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注目新刊:ヴィトゲンシュタイン『小学生のための正書法辞典』講談社学術文庫、ほか

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★皆様いかがお過ごしでしょうか。私は風邪をひきました。今回の新刊ご紹介はそんなわけで書名を列記するものの、数点について追記するのみで失礼いたします。まずは、最近出会った新刊から。


『秘教講義 1』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳、春秋社、2018年11月、本体4,800円、四六判上製592頁、ISBN978-4-393-32547-6
『秘教講義 2』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳、春秋社、2018年12月、本体4,800円、四六判上製488頁、ISBN978-4-393-32548-3
『朝鮮文化史――歴史の幕あけから現代まで』キース・プラット著、宋恵媛訳、人文書院、2018年12月、本体6,200円、4-6判上製488頁、ISBN978-4-409-51079-7
『薩長同盟論――幕末史の再構築』町田明広著、人文書院、2018年12月、本体2,200円、4-6判並製270頁、ISBN978-4-409-52074-1
『大政翼賛会のメディアミックス――「翼賛一家」と参加するファシズム』大塚英志著、平凡社、2018年12月、本体2,500円、4-6判並製304頁、ISBN978-4-582-45453-6
『ぼくの伯父さん――長谷川四郎物語』福島紀幸著、河出書房新社、2018年12月、本体4,400円、46変形判上製568頁、ISBN978-4-309-02748-7
『トランスヒューマニズム――人間強化の欲望から不死の夢まで』マーク・オコネル著、松浦俊輔訳、作品社、2018年11月、本体2,400円、46判並製299+xi頁、ISBN978-4-86182-721-1


★シュタイナー『秘教講義』は第1巻が『霊学自由大学第一学級のための秘教講義』(全19講:ドルナハ:1924年2月15日~8月2日)で、巻頭には第2講から第19講までの美麗な黒板絵をカラーで収録しています。第2巻は『霊学自由大学第一学級のための秘教再講義』(全7講:ドルナハ:1924年9月6日~20日)と、各都市で行われた『霊学自由大学第一学級のための秘教講義』(2講:プラハ:1924年4月3日~5日、1講:ベルン:1924年4月17日、1講:ロンドン:1924年8月27日)を収め、付録として1923年と1924年の「クリスマス会議」より3講義と、訳者の高橋さんによる「「シュタイナー秘教講義」の読み方(第1講を例に)」が配されています。解説は飯塚立人さんがお書きになっています。


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★次にここ最近で注目している新刊を列記します。


『新版 アリストテレス全集(20)著作断片集2』國方栄二訳、2018年11月、本体6,000円、A5判上製函入512頁、ISBN978-4-00-092790-1
『人間知性研究』デイヴィッド・ヒューム著、神野慧一郎/中才敏郎訳、近代社会思想コレクション24:京都大学学術出版会、2018年12月、本体3,600円、四六判上製374頁、ISBN978-4-8140-0178-1
『小学生のための正書法辞典』ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン著、丘沢静也/荻原耕平訳、講談社学術文庫、2018年12月、本体1,110円、280頁、ISBN978-4-06-514094-9
『漂巽紀畧 全現代語訳』ジョン万次郎述、河田小龍記、北代淳二監修、谷村鯛夢訳、講談社学術文庫、2018年12月、本体800円、178頁、ISBN978-4-06-514262-2
『靖献遺言』浅見絅斎著、近藤啓吾訳注、講談社学術文庫、2018年12月、本体1,790円、560頁、ISBN978-4-06-514027-7
『物語批判序説』蓮實重彦著、講談社文芸文庫、2018年12月、本体2,100円、352頁、ISBN978-4-06-514065-9
『ラフォルグ抄』ジュール・ラフォルグ著、吉田健一訳、講談社文芸文庫、2018年12月、: 本体2,100円、368頁、ISBN978-4-06-514038-3
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』丸山俊一/NHK「欲望の時代の哲学」制作班著、NHK出版新書、2018年12月、本体820円、240頁、ISBN978-4-14-088569-7
『オカルティズム――非理性のヨーロッパ』大野英士著、講談社選書メチエ、2018年12月、本体1,900円、320頁、ISBN978-4-06-514260-8
『記憶術全史――ムネモシュネの饗宴』桑木野幸司著、2018年12月、本体2,000円、352頁、ISBN978-4-06-514026-0



★『新版 アリストテレス全集(20)著作断片集2』は全20巻+別巻のうちの第18回配本。収録作品は書名のリンク先でご確認いただけます。そのほとんどは他の著者が伝えている断片です。散逸したか詳細不明となっている著作へのアリストテレス自身の言及も収めます。そうした著作のひとつ『哲学について』をめぐってはフィロンが『世界の永遠性について』の中で、アリストテレスの発言として次のような言葉を伝えています。「昔は、大風やとてつもない嵐が来たり、時の経過やしかるべき手入れを怠ったりすると、自分の家が倒れやしないかと心配したものだが、今は、議論で全宇宙を破滅させる人間のおかげで、もっと大きな恐怖がのしかかっている」(164頁)。付属ずる月報18によれば、次回配本は来春、第11巻『動物の発生について』。本巻で残る1冊、第14巻『形而上学』も来年刊行とのことです。別巻『総索引』には「用語集」も収録されると再告知されています。


★『小学生のための正書法辞典』はヴィトゲンシュタインが生前刊行した二冊のうちの一冊の初訳。もう一冊は『論理哲学論考』ですが、この主著が刊行されるまでに紆余曲折を経たのに比べて、『小学生のための正書法辞典』は比較的スムースに出版できたようです。その経緯や、教師としてのヴィトゲンシュタインの工夫は、巻頭の丘沢さんによる解説に詳しいです。またこの解説では、現代人から見てほとんどアウトな教師ぶりや、アスペルガー症候群の観点から見た哲学者像についても語られます。後者は福本修さんの論考「「心の理論」仮説と『哲学探究』――アスペルガー症候群〔から/を〕見たウィトゲンシュタイン」(『imago』1996年10月号「特集=自閉症」所収、144~163頁)を参考にされています。それにしても本書を文庫で出版するというのはなかなかハードルが高かったろうと思われます。



★ちなみに講談社さんは「講談社学術文庫大文字版オンデマンド」を人気既刊書600点以上で開始されました。同文庫は1976年創刊で、総刊行点数約2600点に上ります。投げ込みチラシには真っ先に天野貞祐訳『純粋理性批判』が記載されていて驚愕したのですが、ウェブにはまだ掲出されていないようです。書目は毎月追加されるようなので、推移を注視したいと思います。



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