★まもなく発売となるちくま学芸文庫の12月新刊の5点6冊を取り上げます。
『精神現象学 上』G・W・F・ヘーゲル著、熊野純彦訳、ちくま学芸文庫、2018年12月、本体1,700円、672頁、ISBN978-4-480-09701-9
『精神現象学 下』G・W・F・ヘーゲル著、熊野純彦訳、ちくま学芸文庫、2018年12月、本体1,700円、624頁、ISBN978-4-480-09702-6
『帝国の陰謀』蓮實重彦著、ちくま学芸文庫、2018年12月、本体1,000円、176頁、ISBN 978-4-480-09895-5
『仮面の道』クロード・レヴィ=ストロース著、山口昌男/渡辺守章/渡辺公三訳、ちくま学芸文庫、2018年12月、本体1,400円、400頁、ISBN978-4-480-09647-0
『聖なる天蓋――神聖世界の社会学』ピーター・L・バーガー著、薗田稔訳、ちくま学芸文庫、2018年12月、本体1,200円、352頁、ISBN978-4-480-09903-7
『数学的に考える――問題発見と分析の技法』キース・デブリン著、冨永星訳、ちくま学芸文庫、2018年12月、本体1,000円、224頁、ISBN978-4-480-09898-6
★熊野純彦さんによる新訳『精神現象学』は、樫山欽四郎訳(上下巻、平凡社ライブラリー、1997年)に続く20年ぶりの文庫版です。樫山訳は親本が1966年の河出書房新社版で、それを出口純夫さんが改訳し補訂したのが平凡社ライブラリー版です。今回の新訳は訳者あとがきによれば、底本はラッソン/ホフマイスター版(樫山訳も同様)。グロックナー版、ズーアカンプ版、アカデミー版なども参照され、また2種類のフランス語訳(イポリット訳とヤルチック/ラバリエール訳)を常に参看したとのことです。本書の訳文の上段にはグロックナー版とホフマイスター版の原著頁数が振られ、下段にはスーアカンプ版とアカデミー版のそれが記されており、原書と照らし合わせるのに便利です。
★講義録や教科書を除き「ヘーゲルそのひとが、主要な著作として執筆し、刊行したのは『精神現象学』全一巻、ならびに『論理学』全二巻だけなのであり、その意味ではヘーゲル研究の進捗と現況にかかわりなく、『精神現象学』がこの哲学者の思考をとらえるうえで枢要なテクストでありつづけていることは、まちがいない」と熊野さんはお書きになっています。上巻が序文、序論、A「意識」、B「自己意識」、C(AA)「理性」を収録、下巻には(BB)「精神」、(CC)「宗教」、(DD)「絶対知」を収めています。下巻巻末にはフレーズ索引といって、語句ごとにそれを含む文章を並べた索引が付されています。
★蓮實重彦『帝国の陰謀』は1991年に日本文芸社より刊行された単行本の文庫化。新たに文庫版あとがきと、入江哲郎さんによる解説が付されています。「〔ルイ=ナポレオンすなわちナポレオン三世の異父弟〕ド・モルニーが遺した二つのテクストを読解し、マルクスが〔著書『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』で〕見落としたものを軽やかに描く、著者最初の書き下ろし作品」(カバー裏紹介文より)。文庫化にあたり、「必要最低限の加筆訂正」を施したとのことです。初版刊行当時を振り返って、蓮實さんは、本書を学術論文としてではなく、「できれば、文化的かつ政治的な「パンフレット」のようなものとして読まれてほしいというのが、著者の真摯な思いだったのです」としたためておられます。本書と同時期のフランス第二帝政期を背景にした1988年の著書『凡庸な芸術家の肖像――マクシム・デュ・カン論』は95年に上下巻でちくま学芸文庫にて文庫化された後、2015年に同じく上下巻で講談社文芸文庫として再文庫化されています。
★レヴィ=ストロース『仮面の道』は、まず原著の2巻本『La Voie des masques』がSkira社の「創造の小径」シリーズから1975年に刊行され、日本語訳が1977年に新潮社版「想像の小径」翻訳シリーズの一冊として出版されています。原著はその後1979年に増補改訂版がPlon社から全1巻で刊行されました。今回の文庫化は、この増補改訂版を底本とし、新潮社版を渡辺守章さんが全面改訳し、増補改訂版で新たに付された第2部「三つの小さな旅」を昨年末に逝去された渡辺公三さんが訳出されて、成ったものです。文庫版あとがきは「ちくま学芸文庫版『仮面の道』のための後書き」として、渡辺守章さんがお書きになっておられます。文庫で読めるレヴィ=ストロースの著書は意外と少なく、室淳介訳『悲しき南回帰線』(上下巻、講談社学術文庫、1985年)、西澤文昭訳『アスディワル武勲詩』(ちくま学芸文庫、2011年)に続いて今回がようやく3点目です。
★バーガー『聖なる天蓋』は『The Sacred Canopy: Elements of a Sociological Theory of Religion』(Doubleday, 1967)の全訳として1979年に新曜社から刊行された単行本の文庫化です。文庫版訳者あとがきによれば、「今回はほぼ原訳を活かして復刊」したとのことです。「あらゆる社会はその全過程を究極的に意味づける象徴の体系、「聖なる天蓋」をもつ。〔…〕現象学的社会学の視点から論じられた宗教社会学の古典的名著」(カバー裏紹介文より)。バーガーはオーストリア出身のアメリカの社会学者で、昨年死去しています。著書の文庫化は『社会学への招待』(水野節夫/村山研一訳、ちくま学芸文庫、2017年7月)に続いて2点目です。
★『数学的に考える』は英国生まれの数学者デブリン(Keith Devlin, 1947-)が2012年に自費出版したオンデマンド版の教科書『Introduction to Mathematical Thinking』の全訳で、文庫のための訳し下ろしです。巻頭の「はじめに」によれば、高校数学から大学数学に進む際の「移行講座」の教科書が一般的に高額すぎるため、廉価なオンデマンド版にしたとのこと。第1章「数学とは何か」、第2章「言葉を厳密に使う」、第3章「証明」、第4章「数を巡る成果の証明」の全4章立てで、補遺として「集合論」が付されています。「21世紀を生きるすべての人々にとって、数学的な思考をある程度できた方が有利なのだ。(数学的思考には、いずれも重要な能力である「論理的な思考」、「分析的な思考」、「量を用いた推論」が含まれる。)というわけでわたしはこの本を、分析的な思考力を高めたい、高める必要があると考えているすべての人にとって役立つものにしようと考えた」(4頁)と著者は書いています。ビジネス書としてどんどん売っていい商材だと思います。
★続いて角川ソフィア文庫の11月新刊から3点。
『西田幾多郎――言語、貨幣、時計の成立の謎へ』永井均著、角川ソフィア文庫、2018年11月、本体760円、176頁、ISBN978-4-04-400184-1
『よくわかる日蓮宗 重要経典付き』瓜生中著、角川ソフィア文庫、2018年11月、本体960円、304頁、ISBN978-4-04-400368-5
『図説 日本未確認生物事典』笹間良彦著、角川ソフィア文庫、2018年11月、本体1,200円、480頁、ISBN978-4-04-400443-9
★永井均『西田幾多郎』は、2006年にNHK出版から刊行された『西田幾多郎――〈絶対無〉とは何か』に加筆修正し、文庫化したもの。巻末に文庫版付論として「時計の成立――死ぬことによって生まれる今と、生まれることによって死ぬ今」が新たに付されています。第一章「純粋経験――思う、ゆえに、思いあり」、第二章「場所――〈絶対無〉はどこにあるのか」、第三章「私と汝――私は殺されることによって生まれる」の三章立てで、小伝や読書案内が付されています。コンパクトな入門書です。巻頭の「まえがき」にはこうあります。「本書を読めば、西田幾多郎をまったく知らない方でも西田哲学の核心へとまっすぐに導かれる、と私は確信するが、それはじつは西田の核心ではななく私(永井)の核心なのかもしれない。それらを区別することは私にはできない」(12頁)。
★『よくわかる日蓮宗』は瓜生中さんによる「よくわかる××宗」シリーズの最新刊で書き下ろし。目次詳細は書名のリンク先の「試し読み」でご覧いただけますが、章立てのみ確認しておくと、第一章「日蓮宗の基礎知識」、第二章「日蓮宗の主な経典」、第三章「日蓮の生涯と思想」、第四章「日蓮以降の日蓮宗」、第五章「日蓮宗の主要寺院」となっており、付録として「日蓮宗の年中行事と尊像」が配されています。同シリーズではこれまでに、浄土真宗、曹洞宗、真言宗、浄土集、などが出ています。
★笹間良彦『図説 日本未確認生物事典』は1994年に柏書房より刊行された同名単行本の文庫化。巻末に新たに湯本豪一さんによる解説が付されています。天狗、鬼、雪女、河童などを扱う「擬人的妖怪編」、霊亀などを扱う「魚と亀の変化(へんげ)」、龍やおろちなどを扱う「龍蛇類の変化」、きつね、むじな、ねこまた、ばくなどを扱う「獣類の変化」、ぬえや鳳凰などを扱う「鳥類の変化」、ひきがえる、おおむかで、つちぐもなどを扱う「湿性類の変化」の6部門。全部で114種類の妖怪や幻獣が、歴史的な文物から採られた図版とともに、古典的文献からの引用を交えて解説されています。
+++
★また最近では以下の新刊との出会いがありました。
『アナログの逆襲――ポストデジタル経済へ、ビジネスと発想はこう変わる』デイビッド・サックス著、加藤万里子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2018年12月、本体2,100円、四六判並製400頁、ISBN978-4-7726-9562-6
『生命科学の未来――がん免疫治療と獲得免疫』本庶佑著、藤原書店、2018年12月、本体2,200円、B6変型判上製240頁、ISBN978-4-86578-202-8
『オリンピックVS便乗商法――まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』友利昴著、作品社、2018年11月、本体2,400円、46判並製309+17頁、ISBN 978-4-86182-726-6
『ポストモダン・ニヒリズム』仲正昌樹著、作品社、2018年11月、本体2,600円、46判上製320頁、ISBN978-4-86182-718-1
『プラグマティズムの格率――パースとプラグマティズム』クリストファー・フックウェイ著、村中達矢/加藤隆文/佐々木崇/石田正人訳、春秋社、2018年11月、本体5,000円、四六判上製536頁、ISBN978-4-393-32362-5
『聖書の情景』深井智朗著、春秋社、2018年11月、本体2,000円、四六判上製240頁、ISBN978-4-393-32378-6
『カタストロフと美術のちから』森美術館編、平凡社、2018年11月、本体3,200円、A4変判並製208頁、ISBN978-4-582-20714-9
★サックス『アナログの逆襲』は『The Revenge of Analog: Real Things and Why They Matter』(PublicAffairs, 2016)の訳書です。著者のサックス(David Sax, 1979-)はカナダのジャーナリスト。書名のリンク先で目次とはじめにと日本語版解説を見ることができますが、とても興味深い内容なので、以下にも目次を転記しておきます。
はじめに――ポストデジタル経済へ
PART 1 アナログな「モノ」の逆襲
第1章 レコードの逆襲
第2章 紙の逆襲
第3章 フィルムの逆襲
第4章 ボードゲームの逆襲
PART 2 アナログな「発想」の逆襲
第5章 プリントの逆襲
第6章 リアル店舗の逆襲
第7章 仕事の逆襲
第8章 教育の逆襲
第9章 デジタルの先端にあるアナログ
おわりに 夏の逆襲
★「本書では、アナログの逆襲がどのように起きているかを二部に分けて探求している。/第1部の「アナログな「モノ」の逆襲」では、レコード、紙製品、フィルム、ボードゲームという新市場を考察し、時代に合わなくなったと言われたアナログ製品の製造・販売企業が、消費者の根本的な欲求を引き出して成功している例を紹介する。/第2部の「アナログな「発想」の逆襲」では、出版、小売、製造、教育業界、シリコンバレーの教訓をもとに、デジタル重視の経済のなかでアナログな発想が持つ革新的かつ破壊的な可能性とその恩恵を実証する」(19~20頁)。
★「重要なのは、デジタルかアナログのどちらかを選ぶことではない。私たちはデジタルの使用を通して、このように物事を極度に単純化する考え方に慣れてしまった。つまり、一かゼロか、黒か白か、サムスンかアップルか、という誤った二者択一だ。現実世界は、黒か白ではなく、グレーですらない。色とりどりで、触れたときの感覚に同じものはひとつもない。そこに、豊かな感情が幾重にも折り重なっている。そのなかで人間は、思ってもみない匂いに驚いたり、奇妙な味に顔をしかめながら、完全ではないことを大いに楽しんでいる。最高のアイデアはこの複雑さから紡ぎ出されるが、デジタル・テクノロジーにはまだそれを十分に再現する能力がない。いま、この現実世界がかつてなく重要になっている。/アナログの逆襲はこのごちゃまぜの現実のなせる業だ。テクノロジーの挑戦を受けながらも、そこから力を引き出している。テクノロジーにはひとつひとつ役割があり、生み出す結果もさまざまだ。アナログの逆襲から見えてくるのは、過去と共存しながらテクノロジーの未来を築く新しいポストデジタル経済である」(20頁)。
★本庶佑『生命科学の未来』は緊急出版。「免疫学との出会い、生物が免疫の多様化を実現する仕組みを解明した画期的研究、ノーベル賞受賞をもたらした抗体の発見に至る軌跡、そして、生命科学が世界的に注目されているなかでの基礎研究への投資の重要性など」(カバーソデ紹介文より)を、本庶さん自身が語ったもの。序は「序 ノーベル生理学・医学賞受賞にあたって」と題された挨拶文です。続く「PD‐1抗体発見への道のり――獲得免疫の驚くべき幸運とがん免疫治療」は、2016年11月11日に行われた京都賞受賞記念講演。「幸福の生物学」は2007年4月22日に行われた稲盛財団の第11回盛和スカラーズソサエティ総会講演。最後の「生命科学の未来」は、2014年4月8日に収録され『環』58号に掲載された、本庶さんと静岡県知事・川勝平太さんの対談です。
★次に作品社さんの新刊2点。友利昴『オリンピックVS便乗商法』はオリンピックの独占的商業利用権について教えてくれる一冊。「今や善良な市民であっても、オリンピックを利用しようとすれば、そのやり方次第では、誰もがIOC以下、オリンピック関連組織からのクレームにさらされる危険がある。〔…〕恐ろしいことに、本書で紹介するように、既に実例は多数存在するのだ」(3頁)。本書は「オリンピック組織が、これまでどのようなアプローチで自己の利益を拡大してきたのか、そのために他人がどのような犠牲を強いられてきたのかをできるだけ多くの具体例を紹介しながら総括し、それらを教訓として、正当行為に対するクレームや規制に、われわれはどのように向き合うべきかを考察している」(3~4頁)。「これは何もオリンピックに限った問題ではない。〔…〕あらゆる事業者にとって、市場競争において他人を排除し、自らの権利と利益の最大化を目指すことは自然な欲求であることから、こうしたアプローチは他のあらゆる産業においても波及し得るものである」(4頁)。
★仲正昌樹『ポストモダン・ニヒリズム』は1997年から2009年にかけて各媒体で発表されてきた論考12本をまとめ、書き下ろしの「ハーバーマスとデリダ――「言語行為」と「エクリチュール」をめぐるモダン/ポストモダンの鬩(せめ)ぎ合い」を加えたもの。この書き下ろしでは、ハーバーマスとデリダの対決だけでなく、サールとデリダの論争も論及されています。「「エクリチュール」と「コミュニケーション」の関係をめぐる問題は取り残されてしまった感が強い。〔…〕発話行為に伴う「力」に関心を持つ哲学者・社会学者は、[ハーバーマス+サールvs.デリダ]論争で提起されたものの、クリアにならなかった諸論点について、彼らのあとを引き継いで考え続けるべきだろう」(296頁)。
★続いて春秋社さんの新刊2点。フックウェイ『プラグマティズムの格率』は『The Pragmatic Maxim: Essays on Peirce and pragmatism』(Oxford University Press, 2012)の全訳。序文によれば本書は15年にわたる著者のパース哲学研究のうちの「いくらかを披露するもの」であり、『パース』(1985年、未訳)および『真理、合理性、そしてプラグマティズム』(2000年)に収録された著作を発展させたもの、とのこと。著者のフックウェイ(Christopher Hookway, 1949-)はイギリスを代表するパース哲学研究者で、シェフィールド大学名誉教授。既訳書には『クワイン――言語・経験・実在』(浜野研三訳、勁草書房、1998年)があります。2点目となる今回の訳書の目次を以下に列記しておきます。
目次:
日本語版に寄せて
序文
初出一覧
パースのテクストとその略号の一覧
序論 プラグマティズムの格率、科学の方法、表象
第1章 パースと懐疑論
第2章 可謬主義と探求の目標
第3章 真理・実在・収束
第4章 疑問表現と制御不可能なアブダクション
第5章 規範的論理学と心理学――心理主義を拒絶するパース
第6章 〈関係の形式〉――パースと数学的構造主義
第7章 「一種の合成写真」――プラグマティズム、観念、図式論
第8章 プラグマティズムと所与――C・I・ルイス、クワイン、パース
第9章 プラグマティズムの原理――パースの定式化と事例
第10章 論理的原理と哲学的態度――ジェイムズのプラグマティズムに対するパースの態度
第11章 いかにしてパースはプラグマティズムの格率を擁護したか
解説(佐々木崇/加藤隆文)
訳者あとがき(村中達矢)
文献表
人名索引
★深井智朗『聖書の情景』は聖書に登場する人物から26人を選んで紹介するエッセイ集。26人を掲載順に列記すると、アダム、バラバ、カイン、ダビデ、エステル、フェリクス、ギデオン、ヘロデ、イザヤ、イスカリオテのユダ、ヨブの娘ケツィア、ラザロ、モーセ、ノア、オバデア、ペトロ、キリニウス、ルツ、サロメ、トマス、ウジヤ、イサクの父アブラハム(Vater von Isaak)、ワシュティ、クセルクセス=アハシュエロス、あなた(You)、ザアカイ。お気づきかと思いますが、アルファベット26文字を表しています。「あなた」は苦肉の策というよりは、本質的な一章を成しています。「自分のための言葉だと知るときに、その言葉は生命を持つようになります。/聖書で語られる「あなた」が、「私」なのだと分かるとき、聖書の言葉が生きた言葉になります。そして私たちを聖書の中へと、神が聖書を通して語ろうとする世界へと誘います。八木重吉が言うように、ことばのうちがわにはいりこむ、のです」(203頁)。個人的には「ユダ」の善人ぶりへの言及が、現代人への強い戒めとして印象に残りました。
★『カタストロフと美術のちから』は、六本木ヒルズの森美術館が15周年記念展として好評開催中の「カタストロフと美術のちから展」(2018年10月6日~2019年1月20日)の図録を兼ねた書籍です。印象深かった作品は、ヘルムット・スタラーツさんやシヴァ・アフマディさんの絵画、武田慎平さんと米田知子さんの写真です。同書には論考として、星野太さんによる「疚しさについて――カタストロフと崇高」、J・J・チャールズワースさんによる「カタストロフは常に他人事か」、ゲリット・ヤスパー・シェンクさんによる「災害のイメージ――災害体験のアートとメディア化」などが掲載されています。
+++