★半年ほど前に「ご挨拶:週1回更新の「注目新刊」の今後について」(2022年6月26日)というエントリーを発信し、「週1回の注目新刊はしばらく書目のみを掲出」と書いたのですが、果たしてそのように思いきることはできず、今日まで来ました。あいかわらず「所用と課題が重なり山となって制御不能」の日々にもがき続けているものの、今年はそれでも自分に新たないくつかのミッションを課すと心に決めています。長く続けてきた「注目新刊」をそのために省力化するのはまったく本意ではないとはいえ、自分の来し方を振り返り、なおかつ行く末を展望してみると、「あれもこれも」の姿勢から「あれかこれか」の選別を先鋭化させる必要性を痛感します。そんなわけで、従来の形式の「注目新刊」は今回でいったん封印し、新しい試みへの第一歩を来週から踏み出すつもりです。こう書いている時点ですでにもう一人の自分が「馬鹿馬鹿しい」と反発していますが、どうしようもありません。そんなわけで恥を忍んで「二度目のご挨拶」をここにしたためる次第です。
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★まずはまもなく発売となる、ちくま学芸文庫の2月新刊5点。
『ゴダール革命〔増補決定版〕』蓮實重彦[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,300円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-51159-1
『女王陛下の影法師――秘書官からみた英国政治史』君塚直隆[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,300円、文庫判400頁、ISBN978-4-480-51164-5
『メディアの生成――アメリカ・ラジオの動態史』水越伸[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,400円、文庫判448頁、ISBN978-4-480-51166-9
『不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』沢庵宗彭[著]、市川白弦[訳注]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,000円、文庫判224頁、ISBN978-4-480-51168-3
『数学フィールドワーク』上野健爾[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,100円、文庫判302頁、ISBN978-4-480-51167-6
★個人的にもっとも注目しているのは『不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』。講談社版『日本の禅語録(13)沢庵』(1978年)の再構成版である、同社版『禅入門(8)沢庵 不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』(1994年)の文庫化。巻末解説は北大名誉教授の佐藤錬太郎さんによる「剣禅一如の理念とその伝唱」。言うまでもなく『不動智神妙録』は『五輪書』『兵法家伝書』に並ぶ三大兵法書のひとつ。有名な古歌「「心こそ 心迷わすこころなれ 心にこころ 心許すな」は『不動智神妙録』の末尾に記されています。
★『ゴダール革命〔増補決定版〕』は、筑摩書房の「リュミエール叢書」の1冊として2005年に刊行されたものの増補文庫化。増補分は「付録」として、ゴダールへのインタヴュー「憎しみの時代は終わり、愛の時代が始まったと確信したい――『右側に気をけろ』を撮り終えて」、黒沢清さんとの対談「映画はゴダールのように裕であっていっこうに構わない」、そしてゴダールへの追悼文「映画作家ゴダールは、その「特権性」を晴れやかに誇示しながらこの世界から姿を消した」が収録され、さらに「文庫版あとがき」や、関西大教授・堀潤之さんによる解説「「革命」の映画論」が加えられています。
★『女王陛下の影法師』は、2007年に筑摩書房より刊行された単行本の文庫化。再刊にあたり「ちくま学芸文庫版へのあとがき」と、京大名誉教授・伊藤之雄さんによる解説「イギリス近代・現代君主制研究の開拓者」が付されています。著者の君塚直隆(きみづか・なおたか, 1967-)さんは関東学院大学教授で政治外交史家。
★『メディアの生成』は、1993年に同文舘出版より刊行された単行本の文庫化。再刊にあたり「文庫版のための補論」が付されています。それによれば「改訂にあたっては、表記上の統一を図り、統計数値の誤り、誤字脱字、読みにくい箇所を訂正した。しかし加筆はしておらず、本書の内容は1993年版と同じである」とのことです。著者の水越伸(みずこし・しん, 1963-)さんは、関西大学教授でメディア研究者。
★『数学フィールドワーク』は、Math&Sceiceシリーズの最新刊。「数学セミナー」誌での連載をもとに、2008年に日本評論社より刊行された単行本の文庫化。再刊にあたり、「文庫版後書き」と、歴史作家の鳴風海さんによる文庫解説「数学フィールドワークの法則」が加えられいます。前者によれば「必要最低限度の加筆訂正を行った」とのことです。著者の上野健爾(うえの・けんじ, 1945-)さんは、京大名誉教授で日本数学協会の会長をおつとめの数学者。
★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。書誌情報を列記します。『まぼろしの顔』は、牧神社版デ・ラ・メア作品集全3巻の復刊の、第3巻。これで復刊完結です。
『まぼろしの顔――ウォルター・デ・ラ・メア作品集(3)』ウォルター・デ・ラ・メア[著]、脇明子[訳]、橋本治[絵]、東洋書林、2023年2月、本体2,400円、A5判上製180頁、ISBN978-4-88721-831-4
『フマーユーン・ナーマ――ムガル朝皇帝バーブルとフマーユーンに関する回想録』グルバダン・ベギム[著]、間野英二[訳注]、東洋文庫(平凡社)、2023年1月、本体3,500円、B6変型判上製函入352頁、ISBN978-4-582-80912-1
『古琉球の王宮儀礼とおもろさうし』真喜志瑶子[著]、平凡社、2023年1月、本体4,000円、4-6判上製528頁、ISBN978-4-582-44514-5
『デッサ・ローズ』シャーリー・アン・ウィリアムズ[著]、藤平育子[訳]、作品社、2023年1月、本体2,700円、46判並製352頁、ISBN978-4-86182-955-0
『ミダック横町』ナギーブ・マフフーズ[著]、香戸精一[訳]、作品社、2023年1月、本体2,700円、46判並製376頁、ISBN978-4-86182-956-7
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★まずはまもなく発売となる、ちくま学芸文庫の2月新刊5点。
『ゴダール革命〔増補決定版〕』蓮實重彦[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,300円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-51159-1
『女王陛下の影法師――秘書官からみた英国政治史』君塚直隆[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,300円、文庫判400頁、ISBN978-4-480-51164-5
『メディアの生成――アメリカ・ラジオの動態史』水越伸[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,400円、文庫判448頁、ISBN978-4-480-51166-9
『不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』沢庵宗彭[著]、市川白弦[訳注]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,000円、文庫判224頁、ISBN978-4-480-51168-3
『数学フィールドワーク』上野健爾[著]、ちくま学芸文庫、2023年2月、本体1,100円、文庫判302頁、ISBN978-4-480-51167-6
★個人的にもっとも注目しているのは『不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』。講談社版『日本の禅語録(13)沢庵』(1978年)の再構成版である、同社版『禅入門(8)沢庵 不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』(1994年)の文庫化。巻末解説は北大名誉教授の佐藤錬太郎さんによる「剣禅一如の理念とその伝唱」。言うまでもなく『不動智神妙録』は『五輪書』『兵法家伝書』に並ぶ三大兵法書のひとつ。有名な古歌「「心こそ 心迷わすこころなれ 心にこころ 心許すな」は『不動智神妙録』の末尾に記されています。
★『ゴダール革命〔増補決定版〕』は、筑摩書房の「リュミエール叢書」の1冊として2005年に刊行されたものの増補文庫化。増補分は「付録」として、ゴダールへのインタヴュー「憎しみの時代は終わり、愛の時代が始まったと確信したい――『右側に気をけろ』を撮り終えて」、黒沢清さんとの対談「映画はゴダールのように裕であっていっこうに構わない」、そしてゴダールへの追悼文「映画作家ゴダールは、その「特権性」を晴れやかに誇示しながらこの世界から姿を消した」が収録され、さらに「文庫版あとがき」や、関西大教授・堀潤之さんによる解説「「革命」の映画論」が加えられています。
★『女王陛下の影法師』は、2007年に筑摩書房より刊行された単行本の文庫化。再刊にあたり「ちくま学芸文庫版へのあとがき」と、京大名誉教授・伊藤之雄さんによる解説「イギリス近代・現代君主制研究の開拓者」が付されています。著者の君塚直隆(きみづか・なおたか, 1967-)さんは関東学院大学教授で政治外交史家。
★『メディアの生成』は、1993年に同文舘出版より刊行された単行本の文庫化。再刊にあたり「文庫版のための補論」が付されています。それによれば「改訂にあたっては、表記上の統一を図り、統計数値の誤り、誤字脱字、読みにくい箇所を訂正した。しかし加筆はしておらず、本書の内容は1993年版と同じである」とのことです。著者の水越伸(みずこし・しん, 1963-)さんは、関西大学教授でメディア研究者。
★『数学フィールドワーク』は、Math&Sceiceシリーズの最新刊。「数学セミナー」誌での連載をもとに、2008年に日本評論社より刊行された単行本の文庫化。再刊にあたり、「文庫版後書き」と、歴史作家の鳴風海さんによる文庫解説「数学フィールドワークの法則」が加えられいます。前者によれば「必要最低限度の加筆訂正を行った」とのことです。著者の上野健爾(うえの・けんじ, 1945-)さんは、京大名誉教授で日本数学協会の会長をおつとめの数学者。
★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。書誌情報を列記します。『まぼろしの顔』は、牧神社版デ・ラ・メア作品集全3巻の復刊の、第3巻。これで復刊完結です。
『まぼろしの顔――ウォルター・デ・ラ・メア作品集(3)』ウォルター・デ・ラ・メア[著]、脇明子[訳]、橋本治[絵]、東洋書林、2023年2月、本体2,400円、A5判上製180頁、ISBN978-4-88721-831-4
『フマーユーン・ナーマ――ムガル朝皇帝バーブルとフマーユーンに関する回想録』グルバダン・ベギム[著]、間野英二[訳注]、東洋文庫(平凡社)、2023年1月、本体3,500円、B6変型判上製函入352頁、ISBN978-4-582-80912-1
『古琉球の王宮儀礼とおもろさうし』真喜志瑶子[著]、平凡社、2023年1月、本体4,000円、4-6判上製528頁、ISBN978-4-582-44514-5
『デッサ・ローズ』シャーリー・アン・ウィリアムズ[著]、藤平育子[訳]、作品社、2023年1月、本体2,700円、46判並製352頁、ISBN978-4-86182-955-0
『ミダック横町』ナギーブ・マフフーズ[著]、香戸精一[訳]、作品社、2023年1月、本体2,700円、46判並製376頁、ISBN978-4-86182-956-7