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注目新刊:ホメロス『オデュッセイア』西洋古典叢書、ほか

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『オデュッセイア』ホメロス著、中務哲郎訳、西洋古典叢書:京都大学学術出版会、2022年7月、本体4,900円、四六変判上製796頁、ISBN978-4-8140-0422-5


★『オデュッセイア』は、松平千秋訳(講談社版「世界文学全集」第1巻所収、1982年;岩波文庫、上下巻、1994年)以来の新訳。訳者の中務哲郎(なかつかさ・てつお, 1947-)京大名誉教授は、巻末解説でこう述べておられます。「私は叢書の編集委員として、若い世代でとりわけ『イリアス』と『オデュッセイア』の研究がお二方に翻訳を依頼したが、『イリアス』については快諾されたものの、『オデュッセイア』は見事に断られた。その理由は「松平先生の訳があるのになぜ新訳を」というもので、相弟子として私もその理由には納得せざるをえない。にもかかわらず代わってこの翻訳の事に従う決心をしたのは、私を西洋古典に導いてくれたのがホメロスであり、ホメロスが最も好きな詩人であるからに他ならない」。なお『イリアス』の新訳は今のところ未刊です。


★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。


『力――美的人間学の根本概念』クリストフ・メンケ著、杉山卓史/中村徳仁/吉田敬介訳、人文書院、2022年7月、本体3,000円、4-6判上製260頁、ISBN978-4-409-03116-2
『市民的不服従』ウィリアム・E・ショイアマン著、森達也監訳、井上弘貴/秋田真吾/藤井達夫訳、安藤丈将解説、人文書院、2022年7月、本体3,200円、4-6判並製320頁、ISBN978-4-409-24148-6

『中島敦文学論――植民地と他性』ボヴァ・エリオ著、2022年7月、本体5,500円、A5判上製270頁、ISBN978-4-409-16100-5

『スマート・イナフ・シティ――テクノロジーは都市の未来を取り戻すために』ベン・グリーン著、中村健太郎/酒井康史訳、人文書院、2022年8月、本体2,800円、4-6判並製298頁、ISBN978-4-409-24149-3



★人文書院さんの直近の新刊より4点。ゲーテ大学フランクフルト・アム・マイン教授のメンケ(Christophe Menke, 1958-)による2008年の著書『Kraft』を2017年の新版から完訳したもの。メンケの訳書は『芸術の至高性――アドルノとデリダによる美的経験』(御茶の水書房、2010年)以来のもの。「美学とは、系譜学的自己言及と美的なものの現象学との統一である」(20頁)。「本書においては、近代美学の始まりが再構成され、それによって美的人間学の理念が導入される。〔…〕美的人間学という理念は根本的であるのと同様に抽象的である。それが述べるところによれば、力の戯れこそが主体の能力の条件であり、それゆえ規範的実践や社会的実践、文化的実践といったもの一般の条件である」(同)。


★『市民的不服従』は、名門ポリティ・プレスの社会科学系入門叢書「キー・コンセプツ・シリーズ」より2018年に刊行された『Civil Disobedience』の訳書で、インディアナ大学教授のショイアマンの初めての単独著。『中島敦文学論』は、イタリア出身の日本文学研究者で立命館大学講師のボヴァ・エリオ (Elio Bova, 1987-)さんによる中島敦論をまとめたもの。『スマート・イナフ・シティ』はまもなく発売。ジェラルド・R・フォード公共政策大学院助教授ベン・グリーン(同姓同名の数学者とは別人)の2019年の著書『The Smart Enough City』の全訳。


『モナ・リザの左目――非対称化する人類』花山水清著、藤原書店、2022年7月、本体2,200円、四六判上製312頁、ISBN978-4-86578-353-7
『復帰五〇年の記憶――沖縄からの声』川満信一編、安里英子/安里進/伊佐眞一/石垣金星/海勢頭豊/大城立裕/大田昌秀/川平成雄/川満信一/金城実/高良勉/仲里効/仲程昌徳/波照間永吉/比屋根薫/ローゼル川田著、藤原書店、2022年7月、本体2,200円、B6変判並製296頁、ISBN978-4-86578-354-4



★藤原書店さんの7月新刊は2点。『モナ・リザの左目』は、美術家の花山水清(はなやま・すいせい, 1956-)さんの武蔵野美術大学での講演をもとにした一冊。花山さんが「美術家として長年人体を観察して発見した」という、「人体の左半身の形と知覚が変化する異常な現象」、アシンメトリ現象について論じたもの。『復帰五〇年の記憶』は藤原書店さんのPR誌「機」での連載「沖縄からの声」を単行本化したもの。


『奈良絵本・絵巻――中世末から近世前期の文華』石川透著、平凡社選書:平凡社、2022年7月、本体3,600円、4-6判上製220頁、ISBN978-4-582-84237-1
『カリブ海の黒い神々――キューバ文化論序説』越川芳明著、作品社、2022年8月、本体2,700円、四六判並製352頁、ISBN978-4-86182-926-0

『現代思想2022年8月号 特集=哲学のつくり方――もう一つの哲学入門』青土社、2022年7月、本体1,500円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1434-6



★『奈良絵本・絵巻』は、慶応大教授の石川透(いしかわ・とおる, 1959-)さんによる、「日本古書通信」での連載「奈良絵本・絵巻の研究と収集」(2019年10月号~2022年2月号、全29回)をもとに編集されたもの。『カリブ海の黒い神々』は明治大教授でアフロ宗教サンテリアの最高司祭の越川芳明(こしかわ・よしあき, 1952-)さんのキューバ文化論をまとめたもの。『現代思想2022年8月号 特集=哲学のつくり方』は、千葉雅也さんと山口尚さんによる討議「偶然性と多元性――この世界に存在するさまざまな思索のかたち」をはじめ、グレアム・ハーマン、入不二基義、山内志朗、森岡正博、納富信留さんら20本の論考、特別掲載として、マルレーヌ・ラリュエル「「ポスト2・24」のロシアはファシズム国家か?」(浜由樹子訳)。

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