書館の担当者は「人やスペースが十分ではなく、管理、運営に難儀している。こうした問題は、小さな自治体の図書館では、どこでも抱えているのではないか」と話しているそうで、「個人から本の寄贈の申し出があっても、本の内容の確認などが十分に行えないため断らざるをえない」とのことです。
貴重な古書が廃棄されるというのはまったくやりきれないことです。廃棄というとさしずめ古紙業者に紙くずとして渡したのかもしれない、と推測できます。除籍本を自治体の市民に譲渡する機会というのも図書館では存在するはずですが、それだけでなく、除籍本をリスト化してネットなどで公開し、古書店や研究者、もしくは個人の蔵書家に再利用してもらえるような仕組みや法整備が進んでほしいとも思います。
記事では、図書館の全国組織「日本図書館協会」の山本宏義副理事長の発言も紹介しています。「専門知識を持った人を長期的に育てるというのは難しい。ましてや、職員の数が限られる小さな自治体で、さまざまな分野の専門家を育てるのは無理がある。穴水町のようなケースをなくすためには、自分のところの図書館でわからなくても、どこか別の図書館の専門家に聞けるような体制を作っていく必要があると思う」と。
人材教育が困難になっているのは図書館だけでなく新刊書店でも同様です。図書館のみの問題とするのではなく、地域を越えて、新刊書店や古書店、大学、出版社などと連携しても良いような気がします。
+++
↧
メモ(1)
↧