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備忘録(33)

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★2016年8月8日22時現在。
アマゾンの定額読み放題サービス「Kindle unlimited」がこのところ話題になっていますが、出版業界では本日報道された独禁法違反容疑の件も重大な関心を呼んでいます。また、4か月前の情報開示命令の件にも高い関心が集まっていたことを思い出しておきます。

まずは独禁法違反容疑の件。関係者による匿名情報である点に注目。

「朝日新聞」8月8日付、贄川俊氏記名記事「アマゾンに立ち入り検査 公取委、独禁法違反の疑いで」では「取引先がライバル社と契約を結んだ際、アマゾンも同じ内容の契約を結べるように求めるなどしていたという。/独禁法は、取引先がライバル社と取引する際に障害となるような条件をつけて、取引先の事業活動を不当に拘束することを、不公正な取引方法の一つである「拘束条件付き取引」として禁止している。/公取委は、アマゾンジャパンが日本の取引先との契約で、▽ライバル社に有利な条件を提供する時はアマゾンに通知する▽最低でもライバル社と同条件でアマゾンと契約する、などの条項を付けていて、ライバル社がアマゾンと競争することを困難にしていた、とみている模様だ」。

「産経新聞」8月8日付記事「アマゾンジャパンに公取委が立ち入り 他より安値の販売を出品業者に強要」によれば「インターネット通販大手アマゾンジャパン(東京)が、出品する業者に対して販売方法を不当に拘束していた疑いがあるとして、公正取引委員会が独禁法違反(拘束条件付き取引)容疑で、同社を立ち入り検査したことが8日、分かった。〔・・・〕アマゾンジャパンは米インターネット通販大手アマゾン・コムの日本法人。ホームページによると、1998年9月に株式会社として設立され、現在は合同会社に移行している」。

「毎日新聞」2016年8月8日付、樋岡徹也氏記名記事「公取委 アマゾン立ち入り検査 出品価格拘束の疑い」によれば「インターネット通販大手の「アマゾン」が自社の通販サイトに出品する業者に対し、商品の価格を他社の通販サイトよりも安くすることなどを求めていた疑いが強まったとして、公正取引委員会は8日、独占禁止法違反(不公正な取引方法)容疑で、日本法人「アマゾンジャパン」(東京都目黒区)に立ち入り検査した。公取委は、同社の担当者から事情を聴くなどして全容解明を進める方針だ」。

「ブルームバーグ」8月8日付、黄恂恂氏記名記事「アマゾン日本法人に公取委立ち入り検査、独禁法違反の疑い-関係者」によれば「インターネット通販の米アマゾン・ドット・コムの日本法人が、公正取引委員会から独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を受けていたことが8日、関係者の話で分かった。〔・・・〕関係者は情報が非公開であるため匿名を条件に語った。〔・・・〕先に日経新聞の電子版が同立ち入り検査を報じていた。アマゾンジャパンの川瀬奈月広報担当は、コメント控えると電話取材に対して回答した。公取委の担当者もコメントを控えた」。

「読売新聞」8月8日付記事「アマゾンに立ち入り検査…有利な条件で出品要求」によれば「関係者によると、アマゾンジャパンは自社サイトに商品を出品する業者と契約を結ぶ際、「楽天」や「ヤフー」など他社の通販サイトに同じ商品を出品する場合にはアマゾンと同価格とするか、アマゾンの方をより安く設定するよう求める条項を盛り込んでいる。公取委は、こうした取引は不公正な取引方法の一つの「拘束条件付き取引」に当たり、他社とアマゾンとの競争を妨げ、新規参入も阻害しているとみている」。

関連記事には以下のものがあります。
「日本経済新聞」8月8日付記事「公取委、アマゾンに立ち入り 事業者を不当拘束の疑い」
「共同通信」8月8日付記事「アマゾンジャパン立ち入り 公取委、独禁法違反容疑」
「時事通信」8月8日付記事「アマゾンジャパンに立ち入り=出品者を不当制限か-公取委」


次に、4か月前の情報開示命令の件。

「毎日新聞」2016年4月11日付記事「アマゾン サイト運営主体は日本法人 名誉毀損訴訟」)によれば「原告は東京都内のNPO法人。書籍に対するレビューで名誉を傷つけられたとして昨年3月、アマゾン本拠の米国法人を相手に東京地裁に訴訟を起こした。同6月には、日本法人も提訴。アマゾン側がサイト運営主体を日本法人と認めたため、原告側は同8月、米国法人への訴えを取り下げた。/判決は、レビューが「事実でなく社会的評価を低下させた」と指摘。アマゾンジャパンは控訴せず、確定した。原告側は今後、開示情報を基に投稿者の責任を追及する。/原告代理人の弁護士によると、グーグルやツイッターなどは、日本法人に情報開示を求めても「海外本社が対応する」と拒否するという。本国法人を日本の裁判所に訴えることはできるが、大使館を経由するなどして相手に訴状が届くまで数カ月かかる上、資料の外国語訳も必要で負担は大きい。〔・・・〕情報セキュリティ大学院大の湯浅墾道教授(情報法)の話 海外企業が提供するインターネットサービスの投稿で名誉を傷つけられても、海外本社に投稿者の情報開示を求めるのは容易でなく、泣き寝入りする被害者もいた。アマゾンが日本法人をサイトの運営主体と認めた対応は画期的で、先例にすべきだ。責任を追及しやすくなることで悪質な投稿への警鐘になる」。

「J-CASTニュース」4月12日付記事「アマゾン・レビューに「悪口」書けなくなる? 投稿者情報「開示命令」から学ぶべき注意点とは」によれば「東京都内のNPO法人が通販サイト「Amazon」を運営するアマゾン・ジャパン(東京都目黒区)にレビュー投稿者情報の開示を求めていた訴訟が決着した。東京地裁は、投稿者のIPアドレスや氏名、住所、メールアドレスを開示するよう同社に命じた。〔・・・〕匿名ユーザーを特定する場合、基本的に2段階の手続きを踏まなければならない。サイト運営会社にIPアドレスの開示を請求し、その上でプロバイダ(接続業者)にも住所、氏名の開示を求める。/しかし、この方法は期間的にも費用的にもハードルが高い。それだけに、1段階での情報開示を認めた今回の判決を「至極妥当」「画期的」だと称賛する声は多い。〔・・・〕ネット上の誹謗中傷やプライバシー侵害に関する著書を持つ、神田知宏弁護士はJ-CASTニュースの12日の取材に「商品へのレビューは基本的に個人の感想ですので、不適切な表現を使わない限り適法です。損害賠償請求訴訟はもちろん、削除請求も発信者情報開示請求も受けません。その意味では、レビューの開示請求が言論弾圧ではないか、と心配する必要はないでしょう」と説明する。/また、今回のような判決内容も「異例」でなく「数はそれほど多くありませんが、過去にヤフオクや楽天などで似たような開示請求の裁判例があります。被告が実名登録サイトなら、プロバイダへの開示請求をスキップできます」という。/加えて、レビューをする際の注意点として「商品へのレビューにとどめ、出品者への個人攻撃をしてはならない」「商品のレビューは個人の感想にとどめ、裏の取れていない虚偽の事実や推測を書いてはならない」「個人の感想を書くにしても、不適切な表現を使ってはならない」の3つを挙げた。〔・・・〕「従前、アマゾン・レビューの投稿者を特定するには米国本社(アマゾン・ドット・コム インターナショナル セールス インク)を被告にする必要がありました。米国本社を訴え直したという事例も過去に報告されています。ですがアマゾン・ジャパンは今回、自らをプロバイダ責任制限法の「開示関係役務提供者」(匿名ユーザーを特定するための情報を提供する主体)と認めました。この『認めた』という方針が今後も継続されれば、被害者救済に資するものと思われます」」。

関連記事は数多いですが、以下に一部を記します。
「共同通信」4月11日付記事「サイト運営主体は日本法人 アマゾン、異例の対応」
「日本経済新聞」4月11日付記事「アマゾンに開示命令 中傷書評の投稿者情報巡り東京地裁」
「産経新聞」4月12日付記事「アマゾン「日本法人がサイト運営」 係争中の訴訟で認める異例の対応」

出版人や作家にとって、アマゾンではvineメンバーにすら眉を顰めたくなるレビューが散見されるのが現実です。利用者にとっても必ずしも信頼性が高くない場合があり、野放図な状態が続いていると言わざるをえません。

アマゾンのレビュー欄問題は今に始まったことではなく、長らく問題であり続けています。上記の裁判に触れて千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平さんは「陽平ドットコム~試みの水平線~」の4月12日付エントリー「Amazonが誹謗中傷プラットフォームじゃなくなる日はくるのか?」ではこうきっぱりと書かれていました。「もちろん、消費者が声を発信できる時代を否定するつもりはない。その手の誹謗中傷や、逆にステマ的な礼賛も含め、すべてこの世界で起きてしまっている問題ではある。/ただ、そんなイタズラ書きに満ちた「売り場」を放置していたAmazonは相当罪深い、野蛮な企業だと思う。TSUTAYAや紀伊國屋書店にそんな「口コミ」という名の落書きがたくさん貼りだされていたら、嫌だ。行くだけで傷つく店には行きたくないのだ。この手の裁判が起こる前に、なぜレビューの健全化に取り組まなかったのか。/これでは、誹謗中傷プラットフォームではないか」。

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