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注目新刊:アドルノ『哲学用語入門』作品社、ほか

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★新型コロナウィルスに感染したため活動量が低下しております。省力発信となりますことを最初にお断りしておきます。まずはまもなく発売となる新刊4点を列記します。


『哲学用語入門――テルミノロギー』T・W・アドルノ(著)、髙橋順一(訳)、作品社、2023年10月、本体6,000円、A5判上製468頁、ISBN978-4-86182-984-0
『死――有限性についての試論』フランソワーズ・ダステュール(著)、平野徹(訳)、人文書院、2023年10月、本体4,500円、4-6判上製300頁、ISBN978-4-409-03127-8

『ドイツの歌姫 他五篇』ラーザ・ラザーレヴィチ(著)、栗原成郎(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、本体3,500円、四六変形判上製360頁、ISBN978-4-86488-285-9

『精読 アラン『心の冒険』』米山優(訳・著)、幻戯書房、本体6,000円、四六判上製632頁、ISBN978-4-86488-286-6



★『哲学用語入門』は、ドイツの哲学者アドルノ(Theodor Wiesengrund Adorno, 1903-1969)が、フランクフルト大学で46回(1962年5月~1963年2月)に渡って行った講義の記録。帯文に曰く「観念論と実在論、合理論と経験論、唯心論と唯物論など数多の基本用語に論及しつつその哲学的意義と作用を平易に解説」。大久保健治(おおくぼ・けんじ, 1934-2014)さんが途中までの翻訳として残した未定稿を髙橋さんが引き継がれたもの。困難な道のりを経て実現した大著に感動するばかりです。


★『死』は、フランスの哲学者ダステュール(Françoise Dastur, 1942-)の著書『La Mort. Essai sur la finitude』(PUF, 2007)の全訳。訳者あとがきによればもともとは1994年に上梓された小さな本に「大幅に加筆した増補改訂版」とのこと。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。ダステュールの既訳書には小中学生向けの啓発書で『死ってなんだろう。死はすべての終わりなの?』(伏見操訳、岩崎書店、2016年)があります。


★幻戯書房さんの新刊より2点。『ドイツの歌姫 他五篇』はルリユール叢書の第35回配本(49冊目)。セルビアの医師で「19世紀セルビアのリアリズム文学を確立した」(帯文より)作家のラーザ・ラザーレヴィチ(Laza K. Lazarević, 1851–1891)による中短編6篇「父と一緒に初めて教会へ」「庶民からのご褒美」「折よく強盗団がやって来た」「井戸辺にて」「学校の聖像〔イコン〕」「ドイツの歌姫」を収録した、日本初の訳書です。


★ルリユール叢書は、来月刊行するセリーヌの幻の書『戦争』(森澤友一朗訳;『Guerre』Gallimard, 2022;folio版は今月発売されたばかり)で50冊目を迎えるとのことです。国書刊行会版『セリーヌの著作(14)』所収の『戦争』(石崎晴己訳、1984年;『Casse-pipe』Chambriand, 1949)とは「まったく別の作品」とのこと。


★『精読 アラン『心の冒険』』は、フランスの哲学者アラン(Alain; Émile-Auguste Chartier, 1868-1951)による「晩年の哲学思想の集大成」(帯文より)である『Les aventures du cœur』(Hartmann, 1945)を名古屋大学名誉教授の米山優(よねやま・まさる, 1952-)さんが全訳し、章ごとに解説を付したもの。「〈労働〉〈倦怠〉〈羨望〉〈野心の初段階〉〈気分〉〈愛の情動〉〈永遠なもの〉……人間の心の諸冒険の動きに寄り添い、考察する38章の哲学レッスン」(同)。


★続いてここ2ヶ月ほどの新刊既刊書から注目書を並べます。


『文学的絶対――ドイツ・ロマン主義の文学理論』フィリップ・ラクー=ラバルト/ジャン=リュック・ナンシー(著)、柿並良佑/大久保歩/加藤健司(訳)、法政大学出版局、2023年10月、本体6,000円、四六判上製774頁、ISBN978-4-588-01163-4
『世界の取扱説明書――理解する、予測する、行動する、保護する』ジャック・アタリ(著、林昌弘(訳)、プレジデント社、2023年10月、本体2,700円、四六判上製272頁、ISBN978-4-8334-2512-4

『リモート・ビューイング――スターゲイト計画の全貌と第三の目を覚醒させる方法』ラッセル・ターグ(著)、岡昌広(訳)、徳間書店、2023年10月、本体1,700円、4-6変型判並製224頁、ISBN978-4-19-865705-5

『ユング心理学と錬金術――個性化の錬金術的イメージを探る』エドワード・エディンジャー(著)、岸本寛史/山愛美(訳)、青土社、2023年9月、本体2,400円、四六判並製192頁、ISBN978-4-7917-7589-7

『新装版 フロイト著作集(6)自我論/不安本能論』ジークムント・フロイト(著)、小此木啓吾/井村恒郎/吾郷晋浩/青木宏之/馬場謙一(訳)、人文書院、2023年9月、本体6,500円、A5判上製482頁、ISBN978-4-409-34060-8

『精神分析入門講義(上)』フロイト(著)、高田珠樹/新宮一成/須藤訓任/道籏泰三(訳)、岩波文庫、2023年10月、本体1,300円、文庫470頁、ISBN978-4-00-336422-2

『パスカル科学論集――計算機と物理学』ブレーズ・パスカル(著)、永瀬春男/赤木昭三 (編訳)、白水社、2023年9月、本体8,000円、A5判上製348頁、ISBN978-4-560-09375-7

『パスカル 小品と手紙』パスカル(著)、塩川徹也/望月ゆか(訳)、岩波文庫、2023年8月、本体1,500円、文庫判574頁、ISBN978-4-00-336145-0

『ガリレオ・ガリレイの生涯 他二篇』ヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニ(著)、田中一郎(訳)、岩波文庫、2023年10月、本体780円、文庫判220頁、ISBN978-4-00-339551-6

『開かれた社会とその敵 第二巻 にせ予言者――ヘーゲル、マルクスそして追随者』カール・ポパー(著)、小河原誠(訳)、岩波文庫、2023年10月、本体1,430円、文庫判506頁、ISBN978-4-00-386028-1



★特筆しておきたいのは2点。『文学的絶対』は、フランスの哲学者、ラクー=ラバルト(Philippe Lacoue-Labarthe, 1940-2007)、ナンシー(Jean-Luc Nancy, 1940-)による最初期の共著『L'Absolu littéraire : théorie de la littérature du romantisme allemand』(Seuil, 1978)の全訳です。『文字の資格――ラカン読解』(1973年、未訳)とともに長年にわたり訳されずにいた二人の出発点がようやく読めるようになりました。「われわれは書物の時代にいる、そうフリードリヒ〔・シュレーゲル〕は書いた。――われわれは今なおそこにいるのだ」(664頁)。


★『リモート・ビューイング』は、米国の物理学者で超心理学者のラッセル・ターグ(Russell Targ, 1934-)による『Third Eye Spies: Learn Remote Viewing from the Masters』(New Page Books, 2023)の訳書。元米国陸軍少佐のポール・H・スミスによる巻頭の「序文」によれば、同名のドキュメンタリー映画『第三の目をもつスパイたち』(ランス・ムンギア監督、2019年)が成功したことから、ターグは関連書を出版しようと思い立ったのだと言います。本書では、インゴ・スワン、ヘレナ・ブラヴァツキー、パット・プライス、ヘラ・ハミッド、ゲイリー・ラングフォード、ジョー・マクモニーグルらをとりあげつつ、遠隔透視(昔で言うところの千里眼)や予知能力についての考察、実験や訓練について語っています。


★ターグの既訳書には『マインド・リーチ――あなたにも超能力がある』(ハロルド・パソフとの共著、猪股修二訳、集英社、1978年)や『奇跡のスタンフォード・テクニック――超能力研究のメッカSRIが開発した短期間超能力増強システム』(キース・ハラリーとの共著、アルバトロス・フォーラム訳、学研、1984年)がありました。今回の新刊は約40年ぶりの新作ということになります。
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