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注目新刊:不可視委員会『われわれの友へ』夜光社、ほか

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われわれの友へ
不可視委員会著 HAPAX訳
夜光社 2016年1月 本体1,500円 新書判並製256頁 ISBN978-4-906944-07-1
裏表紙紹介文より:ひとつの文明の終わりが/世界の終わりではない者たちへ/なによりもまず蜂起のうちに/組織ぐるみの嘘と混迷と愚かさの支配にうちこまれた/ひとつの裂け目をみとめる者たちへ/たちこめる「危機」の霧の背後に/作戦と術策と戦略がくりひろげられる舞台の存在を/――それゆえ反撃の可能性をみいだす者たちへ/攻撃する者たちへ/好機をうかがう者たちへ/共謀の友をもとめる者たちへ/離脱する者たちへ/試練をたえぬく者たちへ/みずからを組織化する者たちへ/革命的な力をつくり だそうとする者たちへ/革命的、なぜならそれは感覚的なものであるから/われわれの時代を解明するための/ささやかな試論をここにささげる。

目次:
蜂起はついに到来した
メリー・クライシス・アンド・ハッピー・ニュー・フィヤー
 一、危機は統治の一様態である
 二、真のカタストロフは実存と形而上学のカタストロフである
 三、アポカリプスは失望させる
やつらは統治を背負わせようとする、われわれはその挑発にはのらない
 一、現代蜂起の相貌
 二、民主主義的な蜂起など存在しない
 三、民主主義は純粋状態の統治にほかならない
 四、脱構成のセオリー
権力とはロジスティクスである。すべてを遮断せよ!
 一、権力はいまやインフラのうちに存在する
 二、組織化と自己組織化の違いについて
 三、封鎖戦術〔ブロカージュ〕について
 四、調査について
ファック・オフ・グーグル
 一、「フェイスブック革命」などない。あるのは新たな統治学としてのサイバネティクスである。
 二、「スマート」を打倒せよ
 三、サイバネティクスの悲惨
 四、技術vs.テクノロジー
あとをくらませ
 一、奇妙な敗北
 二、平和主義者とラディカル――地獄のカップル
 三、対蜂起としての統治
 四、存在論的非対称性と幸福
われわれの唯一の故郷、幼年期
 一、「社会」は存在しない、したがってその防衛も破壊もありえない
 二、淘汰を離脱へと反転させなければならない
 三、「ローカルな戦争」などない。あるのは諸世界間の戦争である
オムニア・スント・コムニア
 一、コミューンの回帰について
 二、革命派として住まう
 三、経済を打倒する
 四、共有された力能に参入する
今日のリビア、明日のウォールストリート
 一、十五年の歴史
 二、ローカルなものの引力から身をひきはなす
 三、組織化ではない力をつくりあげる
 四、力能をはぐくむ
訳者あとがき


HAPAX vol.5 特集『われわれの友へ』
夜光社 2016年1月 本体900円 四六判変形並製124頁 ISBN978-4-906944-07-1

目次:
コミューン主義とは何か?/HAPAX
革命のシャーマンたちが呼び出したものたち/李珍景
日本からの手紙――terrestritude のために/友常勉
都市を終わらせる――資本主義、文化、ミトコンドリア/反-都市連盟びわ湖支部
「われわれの友へ」、世界反革命勢力後方からの注釈/チョッケツ東アジア by 東アジア拒日非武装戦線
壁を猛り狂わせる/堀千晶
隷属への否――不可視委員会とともに/中村隆之
コミューンのテオクリトスたちによせて/入江公康
永山則夫について/鼠研究会
真の戦争/『ランディ・マタン』誌論説

★『来たるべき蜂起』(L'Insurrection qui vient, La Fabrique, 2007;『来たるべき蜂起』翻訳委員会、彩流社、2010年)に続く、不可視委員会(Comité invisible)の訳書第二弾『われわれの友へ』と、同書を特集した「HAPAX」第5号がまもなく発売となります。関連書に不可視委員会の前身であるティクーンの論考を併載した『反-装置論――新しいラッダイト的直観の到来』(『来たるべき蜂起』翻訳委員会+ティクーン著、以文社、2012年、本体2,000円、四六判並製184頁、ISBN978-4-7531-0303-4)があります。

★『われわれの友へ』の原書は、À nos amis (La Fabrique, 2014)です。「本テクストは八カ国語、四大陸で同時的に刊行される。〔・・・〕いまこそわれわれは世界的に自己組織化すべきである」(15頁)と巻頭言にあります。「自己組織化とは、同じ組織に加入することではまったくない。そうではなく、どんな水準においても共通の知覚にもとづいて行動することである。〔・・・〕われわれに欠けているもの、それは状況をめぐって共有された知覚である」(13頁)。「状況をめぐって共有される知性が生み出されるのは、唯一のテクストからではなく国際的な議論からである。議論がなされるためには賭け金がなければならない。本書はそのひとつである。われわれは革命派の伝統と態度を歴史的局面という試金石にかけ、革命というガリヴァーを地面に縛りつけている無数の理念の糸を断ち切ろうとこころみた」(14頁)。

★『われわれの友へ』の巻頭には《社会の敵》ジャック・メスリーヌ(Jacques Mesrine, 1936-1979)の言葉「別の世界は存在しない。別の生き方があるだけだ」が引用され、巻末の詩的結語には「書くことは虚栄である、それが友にむけられていなければ。たとえいまだに見知らぬ友にむけてであっても。〔・・・〕このテクストはひとつのプランのはじまりである。ではさっそく、」(246, 248頁)というふうに、ピリオドではなくカンマが置かれており、握手する時に手を開いて差し出すようにテクストを読者へと開いています。友たちと一緒に別の生き方へと踏み出すこの共同性の内実を不可視委員会は次のように鮮烈に描いています。「蜂起というものはすべて、どれほど局地的であっても、それ自体をこえて合図をおくる。いかなる蜂起にも即座に世界的な何かがふくまれている。蜂起のさなかでわれわれはともに時代の高みに達するのである」(11頁)。「われわれは散発的な諸反乱と同時代なのではない。知覚されないものとなって交流しあう、唯一にして世界的な蜂起の波と同時代なのである」(10頁)。「2008年から世界中で生じているのは、ナショナルな密閉空間のそれぞれに突拍子もなく生起するなんの脈絡もない一連の噴出ではない。それはギリシャからチリまで、時間と空間の厳密な一貫性のなかでくりひろげられる、唯一の歴史的シークエンスである」(11頁)。

★「いわばわれわれは、われわれがすでにいる場所へとドアをこじ開けなければならない。構築すべき党とは唯一、すでにそこに存在する党のことである。われわれに共通の状況、グラムシがいうところの「共通の大地性〔テレストリチュード〕」の明晰な把握をさまたげている心理上のがらくたを処分してしまわなければならない」(12頁)。このcommune terrestritude/common terrestritudeの明晰な把握へと向けて、「HAPAX」第5号は編まれています。

★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。

『イスラーム神学』松山洋平著、作品社、2016年1月、本体2,700円、46判上製528頁、ISBN978-4-86182-570-5
『アルメニア人の歴史――古代から現代まで』ジョージ・ブルヌティアン著、小牧昌平監訳、渡辺大作訳、藤原書店、2016年1月、本体8,800円、A5判上製528頁、ISBN978-4-86578-057-4

★『イスラーム神学』は発売済。帯文に曰く「日本で、唯一の「イスラーム神学」本格的入門書。最重要古典の一つ「ナサフィー信条」の全訳と詳解を収録。欧米・日本で少数派のムスリムが社会と共生するために必要となる「ムスリム・マイノリティのためのイスラーム法学と神学」を付す」とあります。「スンナ派概論」「スンナ派の信条――ナサフィー『信条』訳解」の二部構成で、附録として「ムスリム・マイノリティのためのイスラーム法学と神学」が加えられています。巻末には引用文献、略年表、イスラーム神学用語集、索引を完備。

★著者の松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さんは名古屋外国語大学の非常勤講師をおつとめのほか、日本ムスリム協会の理事でいらっしゃいます。著書に『イスラーム私法・公法概説 公法編』(日本サウディアラビア協会、2007年)があります。日本ムスリム協会前会長の樋口美作さんの推薦文にはこうあります。「本書はイスラームの90%を占めるスンナ派(スンニ派)の信条を解説するものである。〔・・・〕内容的にも、スンナ派を自称する過激集団ISの実態を知る端緒ともなりうるもので、各章の興味ある項目を拾い読みしただけでも、〔・・・〕イスラーム理解のヒントを与えてくれる」。

★ちなみにより特定的にイスラーム原理主義の思想的源流に興味がある方には、サイイド・クトゥブ(1906-1966)の二冊の既訳書『イスラーム原理主義の「道しるべ」――発禁“アルカイダの教本”全訳+解説』(第三書館、2008年)、『イスラーム原理主義のイデオロギー――サイイッド・クトゥブ三部作:アルカイダからイスラム国まで オバマ大統領が憎む思想』(ブイツーソリューション、2015年)が参考になります。

★『アルメニア人の歴史』は発売済。原書は、A Concise History of the Armemian People: From Ancient Times to the Present (6th Edition, Mazda, 2012)です。帯文に曰く「作曲家ハチャトリアン、作家サローヤン、歌手アズナヴールら優れた芸術家を輩出してきたアルメニア人。ゾロアスター、キリスト教、イスラームなどの宗教が交錯するコーカサスの地における、アラブ・スラヴ・ペルシア・トルコ・モンゴルなど諸民族・諸帝国による支配からの独立に向けた苦闘と、世界に離散した「ディアスポラ」の三千年史を一冊にまとめた、アルメニア史研究の世界的第一人者による決定版の完訳」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。カラー口絵16頁ではいずれも美しい教会や文化遺産が紹介されています。アララト山の神々しさには見とれてしまいます。

★著者のジョージ・ブルヌティアン(George A. Bournoutian, 1943-)はイラン・イスファハン生まれ、アメリカ在住のアルメニア人歴史家で、ニューヨークのアイオナ大学教授をおつとめです。著書の日本語訳は今回が初めてになります。教授は93~94年に『アルメニア人の歴史(A History of the Armenian People)』を刊行し、その後、合本のうえ大幅増補した『アルメニア人の略史』を2002年に上梓しました。今回の訳書はこの『略史』の第6版を底本としています。

★藤原書店の月刊PR冊子「機」2016年1月号に掲載された藤原良雄社長による「出版随想」には本年度の主要企画が明かされています。5月:金時鐘コレクション、秋:中村桂子コレクション、多田富雄全集、といった大型企画のほか、今春以降からアラン・コルバン編『男らしさの歴史』全3巻、エマニュエル・トッド『家族システムの起源』、アラン・バディウ『存在と出来事』、ジュール・ミシュレ『日記』など、素晴らしいラインナップです。


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